『テシオ』は小衛星“S/2003J2”で一時錨泊して応急修理を行い、僚艦『ヒルガオ』『ナデシコ』との合流を果たした後、木星圏イオ第1基地に向かっていた。
同基地には既に数隻が入ったという。
「‥‥‥‥」
「──‥‥」
「○◎△▼■」
応急修理状況を受ける艦橋には重苦しい空気が漂っていた。
地球からの情報では、白色彗星は急に速度を落としながらも着実に地球に向かっている由。
戦力がない地球などいつでも落とせるということか。
──沈黙を破ったのは観測士席の三沢だった。
「前方に友軍艦‥‥『アンドロメダ』です!」
「拡大投影できるか?」
「はい、映します!」
メインスクリーンに投影された総旗艦は左舷中央から後部にかけてザックリ抉りとられたような破口からなおも盛大に煙を噴いていた。
また、艦橋左舷にも破口がある。
4基ある補助ノズルも左舷の2基は完全にお亡くなりのようだ。
主力戦艦なら航行不能になっているレベルだが、どうにか航行しているのは、さすが『アンドロメダ』級と言うべきか。
嶋津はイ通信長に下令する。
「『アンドロメダ』に我が隊が随伴する旨を伝達。それと、支援が必要か否か照会するんだ」
「わかりました」
程なく『アンドロメダ』から返信があった。
「艦医・看護士の大半が死傷し、設備も使用不能のため、重傷者の引き受けを要請しています」
「わかった。了承した旨返信。‥‥それと、艦隊司令部要員の安否を照会してくれ」
「はい」
あの損傷ではすぐ復帰することは望めまい。
また、艦橋に穴が開いている事も痛いが、メディックが壊滅状態なのが最も痛い。復帰できる者も再起不能になり、助かる者も助からない。
すぐに返信が来た。
「ブリッジクルーも半分強が死傷。土方司令は負傷されましたが、現在直接操艦指揮をとっておられる由です」
「わかった。合流するぞ、副長」
「了解しました。25cktに増速します」
増速した『テシオ』に『ヒルガオ』『ナデシコ』も続く。
3隻が傷つきよろめく総旗艦に合流したのは13分後だった。
直ちに『テシオ』から連絡艇が発進して『アンドロメダ』の後部艦底格納庫に着艦した。
── 『アンドロメダ』艦橋 ──
艦橋はひどい有り様だった。
瓦礫と化した機器、床のここかしこに広がる血の痕跡、頭や腕に包帯を巻いたまま作業にあたる乗組員──。
衝突した駆逐艦が爆沈した時、大きな破片が艦橋側壁を破って内部で跳ね回り、ブリッジクルーを殺傷したのだ。
土方は軽傷で済んだが、参謀長ら幕僚の大半が死傷。
艦自体の損傷もさりながら、司令部が事実上壊滅した事で、『アンドロメダ』は白色彗星を目前に無念の撤退を余儀なくされた。
(“れば・たら”を論じるのはいつでもできる。残った戦力でどう戦うかだ)
刀折られた形の土方だが、白旗を上げる選択肢ははなから持っていない。
そこへ──。
「司令、『テシオ』の篠田戦術長が参りました」
艦長席の前で目付きが鋭い角刈りの男が敬礼している。
「篠田です。重傷者の受け入れに参りました!」
「ご苦労。‥‥GF666の被害はどうだ?」
「大きな被害では、『テシオ』のタキオンレーダーが使用不能です。GF666全体では戦死者なし、負傷者37名です」
「わかった。重傷者を頼む」
「はっ!」
退出していく篠田を一瞥した土方は、生き延びた教え子たちが乗る艦に思いを馳せる。
(またしても『ヤマト』がカギになるか‥‥)
拡散波動砲がダメである以上、後は集束波動砲しかないが、地球防衛軍の艦でこれを搭載している艦は『ヤマト』とプランツ級護衛艦の一部しかない。
あのガス帯を吹き飛ばして首都星とやらを丸裸にしないことには局面を打開できない。
──『アンドロメダ』とGF666が衛星イオに辿り着いたのは2時間後。それが嶋津冴子の受難の幕開けだった。
失言議員とかバカッター議員とか、色んなところが熔けてますな。