――地球防衛軍、土星タイタン基地――
土星圏最大の衛星は、宇宙艦船建造に不可欠な超金属コスモナイトの一大採掘地であると同時に、白色彗星帝国軍との散発戦が始まった時点で地球防衛軍宇宙艦隊司令部が進出しているが、ここに齎された一本の電文が、地球防衛軍と連邦政府を震撼させた。
単艦オールトの雲の外側に索敵に向かった哨戒巡洋艦『オマハ』と『タコマ』が別々に、太陽系に向かうガトランティス帝国の大艦隊に触接したのだ。
『オマハ』が触接したのは、マケマケ攻撃にやってきた空母と同型艦が約30、ふた回り大型で上下対象の飛行甲板を持つ大型空母が2隻。直衛艦として巡洋艦が20、駆逐艦が70、補給艦艇が10という機動部隊。
『タコマ』が触接したのは、戦艦(大型艦)が約60、巡洋艦)が約120、駆逐艦200隻超、補助艦艇も含めると400隻を超える打撃艦隊だったが、『タコマ』は第4報から30分後、
『敵艦約10ト戦闘状態ニ入ル』
との緊急電を最後に通信が途絶えた。
また、機動部隊に触接した『オマハ』も、第5報から40分後に敵と戦闘状態に入り、更に30分後、
『本艦ハ敵艦5ヲ撃沈スルモ沈没ニ瀕ス。地球連邦とアメリカに栄光アレ』
との訣別電を最後に消息不明となった。
更に、テレザート星から帰還中の『ヤマト』が、オールトの雲内部でガトランティス軍の揚陸部隊と接触し、これを撃滅したとの緊急電が入るに至り、総司令たる土方は幕僚を召集した。
── 『アンドロメダ』司令官執務室 ──
土方はモニターに映る太陽系内の戦力配置図を睨みながら、幕僚に指示を下し始めるが、その指示を耳にした幕僚は当惑の色を見せた。
「司令、これだけの戦力配置変更は防衛会議の承認を得なくては‥‥」
「それは敵の動きが緩慢であればだ。敵は70時間以内に太陽系に侵入してくるだろう。防衛会議の結果を待っている余裕はない。無論、全責任は私にある。直ちに当該部隊に伝達しろ」
土方は異論をはねつけ、有無を言わさぬ勢いで矢継ぎ早に命令を下していく。
土方は内心で苛立っていた。幕僚ではなく防衛会議のメンバーに。
(古代達の意見をまともに取り合わなかった結果がこれだ!)
連邦大統領は速やかに防衛会議を開催しようとしているらしいが、肝心のメンバーたる連邦代議士が必要人数揃うのにまる1日かかる有様だ。
有事にこの有様では、本当に我々は滅ぼされてしまうぞ。
俺の首一つで地球を守れるのなら、この首いつでもくれてやるさ。
──果たせるかな、地球の軍本部、特に参謀本部は土方の独断専行に憤激した。
『土方司令、何故防衛会議の承認を待たずに全艦隊集結命令を出した!?』
「戦力において劣勢な我が方が勝利するには、戦力を集中こそが最善だからです。防衛会議を無視する形になったのは申し訳ありませんが、敵の侵攻速度は予想以上に早く、70時間以内に敵艦隊との全面対決が起きようとしているにも関わらず、未だに会議を開催できていない現状では話にならない。敵はこちらの都合など考える義務はないのです!」
『戦力を集中させた挙げ句にすり潰されたらどうするつもりだ!敵は艦隊だけではないんだぞ!!』
「敵の方が圧倒的多勢である以上、戦力を分散させたままの方が余程危険だ。‥‥長官、全艦隊集結の許可を願います」
参謀との論議に価値を見出ださなかった土方は、トップたる藤堂平九郎に全艦隊集結の許可を求めた。
『長官、土方司令を即刻罷免するべきです!!』
『‥‥土方君、これだけの戦力の移動には防衛会議の承認が必要なのだ』
「それは重々承知していますが、現実は我々の思惑どおりには進んでいません。敵が太陽系外縁に侵入してからでは手遅れです」
『‥‥‥‥』
藤堂は苦渋の表情で押し黙る。
土方は苛立つものの、板挟みになっているであろう藤堂を責める気にはなれなかった。
「‥‥わかりました。宇宙戦士達の命と艦隊を預かる者として、私の責任で最善の方策を遂行します」
『土方司令!!』
「事が済めば、軍法会議なり査問委員会なりを開いていただいて結構だ!」
参謀達の答を聞かず、土方は通信を閉じた。
「ふう‥‥」
市民が平和に酔いしれるのはまだいい。しかし、たった1年で、地球連邦の指導層はこうも危機意識を失ってしまったというのか。
――沖田、お前が今の地球連邦を見たら、どんな感想を持つんだろうな‥‥。