── ガトランティス首都星要塞・宮殿餐室 ──
「大帝、ラーゼラー長官が火急の御用でお目通りを願い出ております」
「通せ」
侍従に命じた大ガトランティス帝国大帝・ズォーダー5世は午餐の手を止めた。
「大帝、お食事中申し訳ございません」
「謝罪は無用。用向きを申せ」
ズォーダーは即位以来、臣下や臣民が自らを呼ぶ時に『陛下』の尊称を使う事を禁じ、重臣に対しても部下に『閣下』の尊称を使わせてはならぬと厳命していた。
同時に、吉報より凶報を優先して上程する事も臣下に徹底させる事で、武断派君主である事を臣下や外部にも徹底させると共に、門地よりも実力・実績主義による人材登用を積極的に行う事で軍を活性化させ、歴代大帝の中でも最速のペースで版図を拡大。永年の宿願たるガラム(アンドロメダ銀河)全制覇を成し遂げ、ズォーダーの威光はますます強くなっていた。
「デスラー総統がサーベラー丞相を人質に取り、拘置所を脱走しました」
「‥‥すぐ行く。それまでに経過と状況をまとめておけ」
サーベラーの進言を汲んでデスラーを拘禁する事を許可したのだが、何かが引っ掛かる。
そもそも、彼はサーベラーの言うような怯懦な男だったのか?
自分は何か大きな勘違いをしていたのではないのか──。
「午餐はもうよい。片付けよ」
「畏まりました」
給仕の侍従に命じて、ズォーダーは一旦私室に戻り、身支度を整えて政務の間に向かった。
「ゲーニッツはどうした?」
玉座についたズォーダーは、ゲーニッツの姿がない事に気付いて最上席者のラーゼラーに下問したが、ラーゼラーは一瞬躊躇う様子を見せる。
「儂が訊いているのだ。申せ」
大帝にそこまで言われて躊躇うのは罪だ。ラーゼラーは己が把握している事実を述べた。
①サーベラーとゲーニッツはデスラーと大帝が誼みを深める事を快く思っておらず、共謀してデスラーを排除しようとし、デスラーと『ヤマト』の戦闘を妨害し、敵前逃亡の罪と不名誉をデスラーに押し付けた。
②デスラーは拘置所でサーベラーを人質に取って脱出、副官タランが操縦する戦闘機で逃走。サーベラーはその直前に解放された。
③デスラーは近くに待機していたガミラス艦隊と合流した。
ラーゼラーが把握していたのは以上のとおりだった。
「‥‥ラーゼラー、デスラーの艦を自動発進させよ」
概ねの事情を知ったズォーダーは、デスラーに与えた『デウスーラⅡ』をガミラス艦隊に向けて自動発進させるよう命じるとラーゼラーを下がらせ、サーベラーとゲーニッツを呼ぶよう侍従に命じた。
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「うぬら、儂をたばかっておったのか?」
丞相サーベラーと遊動艦隊統督ゲーニッツは、自分達のデスラー排除策が大帝に露見したのを知り、恐怖に慄いた。
解放されたサーベラーは怒りと屈辱に身を震わせながら軍務の間に戻り、騒ぎを聞き付けたゲーニッツにデスラー追討を訴え、ゲーニッツが監視艦隊司令官ミルにデスラー追討を命じようとした所にズォーダーが入室。追討を却下した。
ですが、と異議を唱えるサーベラーに、ズォーダーはスクリーンに映るガミラス艦隊を指差す。
「デスラーが敵前逃亡したならば、なぜ彼の臣下達は命懸けで助けようとするのだ!?」
ズォーダーの問いに、サーベラーもゲーニッツも的確な答えを示せず、遂に絶対君主は怒りを露にした。
「儂に虚偽を報告し、デスラーに冤罪を着せて排除しようとした事、これまでの実績を差し引いても見過ごせぬぞ。愚か者どもめ!」
「も、申し訳ございません‥‥」
ズォーダーは臣下の虚偽を許さない。逆鱗に触れれば良くて閑職送り、悪くすれば奴隷への転落か死刑だ。
実例を何度も見てきたサーベラーとゲーニッツはただ平身低頭するばかりだ。
「今は地球攻略の大事な時。今回の失態は不問とするが、次はないと心得い!」
「は‥‥ははっ!」
2人を下がらせると、ズォーダーはスクリーンに映し出された進路上にある惑星『テレザート』に視線を転じた。