宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

13 / 166
詳しく

── タイタン基地・『アンドロメダ』 ──

 

真新しい司令官公室に男女が言い争う声が響く。

 

「嶋津、お前ふざけるのも大概にしろ!」

『プライベートならいざ知らず、任務で手を抜いた事は一度たりともありませんが、何か?』

「このデータのどこが真面目というんだ! 魔法だ?術式だ? アニメや映画の見過ぎだ!」

『ワープや波動砲も、ほんの数年前まではファンタジーでしたが?』

「話をはぐらかすな!」

「そこまでだ。2人とも」

 

エスカレートしかけた口論を断ち切ったのは入室してきた部屋の主、土方だ。

着席するや、土方は目の前の幕僚が手にしているレポートの提示を促す。

 

「司令、これは荒唐無稽すぎて、とてもお見せできるものでは‥‥」

「それを判断するのは私だ。そのための材料を整理・吟味するのが君の役目だろう?」

 

副官に皆まで言わせず、土方は再度促した。

‥‥土方は、タブレットの画面にしばらく目を通していたが、やがてタブレットを机上に置いた。

 

「‥‥ご苦労だった。今後の事は工作隊に引き継ぎ、修繕と補給が済み次第、原任務に戻れ」

『わかりました』

 

── 『テシオ』艦橋 ──

 

「どうでした?」

 

艦長室から上がってきた嶋津にカルチェンコが訊ねる。

先ほど連合艦隊司令部から嶋津が名指しで呼び出されたため、ブリッジクルー一同も気になっていたのだが──。

 

「問題ない。鬼竜は受け付けてくれた」

「‥‥つまり、(幕僚連中と)やり合ったんですね?」

「我ながら荒唐無稽な内容だったからな。慎重意見をいうのは幕僚の役目さ」

 

嶋津はそこで一息つく。

 

「そっちはいいとして、あの船と生存者の事で新たにわかった事は?」

「結局、他にクルーはいませんでしたが、数十人の生活の痕跡がありましたから、何らかの理由で他のクルーは退去し、彼のみが艦に残った、というのが一番近いかと」

「‥‥艦長クラスというわけか」

「ジャケットに〈キャプテン〉と〈クライド・ハラオウン〉と読めるような刺繍がありましたから、間違いないでしょう」

 

詳しい事は彼が目覚めてからだが、全身打撲に内出血で、しばらくは安静を要するとの事。

事情聴取は地球で行う事になろう。

 

「『エスティア』の方は?」

「什器備品等は驚くほど我々の文化と似ています。居住性ならば、恐らくはあちらさんの方が進んでいます。‥‥まあ、あちらの船は戦闘艦ではなく、巡視船と言った方がいいですね」

 

篠田が補足した直後、通信主任のイ・ソンヨブから報告が飛ぶ。

 

「第4艦隊分遣隊と工作艦『ホンダ』・病院艦『コッホ』、あと2時間で到着します」

「了解、クライド氏の転院準備を進めさせてくれ」

 

──防衛会議が、準惑星マケマケ守備隊の再派遣凍結、同じく太陽系外縁の準惑星エリス・ネメシス守備隊引き揚げとブービートラップ設置を決定したのは翌日だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。