宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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都市帝国攻防戦⑥

 

    ――ガトランティス首都要塞――

 

「くそおぉぉっ‥‥!」

「――――!!」

 

動力炉爆破のため1人残った斉藤を残し、断腸の思いのまま、古代と真田は飛行場に向かって走り続ける。

 

時折現れる敵兵は殆ど反射的に射殺した。斃した兵士には女性や年端のいかない者もいたようだが、振り返らずに駆け抜ける。

 

――帰り道は、正しく血の道。あちらこちらに敵味方が倒れ、息絶えている。

 

あのミハロビッチも、敵兵の中でも一番屈強そうな将校と折り重なるように倒れていた。

血溜まりの量から見て、2人とも絶命しているのは一目瞭然だ。

 

“パパパッ!”

「ぎゃ!」

 

 

また物陰から1人、ライフルを手にしながら飛び出してきたが、発砲する前に眉間を穿たれる。

一瞬で骸と化したその兵士が床に倒れる前に、古代と真田は走り抜けていった。

 

飛行場もまた血と骸の溜まり場と化していた。

敵の守備兵もコスモタイガーパイロットも殆どが物言えぬ状態と化している。

機体も大半は再び飛び立てる状態ではない。

この際敵の機体でも仕方ないかと思った瞬間。

 

「古代!真田さん!こっちだ!!」

 

近くで聞き覚えがある声が響いた。

 

「加藤!?」

「古代!あそこだ!」

 

真田が指差した先に、比較的損傷が軽い三座型コスモタイガーがあり、後部銃手席に加藤三郎が座って敵兵に応射していた。

 

「待ってろ、加藤!」

 

2人は銃撃を掻い潜ってその機体に駆け寄り、操縦席に古代、ナビ席に真田が滑り込む。

 

「――ぐっ!」

 

ナビ席から真田の苦痛の呻きが聞こえる。

 

「真田さん!?」

「肩をかすっただけだ!急げ、古代!!」

「はい!」

 

既に機体を起動した古代は、エンジンをオーバーブーストにして離陸滑走を始めた。

 

3人を乗せたコスモタイガーが離陸した直後、ズシンと機体が震え、内部の照明が次々と落ち始めた。

 

「‥‥斉藤‥‥」

「‥‥‥‥」

 

この現象が何を意味しているのか、彼らには痛い程理解できた。

古代は唇を噛み、先程飛び込んだ大破口に機首を向けた――。

 

 

      ――首都要塞外側――

 

首都要塞の大規模停電はすぐさま地球艦隊もキャッチした。

 

       ――『テシオ』――

 

「都市要塞のエネルギー反応が突然急減消失しました!」

「『ヤマト』加藤隊長機より入電! ‥‥『敵都市要塞主動力炉ノ破壊ニ成功セリ。生存者は古代・加藤・真田、計3名』です‥‥」

「――そうか」

「‥‥‥‥」

 

突入隊に所属していた古代達は任務に成功し、脱出してきたが、突入隊は全滅だ。

土方は厳然たる態度のまま頷き、嶋津らブリッジクルーも一瞬瞑目した。

 

しかし、直ぐ様土方は立ち上がる。

還らなかった突入隊員達を悼むには、生きて勝利しなければならないのだ。

 

「全艦砲撃用意!目標、敵都市要塞上部!」

「艦首上げ20!照明弾上げ!!」

 

土方の命令を受け、嶋津も砲撃準備の指示を出す。

 

要塞はちょうど夜の位置にあるため、照明弾を使う必要があるのだ。

各艦から撃ち上げられた照明弾が、暗夜と化した都市要塞を照らし出す。

 

「戦術長、都市の下層部は撃つなよ。一般住民がいるかも知れないからな」

「了解」

 

 

都市要塞には円錐形にビルが建ち並んでいる。

一般的に見て、高層部は政府や軍関係の建物で、住宅は中層以下にあると見て良かろう。

 

敵国首都での戦闘だ。君主や政府高官、軍人らが死ぬのはやむを得ないだろうが、一般住民が犠牲になるのは忍びない。助けられるのなら助けたい。

 

土方が砲撃指示を出す。

 

「5分間砲撃を行った後、ガトランティス帝国元首に向けて、即時戦闘停止と太陽系からの無条件かつ永久退去を要求する」

「了解しました。‥‥全砲門、発射管開け!目標、敵都市要塞最上部!きっかり5分間は徹底的に叩く!!

‥‥我々の目的は、ガトランティス帝国の侵略行為を止める事だ。敵だからと皆殺しにしたら、あそこに巣食うクソ共と同じレベルに堕ちるぞ!」

 

土方に続き、嶋津も制限付きの攻撃準備を命じた。

 

‥‥これらの命令は、敵国首都の一般住民を気遣っての事だったが、その配慮は無に帰する事になる――。

 

「照準完了!」

「撃ち方始め!」

「撃て!」

 

『テシオ』を皮切りに、『ヤマト』等戦闘可能な艦艇は都市要塞上層部への砲撃及びミサイル攻撃を開始した。

最も高い位置にあるタワー状の建造物があっという間に崩壊し、残骸が宇宙空間に漂い出す。

周囲の高層ビルも短時間で瓦礫と化して崩壊していく。

 

「2分経過!」

 

観測士が時間経過を告げる。

 

「敵からの返答はないか?」

「ありません!」

 

土方は彗星帝国側からの通信の有無を質すが、パク通信長は未だ何のリアクションもないことを告げる。

 

「残り3分、砲撃を緩めるな!」

「はい!」

 

苦い薬を飲まされたような表情の嶋津は砲撃続行を命じたが、次の瞬間、目を疑った。

 

都市要塞の一角から火柱と爆煙が立ち上った。

 

「!!?」

「あそこには着弾していないぞ!」

(弾薬庫の爆発か?‥‥いや、違う!あれは統制された爆破だ!!)

 

目を疑った嶋津だが、背中にゾクリと冷たいものが走る感覚に襲われ、後ろの土方を振り返った。

 

「司令!敵の親玉は、首都を切り捨ててでも戦うつもりです!!」

「ん!」

 

土方もその意を理解した。

 

「全艦攻撃中止!攻撃態勢のまま待機!!」

 

土方の命令を受け、攻撃を中断した地球艦隊の前で、敵都市要塞の上回りは爆発に包まれていく。

そして、その爆炎の中から、禍々しい黒い影が姿を現し始めた――。

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