【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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第10話「夢・記憶」

気が付くと、私ははるか上空の空の中にいた。下に広がる大地は見渡す限り荒野、ほぼ平原の大地に長年の川の浸食によってできたのか大きな谷が見える。

 

だがその高度がだんだんと下がっている。地面が迫るがスピードが落ちることはない。

 

≪警告!ストーンヘンジからの砲撃を確認。全機南へ撤退せよ。高度は2000フィート以下に保て!!≫

≪2000フィート?地面になんか潜れないぞ!≫

 

通信から怒鳴り声が聞こえてくる。空を見たとき同じように高度を下げる機体を確認した。

 

(レシプロではない・・・だと?)

 

その機体を初めて見た。飛んでいる機体は二種類。彼女は知らないが今見える機体はF-16ファイティングファルコン、F/A-18Cホーネットだ。そして、今彼が使っている機体はF/A-18Cである。

 

≪谷だ。谷に逃げ込んで高度を下げろ!≫

≪あんな狭いところを飛ぶなんて自殺行為だ!≫

≪このまま吹っ飛びたいのか馬鹿野郎!!≫

 

皆が罵詈雑言じみた言葉が飛び交うほど混乱していた。1機、また1機と谷の中に入り込む。谷の中を見た彼女からしても今のスピードと比べれば狭すぎることが見て分かった。我々が開発しているジェット機に乗ったことがあるが、あの機体で飛ぶと谷の壁に激突してしまうと分かるほどその谷は狭かった。

 

≪弾数4、弾着まで15秒≫

≪各機弾着に備えろ!≫

≪弾着まで10秒!≫

≪レイピア12!速く谷に入れ!≫

 

上空を見ると何機かがまだ上を飛んでいる。それにさっきから聞こえてくる通信に紛れていた『ストーンヘンジ』という言葉は確か

 

≪来るぞ!5、4、3、2、1、弾着、今!≫

 

通信越しのカウントダウンが終わった瞬間

 

 

 

 

 

 

空が、砕けた

 

 

 

 

 

 

≪あああああああああ!!―――――――――≫

≪レイピア12が巻き込まれた!≫

≪ほかの何機か巻き込まれたぞ!≫

≪ヘイロー7、通信途絶!≫

≪何て威力だ!≫

≪ヴァイパー11とオメガ5もやられた!≫

≪ヴァイパー9、応答しろ!応答しろ!!≫

 

味方から聞こえてくる悲鳴にも似た通信。それよりも今の光景が私には信じられなかった。

谷より上、上空を飛んでいた飛行機が一瞬のうちにまるで木の葉が強風に飛ばされるが如く、木っ端微塵に爆散したのだ。見ただけでも10機近くが私の目の前から消えてなくなった。

 

≪ストーンヘンジからのさらなる砲撃を確認≫

≪また来るのか!≫

≪1000㎞さきから狙い撃ちか!≫

≪死にたくなければ谷から頭を出すな!≫

 

よく見ると私は戦闘機の中にいるようだ。しかし、自分が操縦している訳ではない。私自身は操縦席の後ろからこの機体を操っているパイロットを見る。ヘルメットをかぶり顔は酸素マスクと飛行メガネのようなもので隠れて見えない。一つだけ確認できることはこのパイロットはかなりの腕の持ち主だということだ。谷がかなり狭くなっており蛇行しているところをスピードを落とすことなく、谷の壁ギリギリの場所を機体をかすめることなく飛んでいる。

 

「なるべくスピードを落とすな。追撃する敵機に追いつかれるぞ!」

 

操縦している人が後続の味方機に連絡する。帰ってくる返事は様々だった。

 

≪壁にキスだけはごめんだ!≫

≪機体が岩にこすりそうだ≫

≪だめだ、ぶつかる!脱出する!≫

 

何機かが壁に激突してしまう。全員が無事脱出したと祈る暇などなかった。

 

≪弾着まで15秒!≫

≪ばかすか撃ちやがって!≫

≪ミサイル!ダメだ振り切れない。オメガ11、インジェクティング!≫

 

その間にも味方が敵にやられている。そして再び空が轟音を上げながら崩壊する。

 

≪神様・・・!!≫

≪祈る暇あるならさっさと逃げることだけを考えろ!≫

≪おい、あそこを飛んでいたやつらはどこ行った?!≫

≪くそ!くそ!くそ!エルジアの野郎!!≫

 

それぞれが敵に怒りを上げている。

・・・無事に作戦空域から離脱した。

 

≪聞こえるか。無事な機体はそのまま高度を維持、帰投しろ≫

 

おそらく司令官からの声なのだろう。了解と伝えた後、周りを見た。来る前と比べて味方の数が半分以下まで減っていた。

 

「・・・畜生!!」

 

私の目の前にいるパイロットは声をだし、操縦桿を強く握っていた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

