工作艦に横付けして応急修理を受けた『テシオ』が三浦半島の新横須賀基地に帰還したのは、敵巨大戦艦の沈没から38時間後だった。
当面の指揮を戦艦『アーカンソー』のモリソン少将に引き継ぎ、土方も『テシオ』と共に帰還した。
陸地には多くの市民が詰めかけている。
声こそ聞こえないが、スクリーンに映る市民は皆明るい表情をしている。
そしてクルーも漸く表情を緩めていた。
しかし、土方や嶋津冴子を始めとするブリッジクルーは厳しい表情のままだ。
市民のあの笑顔を守ることができただけでも、生還した価値はあるが、我々は勝ったわけではない。
地球防衛艦隊は参加艦艇のおよそ8割、航空機の7割と数多の人材を失った。
負けはしなかったが、勝利とは口が裂けても言えない。
『ヤマト』が命令違反を犯してまでテレザートに赴き、ガトランティス帝国の情報を仕入れてもなお、これだけの被害を出してしまった。
もし何もしないでいたら、地球人類は絶滅か奴隷化されていたはずだ。
我々は、何が誤っていたのかを真剣に省みて改善しないと、次はもうないかも知れない――。
中小型艦船バースに降下接舷した『テシオ』から最初に下艦したのは戦死者の遺体。
嶋津は身じろぎひとつせず、敬礼で見送る。
ついで一般乗組員が下艦し、嶋津ら幹部乗組員は艦を基地側に引き渡してからなので、一番最後だ。
フェンスの先に家族や恋人、友人を見つけて再会を喜ぶ者がいる。
地球防衛艦隊は一連の戦闘で8割の戦力を失った。
遺体すら還らない者が大部分なのだから、生還ともなれば喜びもひとしおだろう。
しかし、悲しみの表情で動かない者の方が多かった――。
『テシオ』のメインスクリーンに映るのは『ヤマト』の古代と退艦を拒んで古代と共に『ヤマト』に留まった森 雪だ。
嶋津は『ヤマト』もろとも特攻しようとした古代に腹を立てていたが、当の古代の右頬が紅葉腫れしていたのを見て毒気を抜かれた。
「バカ野郎が!イスカンダル行きで沖田さんから何を学んだんだ!?」
「申し訳ありません‥‥」
「そこまでだ。嶋津、古代」
嶋津に叱り飛ばされた古代が頭を下げたが、それまで無言だった土方が2人を制するように口を開いた。
「‥‥古代、森、2人に確認したいことがある」
「‥‥はいっ!」
「はい!」
緊張する2人に土方は尋ねる。
「テレサが最期に言った『愛する者』とは、『ヤマト』乗組員の誰かか?」
「‥‥‥!」
土方の言葉に、古代と雪はハッとして顔を上げた。
「説明はどうした、古代!?」
有無を言わさぬ口調は訓練学校校長時代と何ら変わらない。
「今の時点で知っている事を説明します」
古代は島とテレサの事を雪と共に語った――。