宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

68 / 166
帰還

工作艦に横付けして応急修理を受けた『テシオ』が三浦半島の新横須賀基地に帰還したのは、敵巨大戦艦の沈没から38時間後だった。

 

当面の指揮を戦艦『アーカンソー』のモリソン少将に引き継ぎ、土方も『テシオ』と共に帰還した。

 

陸地には多くの市民が詰めかけている。

声こそ聞こえないが、スクリーンに映る市民は皆明るい表情をしている。

そしてクルーも漸く表情を緩めていた。

 

しかし、土方や嶋津冴子を始めとするブリッジクルーは厳しい表情のままだ。

 

市民のあの笑顔を守ることができただけでも、生還した価値はあるが、我々は勝ったわけではない。

 

地球防衛艦隊は参加艦艇のおよそ8割、航空機の7割と数多の人材を失った。

 

負けはしなかったが、勝利とは口が裂けても言えない。

 

『ヤマト』が命令違反を犯してまでテレザートに赴き、ガトランティス帝国の情報を仕入れてもなお、これだけの被害を出してしまった。

もし何もしないでいたら、地球人類は絶滅か奴隷化されていたはずだ。

 

我々は、何が誤っていたのかを真剣に省みて改善しないと、次はもうないかも知れない――。

 

中小型艦船バースに降下接舷した『テシオ』から最初に下艦したのは戦死者の遺体。

嶋津は身じろぎひとつせず、敬礼で見送る。

ついで一般乗組員が下艦し、嶋津ら幹部乗組員は艦を基地側に引き渡してからなので、一番最後だ。

 

フェンスの先に家族や恋人、友人を見つけて再会を喜ぶ者がいる。

地球防衛艦隊は一連の戦闘で8割の戦力を失った。

遺体すら還らない者が大部分なのだから、生還ともなれば喜びもひとしおだろう。

しかし、悲しみの表情で動かない者の方が多かった――。

 

『テシオ』のメインスクリーンに映るのは『ヤマト』の古代と退艦を拒んで古代と共に『ヤマト』に留まった森 雪だ。

 

嶋津は『ヤマト』もろとも特攻しようとした古代に腹を立てていたが、当の古代の右頬が紅葉腫れしていたのを見て毒気を抜かれた。

 

「バカ野郎が!イスカンダル行きで沖田さんから何を学んだんだ!?」

「申し訳ありません‥‥」

「そこまでだ。嶋津、古代」

 

嶋津に叱り飛ばされた古代が頭を下げたが、それまで無言だった土方が2人を制するように口を開いた。

 

「‥‥古代、森、2人に確認したいことがある」

「‥‥はいっ!」

「はい!」

 

緊張する2人に土方は尋ねる。

 

「テレサが最期に言った『愛する者』とは、『ヤマト』乗組員の誰かか?」

「‥‥‥!」

 

土方の言葉に、古代と雪はハッとして顔を上げた。

 

「説明はどうした、古代!?」

 

有無を言わさぬ口調は訓練学校校長時代と何ら変わらない。

 

「今の時点で知っている事を説明します」

 

 

古代は島とテレサの事を雪と共に語った――。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。