――次元航行艦『クラウディア』――
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
メインモニターに映し出された映像に、クロノ・ハラオウン、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、シャリオ・フィニーノ、ティアナ・ランスターが見入っていた。
クロノ達の目の前のテーブルには、数枚の金属片が並べられている。
そしてもう1人、管理局本局の技官・マリエル・アテンザも厳しい表情でこの場にいた。
「これ程の超合金は見たことがありません。そして、これほどの金属を精錬する技術も、今の管理局にはありません‥‥」
一連の遭難事件に纏わる手掛かりがあればすぐ確認したいと、マリエルは『クラウディア』に自ら乗り込んだ。危険だと言う先輩クロノを押し切って。
結果として、彼女の読みは的中した。
『クラウディア』は、エネミーA(ガトランティス)の艦隊(ナグモー艦隊)が所属不明(アンノウンC=デザリアム帝国軍メルダース艦隊)の艦隊に撃滅され、残骸となって漂流している宙域に、半ば偶然にも転移したのだ。
近くにはアンノウンCの艦隊がまだ遊弋していたため、大がかりな収集活動はできなかったが、それでも艦船の外殻らしき残骸や、幾つかの資料らしき媒体、書類らしき紙などを回収することに成功した。
詳しい解析は本局で行うのは当然として、その前にも調べられるものは調べておきたいというのだ。
そして、回収物はマリエルの期待を裏切らなかったようだ。
「亜光速で航行する宇宙船の建造にはこの位の超金属が必要なのね‥‥残念ながら、金属精錬技術に関しては、管理局は彼らより数世代遅れている事は間違いないですね」
「そんなに差があるのか?」
クロノ達の表情に陰が差したが、真に驚くのはこの後だった。
クロノ達がブリッジに戻ってから1時間後、
『先輩!とんでもないものに当たりました!!』
艦長席のクロノの眼前に、マリエルからの通信画面がいきなり展開された。
「!!?‥‥いきなり何だ!? マリー?」
『今、そちらにデータを送ります!』
面食らったクロノに、マリエルは焦った表情で告げるや、画像データが映し出された。
珍しくクロノが慌てている様を見て、フェイト達も何事かとやってきた。
皆の前にデータが映し出されるや、それを見た一同、特にクロノとフェイトの表情が変わった。 否、蒼ざめた。
「これは‥‥木星と土星!?」
「火星と‥‥ち、地球!!?」
画像データは、クロノとフェイトには馴染み深いもの。アングルこそ違うが、明らかに土星・木星・火星・地球の全体画像だった。
「どういう事だ? こんな軍事勢力が太陽系‥‥地球を知っているなんて‥‥」
「う、そっ‥‥!」
フェイトの心に、恐怖に近い予感が込み上げてきた。
傍らのシャリオとティアナも顔を強張らせている。
まさか、なのは達の故郷が侵略されようとしているのか――?
しかし、次のデータを見た一同は困惑の表情になった。
「これって‥‥」
「宇宙戦闘艦‥‥よね?」
惑星の画像に続いて映し出されたのは、紡錐形の船体に艦橋らしき構造物と砲身付き砲塔を備えた艦船や、箱型の船体と大型の砲身付き砲塔を持つ、かなり大型の艦船の画像だ。
「どういう事?第97管理外世界には、こんな宇宙戦闘艦を建造する技術はないよ」
フェイトが疑問を呈する。
「‥‥しかし、これらの艦の司令塔や武装配置は地球の水上戦闘艦に似ているぞ。‥‥これを見てくれ」
クロノが所感を口にしながらキーボードを操作し、別ウィンドウに画像を映し出した。
「?‥‥これは?」
「左から、アメリカ海軍の戦艦『ミズーリ』、イタリア海軍の戦艦『ローマ』、旧日本海軍の戦艦『大和』だ。いずれも三連装主砲塔を前に2基、後ろに1基装備していて、形状こそ違うが、タワー形の艦橋を持っているだろう」
「確かにそうですね」
画像を見たシャリオが眼鏡を光らせながら言う。
「それに、管理局の艦とは違って、側面にも火力を放てますよね」
「そうだ。あくまで仮説だが、この画像の戦艦と、こっちの宇宙戦闘艦は非常に似通った戦術思想の元に設計されている、と僕は考えている」
シャリオの推測に、クロノは地球の戦艦とエネミーAのデータベースにあった宇宙戦闘艦が、非常に近い性格にあるとの仮説を説いた。
と、そこでフェイトの表情が変わった。
「クロノ‥‥この画像の艦船がアンノウンB――『ヤマト』が所属している勢力じゃないかな?」
「可能性はあると思う。太陽系の惑星と酷似している惑星群といい‥‥、第97管理外世界と似通った文化を持つ人々が住まっている可能性は十分あるな」
「‥‥‥‥」
アンノウンBは、クロノ達が接触とコミュニケーションを望んでいる勢力だ。
回収した画像資料に『ヤマト』のそれがあったら、一同は驚きの声を上げていただろう。