【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

15 / 48
小説のこっくりさんのお話を少しだけ変えてみたお話です。

基本、小説に沿う形になりますので小説から文章そのまま持ってきたものが多くなります。ご了承ください。

楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ


第13話「こっくりさんと、とばっちり?」

この世界に来てからメビウス1は通常のネウロイとの交戦を基地の通信越しで何度か聞いた。自分も参戦したいのはやまやまだが、レシプロのストライカーで基地から離れた時、もしあの時のようなジェット戦闘機型ネウロイが現れたら手も足も出ない。よってメビウス1は基地に待機状態となりもしもの時に備える方針で決まっていた。

 

昼間に宮藤がバルーン回避訓練で多くの気球を割ったある日。

 

「…で、何やってんだお前ら」

 

時間は午後3時過ぎ。ウィッチ控室ではルッキーニたちがテーブルを囲んで何やらやっていた。

 

「今から交霊会をやるんだよ。芳佳に憑いている霊を呼ぶんだ」

「………?」

 

さっぱり理解できない。詳しく聞いてみたら、宮藤の実戦と訓練があまりにも違うのは何かものすごい霊が憑りついているからだ。と、ルッキーニが主張し、それを確かめようとこのようなことになったのだそうだ。交霊会、分かりやす言うなら降霊術。そんなオカルトみたいなことがあるのだろうか。

 

「戦闘待機中にやることか?」

「まあまあ、いい時間つぶしだって」

「メビウスさんもやります?」

「遠慮しとく。なんだか眠くてな」

 

あんまり騒がないでくれよ、と言い残しメビウス1はテーブルの端っこで眠り始めた。

 

「じゃあ始めようよ。芳香、なんて言うんだっけ?」

「はい。じゃあ私がさっき言ったのを一緒に唱えてください」

 

そして、芳佳、ペリーヌ、ルッキーニ、シャーリーの4人は呼吸を合わせて

 

 こっくりさん こっくりさん

 いらっしゃいましたら、北の窓からお入りください

 

こっくりさんが始まった。

 

 

 

 

のだが、

 

「お前な、馬鹿か? 誰も答えを知らないんだったら、これが正解かどうかも分からないだろうが?」

「それを気が付いていたなら、先におっしゃるべきではなくって!」

 

シャーリーとペリーヌはにらみ合う。結果からいえば、こっくりさんは成功した。ただ、本当にこっくりさん(幽霊)なのかペリーヌが疑ったため誰も分からない質問をした。その内容と答えのせいで気まずくなったのだが。

 

「じゃあさ。メビウスだけが知っていることを聞けばいいんじゃない?」

 

ルッキーニの言葉でそこにいる全員がなるほどと同意した。そうすれば本当にこっくりさんかどうか証明できる。

 

「あれ? でもこっくりさんはメビウスさんのこと分かるのでしょうか? 私たちと世界が違うんですよね?」

 

宮藤はふと思った疑問を口にした。私たちとは違う世界であるメビウスのことをここの世界の霊であるこっくりさんは分からないのではないか?

 

「まあまあ、そんなのやってみなけりゃ分からないって」

「じゃあ私が聞くね。こっくりさん こっくりさん、メビウスの本当の名前は?」

 

ルッキーニはメビウス1の本当の名前は何か? をこっくりさんに質問した。これは皆が気になっている内容で少しばかり期待したがコインの反応はなかった。

 

「あれ~? 動かないね」

「やっぱり、無理じゃないですか?」

「今度は私が質問。こっくりさん こっくりさん、メビウスの故郷の国の名前は?」

 

次にシャーリーが質問した。皆は先ほどと何も変わらないだろうと思っていたが…

 

N・O・R・T・H・P・O・I・N・T

 

コインがゆっくりと動き出し、言葉を示した。

 

「ノースポイント?」

「これがメビウスの国の名前ですの?」

「次誰が聞く?」

「じゃあ私聞きます。こっくりさん こっくりさん、メビウスさんの好きな食べ物は?」

「宮藤お前無難な質問だな」

 

