宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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攻防戦開始

――ガトランティス帝国首都要塞航行コントロールセンター――

 

「右方向にジャンプアウト反応、多数!」

「テロン艦隊か!?」

 

観測員の報告に、指揮官席のサーベラーが問い返す。

 

「はっ、テロン艦隊です!」

「ダガームとミルに戦闘を始めさせい!」

 

ダガーム率いる艦隊はワープアウトした地球艦隊と都市要塞の間に陣取っている。

生理的に好かない男だが、もはやこの首都に艦隊戦をこなせる者がいない。

 

また、ミル率いる10隻の潜宙艦も近くの宙域に潜伏している。

たとえダガームとミルが敗れても、その時には地球艦隊の数も減っており、この都市要塞単独でも撃滅できよう。

そしてテロンを屈服させれば、大帝からの信頼も回復し、現在の丞相職はおろか、現在空席になっている帝国宰相の地位も夢ではない。

 

サーベラーは思わず唇の端を上げたが、次の瞬間、観測員が叫ぶ。

 

「潜宙艦隊が発見されました!」

「!?」

 

メインスクリーンが拡大投影される。

そこには、地球艦が発射した閃光弾によって潜伏が暴露され、砲撃で炎に包まれる潜宙艦が映っていた。

 

「何をやっておるのか!!」

 

サーベラーの目論見は、早々に綻びを見せた。

 

 

――潜宙艦隊旗艦――

 

「先手を取られたか!? やむを得ん、雷撃後一旦離脱しろ!!」

 

予想外の事態に、ミルは反撃を地球艦隊がラーゼラー艦隊と戦闘を始めたら呼応して雷撃戦を行うつもりだったが、1隻の中型艦が突然閃光弾を発射。次いで周囲の中小型艦も閃光弾を打ち上げたため、こちらの位置がすっかり露見してしまった。

 

テロンの監視能力を侮っていたか――。

潜宙艦は隠密性が最大の武器。一旦発見されると対空火器でも致命傷だ。

ミルは臍を噛みつつ、雷撃後、一旦この場を離脱する事を決断。

反撃のため放たれた空間魚雷は数発が命中し、小型艦1隻を撃沈、もう1隻を炎上させた。

しかし、テロン艦隊からの反撃は熾烈だった。

中・小型艦から激しい砲撃や対空砲火を浴びせかけられ、半数以上の潜宙艦は離脱叶わず爆発四散した。

 

「ミル司令、残るのは本艦を含めて5隻です!」

「く‥‥!離脱を急げ。ラーゼラー艦隊に合流する!」

 

ミルの旗艦を含む3隻は、推進機関を強化した改良型で、加速力と機動力が改善されているが、元々小型の潜宙艦ではたかが知れている。

果たせるかな、追従してくる2隻に敵中型艦からの砲火が命中。

そして――。

 

「ぐああぁっ!!」

 

激しい衝撃に見舞われたミル達は床に叩き付けられて意識を失い、彼らの旗艦は煙の尾を引きながら戦闘宙域から離れていった。

 

 

――『テロン』――

 

「敵潜宙艦9隻撃沈、残る1隻は逃走しました!

我が方の被害は、駆逐艦「ベツレヘム」沈没、護衛艦「ベチュニア」中破です」

「ん」

 

土方は黙って頷く。

敵潜宙艦を発見したのは、星の光の不自然な反射に気づいたパトロール艦『ツツイラ』のクルーだという報告が入っている。

レーダー・センサーがものを言う宇宙時代でも、人の力は大したものだ。

 

「敵艦隊接近!距離3万!!戦艦12・巡洋艦25・駆逐艦80以上!相対速力50!!3分で戦艦の有効射程に入りますっ!」

 

敵接近の報告に、土方は即座に下令する。

 

「全艦合戦用意!先頭集団に火線を集中せよ!」

「了解。主砲は敵先頭集団に照準、全発射管スタンバイ!派手に暴れるぞ!!」

「ハイッ!」

 

立ち上がった嶋津が檄を飛ばし、クルーが応じた。

戦艦と巡洋艦は主砲を敵先頭集団に向け、発射管を開いた。

 

やがて――。

 

「有効射程に入りました!」

「全艦、主砲撃ち方始め!」

「撃て!!」

 

戦艦・巡洋艦から光の矢が伸び、駆逐艦からは空間魚雷が放たれた。

 

――ガトランティス艦隊旗艦『ガラーゼ』――

 

「先頭集団、潰滅しました!」

「うろたえるな!戦艦群は前進!敵に衝撃波砲を浴びせかけろ!」

 

テロン艦隊からの長距離砲撃で、先頭を行く巡洋艦と駆逐艦数隻が文字通り粉砕された。

 

艦隊を預かるダガームは動揺する幕僚を一喝し、前面に強力なシールドを形成できる戦艦を前面に押し立て、衝撃波砲でテロン艦隊との砲撃戦を挑む事にした。

 

(小娘が。出撃命令が遅いのだ!)

 

権勢欲が強いあの女狐は、この局面も己の勢力拡大に利用する。

ゲーニッツが斃れた時も内心では小躍りしていただろう。

あのデスラーが愛想を尽かしたのも理解できる。

 

――自分の役割は、テロン艦隊を消耗させながら首都要塞に誘導し、サーベラーに殲滅させることだ。

そうすれば彼女の機嫌も良くなろうし、何より大帝もきちんと自分の働きを見ていて下さる。

あの女に手を貸すのは不本意極まりないが。

 

それにしても、組織の中間に立つのは辛いものだ。

今相対している地球艦隊の司令官や艦長もそうなのだろうか。

一戦士として戦っていた頃が思い出される。

 

 

  ――『ヤマト』――

 

「敵戦艦が出てきます!」

「面舵5度。20秒後に取り舵11、上げ舵6」

「了解。面舵5!」

「おもーかーじ、5!」

 

敵戦艦の衝撃波砲は要警戒だが、砲身が艦橋楼に固定されているため、照準範囲が非常に狭い。

それに付け込んだ地球艦隊は不規則な艦隊機動を始めた。

良く言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりばったりな艦隊機動だ。

 

 

「何たる無様な艦隊機動だ!」

 

ダガームは思わず毒づいた。

明らかに故意にやっているのがわかるだけに、ガトランティス艦隊は苛立ちを深めていたが、突然、敵護衛艦が艦首砲を2連射。右翼の巡洋艦が血祭りに挙げられた。

 

「おのれ!」

 

いきり立つ白色彗星艦隊だが、地球艦隊は鋭峰をかわすかのように、再びいい加減な艦隊機動に戻る。

 

一見何の脈絡もない地球艦隊の艦隊機動だが、無論目的があった。

それが明らかになるのはもう少し先。

 




他人の意見に耳を閉ざす者が、自分の意見を唱えてもねえ‥‥。

次話は明日夜出します。
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