――『ヤマト』――
古代 守やフェイトとの話を終えた嶋津冴子は、真田と共に『テシオ』連絡艇が待つ格納庫に向かっていた。
「これからが正念場だな。あいつら一家は」
「‥‥ああ」
佐渡の見立てでは、幼いサーシャは今の地球上の環境に適合できないところがある。
成人すれば問題はなくなるが、最低でも1年はイスカンダルに近い環境で養育しなければならないという。
しかし、真田は事も無げに言った。
「サーシャについてだが、死んだ姉貴に一肌脱いでもらうつもりだ」
「はぁ!?」
真田のきょうだいは、遊園地での事故で死んだ姉一人のはず。
「‥‥でっち上げるのか!?」
「ああ。サーシャは人類史上初の‥‥だからな」
「‥‥確かにな」
サーシャは地球人と異星人の間での出生が確認された星間混血児第1号だ。
医療研究と称してマウス扱いされる可能性が全くないと断言はできない。
「‥‥その件も含めて、養育については俺に腹案があるんだ」
「‥‥そうかい」
嶋津はそれ以上質さなかった。
その時、
「真田技師長、よろしいでしょうか?」
「「??」」
振り向くと、女性の甲板士が小走りしながら向かってきた。
「『ヤマト』甲板士、ルー・フィン・ヴァン宙士長です!」
彼女は近くに来ると、踵を揃えて部隊長たる嶋津に敬礼。嶋津も答礼した。
「で、用とは何だ?」
尋ねる真田に、ルーは数瞬口ごもった。
部隊長までいることで、言うべきかどうか迷っているようだ。
「構わん。報告しなさい」
嶋津はためらわず報告を求めた。
部下の報告を聞き流したがために敗れた指揮官や将軍は数知れない。
どんな小さな情報も聞き捨てにしてはならないのだ。
促されたルーが手にしていたハンカチを開くと、キラリと光る物体が出てきた。
「これは‥‥」
「イスカンダルダイヤモンドだが‥‥こいつは‥‥」
ルーからそれを受け取った真田は、一目でイスカンダル星に産出するダイヤモンドと見抜いたが、嶋津ともども息をのんだのはその形状だった。
「外部損傷を点検していましたら、左舷装甲の継ぎ目にこれだけが引っ掛かっていました」
「この形状でか?」
「はい。榎本掌帆長に報告しましたら、技師長にお渡しするように、と」
「そうか‥‥」
ルーの話を聞いた2人は思わず唸った。
「しかし、見事なまでの涙滴形だな。これほどまでのティアドロップは見たことないぞ」
「‥‥俺もだ」
真田と嶋津が感嘆の声を上げていると、ルーがぽつりと呟いた。
「‥‥まるで、スターシャさんの涙のようです」
「!‥‥‥‥」
それを聞いた嶋津と真田は思わずルーをまじまじと見る。
「!‥‥も、申し訳ありませんっ!!」
絶句した上官達の視線を感じたルーは、僭越な発言だったと謝罪したが、上官達の反応は予想外だった。
「‥‥的を得た喩えだな。それ」
「いや、きっとそうだろうよ」
2人とも、ルーの喩えをよしとしたのだ。
「‥‥わかった。これは俺が預かる」
「はい。お願いします」
持ち場に戻っていくルーの後ろ姿を見ながら、冴子は呟いた。
「見れば見るほど哀しくなるな。それ」
「‥‥ああ」
‥‥それは後日、真田 澪に託される。
『ハイスクール・フリート』をまた視ました。
飛行機がない世界で秋月級が存在するのかとも思いましたが、飛行船が亜成層圏を巡航できるとすれば、存在してもおかしくはないでしょうね。
超ド級ならぬスーパーツェッペリン級飛行船が飛び回っているのかも。