平凡すぎる質問に少し責められながら聞いてみるとコインが動き出す。

 

な・っ・と・う

 

「なんですの!? メビウスさんはあの臭い食べ物が好物ですの?!」

「でもメビウス来てから納豆食べてないよね?」

「なんで納豆を知ってるんだ?」

「メビウスさんの世界にもあるんじゃないですか? 納豆」

 

出てきた答えに騒ぎながら(主にペリーヌ)端から見ていたエイラが口を挟んだ。

 

「なあ、メビウスは強いけどあいつと対抗できるやつっているのカ?」

「そういえばエイラは初めての被弾をメビウスにやられていたんだよな。悔しいのか」

「うるさいナァ、いいだろ」

「それでは私が。こっくりさん こっくりさん、メビウスさんが認めるお相手は誰ですか?」

 

エイラの質問をペリーヌが代わりに聞く。

 

Y・E・L・L・O・W・1・3

 

「Yellow 13?」

「だれでしょう?」

 

人の名前とは少し違う言葉に全員が頭を抱えた。ただ分かることは誰かの仇名、二つ名だということだった。

 

「じゃあこれが最後の質問ね。こっくりさん こっくりさん、メビウスが嫌うものは?」

 

ルッキーニがメビウスに対しての最後の質問として、ふと思ったことを口にした。食事に関しても訓練に関しても、メビウスは好き嫌いなくこなしている。同じ部隊にいる者にとって彼女の苦手なもの、弱点(?)みたいなものが気になっていた。それに応えるかのようにコインはゆっくりと動き出す。だが、導き出された文字を見て余計に分からなくなった。

 

「…これってどういう意味?」

「さあ?」

「なにかの暗号でしょうか?」

 

皆がそれぞれで話し合う。出された言葉は…

 

1・9・9・4・X・F・0・4

 

もはや本人しか分からない言葉だった。

 

「まあいいや。それじゃあ、本題。こっくりさん こっくりさん、あなたは芳佳に憑りついているのですか?」

「ルッキーニちゃん。私霊に憑りつかれてなんかないよ」

 

ルッキーニの物騒な質問に芳佳はぶうっと頬を膨らませる。だがコインはそれを無視するかのように『Yes』のところに動いた。

 

「えええ~!?」

「誰ですの!? 動かしましたの?」

「わたしじゃ…」

「ありませんわよ」

 

シャーリーとペリーヌは顔を見合す。ルッキーニは質問を重ねた。

 

「こっくりさん こっくりさん、あなたは一体誰ですか?」

 

再度、質問をする。しかし、反応がない。

 

「こっくりさん こっくりさん、あなたは一体誰ですか?」

 

すると

 

バンッ!

 

風にあおられた窓が開き、風にぶつかり激突した。

 

「もう、窓がうるさいですわね!」

 

眉をひそめたペリーヌがコインから指を離し立ち上がる。そして、窓を閉めカーテンを閉じた。

 

「だ、ダメですよ! こっくりさんが帰れなくなります!」

 

とその時

 

びぃう!

 

「うわ!」

「きゃあ!」

 

突然、旋風が発生しテーブルに置いてあった紙とコインを巻き上げた。ロウソクの火が消え部屋の中が真っ暗になる。

 

「ど、どうなったのですの?」

「ちょっと、明かりは? カーテン開けてよ!」

「あ~ん、なんか踏んじゃった!」

「サーニャ、頼む~」

「……電気」

 

エイラに言われてサーニャはすすっと扉のそばに辿り着き、照明のスイッチを入れた。

 

照らし出される室内。テーブルの上が散らかっている他に、異常はないようだ。だが

 

「え? ちょっと?」

 

宮藤が両手を伸ばして、テーブルに突っ伏していた。まるで凍りついたかのように動かない。

 

「宮藤、寝てるのか?」

 

シャーリーは芳佳の肩に手をかけようとした。その時

 

