ヤマトシリーズでは『永遠に』の聖総統スカルダートを演じられました。
ご冥福をお祈りします。そして、貴方が演じられたキャラを見て育った1人として、ありがとうございました、と申し上げます(ノ_・、)
―――ミッドチルダ首都クラナガン、更正教育施設―――
昨年ミッドチルダを揺るがした『JS事件』で、首謀者ジェイル・スカリエッティに従って時空管理局と敵対した者のうち、罪を認めて捜査に協力的な者は海上隔離施設に収容されていたが、捜査が一段落したことで、被収容者は陸上の施設に移され、社会復帰のためのプログラムを受けていた。
一部は既に別の場所に移送されたため、ここではスカリエッティが生み出した戦闘機人といわれる7人の少女が社会復帰教育を受けている。
昼休み、彼女達はかつて交戦した事もある指導官、ギンガ・ナカジマ陸曹長と共に、中庭でランチボックスを開いていた。
「ギンガ、聞きたいことがあるんだが」
一同の中で最も小柄で隻眼の少女・チンクが、ギンガに質問する。
チンクは外見こそ一番幼く見えるが、ここに収容されている少女達の中では最も活動期間が長く、落ち着いた面倒見のいい性格と相まって、名実ともに7人のリーダー格である。
「何かしら?チンク」
聞き返すギンガに、チンクは少し間を置いて質し始めた。
「最近、マリエル技官やここの職員の様子が確実におかしいんだ。ハラオウン執務官やティアナ・ランスターの事を頻りに話しているのを聞いてしまってな。
‥‥彼女達が行方不明というのは本当なのか?」
「――!?」
核心を突いた質問にギンガは口ごもり、図星であることをチンク達は悟った。
ギンガはどうしたものかと考え込んだ。
答える義務はないと突き放すのは簡単だが、目の前の7人と出自を同じくするギンガには到底できなかった。
何より、父親のゲンヤが、彼女達を養女として引き取る意向を示しており、ギンガ自身や妹のスバルも賛成している。
ことに7人のうちの1人、ノーヴェはギンガ・スバルと同じ遺伝子情報から生まれた実姉妹も同然だ。
名実共に自分の妹になるであろう存在に、そこまで非情に徹することはできなかった。
「実はね――」
意を決してフェイト達が遭難し、『地球防衛軍』の艦に救助された可能性が極めて高い事を打ち明けた。
「地球っていやぁ、確かギンガさんのパパさんのご先祖さんや高町教導官、八神二佐の出身地っスよね?‥‥そんな強力な艦船を持ってたんスか?」
特徴的な口調で聞いてくるのは末っ子にあたるウェンディだ。
「ううん。私達が知っている地球――第97管理外世界――には、そんな技術も勢力もないわ。
どうやら別世界の地球みたいなのよ。時代も200年近く後だというし」
「もう一つの地球ねえ‥‥。XV級より段違いに強い戦闘艦とそれを運用できる新たな世界と軍事組織が存在してたってことか。
‥‥管理局はどう付き合うつもりなのかね?」
砕けた口調でギンガの説明にコメントしたのはセインだ。
彼女とディード、オットーについては、聖王教会が身元引受と後見を申し出ている。
「管理局としては、まずは“地球防衛軍”にコンタクトをとる方針らしいけど、私もここまでしか知らされてないのよ」
それだけ言うと、ギンガは俯いた。
5年前の空港火災で危ないところをフェイトに救われたギンガも、彼女の遭難を知った時は取り乱す一歩手前だった。
「そうか。皆元気で帰って来て欲しいものだな‥‥」
チンクがぽつりと言い、一同が頷いた時、午後の課程開始5分前の予鈴が鳴った――。
――大マゼラン銀河内――
残念おんn‥‥もとい嶋津冴子率いる地球防衛艦隊TF13とコルサック・シュルツ率いるガミラス老朽艦隊は、呉越同舟のごとく舳先を並べて亜光速巡航を続ける。
――『テシオ』艦橋――
「何とも妙な気分ですねえ。
‥‥まあ、あちらさんも同じなんでしょうが」
砲雷長の松島淳一が、玄米茶を口にしながらしみじみと言う。
「そうだな。あの艦形は敵だと身に染みていたからな」
焙じ茶が入った断熱紙コップを手にしながら嶋津も首肯する。
「‥‥それにしても、随分と歴戦の艦ばかりだな」
副長の大村耕作が指摘したとおり、コルサック艦隊の各艦は、装甲のここかしこに補修の痕が見られたり、各艦の武装が異なっていたりと、良く言えば歴戦、悪く言えば使い古し、現地改修を繰り返した老朽艦ばかりだった。
被征服地ゆえか?
