というか、今までのペースがおかしかった。
それではどうぞ!
「ねぇねぇ、リサ。次はこっちの服を着てみてよ!きっと似合うと思うよ!」
「り、理子様?これは少し恥ずかしいです・・・」
「大丈夫、大丈夫。それを着ればリョーくんのハートも一発だよ!」
「りょ、亮太様のハートを・・・」
「うん、そうだよね、リョーくん!」
「え、あ、まあ、うん、そ、ソウダネー」
「な、なら着てみます!亮太様、理子様、少々お待ちください!」
「いってらっしゃ~い」
理子に渡された服をもって脱衣所に行くリサ、それを手を振りながら見送る理子。そして、そんな様子をただただ眺めるだけの俺。
こうなった理由は、数時間前までさかのぼる。
--------------------------------------------------
「私の名前は、峰 理子!りこりんって呼んでね!」
そう言って、俺に手を差し出す少女-----峰 理子。
俺は彼女を知っている。ほとんど忘れてしまっている原作知識だが、それでも覚えているのは、彼女が物語の中心人物の一人だからだろう。もっとも、どんな内容なのかは思い出せないが。
「あ、あぁ。よろしく、理子」
そう言って、彼女の手を取る。
「もー!りこりんって呼んでって言ったじゃん!呼ばないと、ぷんぷんがおーだぞ!」
「わ、悪い悪い。その呼び方は、ちょっと恥ずかしい」
「ん~、しょうがないな~。なら理子でいいよ」
少し不服そうだが、許してくれた。「りこりん」なんて、恥ずかしくて、とてもじゃないが呼べん。
「およ?後ろの女の子も、理子と初めて会うね。名前はなんていうの~」
理子が、俺の後ろに立つリサに気づいて尋ねる。
「私は、リサ・アヴェ・デュ・アンク。亮太様の専属メイドです。よろしくお願いします、理子様」
リサは理子に軽く頭を下げる。というか、専属メイドは決定なんだ。
「リサ・・・」
理子はリサの名前を聞いて、苦虫をかみつぶしたようになるが、それも一瞬。すぐに元の理子の顔に戻る。
「よろしくね、リサ!そんな堅苦しくしなくて大丈夫だよ」
「いえ、もう癖みたいなものですから」
「ふ~ん・・・ま、いっか!理子もリアルメイドさん見れて満足だし!」
うんうん、と満足そうにうなずく理子。
「なあ、理子。おまえ何か急いでたんじゃないのか?」
「え?・・・あーーーーーーーーーーーーー!!」
理子は腕時計を見ると、突然大声を出した。
「いっけなーい!それじゃあ、またね!リョーくん、リサ!」
そう言って、手を振りながら去っていく理子。
「あんなに急いで、一体何があったんだ?」
「それは多分、プリンですね」
何気なくつぶやいた一言に、リサが答えてくれる。というか、プリン?
「プリンが一体どうしたんだ?」
「イ・ウーでは、月に一度、シャーロック様の考案で、世界的に有名なお店のお菓子を仕入れてくるんです。『頭を使うには、糖分が大切だからね』ということらしいです。それで、今回のお菓子であるプリンは、世界中に支店がある、超人気デザートなんですよ」
そうなのか。そんなものがあるなら、ぜひ食べてみたい。
「ただ、毎月すぐに無くなってしまうので、今からじゃ難しいですね」
「そうなのか、ぜひ食べてみたかったんだけどな・・・」
「ご安心ください。そういうと思って、朝一に1個買っておきましたから。おやつの時間にでも、お出ししますね」
「本当か!それは楽しみだ」
「亮太様に喜んでいただくのが、リサの幸せですから」
そこまで甘いものに執着があるわけではないが、そこまでおいしいものなら食べてみたくなる。
本当に楽しみだ。
-------------------------------------------------
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ズ~ン)」
最初の目的通り、リサに本拠地を案内されて、食堂についた時だった。
部屋の隅で体育座りしながら、すごいジメジメしている理子がいた。それだけで大体察した。
「ダメだったか・・・」
「そうですね・・・」
やっぱりプリンは買えなかったようだ。にしても、相当食べたかったんだな。あ、キノコ生えた。
これ以上ほっとくとまずそうなので、理子に話しかける。
「え~っと、理子?」
「・・・何、リョーくん・・・」
誰だコイツ?朝会った時と別人だぞ。
「なんか、その、ごめんな?あの時、俺がお前にぶつからなかったら・・・」
「・・・気にしなくていいよ、リョーくん。人が部屋から出てくることを考えず走っていた、理子が悪いんだよ・・・」
そう言って、より深く落ち込む理子。正直、見ていられない。
「・・・よし、リサ。少しここで理子を見ててくれ」
「え?亮太様?」
「リサにしか頼めないだ。それじゃ!」
「ちょ、ちょっと待ってください、亮太様!?」
リサを理子のそばに置いて、俺は部屋に戻る。そこで俺は目当てのものを見つけると、それをもってリサたちのもとへ戻った。のだが・・・、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ズ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン)」
「ど、どうしましょう~~~(オロオロ)」
理子はさらに落ち込み、キノコの数が増えていた。そんな理子をどうしたらいいかわからず、オロオロするリサ。なにこれ、カオス。
「ただいm「どこ行ってたんですか!」っと、悪い悪い。ちょっと部屋にあるものを取りに行っててな」
「あるもの・・・?」
小首を傾げるリサを横目に、理子に近づく
「理子、これ。おまえさえよければ」
「・・・?」
そう言って差し出したのは、リサが俺のために勝ってきたプリンだった。
「こ、これ今日のプリンじゃん!こ、こんなのもらえないよ!」
「気にすんな。俺は甘いものが特別好きなわけじゃないし、二度と食えないわけじゃないからな」
俺は、リサの方を向いて言う。
「悪いなリサ。俺のために買ってくれたのに」
「いえ、亮太様がそれでいいのなら、リサは気にしません」
そう言って、微笑んでくれるリサ。それを確認してから、理子に向き直る。理子は困惑したような顔をして、俺とリサを交互に見ている。
「ほ、ホントに、いいの?」
「さっきからそう言ってるだろ?」
ほら、と手に持ったプリンを理子に差し出す。すると、理子は突然俺に抱き付いてきた。・・・って!
