宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

44 / 166
ひとまず決着


リターンマッチ⑥

  ――『テシオ』艦橋――

 

「駆逐艦『バートン』航行不能。艦長戦死!‥‥総員退去します」

「敵巡洋艦1、駆逐艦2撃沈!」

 

「10時の方向から敵駆逐艦接近します!」

「殴り倒せ!主砲1番2番、艦首発射管1番2番――撃て!!」

 

艦橋内に敵情報告と迎撃命令が飛び交う。

僚艦同様、『テシオ』も無傷とはいかなくなったが、戦闘力には影響なく、戦死者も出ていない。

 

双方とも戦艦は全て健在のようだが、巡洋艦や駆逐艦は喪失艦が出ている。

 

 

   ――駆逐艦『ムラクモ』――

 

「敵駆逐艦、突撃してきます!」

「主砲、発射管、落ちついて狙え!ガミラスの連中に比べりゃ屁でもねぇぞ!」

 

艦長・小林淳治少佐の顔に不敵な笑みが浮かぶ。

実際には結構きついのだが、部下を鼓舞するためにはこの程度の腹芸は当然だ。

実際、今の駆逐艦はかつての突撃駆逐艦より格段に強力だ。

主砲で敵駆逐艦と渡り合えるなんて夢のようだし、加居住性もかなり改善されている。

 

「敵艦発砲!」

「慌てるな。十分引きつけて全弾叩っ込め!」

 

何発か直撃があり、艦が揺れる。

 

「照準よし!」

「主砲、発射管5番から8番、撃てっ!」

 

艦に軽い衝撃音が続けざまに走る。

しかし、次の瞬間、凄まじい閃光と爆発が艦橋を襲い、小林たちは全員薙ぎ倒された。

 

 

   ――『テシオ』――

 

「『ムラクモ』被弾!…このままでは敵駆逐艦と衝突します!」

「小林‥‥」

 

観測員の報告に、嶋津は2期後輩の名を呻くように呟き、コンソールの下で拳を強く握った。

『ムラクモ』の艦橋は炎に包まれている。あれでは助かるまい。

小林、この春に双子の娘とセガレが生まれたばかりなのに‥‥。

 

一方、敵の駆逐艦も『ムラクモ』の攻撃で火煙に包まれ、舵がきかなくなったのか、衝突コースを維持したままだ。

 

やがて、両艦とも速度を維持したまま、敵駆逐艦の左舷に『ムラクモ』が衝突。両艦は大火球と化した。

 

「‥‥‥‥」

 

敬礼してやりたいが、今はそんな余裕がない。

『テシオ』ブリッジクルーは目礼で『むらくも』の乗組員を悼んだ。

 

 

  ――旗艦『メガルーダ』――

 

「‥‥‥‥」

 

ゲーニッツの表情に焦りの色が浮かぶ。

 

戦況は押され気味だ。双方の距離が近く、互いに衝突して果てる敵味方の艦もいるほどで、火焔直撃砲のメリットは減殺されてしまった。

敵の中小型艦は何隻か仕留めているが、大型艦には有効なダメージを与えていない。

さらに、敵はこちらの衝撃砲を警戒して巧妙な機動を繰り返し、照準を定めさせない。

テロン側も有効弾が少ないのだが、命中した時の貫徹力はこちらより大きく、被弾一撃で脱落する味方艦が目立つ。

 

「敵将は何を考えているのだ‥‥」

 

敵はこちらの巡洋艦や駆逐艦を仕留めることで、じわじわと出血を強いてきている。

ゲーニッツの頭には、先の戦闘における敵護衛艦の集団砲撃戦が浮かんでいた。

敵護衛艦の艦首軸線砲は、タキオン砲はもとより、通常砲も戦艦の装甲を撃ち抜く凶悪な代物だが、その護衛艦群の大半が姿を消している。

大量に故障するとも思えず、伏兵か予備戦力として待機しているのかも知れない。

 

ゲーニッツがそこまで考えた時、

 

