――ガトランティス帝国・大帝政務室――
“ドズズ‥‥ン!”
足元から突き上げるような衝撃が伝わった。
侍従らはよろめき、何事かと状況報告に走る者と、大帝警護のため留まる者に分かれる。
「大帝!主動力炉が爆破されました」
侍従の一人が足早に来て報告する。
うむと頷いたズォーダーだが、被害の程度は衝撃の大きさから予想はついていた。
(主動力炉は致命的なダメージを受けたであろうな‥‥)
「直ちに『ガトランティス』を起動させよ!」
ズォーダーはやおら立ち上がり、矢継ぎ早に指示を下す。
「女どもの避難状況はどうなっておるか?」
地球軍が突入してきた時点で、ズォーダーは貴族・平民を問わず、首都に住まう徴兵対象外の女性と子供を避難させるよう指示していた。
「はっ、およそ6割ですが‥‥貴族子女の避難を優先させたため、平民子女の避難は2割強であります」
「‥‥そうか。避難誘導は即刻中止!『ガトランティス』急速発進!これは勅命である!!」
ズォーダーは拳を強く握り締めると、避難誘導の中止と『ガトランティス』の発進命令を出した。
しかし、そのためにはこの首都星要塞の上半分を破壊しなければならず、今首都にいる者は皆宇宙空間に放り出されて死ぬ事になる。
しかし、今『ガトランティス』を出さなければ、テロン軍に立ち直られ、あのハドウホウの一斉砲撃を浴びてしまうだろう。
しかし、帝国と首都住民の命、どちらを優先すべきかは決まっている。
ズォーダーは今首都にいる住民と兵士の大半を切り捨てた。
(――我が民よ、赦せ‥‥)
ズォーダーは切り捨てる者達に謝罪しながら、自ら爆破スイッチを入れた。
――同・軍港――
「発進しなさい!」
専用座乗艦(偵察駆逐艦)『ガダー・ラ』艦橋の指揮官席に座ったサーベラーは急速発進を命じた。
「閣下。開放できたのは第4ゲートのみです。テロン艦隊の直前に出ることになりますので、お覚悟を」
「戦艦と巡洋艦を前面に押し立てて突破せい!」
サーベラーは強行突破を命じる。
この『ガダー・ラ』は、制式駆逐艦の武装を一部オミットして強化形の機関とスラスターを搭載した超高加速艦。
加速の鋭さで対抗できる敵艦はなく、先遣として侵攻する星系に侵入し、そこの文明レベルが低い場合はそのまま尖兵と化すため、反ガトランティス勢力からは蛇蠍の如く嫌われている艦だ。
とは言え、テロン艦の砲撃は強力で、大戦艦ですら、格下のはずのテロン中型艦(巡洋艦)の砲撃で装甲を貫通される有り様だ。
その『ガダー・ラ』がバースを離れていく。
続いて戦艦や駆逐艦等もバースを離れたが、その頭上で爆発が発生。繋留中の艦艇は次々と誘爆していった。
――『テシオ』――
突然続け様に発生した爆発に、地球艦隊は敵首都要塞への艦砲射撃を中止して警戒態勢に入っていた。
「正面、ゲートが開きます!」
観測士の報告に、爆発に気を取られていたクルーは注意を前方に集中する。
「全艦、あのゲートに照準を合わせろ!」
脱出する艦艇があると看破した土方は、ゲートに対し照準を固めさせる。
あの禍々しい黒い影に本能的な危険を感じるものの、可能な限り危険要素は排除するに限る。
「砲雷撃用意!出てくるのが戦闘艦なら即刻撃沈!
非武装船には停船を命じ、応じなければ撃沈せよ!」
「はっ!」
有無を言わさぬ口調で厳命した。
土方の指示を受けた嶋津は前方に向き直る。
「主砲・発射管、ゲートに照準合わせ!周辺監視も怠るなよ!!」
「ゲート奥に反応!!敵大型戦艦ですっ!」
「撃て!!」
『テシオ』の発砲に続き、『ヤマト』以下の各艦もゲートに向けて火線を放つ。
ゲート内まで飛び込んできた光の矢衾に、脱出の先陣を切った大型戦艦は装甲を破られて爆発擱挫してしまった。それもゲートを塞ぐ形で。
そこに続航してきた艦が衝突して爆発が発生。正面ゲートは使用不能になったが、サーベラーは冷然としていた。
「丞相閣下、まもなく専用ゲートが開きます。テロン艦との遭遇戦もあり得ますので、ご着席下さい」
「わかった」
サーベラー座乗艦『ガダーラ』と4隻の駆逐艦は、潜空艦等の特殊艦が出入りする別の小規模ゲートからの脱出を企図していた。
大型艦が出入りするメインゲートを避け、攻撃を受けるリスクを減らそうというわけだ。
だが――。