目が覚める。外はまだ夜が支配していた。時計を確認し今が深夜3時過ぎだと知る。

 

「水でも飲むか」

 

のどが異様に乾いているのと、寝汗がひどく背中にシャツがベッタリとついている。気持ち悪いためそれを脱ぎ捨てる。上が下着姿だけになるがここにいるのは自分だけなので気にする必要はない。

 

(さっきの夢は)

 

コップに注いだ水を飲みほしその女性、ガランドは窓わきにあるイスに座り夜空の星の見ながら、つい先ほど自分が見ていた夢のことを考えていた。

 

自分が知らない空、知らない場所、知らない飛行機、知らない兵器。明らかに私の記憶ではない。そして最も自分の脳裏に焼き付いているのはあの巨大な爆発だった。これらから導き出される答えはただ一つ。

 

「メビウスの記憶・・・か」

 

そうとしか考えられなかった。だがメビウスは女性だったはずだ。目の前にいる人はヘルメットとバイザー、酸素マスクで顔が隠れて見えないが声からして男性だろう。

 

何故メビウスの記憶を夢という形で私が見るのか、分からない。だがこの夢を見たおかげでメビウスの世界の戦争がどんなものかを知ることができた。一瞬にして多数の敵を殲滅できる兵器。その兵器本体を見ることはできなかったが夢の中の情報からどんな兵器か予測できた。おそらくあれがメビウスが言っていた『ストーンヘンジ』の破壊力なのだろう。もしこの世界にあったのなら空のネウロイはすぐさま殲滅できただろう。しかし、あれが後に空を支配するのが簡単に想像できた。

 

「人を守るために作られたものでも、人を殺す兵器に成り下がる、か」

 

メビウスが言っていた言葉を口にしながら、ガランドは夜空を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「今日はネウロイの襲来はない・・・という情報ですが昨日のこともありますので・・・」

 

朝食後のミーティングに全員が参加する中、一人だけぐったりとしている者がいた。

 

「む、こらメビウス。ミーナの話を聞いているのか」

「あー・・・聞こえてます。今日一日警戒を厳とせよですね」

 

坂本の声に少しだけ返事をしまたぐったりとする。隣にいるシャーリーが声をかけてきた。

 

「おいおいもしかして寝不足か?」

「・・・ああそうだ。ちょっとひどい夢見てな」

「へぇ、どんなだ?」

 

それに少しばかりの興味を抱いたシャーリーが聞いてきたがメビウス1本人はしゃべりたくなかった。だが追及されると面倒なのでかなり省略したことを話す。

 

「・・・暗闇の中誰だかわからない女が笑いながら襲ってきたらどう思う?」

「あーそれは怖いわ。災難だったな」

「えっ?メビウスもその夢見たの?」

 

シャーリーの隣にいるルッキーニが話しかけてきた。というかお前どんな夢だったのだ?

 

「う~んとね、顔は見えなかったけど女の人が追っかけてきて・・・確か『何とかだったら堂々としろ』とか言っていたような」

「・・・・・・・・・」

 

ルッキーニの話を聞くなりメビウス1は黙り込む。実はみんなが寝ている間、ずっとミーナの世話をしていたのだ。

 

『おいおい、いくらなんでも酔いすぎだ。もう酒のむのやめろ』

『いいえ、私はまだ酔ってなんかないわよぅ』

 

こちらの制止を聞かず少しづつではあるがウィスキーを飲んでいる。水が必要になるなと思いながら立ち上がろうとした瞬間。

 

『・・・ん?って、あぶねぇ!』

 

ミーナがいきなり俺を掴んで顔を迫らせてきたのだ。それを振りほどいて回避するとミーナはメビウス1が座っていた場所にバタンと倒れる。

 

『おい、大丈夫か?』

『うふ』

『は?』

『うふ、うふふ・・・うふふふふふふふふふふふふふふふ―――』

 

その時メビウス1は直感した。これはもう酔っているどころではない、悪酔いかそれ以上だ。このままだと犠牲が出るのは

 

『申し訳ありません。ミーナ中佐。急用を思い出したため失礼します!』

 

適当に理由を言ってここから逃げることにした。部屋を出て小走りで廊下を歩く。そして左に曲がったとき

 

『みーつけた』

『ちょおおおおお?!』

 

ミーナが立っていたのだ。俺の目の前に、しかも足音たてづ先回りして。顔は笑っているのだが夜なため、この状況だと軽くホラーだ。すぐさま反転してダッシュで逃げた。後ろを振り返るが追ってこない。

 

(諦めたか・・・?)

