──古今東西、凶事は大抵唐突にやってくるものだ。
「後方に極大のワープアウト反応!」
各艦の観測士が異口同音に、叫ぶように報告した直後、艦に衝撃が走り、針路を外れる艦が続出した。
――『テシオ』――
「白色彗星です!50宇宙ノットで突っ込んできます!!」
「機関最大、舵戻せ! 焼きついてもいいから全力で回すんだ!!」
「了解! 機関長!?」
「機関最大、過負荷状態まで振り回せ!」
指示を受けたカルチェンコの操舵と機関科の奮闘で『テシオ』は何とか艦位を維持したが、運なく白色彗星に吸い込まれていく艦も少なくなかった。
「『レキシントン』呑み込まれます!!」
艦橋に女性クルーの悲鳴が上がる。
「我が隊の艦が飲み込まれていきますっ!!」
「!?」
ハッとした嶋津が仰ぎ見たメインモニターには、
白色彗星に飲み込まれていく『レキシントン』以下の全ての戦闘空母に巡洋艦、駆逐艦が映っていた。
(潰滅か‥‥ちくしょう!)
嶋津は歯を食い縛り、拳を握り締めて激しい憤怒を堪えるが、真の凶報はこの後だった。
右舷方向に閃光と爆炎が煌めく。
「『ヤマト』が!」
「!!?」
何とか艦位を立て直した『ヤマト』だったが、左舷に流されてきた巡洋艦が衝突。左舷に破口が生じ、火煙を噴きながら艦列から脱落していった。
「『ヤマト』に繋げ。相原通信長を呼び出すんだ!」
地球の希望そのものである『ヤマト』が、損傷するや否や落伍していったのだ。
ただならぬ事態が発生したとしか考えられない。
イは呼びかけ続けたが、『ヤマト』の状況がわかるまでには、今しばらくの時間が必要だった。
――しかし、悪夢はこれに止まらなかった。
「『アンドロメダ』落伍っ!!」
「!!?」
何て事だ、よりによって総旗艦までもが脱落だと!?
「操舵不能になった駆逐艦が右舷後部に衝突して爆発。機関室に火災が発生したようです。土方司令以下のブリッジクルーにも重傷者多数の模様。‥‥艦隊の指揮は、第1外周艦隊のスコット司令が引き継ぐとの事です!」
「‥‥わかった」
白色彗星の影響はTF21のみならず、『アンドロメダ』を含む本隊の先頭グループにも影響を喰らわせた。
『ヤマト』に次いで『アンドロメダ』まで大破落伍とは、“泣きっ面にオオスズメバチの群れ”だ。
しかし、愚痴っている暇はない。
指揮権を引き継いだスコット中将からの集結指示を受け、巡洋艦以上の波動砲搭載艦は、臨時旗艦になったドレッドノート級主力戦艦の4番艦『デューク・オブ・ヨーク(DOY)』を中心に集結するが、その最中に波動砲戦フォーメーション指示が下された。
「『DOY』から入電。“マルチB隊形となせ”です!」
「‥‥指定の座標につけろ」
機関全開でどうにか難を免れた『テシオ』も指定された座標に到達した。
『ヒルガオ』『ナデシコ』は他の小型艦とともに、白色彗星の超重力圏外まで下げられた。
指定された統制波動砲戦マルチB隊形は横一列・上下三層のフォーメーションだが、嶋津はこの隊形に懐疑的だった。
(波動砲が効かなかった場合、このフォーメーションでは逃げ道が限定されてしまうぞ‥‥)
土方は円形フォーメーションでの迎撃を構想し、数回訓練も行っていたが、スコット司令は練度不足と見てこれを採用せず、セオリーどおりの横列で迎撃することを決意したようだ。
。これが吉と出るか凶と出るか――。
『DOY』から波動砲チャージ開始命令が入る。
「波動砲チャージ開始。対ショック・対閃光防御! エンジンをすぐ回せるようよう、必要最低限以外の全動力を切れ」
照準やエネルギー拡散点の調整は『DOY』がやってくれる。
あとはカウントダウンに応じて波動砲のトリガーを引けば良いのだが──。
「‥‥‥‥」
嶋津は内心で憮然としていた。
波動砲は大量破壊兵器だ。
いくら相手が侵略者とはいえ、人間がコンピューターの指示に従って大量破壊や殺戮をするなど本末転倒だ、と考えるのだ。
とはいえ、この期に及んで個人的見解を露わにするなど、軍人としてはあってはならない。
『発射10秒前、9・8‥‥』
接近してくる白色彗星の光が強くなっていく中、カウントダウンの声が響く。
『全艦拡散波動砲、発射ッ!!』
「撃て!」
敵艦隊との戦闘や先程のアクシデントで少なからぬ犠牲を被った地球艦隊だが、拡散波動砲搭載艦はなお150隻以上あり、それらの波動砲が一斉に放たれた――!