――某宇宙空間――
「‥‥‥‥」
『クラウディア』らXV級次元航行艦3隻とサルベージ船3隻を率いるクロノ・ハラオウンは、スクリーンに映る『タイタンⅣ』のサルベージ作業を見詰めていた。
彼の傍らには技術主任のマリエル・アテンザがいる。
――時空管理局本局は、船骸と化した『ルシタニック』と撃破されたエネミーA、つまりガトランティス帝国軍艦船の残骸等の回収を決め、次元サルベージ船3隻と『クラウディア』ら3隻の次元航行艦を派遣したのだ。
「改めて見ると、あれだけ破壊された中で、よくフェイトちゃん達は生き延びられましたね」
「紙一重だったんだろうな。あれだけの規模の破壊では、オーバーSランク魔導師の障壁でも数分と保つまい。ましてや直撃なら‥‥」
マリエルの呟きにクロノが応じた。
かつての乗艦『アースラ』をも上回る巨体が原型を留めぬまでに焼け爛れ、無数の破口を穿たれている。
変わり果てた『タイタンⅣ』艦内には、まだ50名以上が閉じ込められているという。
通常空間での長時間作業は余りに危険であるため、本局ドックに曳航して遺体の捜索と収容を行い、並行して破壊状況を調べる。
そして‥‥。
クロノは視線を別画面に移した。
そこにはガトランティス帝国軍の戦闘艦“だった物”の欠片を回収しているサルベージ隊の作業艇が映っている。
「どこまで解明できるんでしょうか‥‥」
ティアナが独り言のように言う。
先日収容したガトランティス艦乗組員らしき遺体を検視・解剖した結果、肌や髪の色以外は自分達と同じ“人間”であることがわかり、驚愕させられた。
「あの残骸から、どれだけの情報が得られるか、だな‥‥」
フェイトからの情報では、ガトランティス帝国は極めて好戦的かつ侵略的だという。
これまで侵略してきた惑星や国家等の情報もあるだろう。
無論、地球連邦のそれも。そして、『タイタンⅣ』や僚艦を地獄に追いやった武装がどのようなものかもわかるかも知れない。
しかし、何より一番知りたいのは『本物の』宇宙戦闘艦の構造と推進機関だ。
管理局の艦船を大きく凌駕している通常空間における航行能力と攻撃力。
これらを解明しないことには新たな脅威に対応できないのだから。
「“返信葉書”の準備はいいか?」
『最終チェックも済みました。いつでも出せます』
クロノは技官の答に頷き、艦内通信を切った。
クロノに与えられた任務は『タイタンⅣ』とガトランティス艦のサルベージだけではなかった。
フェイト達を保護したらしい『地球防衛軍』の部隊とコンタクトできる環境を整えることだ。
彼らは任務遂行のためこの宙域に差しかかった時、ガトランティス艦に襲撃されている『タイタンⅣ』を発見し、救援に来た。
言っては何だが、彼らがフェイト達を救ったのは“ついで”であり、優先すべきは任務だろうから、管理局の捜索隊を待つ義務はない。
本局には彼らの行動――管理局の捜索隊を待たずに出発した――事を非難する声もあったが、彼らは軍隊。あくまで自分達の任務が優先だろう。
『タイタンⅣ』に固定されていたメッセージボードには、帰路に再び立ち寄るとあったため、その時に連絡をとる手段は用意しておかなければならない。
まずは彼らとコンタクトをとれるか否かが問題だ。
少なくとも、地球防衛軍は次元間通信手段を持っていない可能性が高い。ならばこちらで用意するしかない。
用意した“返信葉書”=通信ポッドは旧式のものだが、信頼性は高く、座標維持機能があるため、約300日はこの位置に留まり続けられる。
『放出準備完了しました!』
クロノは頷き、命じた。
「ブイ放出!」
クロノ達の望みを託された通信ブイは虚空に放たれ、ゆっくりと『クラウディア』から離れていった。