明久side
「つ、疲れた……」
あの凄惨な事件の後も僕たちは普通に補充試験を受けた。
「明久、今回は本気出したの?」
「んー……本気は出したけど全力は出してないよ」
隣から僕の
「なんで出さないのよ。全力でやればいいじゃないの」
「全力は出すのは疲れるからね……。でもさすがにAクラス戦の時は出すつもりだから安心して」
「ならいいけど……」
一応あれって頭も体もものすごく疲れるんだよね……
「じゃあ帰りましょうか」
「うん……って待って。今日は先に帰っていてくれない?ちょっと用事思い出したから」
「それはいいんだけど……どこに行くの?」
「学園長室。さすがに施設の改善くらいやってくれると思うからね……」
こんな設備を強要しているとはいえ、一応は教育機関を経営してるんだ。頼み込めばやってくれるはずだ
「えー……帰りましょうよー」
「だから先に帰ってなって。遅くなるだろうし」
「…………そういうことじゃないのに」
「ん?今何か言った?」
「……何でもないわよ」
今なんか天子が言った気がしたんだけど……、本人の言うとおり何でもないのだろう
「ほら、行くならさっさと行きなさいよ」
「え?何で僕怒られてんの?」
何もやってないよね、僕?
そんなことを思いつつ一人で学園長室への廊下を歩いていった
コンコンコン
「失礼します」
「入りな」
一応こちら側からのお願いなので下手に出ることにしようと思い、できるだけ丁寧にしようと思ってノックしてから入る
「えっと……2年Fクラスの吉井明久です。学園長に用があるんですが、学園長は何処でしょうか?」
「私が学園長の藤堂カヲルだよ」
「えっ!?」
てっきり妖怪かと思ってしまった……
声には出さないようにしたけど危ない危ない
「その声はなんなんだい……?」
「い、いえ別に」
「まあいいさ。で、なんのようなんだい?」
「実はFクラスの設備の改ぜ「却下だよ」って早くないですか!?」
せめて最後まで言わせて欲しいんだけど……
「直す気はないよ。それがウチの学園の方針だからね」
「いや、でも健康な生徒でも害が出る可能性があるレベルだと思うんですけど」
「はんっ!畳と窓ガラスでどうしてそうなるんだい?」
「え?畳は腐ってるし窓ガラスが割れてればそうもなりますよ?」
「………………もう一度言いな」
学園長がそう訝しげに言ってくる。
まさか知らなかったのか?
「だから腐った畳と割れた窓ガラスって……」
「…………竹原のやつめ、嘘の報告したね」
学園長はそうボソッとつぶやく。
竹原って言うと教頭先生のことだろう。あの人は人を見下してるような目をしてるし好きじゃないんだよな……
「わかったよ。今回は特例として直しといてやるよ。こっちの不手際でもあるし教育機関としても問題があるからね」
「ありがとうございます」
「ただし」
「え?」
これで終わりといったところで学園長が言ってきた言葉に声を出して身構えてしまう。
「今開発中の腕輪の実験に付き合ってもらうがね」
「あ、それくらいなら……」
そう言って学園長は白と黒の二色の腕輪を机の中から取り出してくる。
「これは『白金の腕輪』で、効果としては召喚獣の点数を半分にして召喚獣を二体に分けるんだよ」
「へえ〜」
「キーワードは『
学園長が部屋にフィールドを張り、腕輪を渡してくる。
「分かりました。じゃあ
そう言って召喚獣を呼び出すことに成功するが、召喚獣は二体に分かれることはない。
「学園長、これはどういうことですか?腕輪がバチバチしてるんですけど……」
「多分故障だね。すぐさま外しな」
「ええー……」
そう言って腕輪を取ると学園長に投げ渡す。
「ちゃんと検査してからにしくださいよ……。ちなみに故障の原因は?」
「うるさいさね……。ちょっと待ってな」
そう言うと学園長は二つの腕輪の検査をし始める。
「どうやら点数が低いやつにしか使えないみたいだね……」
「ちなみに何点くらいなんですか?」
「総合で1000点ほどだね。ちなみに同時に検査した『黒金の腕輪』は1500点ほどだね」
「ほとんど使えませんね、それ」
Fクラスレベルなんだけどそれ……
「まあ学祭の召喚大会の景品にするつもりだったから事前にわかってよかったと考えようかね」
「へえ……不幸中の幸いでしたね」
「まったくだよ……。ああ、もう帰っていいよ。設備の方はそのうちこっちでやっとくから」
「はい、ありがとうございます。失礼しました」
そう言って学園長室から出ると、そのまま学校から家へと向かって歩き始めた。
ガチャ
「うーん……疲れたなー……」
家のドアを開けてそうつぶやく。今日はテスト、事件、交渉といろいろあったからな……
「お帰り。明久、今日の晩御飯なに?」
「んー……チャーハンでも作ろうかな?」
そうリビングのソファーでくつろぎながら雑誌のページをめくっている天子に答える。
「おかずとか何あんのー?」
「うーん……二人分となるとやっぱり……ってちょっと待てええいっ!?」
「どうしたのよ?さっさとご飯作ってよ」
「いや、何で天子がいるの!?」
あまりにも自然過ぎていて分からなかった……
「何よ、いちゃ悪いの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ……」
「じゃあいいじゃないの」
そう言うと再び天子は雑誌に目を向ける。
「でも説明くらいはしてくれない?」
「えー……めんどくさいわね……」
そこをめんどくさがったらダメだと思うんだけど……
「まあいいわ。実は今日の船越先生のアレ、言ったら大目玉食らっちゃって。家に居辛いからプチ家出してきちゃった☆」
「ええー……」
「あんたに原因があるんだから今日はあんたの家に泊まるって考えに至ったわけ」
「いや、まあそうだけどさ……」
なんか納得がいかないような……
「分かったら夕飯の準備してよね。あと明日のお弁当もよろしく」
「はいはい、分かりましたよお嬢様」
僕は半ば諦めの気持ちでそう言うと冷蔵庫の中を覗き始めた