――破局は唐突に訪れた。
空間転移から7時間13分後、『タイタンⅣ』のブリッジで悲鳴が上がった。
「左後方より高速で接近する物体3!艦船と思われます。‥‥接触まで150秒‥‥は、速すぎる!」
「何!?」
艦長のホーミー一佐も一瞬呆然としたが、艦と乗組員を預かる者の責任感が、すぐ彼を現実に引き戻す。
「急速転移用意!」
極めて高速で艦船が接近すると聞いた船長は即座に次元空間への転移を決意した。
「しかし、次元空間はまだ次元乱流が続いています!」
「あんな速度で移動できる船は管理局にはない!例の敵の戦闘艦ならこちらはひとたまりもない!大揺れでも次元空間の方が遥かにましだ。魔力炉出力を上げろ。大至急だ!」
「は、はい!」
次元空間に転移すれば、かなり揺さぶられるが、それでもここで一方的に撃たれるよりはましとホーミー艦長は判断した。
「接近してくる艦船に所属を問い質せ。概要は解るか!?」
「はい!」
「データベースに接続してみます」
艦長は接近してくる謎の艦船の所属を確かめようとした。
「艦長!」
ブリッジにフェイトが飛び込んできた。
「高速で接近してくる艦船らしき物体を3確認した。接触まで約1分。‥‥緊急転移が可能になるのにもあと1分だ」
「!!??」
話を聞いたフェイトも表情を強張らせる。
「‥‥その船の映像は出せますか?」
「今解析が済んだところです。‥‥ご覧下さい」
オペレーターは画像をモニターに展開した。
(‥‥!!? これは‥‥)
画像を目にしたフェイトの端整な
「この形状はエネミーA(ガトランティス)です!緊急転移を!!」
「!‥‥わかった。元の座標に空間転移する。障壁展開、総員衝撃に備えろ! 魔導師はバリアジャケット展開!急げっ!!」
切羽詰まったフェイトの進言をホーミーは受け入れ、緊急転移準備と対衝撃態勢を下令した。
(よりによってこんな時に!‥‥ティアナ、聞こえる!?)
(はい、フェイトさん)
心中で毒づいたフェイトは、即座に
(エネミーAに見つかったみたい。次元乱流の中に緊急転移するから、バリアジャケットを展開して。シャーリーは何かに掴まらせて!)
(は、はい!)
フェイトが念話でティアナに指示を出している最中、観測担当オペレーターが悲鳴を上げた。
「エネミーA、発砲!高エネルギー反応多数!!」
「総員、手近なものに掴まれ!!」
直後、『タイタンⅣ』は凄まじい衝撃に見舞われた。
「被害報告急げ!」
ホーミー艦長の指示に対する回答はすぐもたらされた。
「障壁強度、31%に低下!」
報告に、ブリッジには悲鳴が上がる。
初弾で障壁強度の70%を失うなど、聞いた事がなかった。
「うろたえるな!転移準備を急げ!」
態勢立て直しを図るホーミー艦長を見ながら、フェイトも己を保とうとした。
(障壁はもってあと一撃。艦自体への被弾も避けられない。二撃目を受ける前に転移できれば‥‥)
フェイトがそこまで考えた時、先ほどとは比べものにならない激しい衝撃が『タイタンⅣ』を襲い、ブリッジクルーは全員床に投げ出された。
「くっ、被害報告‥‥!」
「障壁消失!左舷D5から26区画まで貫通!火災発生!緊急閉鎖します!!」
(21区画も貫通した!?)
エネミーAの艦砲の貫徹力に、フェイトは戦慄した。
これでは艦内中央部にいる意味がない。
(ティアナ、そっちは大丈夫?)
(2人とも大丈夫です。直撃ですか?)
念話でティアナを呼ぶと、緊迫した声が返ってきた。
(一撃で21区画がやられた。それにブリッジも負傷者が出てる。こっちに来れる?)
(!‥‥わかりました。すぐ行きます!)
ティアナの回答を受け、フェイトは床に倒れたままのクルーを助け起こしにかかる。
「艦長、転移までの残り時間は!?」
「安全な座標を探すいとまはないようだ。ランダム転移しかない」
「!‥‥わかりました」
エネミーA(ガトランティス)の急襲と被弾で、安全な座標を探す時間が失われた。
これ以上ここに留まれば艦ごと死ぬだけだが、艦が生きているうちにランダム転移し、その後再転移すれば、生き残る可能性は十分ある。
ホーミー艦長はそれに賭けるのだろう。フェイトも異存はなかった。
ホーミーが艦長席にある緊急転移スイッチの蓋に手をかけた時、ブリッジ至近に閃光が走り、直後、衝撃と爆風がブリッジを襲った――。