「ど、どうした理子!?」
「ありがとう、リョーくん!理子すっごくこのプリン食べたかったんだ!」
「わ、わかったから離れろ!」
「ぐふふ・・・、よいではないか、よいではないか~」
どうやら、元の理子に戻ったようだ。それはいいんだが、早く離れてほしい。いろいろ当たっていてツラい。
「り、理子様!早く亮太様から離れてください!」
リサ仲裁で、ようやく理子は離れてくれた。
「それじゃあ、ほれ」
そう言って、プリンと一緒に持ってきたスプーンを渡してやる。理子は受け取ると、早速封を開けて食べ始める。
「お~いし~!」
「そいつはよかった。理子は甘いものが好きなのか?」
「うん、甘いものなら何でも好きだよ~」
「それなら今度、俺が何かお菓子を作ってきてやろうか?」
「ホント!」
俺がそう言うと、プリンを食べながらすごくキラキラした目でこちらを見てくる理子。それに俺は、少し苦笑しつつ「ああ」と首肯する。
「絶対だよ!今、理子と約束したからね!後から『やっぱなし』とかダメだからね!」
「こんなことで嘘なんて言わねーよ」
「ヤッタ~~~~~~~~~~!!」
綾崎ハヤテの能力の影響か、料理とか家事全般が趣味みたいになってるしな。これから家事はリサが中心になってやっていくことになるんだろうが、お菓子作りくらいいいだろう。
「ん~、でもプリンまでもらったのに、ただ作ってもらうのもな~」
「俺は気にしないぞ?」
「理子が気にするの!」
そう言って、理子は少し考えるようなそぶりをした後、何かを思いついたのか、手をポンっと叩く。
「そうだ!今から理子の部屋に来ない?」
「は?でも、男である俺をそんなに簡単に招いて言い分けないだろ」
「モーマンタイだよ。リョーくんに見られて困るようなものは全部しまってあるし、リョーくんになら別に触られたりしても・・・」
「だ、ダメです!絶対ダメです!亮太様にそ、そのようなこと・・・、とにかくダメです!」
理子が何かを言いかけたが、慌ててリサが止めてしまった。
「ふ~ん、やっぱりリサって・・・」
「な、なんですか?」
「べっつに~?ただ、面白そうだな~って」
そう言って、にやにやしながらリサを見る理子。
「そうだ!ねぇ、リサ?ちょっと手伝って?」
「手伝いって・・・何をですか?」
「まだ内緒!でも、リョーくんはきっと喜んでくれるよ!」
「亮太様が・・・、はい!リサも手伝います!」
「うん!というわけで、リョーくんも理子の部屋に来てよ!」
「そうですよ、亮太様!行きましょう!」
リサと理子の二人に詰め寄られる。ここまで言われて断るのも悪い気がする。
「わかったよ。ならお願いする」
「よーっし!それじゃあ、しゅっぱつしんこ~!」
「お~!」
妙にテンションの高い二人について、理子の部屋に向かった。
--------------------------------------------------
そうして、冒頭に戻る。
理子の部屋はいわゆるコスプレ衣装でいっぱいだった。本人曰く「変装の練習に使うんだよ」と言っていたが、いくらなんでも多すぎる。
この時点で嫌な予感はしたんだが、次の理子の言葉で現実になる。
「それじゃあ今から、理子とリサによるファッションショーをはじめま~す!」
そう言って、あれよあれよという間に、ファッションショーが始まってしまった。リサは内容を知らなかったようで、最初は反発していたが、理子が耳元で何かをつぶやくと、途端にやる気になり、そこからは多少文句を言いつつ、比較的積極的にやっていた。俺は二人を置いて勝手に帰るわけにもいかず、二人のファッションショーを見ることになった。でも、どっちかっていうと、コスプレ大会の方がしっくりする内容だった。
ゴスロリに始まり、シスター服、巫女服、ナース服、ミニスカサンタ、セーラー服、婦警コス、浴衣、魔法少女、魔装少女etc.
