宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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取リ急ギ報告致シマス②

『実は、現在進行形で太陽系外縁部に未確認の艦船が出没し、追跡させているところだ。お前達から受け取ったデータと照合した限りでは、問題の艦船は暗黒星団帝国軍のものという可能性が高い』

「!‥‥連中はもう太陽系まで来ているのですか?」

 

さすがに嶋津も驚きの表情を隠せなかった。

 

『あくまで仮定の話だ。いずれにせよ、暗黒星団帝国とやらが好戦的な勢力である以上、近い将来武力衝突の可能性は否定できんな』

 

本部から提供されたアンノウンの画像は、どう見ても暗黒星団帝国軍艦船に共通するフォルム――円盤形の船体にタワー状艦橋、バレル式の砲塔――を持っていた。

 

((奴ら、もう嗅ぎ付けたのか‥‥))

 

嶋津以下、13TFの首脳陣は背中に冷や汗が流れ落ちるのを感じた。

暗黒星団帝国の情報収集能力は極めて高いと言わざるを得ず、直に戦った経験のある13TFに早急な帰還が求められるのは必定だ。

 

だが――。

 

『そういえば、フェイト・T・ハラオウンだったな?‥‥彼女と直に話したいが、可能か?』

 

土方が口にしたのは、フェイトとの直接のコンタクト希望だった。

 

隣では藤堂が副官に何か指示を出し始めた。

 

「問題はありませんが‥‥何をなさるおつもりで?」

『決まっているだろう。一気にケリをつける』

 

唇の端を持ち上げ、土方は凄みのある笑みを浮かべた。

その笑みの意味を解した嶋津は、古代にフェイトを艦橋に呼ぶよう指示した――。

 

 

     ――『ヤマト』――

 

(こんなに早く事態が動くなんて‥‥)

 

新人クルーに先導されながら、フェイト・T・ハラオウンは緊張を隠せなかった。

――数分前、佐渡に呼ばれて医務室に行くと、モニター画面に真田が映っていた。

 

『急で済まないが、第1艦橋に来てくれないか?

本部の者が、クライド・ハラオウン氏の件で君と直接話したいと言っているんだ』

 

フェイトは二重の意味で驚いた。

 

ここは地球から十数万光年離れているという。

それなのに、もう直接通信が回復しているのかという事と、いきなりクライド・ハラオウンの話が本部にまで通じていた事にだ。

 

しかし、疑問を解決するのは後だ。

フェイトはわかりましたと答え、身支度を整える。

もちろん、愛機バルディッシュを懐中に入れて、だ。

 

ほどなく迎えに来た生活科員に先導されて第1艦橋へのエレベーターがあるエントランスに向かった。

 

   

      ――第1艦橋――

 

(ここが、『ヤマト』の艦橋‥‥)

 

『ヤマト』の艦橋は、『アースラ』や『クラウディア』とは異なり、同一フロアに全スタッフが揃っていた。

 

(水上艦からの伝統なんだろうか‥‥?)

 

次元航行艦の艦橋は中2階ないし2階構造になっており、艦長席は一段高くなっているが、目の当たりにした『ヤマト』の艦橋は、全スタッフが1つのフロアに纏まっている。

 

(確かに、戦闘指揮には同一フロアに全スタッフが揃っていた方が意思疎通できる)

 

当然、同航している『テシオ』ら僚艦の艦橋も同じなのだろう。

 

「ハラオウン執務官、奥まで来てくれないか?」

「!‥‥は、はい」

 

真田の声で現実に戻されたフェイトは、彼や古代兄弟が立っている中央部まで歩み寄ると、踵を揃えてメインスクリーンを見上げた。

スクリーンには、先日話した土方 竜の姿があった。

 

 

13TFが軍司令部への報告を行っている頃‥‥。

 

ナースステーションからの呼び出しアラームに気付いたクライド・ハラオウンは、特に不審を抱く事もなく応答スイッチを押し、応対しようとしたが、モニターに出た人物は担当の医師・看護師等ではなく、明らかに専任の通信オペレーターと思しき人物だった。

 

『Mr.ハラオウン‥‥でよろしいでしょうか?』

「はい」

 

専任オペレーターというのは些か想定外だった。

用事は病院の外からということか。

果たせるかな。

 

『防衛軍司令部から、至急の会談要請が入っております』

 

であった。

 

向こう側で回線を切り替えているのだろう。モニターの画面がカラーパターンみたいなものに数秒間変わってから、1人の男――軍司令長官・藤堂平九郎――が映った。

 

「藤堂閣下‥‥」

 

いきなり軍のトップが現れた事に驚きながら、ベッドの上で姿勢を正すクライドに、藤堂は被せるように続ける。

 

『驚かせて済まない。だが、貴官にとって極めて重要な事案が発生したのだ』

「‥‥伺いましょう」

 

逮捕、拘束という可能性は最初から捨てていた。

そうしたいならば、いつでもそうできていたはずだ。

それに、自分は元々航空魔導師だが、デバイスを失い、負傷した身で何ができるというのか?

 

一方、直に会ったここの者達のメンタリティも自分達に極めて近く、コミュニケーションも信じられないほど円滑にとれた。

 

待遇も、三度の食事に二回のお茶、リハビリと、申し分ないものだ。

愛する妻と息子がいないことを除けば、そう悪くない。

 

そんな事を考えていた時、突然、軍トップ直々の通信だ。自分に関係することとは、

 

まさか、管理局と地球防衛軍が接触あるいは衝突したというのか?

前者ならまだしも、後者とすれば自分の立場が厳しくなるのは避けられない。

 

が、藤堂からの言葉は、クライドが予想したより斜め少し上に“着弾”した。

 

『特別任務にあたっていた我が軍の部隊が遭難した宇宙船から男女4名の生存者を救出したのだが、その船も時空管理局所属で、1名が時空管理局の執務官だ』

「!?」

 

クライドは反射的に瞠目したが、更に驚愕する事実が登場する。

 

『その執務官は《フェイト・テスタロッサ・ハラオウン》と名乗っている』

 

ハラオウン?

 

どういう事だ?

 

まじまじと画面を見るクライドの表情に何かを感じた藤堂は“追い撃ち”をかけてきた。

 

『で、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンに確認したところ、彼女は事情あって養女になったそうだが、養母の名はリンディ、義理の兄の名はクロノといっている』

 

リンディにクロノ‥‥?

 

まさか、君たち、なのか‥‥?

 

間髪入れず、藤堂から最後の爆弾が放たれた。

 

『フェイト・テスタロッサは貴官との会談を希望している。貴官が良ければ、すぐにでも可能だが、どうするかね?』

 

クライドはためらわず答えた。

 

『‥‥私からもお願い致します』

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