【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐ 作:skyfish
≪全員帰投します≫
「了解した」
ミーナの声を聞いてバルクホルンたち3人はほっと胸を撫で下ろした。
「いきなり飛んで行ったけど、交戦してからあっという間だったね」
「そうだヨナ。それにフォックスってなんだ?」
ハルトマンとエイラは先ほどの通信から聞こえてきた内容を話しているが、バルクホルンだけ何か考え込むような顔をしていた。
「どうしたのトゥルーデ?」
「ん、ああ少し疑問に思ったのだが、メビウスのやつネウロイのことをミグと呼んでいた」
そういえばとハルトマンとエイラは思い出す。通信からもメビウスは訂正していたがネウロイのことをミグと言っていたのを聞いていた。
「ミグっていえば、サーニャのストライカーと同じ名前ダナ」
「たしかに何か知っているような感じだった」
さらにミーナの口からも出た“死神”という言葉。
「メビウス・・・お前は一体何者だ?」
「そのメビウスってやつのこと、詳しく聞かせてもらえないかい?」
「「「え?」」」
だれだろうと思い3人は後ろを振り向いた。
基地に着くまでの間メビウス1はミーナに報告していた。
≪レーダーに反応なし。基地のほうにも警戒を厳にと伝えてくれ≫
ミーナたちが基地へ帰る後ろ10kmをグルグルと旋回しながらメビウス1は飛行していた。ミーナはメビウスのストライカーのことを考えていた。ストライカーが開きあの矢のようなものが出てくるのを確認していた。そして今もその機体に備え付けてあるとされるレーダーで私たちのことを守っている。スピードだけでなく多くの謎が出てきた。
「了解したわ。聞こえるトゥルーデ。レーダーから目を・・・どうしたの?」
通信から聞こえてきた内容を基地に伝えようとしたが向こうの様子がおかしいことに気が付いた。
「なんですって?・・・分かりました」
≪どうかしたのか≫
メビウスからの通信を聞きながらミーナは先ほど入ってきた情報に頭を悩ませていた。よりによってこんな時にである。
「ええ、1つだけあるわ。最もメビウスさん、あなたにですけど」
≪俺に?≫
「ええ、“お客様”よ」
皆が滑走路に着陸し最後に自分が着陸する。格納庫に入るとそこにはストライクウィッチーズの隊員全員が揃っており、その中に知らない女性がいた。
「へぇ、君がメビウス。そしてそれが未来のストライカーか」
黒髪長髪の女性が話しかけてきた。凛とした姿、強い意志が見える瞳。皆の表情がかなり固まって見える(坂本はいつも通り)から彼女たちの上官だろうか。
「あなたは?」
どこのだれかを聞こうとし相棒と彼女の間に立つ。彼女の目が好機の目に見えたからだ。シャーリーとは違う。まるで獲物を見つけた獣にも似たような目に見え、無意識に機体を守る位置に立っていた。
「私はカールスラント空軍ウィッチ隊総監、アドルフィーネ・ガランド少将だ」
「あの、ガランド少将。なぜここに・・・?」
あのミーナが怖気図いているように見える。それほどの人物なのだろう。
「なに、君たちに内緒で基地に見に行こうかと思ってね。近くまで来た時だ」
そこまで言いメビウス1のほうを見る。
「君がそれに乗って飛んでいくのを目にしたというわけだ。なによりスピードが桁違い、ジェットストライカーの開発に携わっているがそれすらも凌駕するのが分かる」
F-22Aのことを絶賛するガランド。彼女は先ほどメビウス1が緊急出撃したのを見ていたのだ。魔眼の有効距離から外れるまでじっくりとラプターを観察していた。
その言葉の中に隠れるものをメビウス1は感じ取っていた。
「・・・単刀直入に言ったらどうだ」
メビウス1はガランドに言い放つ。“なにを企んでいる”と。
「話が早くて助かる。そのストライカーを調べさせてほしい。その技術があればジェット機の開発が大きく進み、ネウロイを殲滅できる」
彼女の言っていることは理解した。メビウス1がいた世界でも1940年代に世界最初のジェット航空機、後に第1世代ジェット機がベルカで開発されたことは知っている。おそらくこの世界でも同じ時期にジェット機の開発があることは薄々気づいていた。確かに相棒の技術が加われば開発は大きく前進するだろう。
「断る」
メビウス1はそれを拒否した。ここにいることになった時と同様に相棒は危険な存在だ。もしこの世界の国家が知れば何が起こるか容易に想像できる。それにこの世界にとって相棒の存在は俺の世界の“あの兵器”と同じだとメビウス1は考えていた。
「・・・はー」
ガランドは大きく息を吐く。
「済まない。少し言葉を間違えたのでもう一度言わせてもらおう・・・そのストライカーを貸せ、我々に協力しろ」
鋭い眼光で睨み脅迫とも取れなくないことを口にした。それと同時に濃密な魔力が放出される。
「何度でもいう、断る」
メビウス1はガランドの睨みと膨大な魔力から怖気図くことなくそれを肌で感じながらも同じように睨みかえす。同様に魔力が漏れ出す。メビウス1本人は魔力を放出している自覚などないのだが、相手の威圧に反抗しようとし無意識でそれが起こっていた。二人の膨大な魔力がぶつかり合い混ざり合う。それにより格納庫内は暴風のように吹き荒れた。
「うわわわわわ!!」
「う・・・もうだめ」
「わっ、リーネちゃんしっかり!」
「少将!それにメビウスもやめてください!」
あまりのことに皆が戸惑い、あまりの魔力に中には気を失いかけるものも出てくる。ミーナが止めようとするがそんなことを無視し、2人は自身の魔力のぶつかり合いを続け―――
ガン!ガン!!