「……無礼者。触れるでない」

 

芳佳の手が、乱暴にシャーリーの手を払った。

 

「宮藤?」

「宮藤? 宮藤とは、何者じゃ?」

 

ガタン! と椅子を鳴らせて芳佳は立ち上がる。

 

キリッとした目。

凛々しく結ばれた口元。

普段の芳佳とは、まるで別人の顔である。

 

芳佳(?)は周りにいる人物を見つめる。

 

「その瞳、その髪の色。…うぬら、物の怪、妖怪の類か?」

「失っ礼な憑き物ね~」

 

ルッキーニは腰に手を当てて、芳佳を睨み返す。

 

「そ、そういうあなたは何者ですの!?」

 

顔を強張らせながらペリーヌは詰問した。

 

「我は中原兼遠が娘、巴。旭将軍、木曽義仲殿が従者」

 

芳佳は―――または芳佳に憑いた何者かは―――そう名乗った。

 

「巴御前…とよぶ輩もおる」

「…ええっと?」

「巴ってだれ?」

「さあ? 名前からして扶桑の人じゃないか?」

 

顔を合わせるルッキーニたち。

 

「……そういえば聞いたことあるぞ。スオムス義勇軍所属の穴拭少尉の異名が……確か『扶桑海の巴御前』だったような」

 

エイラは書架に行き、扶桑の歴史関連の本を探しに行った。

 

「ということは巴は扶桑の昔の英雄か何かか?」

 

シャーリーが答えるが知る人がいないので分からない。程なくしてエイラが分厚い本を片手に持ち戻ってきた。ページをめくりとある人物について書かれた場所を開く。

 

「…平安時代末期の伝説の女武者。平家を打ち破った木曽義仲の従者。色白で美しい女武者として有名。木曽義仲の討ち死にの直前に別れ、後に出家して義仲の菩提を弔った…とされる」

「そもそも平安とか武者とか平家とか…なんですの?」

 

ペリーヌは首を傾げる。やはりヨーロッパには扶桑の文化…それも歴史はあまり知られていないようだ。

 

「それよりも! 豆狸を元に戻しなさい! このままでは坂本少佐にどんなお叱りを受けることか!」

「ええ~いいじゃんこのままでもさ」

 

ペリーヌとルッキーニは互いににらみ合う。それを余所に

 

「だから。ここはブリタニアという西の島国。扶桑は東の島国だから文化も人も違うんだよ」

「そうか。ここは大陸の向こう側か」

「それに時代もあんたのいた頃からず~と先。たぶん800年くらいの未来なんだって」

「我が生きた時から800年か。不思議なこともある物よな」

 

エイラが巴御前? に話し込み、何とか状況を納得させていた。その時、基地のサイレンが鳴った。

 

「「!」」

「こんなときに!」

 

全員が動き出す。ネウロイの迎撃に向かうためシャーリーとペリーヌは宮藤=巴御前を両側から挟むように、ハンガーに向かう。横を見るとうるさいサイレンがまだ鳴っているのにメビウスは眠り続けていた。

 

「エイラ! メビウスのやつ起こしといてくれ!」

「分かったゾ」

「…気を付けて」

 

エイラとサーニャは手を振り見送った。メビウス1の傍に近寄り肩をゆする。

 

「おーい。メビウス。起きろ」

「……う…ん。……………うん?」

「起きたか。敵襲だz」

 

エイラの言葉を無視してメビウス1は肩をゆすり続けるエイラの手を掴んだ。そして、立ち上がる。メビウス1の顔はいつもと比べ、目が空戦の時のように鋭く、わずかだが雰囲気も違っていた。

 

「メビウス…?」

「……どうしたの?」

 

2人はメビウスを見つめる。メビウス1は2人を交互に見つめて答えた。

 

 

 

「おぬしら、何奴じゃ」

 




こっくりさんの詳細や怪談話を含めて、必ずしも呼ばれるのは1体だけではないと思うのは私だけでしょうか?

読んでいただきありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。