「か、艦隊の8割が消滅!!」
「馬鹿なっ!」
エアロダスター・ナスカは、閃光がやんだ後、艦隊戦力の減り様に愕然となった。
――あの雑魚共にまで高タキオン砲(波動砲)、それも集束砲を搭載していただと!?
敵戦力にすら数えていなかったテロン小型艦からの高タキオン砲一斉射撃によって、8割の艦と将兵が宇宙の塵と消えた。
ナスカは、敵艦隊が高タキオン砲発射体制に入ったら、素早く艦隊を集結させ、多少の犠牲を忍んでも中央突破に出るつもりだったのだが、それが裏目に出た。
最初に放たれた中型艦の拡散形高タキオン砲は我々を集結させるための囮で、雑魚を切り札に使うとは全く予想外だった。
そして憤激が沸き起こる。
「我が艦隊の相手はあんな雑魚共で十分だと?‥‥蛮人共が!」
「テロン艦隊接近!包囲されます!」
憤怒の呻きを上げるナスカに、幕僚が地球艦隊接近を告げた。
――地球艦隊臨時旗艦『テシオ』――
「敵情確認、急げ!」
「はいっ!!」
戦果確認を命じる嶋津の声が響く。
「敵艦隊、当初の2割に減少。戦艦を中心に集結しつつあります!」
「ん!」
観測士の報告を聞いた土方は頷くや、立ち上がって下令した。
「全艦前進。半包囲して殲滅する!」
「第2戦速で前進。敵戦艦の向きを見落とすな!」
土方の命令を受け、嶋津が『テシオ』の行動指針を示す。
地球艦隊は艦首に戦艦主砲並のショックカノン砲を持つ護衛艦A・Cタイプを前面に押し立て、凹形の隊形で敵の残存艦を半包囲にかかる。
「敵艦隊、16インチ砲有効射程内に入りました!」
「砲撃開始!」
土方の命令一下、戦艦『アルハンゲリスク』『アルミランテ・コクレーン』の主砲に加え、護衛艦A・Cタイプの16/18インチ艦首ショックカノンが火を吹いた。
――ガトランティス艦隊――
前方からの火線に先頭を行く駆逐艦が串刺しにされ、呆気なく爆散した。
「今の砲撃はなんだ!?」
確認できる限り、敵の大型艦は標準型戦艦2隻しかないが、その割に大型艦の砲撃らしき火線が異常に多い。
「先程高タキオン砲を撃ってきた小型艦と同型の艦から放たれています。‥‥恐らくは、高タキオン砲装備型と通常の大型砲を装備している型に分かれているのでしょう」
「‥‥テロンめ、姑息な真似を!」
小型艦に大型艦の武装を載せる等、非常識極まりない。
しかし、そんな事を思う間にも事態は動く。
ナスカの艦隊はアウトレンジから撃ちまくられ、戦闘可能な艦はあっという間に10隻を割り込んだ。
特に戦艦は旗艦以外戦闘不能、あるいは既に葬り去られていた。
「敵突撃艦(駆逐艦)と中型艦(巡洋艦)、来ます!」
撃ち減らされたナスカ艦隊に、巡洋艦と駆逐艦が急速に距離を詰めてくる。
駆逐艦が回転砲で迎撃するが、敵の中型艦や突撃艦の砲撃は異常なまでに高い貫徹力があり、こちらの艦に次々と火の手が上がる。
「ミサイル多数!向かってきます」
こちらの砲撃で火を噴く艦もあったが、損害をものともせず、中型艦と突撃艦は次々と対艦ミサイルを撃ってきた。
「迎撃!撃ち落と‥‥!」
ナスカが皆まで言い切る前に、旗艦に閃光と凄まじい衝撃が走り、ブリッジクルーは全員が薙ぎ倒された。
── 『テシオ』 ──
「敵旗艦らしき戦艦、炎上!」
「残る敵艦、7!」
メインモニターには、砲撃と空間魚雷で猛火に包まれる敵旗艦らしき戦艦が映っている。
他の艦も、無傷の艦はなく、首脳陣が斃されたか、針路を離れていく艦もある。
既に巡洋艦の射程内に捉えられており、敵の巡洋艦や駆逐艦は火炎に包まれていく。
「攻撃を緩めるな!」
「主砲斉射三連。艦首魚雷全門発射!」
土方の命を受け、猛火に包まれながらも中央突破を図ろうとする敵残存艦に驟雨のごとき砲火とミサイルが浴びせかけられた。
遂に行き脚が止まった旗艦を容赦ない砲雷撃が打つ。
エアロダスター・ナスカは、部下が全て斃れた中、全身から血を流しながらもまだ立っていた。
その眼からは血涙が溢れている
「に、兄さん。仇を討てず、済まな――」
ナスカは皆まで言うことなく、爆炎の中に消えていった――。
「‥‥敵艦隊の撃滅を確認しました」
「全艦の被害状況把握を急げ」
「わかりました。‥‥副長、本艦の被害状況確認を急げ」
「了解しました」
『アンドロメダ』大破で司令部要員の大半が死傷し、『テシオ』艦長の嶋津も司令部の手伝いをする状態だったため、艦務の大半は副長のカルチェンコがみていた。
──20分後、艦隊の被害状況が判明した。
巡洋艦以上の艦の喪失はなかったが、駆逐艦2、護衛艦1が沈没。
同じく駆逐艦3、護衛艦2が次回の戦闘に参加不能と判定された。
そして『テシオ』は損害ゼロであった。
損害状況がまとまった時、『ヤマト』からの報告が入った。
結果として、デスラーとの果たし合いは双方痛み分けに終わった。
瞬間物質移送装置による航空攻撃に続き、デスラー機雷を送り込んで波動砲を封じ、デスラー砲で息の根を止めようとしたセオリー通りの作戦だったが、それを見抜いた『ヤマト』は小ワープによるアボルタージュ(接舷戦闘)を敢行。
『ヤマト』は19名の戦死者を出したが、デスラー艦を事実上占拠した。
古代は負傷が癒えぬまま先頭を切って突入したため傷口が開き、デスラーと対峙の途中で意識を失ってしまったが、そこに走り寄った森 雪が古代を庇いながらデスラーに対峙した。
デスラーは雪を撃つ事なく別の艦に移乗し、ガミラス艦隊は立ち去ったが、その際、『ヤマト』への怨念や憎悪は消えたと言い残したという
土方は損傷が酷い艦をイオ、ガニメデに戻し、入れ替わりに修理が済んだ艦を合流させ、艦隊を『ヤマト』が遊弋する宙域に急がせる。
合流艦の中には工作艦『カムイ』も含まれていた。
『ヤマト』の応急修理とデスラー艦接収のためである。
――一方、白色彗星は速度を落とし、火星軌道に接近していた。
これまでの速度に比べると不可解なまでの鈍足ぶりだが、白色彗星帝国で何が起きていたのか、その時地球側にわかる由はなかった――。