大きく鈍い鉄の音が響く。
「おおおおおおおおおおおおおお・・・!」
「・・・・・・いたた」
「メビウス、それにガランド少将、場を弁えてください」
メビウス1は頭を押さえて悶絶。ガランドはほんの少しだけ涙を浮かべていた。
坂本が扶桑刀を抜き二人の頭に峰打ちしたのだ。さすがに上官にあたるガランドには手を抜いて刀を振り下ろした。メビウス1には手加減なしでやったが
「いたた、確かにわたしが悪いな。場所を変えよう」
「それでは少将、こちらへ」
「ほら、いくぞ。メビウス」
ミーナはガランドを先導するように二人は歩き出す。坂本はまだ頭を押さえるメビウス1を引っ張るように歩いて行った。残された宮藤たちは散らかった格納庫の後片付けに追われる羽目になった。
執務室に移動した4人はソファに座り込む。さきに口を開いたのはガランドだった。
「一応君のことはバルクホルンたちから聞いているけど、君が別の世界から来たというのは本当らしいね。ISAF空軍メビウス隊隊長、メビウス1、本名は明かせないため皆からメビウスと呼ばれている。これで合ってるかい?」
ガランドの話に「ああ」と返事をする。
「先ほどはこちらとしても申し訳なかったと思っているが、なぜ要求を拒んだのだ?君も人々を守る軍人だろう。君のストライカーの技術があれば、ヨーロッパ大陸を取り戻すことができる・・・祖国を開放できる日が近くなるかもしれない」
そう語りかけるガランドを見てメビウス1は理解した。彼女も奪われた故郷を取り戻すために戦っているのだと。そのために相棒の技術がほしいと。だからあんな脅迫染みた要求になったのだ。奪われた故郷を取り戻す。大陸戦争を経験したメビウス1にとって十分すぎるほど理解できることだ。正直なことをいうと彼女たちに協力したいとさえ思っている自分がいる。しかし、それでも――――断らなくてはいけない理由がある。
「この世界に来た時にミーナから今の戦争について聞いた。各国が協力し合ってることも」
「それとこれと何が関係あるのだ?」
ガランドの疑問にメビウス1は口を開いた。
「似てるんだ」
「なに・・・?」
「似てるんだよ、状況が。俺の世界で起こったことと、今君たちの世界が」
ミーナと美緒はメビウスのいうことが何がなんなのか分からなかった。ガランドも同様でメビウス1に何が似ているのか聞く。
「ミーナには言ったが、俺たちの世界は巨大隕石が落ちてくることが分かってどうにかしようと各国が協力し合った。敵味方と争ってる場合じゃなかった。ここからは言ってないんだが隕石そのものを破壊、消滅させるために馬鹿でかい大砲をたくさん作った。そして隕石の脅威が薄れたころ・・・その兵器をどうするかで問題が起こった。この兵器はストーンヘンジといって正式名称は確か・・・120cm対地対空両用レールガンだったか、それを巡って戦争にまで発展した」
メビウス1はISAFを長く苦しめた巨大兵器ストーンヘンジの説明を3人にしていた。メビウス1は記憶が曖昧なせいで名前を省略したが正式には『120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲』である。
「それが敵の手に渡り、対空砲として使用された。射程1200㎞、高度600mより上空にいる航空機を跡形もなく破壊する広域多量破壊兵器として、俺の言いたいことが分かるか?」
3人は黙ってこちらを見ている。自分が言わなくてもすでに分かっていると思われるが口にした。
「人々を守るために作られたものでも、人を殺す兵器に成り下がる。それを見てきたからこそ相棒は渡せない。確かに相棒の技術があればネウロイを殲滅するのは容易になるだろう。だがそのあとは?今度は人間同士の戦争になりかねない」
それはメビウス1がミーナからこの世界のことを聞いたときに思ったことだ。メビウス1からしてみればネウロイはユリシーズ、F-22Aラプターがストーンヘンジという位置づけになる。
「強すぎる力は、その存在だけで新たな争いの引き金になりかねない。俺も、あの機体も、本来はこの世界にあってはいけないものなんだ」
一通り話し終えたあとガランドが口を開いた。