しかし、コルサックの弟ヴァルケが率いていたガミラス冥王星艦隊はもっと新しい艦船だった。
『ヤマト』からコスモタイガーが2機発進し、前路哨戒しながら、奇妙な艦隊(?)は、間もなくイスカンダルに追いつくと思われるところまで来ている。
近くに恒星系がない空域なのに、地球形惑星の重力反応があり、なおかつ少しずつ強くなっていることも、イスカンダル星である可能性を高くしていた。
しかし、先日ガミラス星のマグマを盗掘しようとした連中も、同様にイスカンダル星を追跡している可能性が高い。
コルサックによれば、ガミラス・イスカンダル両星のマントル~外核にはそれぞれ「ガミラシウム」・「イスカンダリウム」という高放射性物質が豊富に含まれ、長距離宇宙航海や戦闘用のエネルギー触媒になるという。
これまではガミラスが周辺に睨みをきかせていたが、今ではいつ穴掘り場になってもおかしくない。
現にガミラス星には盗掘屋が来た。
盗掘屋にしてみれば、ガミラス星が消滅した今、イスカンダリウムだけでも確実に採掘しようと考えてもおかしくはないだろう。
また、既にイスカンダルに到達して盗掘を始めている可能性もある。
住人が2人しかいないあの星では、盗掘屋どもに取り付かれたら阻止する事など不可能だ。
ガミラス星を失った事で怒り心頭のデスラーが易々と許すとも思えないが‥‥。
(さて、どうしたものか)
嶋津は焙じ茶を口にしながら物思いに耽る。
問題なのはガミラスのマグマを盗掘していたという連中だ。
地殻を穿てる設備と作業用艦船を持ち込むだけの力があるのだから、国家またはかなり大規模な事業体であろうと推測される。
前者であれば星間戦争の当事者になる可能性を秘めており、戦力再建途上の地球防衛軍としては戦闘は避けたいところだが、盗掘屋どもがスターシャと古代 守の身に危害を加えようとするなら、実力で排除してでも2人を救出するしかない。
(とはいえ、スターシャが素直にイスカンダルを離れるかな?)
実際にスターシャと面識がある古代と雪の話から推察するに、彼女は自分の命を落とすことになっても、イスカンダルを離れることはないように思える。
なにより、スターシャはイスカンダルの王だ。
星を捨てることを潔しとはしないだろう。
(しかし、2人に子供が生まれていれば、別の道があるかも知れない)
親は子より先に逝く。その後、子供だけイスカンダルに残すのは余りにも忍びない。
子供が生まれていれば、その子は地球人でもあるし、スターシャには母親としての責務もあるはずだ。
(いっそ腹ボテになっててくれないものかな。そうなりゃ私も心おきなく悪党になれるんだが‥‥)
親の都合で子供まで死に追いやられるなど、断じて認めない。
最悪、人道的措置との名目で、家族全員拉致してでも連れ出してやる。
些か不埒な考えがの頭に浮かんでいたが、哨戒機からの連絡がそれを中断させた。
『前方に艦隊らしき反応を感知!艦隊又は船団と思われる!』
艦橋に緊張感が走った。
通信はコルサック艦隊にも伝わっているはずだ。
「総員配置につけ!」
「十分注意の上、艦隊編成を確認されたし」
大村が当直外の乗組員にも配置命令が出し、パク通信長が哨戒機に呼びかける。
ガミラス艦隊ならコルサックから合流を呼びかけてもらうが、そうでなければ件の艦隊の目的を探らなければならない。
もし例の盗掘屋なら警告・威嚇してご退散願うが、素直に聞かずに挑戦してくるなら攻撃するしかない。
「艦長、前方に地球形惑星の存在を確認。不鮮明ですが投影できます」
嶋津が無言で促すと、観測席の三沢がスクリーンを開いた。
「おお‥‥」
「ああ‥‥」
艦橋に嘆声が漏れる。
彼我の距離があり、恒星からも遠いため暗く、解像度も良くないが、青い海の中に南北に走る陸地は、映像で見たイスカンダル星に他ならないだろう。
「哨戒機より入電です!
『艦隊は、護衛艦らしき中小型の艦艇が約10隻と、作業船、輸送船らしき大型船が6隻。形状はガミラス・ガトランティスいずれにも該当せず』です!」
「わかった。哨戒機を戻せ。我々は増速して件の船団を追い抜く!シュルツ(コルサック)提督にも伝えろ」
コルサック艦隊からも了解の回答が来た。
あちらさんがどう出てくるかでこちらの出方も決まるだろう。