―第1世界ミッドチルダ――
ベルカ自治領首都、ザンクト・カイゼルブルグの郊外の丘に建つ壮麗な建物が、管理世界最大規模を誇る宗教、聖王教の総本山たる聖王教会本部である。
様々な教務に従事する修道士・修道女だけでも2万人を超えるが、この中の4千人は魔導師であり、教会本部はもとより各世界の聖王教会の警備や巡礼団の護衛等に従事する修道騎士であり、その実力は時空管理局の武装隊に拮抗している。
その修道騎士の中でも高い地位にある女性が本部にいる。
──カリム・グラシアは、穏やかな雰囲気を持つ20代前半と思しき女性修道騎士であるが、とある先天的稀少資質の持ち主で、教会内部のみならず、管理局からも注目されており、自身も管理局本局において将官待遇の理事官でもある。
その資質あるいは能力は、ミッドチルダを公転する2つの月がある位置に達した時に発動することがある“プロフェーテン・シュリフテン”という、数年先までに発生し得る物事を予想“できてしまう”事だ。
本人曰く、ちょっと良く当たる占い程度だと言うのだが、数年前に時空管理局崩壊の可能性を予知した事から、管理局と協力して予言の的中阻止に動き、友人である魔導騎士、八神はやてと彼女の僚友達を中核戦力とする“機動六課”設立と運用を支援した。
その機動六課は、予言が実体化した“JS事件”の未然阻止はできなかったものの、それを局地的テロ事件の段階で鎮圧し、事件規模の割に人的被害を最小限に抑え、民間人の死傷者がなかった事は高く評価された。
このため“プロフェーテン・シュリフテン”は管理局でも重要視されているのだが、ここ暫くは発動することもなかった。
しかし、その能力が突然発動した。
「!‥‥これは‥‥」
カリムは直ぐさま机上の便箋に“預言”を走り書きで記入していくのだが、穏やかだったその表情は強張っていった。
“――法の舟、星の海を行く戦舟と出会いし時、忌みし力により業火に覆わる。
地の界の防人と出会いし時、法の舟は力の意味を問われるものなり――”
清書を終えたカリムは語句の意味を考えてみた。
“法の舟”は言わずもがなだろう。
“星の海を行く戦舟”‥‥。
少なくとも管理局の艦船ではないだろう。
可能性があるのは、第144管理外世界付近で『クラウディア』が遭遇した所属不明の戦闘艦船群だが、別勢力の艦船という可能性もある。
“忌みし力により業火に覆わる”‥‥。
忌みし力は、管理局が取り締まってきた質量兵器のことと思われる。
質量兵器によって管理局は大きな被害を受けるというのだろうか。
いや、既に管理外世界が一つと艦船6隻、およそ1,000名の人命が失われた。
この上さらなる災厄に見舞われるというのか。
そして、最後の一節の“地の界の防人”
異世界の軍事勢力か軍人、それに準じる者ということか。
彼らとの接触で、管理局は何かを知るのだろう。
清書をもう一度見たカリムは、秘書官兼護衛のシャッハ・ヌエラを呼ぶことにした。