──地球防衛軍中央司令部──
「報告が遅い!何をやってるんだ!」
「あとどの位で出せるんだ!?‥‥ 遅い!もっと早くしろ!」
幕僚の怒号が飛び交う中、藤堂平九郎は瞑目して幕僚からの報告を受けていた。
「《アンドロメダ》はあと1時間でタイタンに到着します!」
「天王星圏艦隊の出撃可能まではあと45分です」
「《ヤマト》のマケマケ到達まであと30分です」
「第666警備隊《テシオ》《ヒルガオ》《ナデシコ》、あと15分で《ヤマト》に合流可能です!」
「第4艦隊の現着まで4時間です!」
(やはり《ヤマト》が頼みか‥‥)
藤堂はひとつひとつの報告を聞く毎に頷く。
既に連合艦隊トップの土方が天王星艦隊と第4艦隊に救援を命じており、第4艦隊は急行中。天王星艦隊も急速出撃の準備中だったが、マケマケ到着には数時間を要した。
一方、さんざん周囲を振り回した《ヤマト》は独断でマケマケ救援に向かっており、第666警備隊も独自で警備司令部に話をつけてマケマケに急行中で、途中で合流するとの連絡があった。
第一報が入った直後から、土方は『アンドロメダ』をUターンさせて前線司令部がある土星の衛星タイタンに向かっており、月面艦隊に待機命令、火星・木星圏艦隊にもタイタン集結を命じており、藤堂も対応を土方に一任していた。
参謀本部からは不満の声も挙がったが、藤堂が折れる事はなかった。
戦況は甚だ良くない。
マケマケに若干数配備されていた地対空・地対艦ミサイルは1発も撃てないまま壊滅しており、地下待避壕に籠って救援を待つしかない有り様という。
(やはり、古代達が正しかったのか)
自分も抱いていた懸念が的中してしまった。
初動は悪くないが、主導権は敵の手中だ。
天王星艦隊と第4艦隊が救援に向かっているとはいえ、マケマケの空間騎兵隊はそれまで持ちこたえられまい。
敵の戦力がどれほどかわからないが、まずは先行した『ヤマト』とGF666に任せるしかない。
敵の撤退に持ち込めれば御の字だが──。
──マケマケ 南極宙域──
途中で合流した『ヤマト』と『テシオ』『ヒルガオ』『ナデシコ』はマケマケに接近、『ヤマト』からコスモタイガーが発進した。
『コスモタイガー、空爆中の敵艦載機隊に攻撃開始!』
『敵艦隊、大型戦闘艦2と中型戦闘艦4が突出。向かって来ます』
「砲雷戦準備完了です!」
「データ、各艦とリンク良好!」
「よし‥‥『ヤマト』『ヒルガオ』『ナデシコ』に伝達。射程に入り次第合戦に入れとな」
『テシオ』艦橋にクルーの報告と嶋津の指示の声が飛び交う。
『テシオ』ら『エムデン級哨戒/嚮導巡洋艦』の電子探知・捜索能力は『アンドロメダ級戦艦』とほぼ同等。敵のデータを一瞬で解析し、砲雷撃用データとして僚艦に送れる。
敵の方が数的に優位なのはいつもの事。なればこそ、敵の顔面に強烈な拳を叩き込む。
ところが‥‥。
(敵の艦列は統制がとれてないのか?それともそういう戦術体系なのか?)
こちらに向かってくる敵艦群は戦艦らしき筒型の艦体に塔状艦橋らしき構造物を持つ大型艦、平べったいフォルムに上下2段の艦首を持つ巡洋艦級の中型戦闘艦、その巡洋艦を縮小したような駆逐艦級の小型戦闘艦だが、その配置は雑然、否、我先にこちらを目指しているようにすら思える。
(‥‥宇治川を渡っているつもりか?)
特に、先頭の2隻の巡洋艦は、1000年以上前の源平合戦期、木曽義仲の陣目指して宇治川を突進する鎌倉軍の佐々木高綱と梶原景季のようだ。
(こちらが寡兵なのも同じだ。どちらの矢が長く太いか、こちらの矢が通じるのかが初弾でわかる)
「『ヤマト』に伝達。先陣争い中の左側の艦を締めろとな!」
「了解!」
“高綱”と“景季”が矢を放ったらしく、エネルギー弾が周囲を走り始めたが、有効弾ではないようだ。
「『ヤマト』撃ちます!」
左舷に閃光が走って、2本の太い光槍が闇を裂く。
数瞬の後、オレンジ色の光球が煌めき、それを目にした嶋津の脳裏には、いななく馬上で仰け反り、川に転げ落ちる大鎧の武士が映った。
『マケマケ』は太陽系外縁部に実在します。