――時空管理局本局、次元航行本部――
「他の艦の所在確認を急げ!」
「ブン屋どもは待たせとけばいい!」
騒然とした管制室に高級士官服をまとった女性が入ってくる。
彼女はしばらく周囲を見渡したが、ほどなく歩き出した。
「レティ!」
「リンディ」
人事統括官のレティ・ロウランは、背後からの親友の声に振り返る。
総務統括官,リンディ・ハラオウンは、公休で第97管理外世界の自宅にいたところを、急報を受けて出てきたのだ。
「概要は聞いたわ。変化はないの?」
「ないわ。『超高エネルギー反応を感知』という連絡と、光が急速に近づいてくる映像が途中で途切れて‥‥それ以後は砂の嵐よ」
首を横に振るレティ。
「ここじゃスタッフの邪魔ね、(私の)オフィスで話すわ」
レティは自らの執務室にリンディを誘った。
――改L級航行艦『エルム』から急報と共に映像データが入ったのは3時間前。
通常空間で探査行動中、強いエネルギー反応を感じたため、全速力で移動したところ、2つの艦隊による戦闘によるものと判明した。
しかも、『エルム』の前方にいる艦隊のエネルギー反応が、先日第144・145管理外世界で確認された武装勢力――仮称敵勢力A(ガトランティス)――と一致した。
一方、向こう側の艦隊はデータベースにない勢力だったが、エネルギー反応強度は管理局を大きく凌ぎ、敵勢力仮称Aや要確認勢力仮称B(ヤマト)に拮抗していた。
更にこの艦隊には、小型要塞級大の物体も含まれていたが、その物体からも超高エネルギー砲が約3分間隔で2発放たれた。
その一瞬後、『エルム』からの通信が途絶えたのだ。
「‥‥一番近い僚艦は?」
「『クラウディア』ね。既に急行中よ」
「!‥‥そう」
一瞬、リンディの表情が曇った。
息子と娘が乗っているのだから無理もない反応だ。
「クロノ君なら大丈夫よ」
魔法文化がない世界での活動経験が多く、管理外世界に妻子を住まわせ、現地住民とも交流しているクロノは、管理局の一部に蔓延る『管理世界こそ最高』という慢心とは無縁だった。
だからこそ、テレザートでガトランティス艦隊と謎の宇宙戦艦『ヤマト』との戦闘に巻き込まれた『クラウディア』は傷つきながらも帰還できたのだ。
「それで、乗組員の家族へは?」
「手分けして進めてるわ。3時間後にはプレスリリースするから、それまでには済ませるつもりよ」
連絡をとって本局に来てもらい、経過と今後の方針を説明する。
やることは山積している。いつになるかわからないが捜索と救出、そして武装勢力の分析。
何分にも管理局のデータベースにはない勢力なので、無限書庫を当てにするしかないのだが――。
「こういう先行きが見えない時に、ユーノ君がいないのは、正直痛いわね」
「そうね‥‥」
無限書庫司書長であるユーノ・スクライアは、およそ10年近い激務が祟ったか、半月前に入院を余儀なくされ、レティは半年間の休職を命じたばかりだ。
しかも、ユーノに自主出勤させないために、無限書庫のメインキーの情報を上書きさせる徹底ぶりだ。
「痛いけど仕方ないわ。私たちは軍人じゃない。命や健康より大事な仕事なんてないんだから‥‥」
そう言いつつ、ガトランティスみたいな連中と戦うのならば、軍人並の覚悟が求めざるを得ないのかと、彼女たちは苦悩することになる――。