「我が艦隊の真上に敵反応!敵小型艦です!!数50!」

「挟撃とは生意気な真似を。火炎直撃砲発射用意。跳躍させずとも良い!!目標は『ヤマッテ』だ!」

 

ゲーニッツはあくまで正面の敵本隊との決着を選択した。

エネルギー弾を跳躍させなくても火焔直撃砲は使える。

いかな『ヤマッテ』でも、火焔直撃砲の直撃には耐えられまい。

 

 

 

―― 『テシオ』 ――

 

「敵ワープ砲艦が前進してきます!!」

 

敵に動きが生じた。あのワープ砲を直接撃ち込むつもりのようだ。

即座に土方が動く。

 

「全艦最大戦速!全ての火力を敵先頭集団に集中しつつ、ワープ砲発射直前に敵艦隊の下に潜る!」

「了解。副長、最大戦速!戦術長、敵先頭艦に照準!三沢、敵のエネルギー反応に変化あれば伝えろ!」

「はい」

「了解!」

「わかりました!」

 

土方の命令を受け、嶋津もブリッジクルーに指示を出す。

 

――『ヤマト』――

 

「敵旗艦、前進してきます!」

「敵さんの目標は『ヤマト』か‥‥」

「何だかんだで『ヤマト』が一番目立つからな」

 

太田の報告に島と古代が敵将の心中を推し量る。

『ヤマト』は単艦で敵軍の3個艦隊と1基地1部隊を撃滅した。敵軍にすれば憎んでも余りある存在だろう。

 

「太田、敵のエネルギー反応を見逃すな。南部、先頭集団を叩くぞ!」

「了解!」

 

古代が戦闘指示を出す。

敵が『ヤマト』を狙うなら、こちらはそれを利用させてもらう。せいぜい派手に暴れてやろう。

 

「主砲・副砲、照準固定!」

「撃て!」

 

『ヤマト』のみならず、地球艦隊から一斉に放たれた砲撃がガトランティスの先頭集団に矢衾となって射かかり、先頭の駆逐艦を一瞬で消滅させ、すぐ後ろにいた3隻をも撫で斬りにした。敵巡洋艦が爆炎に包まれ、艦列から脱落したかと思うと爆発四散する。

続航している駆逐艦も爆散。さらに後方の戦艦『ゼーラム』も回避できず、艦橋を含む前半部が爆発し、艦体が両断されたのだが、その後半部が後方の『メガルーダ』の正面に出てしまった。

 

「『ゼーラム』後半部が本艦との衝突コース上にあります!」

「構わぬ。排除せよ!」

「はっ」

 

ここで回避すれば火焔直撃砲の発射が遅れてしまう。

ゲーニッツの判断はもっともだった。

『メガルーダ』主艦体前甲板にある5連装主砲が火を吹き、過たず命中した『ゼーラム』のなれの果ては爆散したのだが、『メガルーダ』の巨体は激しく揺さぶられた。

果たせるかな。

 

『砲撃跳躍装置、使用不能!』

『感知儀(センサー)、一部破損!』

「跳躍装置は捨て置け!感知儀の回復を急げ!」

 

『ゼーラム』の爆炎は予想以上に広く、まともに突っ込んだ『メガルーダ』は艦首部を損傷。

火焔直撃砲の跳躍装置とセンサーが使えなくなった。

一方、その様を見ていた土方も黙っているはずがなかった。

 

「全艦艦首下げ30!第5戦隊突撃せよ!」

「艦首下げ30!砲撃を緩めるな!」

 

―― 第5戦隊旗艦『タコマ』 ――

 

土方の突撃命令を聞いた司令官兼艦長のジェフリー・バレット大佐は、伊達パイプをくわえた口許を半月形に歪めた。

 

「突撃!行くぞ、ヘルダイバーども!!」

 

バレットの命令一下、嚮導巡洋艦『タコマ』を先頭にした突撃駆逐艦16隻は、急坂を恐れぬ荒馬の如く、真下のガトランティス艦隊に『急降下』していった。

彼らの艦は一様に艦首に鮫の口を描いているのでよく目立つ。

 

同航していた護衛艦も『急降下』しながら艦首砲を放ち始める。

 