いくつ見たかも覚えていない。ただ一つ言えるのは、二人ともどんな格好もめちゃくちゃ似合っていたということだけだった。
二人のファッションショーは夜中まで続いたのだった。
----------------------------------------------
ファッションショーが終わり、あまりに遅い時間だったので、食堂で夕食を済ませ、俺とリサ、理子は食堂で話していた。この時間になると、食堂に人はほとんどいなくなる。とはいえ、夜遅くに帰ってくるメンバーがいるらしく、食堂は問題なく開いていた。
「今日はすっごく楽しかった!こんなに楽しかったのは初めてだよ!」
「そいつはよかった」
「リサもこんなに遊んだのは初めてです」
俺たち三人は、今日あったことを話していた。よくよく考えてみたら、俺と理子が会ったのは今日が初めてだった。なのに、今では気兼ねなく話せる仲になっていた。
「もう、今日がずっと続けばいいのにな~」
「そいつは困るな」
「どうして?楽しかった日がいつまでも続いてほしいって願うのは、珍しくないでしょ?」
不思議そうに尋ねてくる理子に、俺は答える。
「だってもう一度今日が来たら、せっかくお前と”友達”になったのに、また最初からになるってことだろ」
「・・・え?」
俺が言った言葉に、信じられないといったような顔を理子はしていた。
「どうした、理子?」
「・・・今、私のことを”友達”って言ったの?」
「そうだけど・・・、もしかして迷惑だった?」
「そうじゃない!そうじゃないけど・・・」
なにか、歯切れの悪い理子。一体どうしたんだ。
「だって、理子とリョーくんたちは、今日初めて会ったんだよ?それなのに・・・」
「なんだ、そんなことか」
「そんなことって・・・」
俺は理子の目をまっすぐに見る。
「理子」
「え?えっと、な、なに?」
「いや、そうじゃなくて、理子」
「えーっと、リョーくん?」
「そう、それだ」
「え、どれ?」
「だから名前だ」
「名前?」
理子は何のことかわかっていないようだ。まあ、俺の前世で見たアニメの真似だし、知らなくても無理はないか。
「俺はお前を『理子』って呼んでる」
「うん」
「お前は俺を『リョーくん』って呼んでるだろ」
「うん、呼んでる」
「いいか、理子。友達になるのに、特別なことは何もいらないんだ。ただ、互いに名前で呼び合う・・・それだけで、もう俺とお前は友達になったんだよ」
「名前を呼び合う・・・」
「そうだ。だから、俺とお前は友達だし、お前とリサも友達だ」
「リサも?」
そう言って、リサを見る理子。リサは理子を見て優しくうなずく。
「はい。少なくとも、リサは理子様のことを友達だと思っています」
「・・・・・・・・・・・・・・」
そんなリサの言葉に黙ってしまった理子。少しして、理子が再びしゃべりだす。
「・・・理子は、リョーくんとリサの友達になってイイの?」
「あぁ」「もちろんです」
俺とリサは答える。
「ホントに?」
「ホントだ」
「ホントのホントに?」
「ホントのホントです」
「ホントのホントのホント?」
「ホントのホン・・・あ~もうめんどくさい!」
俺は理子に手を差し出す。
「ほら、友達同士の握手だ」
「・・・・・・・・・っ!」
俺の手を見つめる理子。そして、理子の手が俺の手に伸ばされる。
しかし、その手が重なることはなかった。
「何してんだ?できそこないの4世?」
その声が聞こえた瞬間、理子の手が止まる。そして震えだす。しかも理子だけではなく、リサもだった。
俺はその声のした方を向き、目を見開く。
食堂の入り口に、
そこにいたのは、人間ではなかった。
3メートルはある身長。全身は毛むくじゃらで、長く、鋭く尖った爪と牙。俺の記憶の中でもっとも近いものをあげるなら、狼男あたりだろう。
見るからに化け物。そんな奴がこちらを見ていた。そして奴は嗤う。
「何だ、弱虫のリサもいたのか。なんだ?弱者同士、傷の舐め合いでもしてたのか?」
俺はそいつを知らなかった。
その男の名は、ブラド。『無限罪のブラド』。イ・ウーのNo.2であり、長い時を生きる「吸血鬼」であり。
-----そして、理子とリサを苦しめる元凶だった。
早く緋弾のアリアの最新刊読まないと(汗)
それでは、また次回!