「一筋縄ではいかないか?」
「俺たちと同じ過ちを繰り返してほしくない。それだけだ」
メビウス1の主張を聞き、ガランドは両手を上げて言った。
「降参だよ。そこまで言われたら私が引くしかないね」
参ったというしぐさをし、緊張した空気が解れて少しばかりミーナは安堵のため息を漏らした。
「君のストライカーを取るようなことはしないと誓おう。ただ、どんな性能、武装をしているか教えてくれ。分からないままだと信用することもできない。あと今日現れた謎のネウロイについても」
「ああ、情報は共有したほうがいいしな」
メビウス1はガランドにラプターの性能を教えた後、今日遭遇した敵について話し始めた。
「今日現れたあの敵、名前はMig-29 ファルクラム。俺の世界で超大国ユークトバニアが1980年代に開発した戦闘機だ」
「なぜこの世界にある?」
「知らん。ただほっておくこともできない。なぜこの世界にジェット機が出てくるのか知らないが君たちではどうにもできないのは身に染みただろう?ジェット機の相手は俺に任せてくれないか」
「ふむ・・・ミーナ中佐はどう思う?」
「私としてはメビウスの力が必要になると思います。もし今日のような敵が来たとき我々だけで守り抜くのは困難と判断します」
「そうか」
実際に敵とメビウスの戦闘を見たミーナが言うのだから、間違いはないだろうとガランドは判断しメビウス1に言った。
「メビウス。ミーナ中佐に言われた通り特別隊員として、この基地に残りブリタニアの防衛に協力してくれ。可能な限り私も助力しよう。あと、航空機の操縦に長けているらしいな。可能なら航空機部隊の教育に協力してくれないか」
「ああ、俺なんかでいいなら喜んで引き受けましょう」
ガランドとメビウス1は握手を交わす。メビウス1はガランドという大きな後ろ盾を得たのだった。
メビウス1とミーナは基地を去っていくガランドに敬礼し見送った。その後は警戒がとかれて夜になった。皆が寝静まった頃ミーナから呼び出しを受けた。ノックして中に入る。
「今日のあなたには感謝しています。もしあなたが来なかったら私たちはここにいなかったでしょうね」
「俺は独断で動いたんだ。命令違反だったが皆無事でよかったよ」
メビウス1もミーナはソファに座り今日のことを話す。
「メビウスさん少し聞きたいことがあるのですが、あの時言っていた“死神”とは何ですか?」
「ん、それか。あとメビウスでいいといったろう。いちいちさん付けで呼ばなくていい」
ミーナがメビウス1のことを呼んだのはこれを聞くためだった。半分ただの興味だったのだが気になっていた。
「“死神”ってのは、敵からのあだ名だ」
「敵から・・・?」
「正確には“リボン付きの死神”味方からは“ユージアの猛禽”とか、どこの誰が言ったか知らないが“一人で大陸戦争を終わらせた男”とか言われる」
3つ目のあだ名は迷惑な話さとメビウス1は言った。
「あの時は誰もが必死に戦っていた。確かに俺の戦果がすごかったのも事実だが、知らないやつが結果だけ見て勝手に決めつけるのが気に入らないのさ、俺は」
メビウス1はあの戦争を一人で終わらせたという自覚などない。自分からしてみればそんなものは慢心だと思っている。皆であの戦争を終わらせたのだとメビウス1はそう確信している。
「戦争があなたを強くしたのですね」
「あの戦いで成長したと言える・・・皮肉なもんさ」
そこまで話しミーナは棚から瓶を取りだし持ってきた。
「ウィスキーですけどいいですか」
「酒か。そういえばこの世界のお酒をまだ飲んでなかったな」
「ならちょうどいいわね」
ミーナ中佐はグラスにウィスキーを注いで、メビウス1に渡した。
メビウス1とミーナの2人はゆっくりとウィスキーを飲みながら語り合った。
「メビウス!今すぐ厨房からおつまみ持ってきなさい!」
「・・・・・・・・・・・・はぁ」(どうしてこうなった)
酔ってしまったミーナを見て心の中でそう呟いた。このあとメビウスはミーナの暴走に付き合う羽目になったのはいうまでもない。
ガランドの性格これでいいんですかね?ストパン零読んでるけど違ってたらごめんなさい。
投稿不定期になるのですみません。なにぶん学生なもんで