「あのデカブツを目指せ。“アレ”なら命中しなくとも十分だからな!」

 

第5戦隊の駆逐艦には、1艦に2本ずつ、新開発の大型魚雷が搭載されている。

量産開始から間もなくガトランティスが攻め込んできたため、必要な設備を組み込んだ一部の巡洋艦と駆逐艦に搭載されただけで、まだ敵艦に向けて放たれた事はない。

しかし、威力が実証されれば、この魚雷には波動砲と同等以上の戦略価値があり、戦艦に凝り固まった大砲屋の目を覚まさせられるのだ。

まあ、それはガトランティスを追い返してからの話だが。

 

ガトランティスの迎撃砲火で、こちらにも爆沈したり落伍する艦が相当出てきたが、敵も無傷ではない。

下に潜り込んだ本隊からの砲撃と護衛艦の大口径砲撃で、敵艦隊は前後に分断されつつあった。

 

また被弾したのだろう、艦が揺さぶられる。

 

「第3主砲持っていかれました!第54から58区画を閉鎖!」

「もうちょい頑張れ。分厚いNYステーキが待ってるぞ!」

 

実際のところ『タコマ』の被害は、軽傷とは言えない状態なのだが、それをおくびに出すわけにはいかない。

第一、降伏=破滅では、自ずと選択肢は限られてくるのだが。

 

「何隻ついてきてる!?」

「10隻です!!」

「上出来だ!全発射管開け、カウントダウン10スタート!」

 

――直後、『タコマ』には夥しい光の矢が放たれた。

 

―― 『メガルーダ』 ――

 

「直上の敵艦隊旗艦らしき中型艦撃破!」

「小型艦10、なおも高速で接近!その後ろからも小型艦20が砲撃しながら接近中!」

 

幕僚の報告を聞いたゲーニッツは歯噛みしながら命令する。

 

「全速前進を続けろ!直上のテロンは後方の部隊に始末させ、我々は敵本隊を追う!」

 

こうなってしまった以上、直上の小型艦は分断された後詰めをぶつけて食い止め、我々は敵本隊の後方から火焔直撃砲を撃ち込んでやる。

だが、旗艦を失った敵小型艦の飛び道具は実に凶悪だった。

 

旗艦『タコマ』と指揮官を失った第5戦隊だが、駆逐艦『アーレイ・バークⅦ』のプルマン大佐が指揮を引き継いで射点に到達した。

 

「ファイア!! 撃った艦は各自で離脱!予定の座標でランデブーだ!」

 

10隻から放たれた大型ステルス魚雷は38本だが、うち16本が新型の『波動弾頭』を取り付けていた。

いうまでもなく、『ヤマト』波動砲の1%分に相当する波動エネルギーが充填され、命中または至近距離で炸裂するよう調整されていた。

果たせるかな、ガトランティス艦隊の過半は波動エネルギーの閃光に包まれ消えた。

 

 

 

―― 『テシオ』 ――

 

「戦果確認を急げ!」

「敵艦隊はほぼ消滅。例のワープ砲艦は行き足が止まり炎上中。残存艦は巡洋艦1、駆逐艦3!‥‥突撃してきます!」

 

土方はスクリーンに映る、突撃してくる敵残存艦を見詰める。

後ろには旗艦らしきワープ砲艦が全艦火達磨になっていた。あれでは誰も助かるまい。

 

「砲撃!目標、敵残存艦!!‥‥長く苦しめるな。一撃で沈めろ!!」

「了解。戦術長、撃ち方始め!!」

「発射!!」

 

土方の檄に嶋津と篠田、そして各艦が応じ、ほぼ一斉に無数の光の矢が4隻の残存艦に突き刺さった。

 

―――――――――――――――――――

 

「‥‥4隻の轟沈を確認。敵旗艦も爆沈。敵艦隊は全て沈みました」

 

嶋津の報告に土方は頷くと、立ち上がって次の命令を下す。

 

「戦闘可能な艦は集結。地球圏に急行し、敵・ガトランティス帝国首都星要塞を叩く!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。