「突撃せよ」
土方が発した命令は簡潔だった。
――護衛艦『アマリリス』『ドリアン』『ヨモギ』から放たれた集束波動砲は、ガトランティス首都星要塞の下半球に数百メートルの穴を穿つ事に成功したが、同時に、武装揚陸艇とコスモタイガーが次々とその破口めがけて突撃していく。
「巡洋艦と護衛艦は突入部隊を直接支援。戦艦は支援砲撃を続けろ」
突入支援指示を下した土方は一拍置いて、次の命令を下す。
「嶋津、(テシオを)前進させろ」
「了解。副長、第2戦速で前進だ」
『テシオ』と、随伴する巡洋艦『チョウカイ』『ヘネラル・ペロン』は第2戦速で前進した。
――先程の波動砲で破壊を免れた砲座も伝導系にトラブルが生じたのか、砲撃の密度がかなり減っていた。
ガトランティス軍の迎撃戦闘機が、大破口からわらわらと飛び出してくる。
たちまちコスモタイガーとの間にドッグファイトが始まった。
破口からは戦闘機に加えてカブトガニ形攻撃機も発進してきた。
爆装はしておらず、揚陸艇迎撃のために出てきたようだ。
ドッグファイトはコスモタイガー側が押しているようだ。
どうやら、白色彗星帝国軍は手強い敵戦闘機とやり合った経験は浅そうだ。
とはいえ、ここは敵の間合いだ。敵迎撃機は次々と出てくる。
「戦闘機隊に通達。『深追いせず、半包囲して艦砲の射程内に押し込め』とな」
土方は艦砲による敵機迎撃を指示した。
ガミラスとの戦争は戦闘機パイロットにも多大な犠牲を強いたため、今回が初めての実戦という者も少なくない。
経験が浅いパイロットは複数行動を徹底させ、撃墜を焦ることなく、艦砲の射程内に敵機を誘い込めば、後は艦が片付けるということだ。
「敵攻撃機2、こちらに向かってきます!」
カブトガニ形攻撃機が、ヒヨッコの駆るコスモタイガーに追われてこちらに接近してくる。
よし、上出来だ。
「対空、撃ち方始め!」
各艦からの対空砲火がたちまち敵攻撃機を撃ち砕いた。
――首都防衛司令部――
その瞬間、轟音と突き上げられるような衝撃に、サーベラー以下の要員は皆床に投げ出されたり、壁に叩きつけられた。
「今のは何じゃ!?」
薙ぎ倒されたのは人間だけではなく、什器・備品の多くも無残な姿になっていた。
「ハドウホウです!敵護衛艦の小口径ハドウホウが偽装地殼を破って破口を生じさせたのです」
額を押さえて立ち上がった幕僚が現状を報告した。
「敵艦隊から小型艇多数!破口に向かっています‥‥あれは、揚陸艇です!!」
「何じゃと!?」
この首都要塞に上陸するつもりなのか!?
「砲火を浴びせ続けよ!蟲けら共の上陸を許してはならん!」
サーベラーは引き続き砲撃を命じたが、それは幕僚によって否定される。
「閣下、下部砲座の大半が使用不能になりました!」
「何故じゃ!?」
「先程のハドウホウによる破壊で下部砲座へのエネルギー伝導系が破損しました。修理は可能ですが、敵の攻撃を止めない事には着手できません」
敵からの攻撃下での修理等は危険極まりない。
「出せる迎撃機は全て出せい!羽蟲どもを叩き落とすのじゃ!。軍港内の艦船も出せ!」
サーベラーは、要塞内に留まっている戦闘艦にも出撃を命じたが、これには幕僚達が異を唱えた。
「閣下。あそこの艦は竣工前後のもので、調整も訓練も不十分です。このような混乱下に出せる状態ではありません!!
それに、外には敵艦が迫っています。むざむざ餌食になりに行かせるようなものですぞ!」
「くっ‥‥!」
歯噛みするサーベラーに年長の幕僚が進言する。
「閣下、臣民達に動揺が広がります。首都全域に戒厳令をご発令下さい」
「戒厳令!?‥‥バカな事を!」
この首都星は外敵の直接攻撃を受けた事がなく、難攻不落と信じられていたため、このような事態には全く慣れていない。
ましてや、戒厳令を出す事自体が不名誉極まりない事だ。
「臣民が混乱すればテロンにつけ込まれます!子女だけでも帰宅させるべきです!!」
幕僚はサーベラーを説得にかかったが、事態はどんどん悪い方に傾く。
「敵戦闘機と揚陸艇多数、内部に侵入します!」
「!!」
難攻不落の首都に外敵の侵入を許した。
その事実に司令部が一瞬静まり返る。
「‥‥‥‥」
「閣下、総員迎撃をお命じ下さい!敵の目標は恐らく動力炉です!!」
「おのれ‥‥蟲の分際で嘗めた真似を!‥‥総員迎撃!! 奴らを一人たりとも生かして還すな!」
屈辱と憤怒に満ちた表情でサーベラーは迎撃命令を出す。
首都要塞攻防戦は、今、最大の分岐点にさしかかった――。