── 太陽系外縁、エッジワース・カイパーベルト──
GF666─『テシオ』『ヒルガオ』『ナデシコ』─はマケマケ沖会戦後の修繕と補給を受けた後、『ヤマト』の航跡を辿ってアンドロメダ側のベルト外縁まで進出して敵軍の侵攻に目を光らせていた。
こちらには、2日前に哨戒巡洋艦『オマハ』と『タコマ』が更に外側、オールトの雲方面に向けて突出して索敵に向かっていた。
『ヤマト』から連合艦隊司令部宛の敵情報告は『テシオ』も傍受しており、敵──大ガトランティス帝国──の情報を知らされた各艦首脳は絶句した。
首都本星が要塞化しているだけならまだしも、それ自体が巨大な白色彗星と化し、ワープを伴って自律移動するなど、常軌を逸している。
しかも、テレザート星という地球クラスの惑星が至近距離で爆発したにも関わらず、首都星は健在だったという。(速度ががた落ちで軌道にも乱れが生じたので、幾らかのダメージは受けたらしいが)
更に、ガトランティスは既にアンドロメダ銀河をほぼ征服しているという情報には、最早誰も何も言えなかった。
しかも、現君主のズォーダー5世は、先代まで数代かかってようやく半分を征服したアンドロメダ座銀河の残り半分を、彼一代で平らげてしまったという。
正邪は別として、アベルト・デスラーをも上回る稀代の英傑と言えよう。
そんな強大なカリスマに、果たして地球侵略を断念させる事ができるのか──?
それはさておき──。
『つまり大艦隊は露払い。その子たちをお仕置きした後、今度は白色彗星の巨大なお洋服を脱がせて、都市要塞ちゃんにカンチョーしなくちゃならないんですね~?』
緊張感とは正反対な調子で身も蓋もない事を言うのは、『ナデシコ』艦長のフランベルク・シルヴィア夏実。(通称シルヴィア)
。
ドイツ系3世の彼女は《砲撃魔女》の異名を持ち、ガミラス戦末期、敵艦の艦橋に砲撃を命中させて4隻を仕留めた鬼才だが、性格に問題ありと看做され、地球艦隊再建後も一護衛艦艦長のままだが、本人はどこ吹く風。
ついでに乗艦『ナデシコ』の実務も、双子の妹で副長兼航海長のアリア小百合(通称アリア)に丸投げしている有り様だが、被弾ゼロで戦果を挙げているので、誰も何も言わないのだ。
『ガス帯を吹き飛ばすのは拡散波動砲で可能かも知れませんが、中身に穴を開けるには、やはり収束波動砲でしょうか‥‥』
波動砲戦について私見を述べるのは『ヒルガオ』艦長の若命(わかめ)未散。GF666艦長陣唯一のリア充(旦那+1女1男)で、嶋津やシルヴィアのような強烈な個性こそないが、GF666の艦長では常識がある人(相対的に)と認定されている。
『そこですね。今となっては詮ない事ですが、『ヤマト』以外の戦艦、戦闘空母とエムデン級は全て拡散波動砲。インディアナポリス級(攻撃巡洋艦)も2次形以降は拡散波動砲。後は護衛艦のうち、2・3次形の17隻だけ。これを温存しながら敵艦隊を下し、かつガス帯を除去しなきゃ、ですからね‥‥』
ぼやくように言うのは、『ヒルガオ』副長兼砲雷長の幸浦俊哉。192センチという長身+彫りの深い顔立ちのヰケメンだが、GF666に配属されているという事実は、問題児扱いされている事とイコールなのだ。
「波動砲戦はどうにもならないな。我々にも近々役目が与えられるだろうが、死なない程度に頑張るしかないさな」
言い終えて嶋津が肩を竦める。
GF666のような部隊に期待されているのは、敵艦隊とのどつき合いではなく、伏兵等のトリッキーな役回りだろう。
GF666に連合艦隊司令部からの命令が届いたのは翌日の夕方になってからだった。