(――!!??)
タブレットの画像を見た嶋津冴子は、ほんの数秒間だが呼吸を忘れた。
「‥‥つーか、これ誰よ?大山」
嶋津がかざしたタブレットには、女性の顔写真が映し出されていたのだが‥‥。
「『エスティア』から吸い上げたデータの中にその女性のがあったんだが、驚いたぜ。お前の姉貴だと言っても疑われないくらいそっくりだろ?」
ウザいドヤ顔を向けるのは大山歳郎。
「それはわかってるさ。私に生き別れの姉貴がいるとすれば、こういうツラだろうからな」
大山は嶋津が自らの出自を語った数少ない一人でもあるから、このような情報を持ってきたのだろうが――。
「しかし、こりゃ魔法世界側の人物だろう?」
疑問を唱える嶋津に被せるように大山は続ける。
「プレシア・テスタロッサ、35歳。大魔導師の称号を持ち、魔導動力の技術者でもあったそうだが、開発に携わっていた魔力炉の試験機が暴走した責任をとって退職した――となっているが、色々と裏があったようだ」
「裏?」
「ムチャクチャなスケジュール、無理難題を押し付ける経営幹部。あげく、その事故で一人娘に死なれちまったとさ」
「‥‥ふうん」
相槌を打ってもう一度プレシアの写真を見た。
バチ被りしたのもさりながら、一人娘に死なれては絶望もするだろう。
「‥‥寂しそうな目だな」
自分と顔立ちは似通っているが、瞳の“色”が寂しそうなのだ。
「お前もそう思うか?」
「まあな」
嶋津冴子は実の両親を知らずに育ったが、 亡き嶋津の養父母や知人友人のおかげか、寂しさとは無縁の半生だった。
「‥‥で、そろそろ本題に入れよ。私だって暇じゃないんだ」
過半の戦力を失った地球防衛軍は大至急で再編されなければならず、生き残った艦や人員は大幅なシャッフルが予定されているという。
嶋津も呼び出されればすぐ出頭しなければならない立場だ。
「これから『エスティア』の艦長に会うから付き合ってくれ。申請はしてある」
「‥‥私の意向は聞かんのかい?」
ぼやきながらも嶋津は腰を上げる。
高町家との交流のせいか、魔法の世界には個人的にも興味があったのだ。
会ってみるのも一興だと、嶋津はクライド・ハラオウンとの面会に立ち会う事にしたのだ。
――が、唐突に場の雰囲気が変わった。
「――2人とも何をやっている?行くぞ」
「「!!??」」
低い声と共に現れた第三者に、嶋津と大山は一瞬呼吸を忘れる。
それも無理からぬ事。凡そ魔法とは縁遠いと思われていた人物がそこにいたからだ。
((鬼竜かよ―――!!??))