 

そう思いながら前方を見ると

 

『うふふ』

『はあああ!?』

 

また先回りされていた。つーかもう怖いんですけど!こんどは追ってきている。

 

『あら、なんで逃げるのかしらぁ?』

『お前が絡んでくるからだろう!』

『私がキスをしてあげようとしているのに』

『お前さらっとすごいこと言ったよな今!?それは禁止されてるんじゃなかったのか!?』

『ふふ、私がルールよ♪』

(だめだ。はやくなんとかしないと)

『男だったら堂々としたらどうなの!』

『それは大声で言うな!』

 

・・・ということが今朝4時くらいまで続いたのだ。途中で倒れた(眠くなっただけ)ミーナを抱えて彼女の部屋に寝かせて、やっと自分の部屋に戻ってきたのだ。結果、かなりの寝不足状態。朝食後に夜のことをミーナに聞いてみたが

 

『なんのことかしら?』

 

すっかり記憶が飛んでいた。これはもう溜め息しか出てこなかった。

 

「そういえば、補給物資が午前中に船で来る予定だったな?」

「そうよ。そのときになったら皆さん自分が使うものが揃っているかどうか確認してください」

「すまない、ミーナ中佐。何もなければ寝ててもいいか?」

 

話を聞く限り、その補給船以外何もないので自分は自室で寝ようとした。

 

「別にいいけど、スクランブルの時はちゃんと起きてね」

「了解」

「よし、では解散」

 

美緒の言葉で全員がそれぞれしたいことをしようと動き出した。少しでも仮眠を取ろうとメビウス1は自室のベッドで横になった。

 

 

 

そこは夜の空。本来そこは暗闇が支配しているのだが、空は黒ではなく赤く染めあがっていた。下を見る。

 

目に映るのは赤、赤、赤。

 

今まさに燃えてなくなろうとしているどこかの都市だった。その上空に黒い巨大な物体が浮かんでいる。

 

(あれは、ネウロイか?)

 

そしてその周りを人型の何かが数名飛んでいた。その顔に見覚えがある。

 

(ハルトマンにバルクホルン、ミーナとガランドか)

 

そのほかのウィッチもネウロイに攻撃を仕掛けていた。

 

「このぉぉぉぉぉ!」

「よくもベルリンを!」

「いい加減に墜ちろおおおお!!」

 

皆が皆悲痛な叫びをあげている。そして現れたコアにバルクホルンがとどめを刺した。

コアを失ったネウロイは砕けて燃え盛る街に落ちていく。その中に一人の女の子が見えた。

 

「クリス!」

 

バルクホルンがその子を助けようと全速で降下していった。残された皆は火に包まれる都市を見下ろす。

 

「ひどい・・・」

 

辛うじて出た言葉はそれだけだった。必死に戦ったのに自国の首都を守れなかったのだから。呆然としている間にバルクホルンが先ほどの女の子を抱えて戻ってきた。

 

「私だ・・・・・・なに!?・・・分かった。司令部より全員に通達する。これより生存者の捜索と救助を行え。そのあと我々はポツダムへと撤退」

「な!」

 

ガランドの言葉に全員が息をのむ。彼女が言っていることを信じたくなかったのだろう。

 

「首都ベルリンを放棄する」

「そんな!我々はまだ戦えます。敵に首都を奪われるわけには―――」

「聞け!!!」

 

ガランドの声に全員が沈黙した。

 

「一時撤退した後、部隊を立て直して反攻へと移る。今は生存者の救助に専念してくれ。これは命令だ」

「・・・了解しました」

 

誰もが悔しく思っていただろう。祖国の首都を守りきれず、敵に明け渡すことになるだから。

 

「全員散開!ひとりでも多くを救助しろ!」

 

ガランドの命令にばらけて要救助者の捜索を始める。1人残ったガランドは

 

「くそ」

 

誰にも聞こえない声で燃え広がるベルリンの町を見下ろしながら呟いた。

 

 

 

 

「―――スさん。起きてますか。メビウスさん」

「・・・ああ、今起きた」

 

宮藤の声で目が覚めた。時計を見ると1時間くらいしか寝ていない。

 

「ミーナ中佐と坂本さんが呼んでますよ。なんでも届いたものによく分からないものがあるからみてほしいだそうです」

「分かった。少し待て」

 

寝間着姿から普段着に着替えながらメビウス1はついさっきまで見ていた夢のことを考えていた。

 

(確か夢にいたミーナたちはカールスラント出身だったな。ということはベルリンはカールスラントの首都か)

 

しかし、なぜ彼女たちの記憶を部外者の俺が見るのか?そんな疑問がでたが答えが見つかることはなかった。

 




他人の記憶を夢という形でみるネタは型月作品のFateからとりました。

本来は他人と魔力で繋がることで相手の記憶を見てしまうらしいですが、
私としては他人の魔力に干渉または干渉されることで見ることができると思いこんな感じにしました。

追記
他の作品を読んでいるときに思ったのですが人物設定は書く必要あるのでしょうか?
自分としては必要ないと思うのですが(台詞がないエスコン主人公はさておき、ストパンキャラは公式でもう決まってますし)
どうしましょうか?

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