【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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第15話「老兵、出撃」

澄みきった青空。その中を2つの何かが飛んでいる。1つは飛行機、濃い緑色をした機体には黒い丸を覆うように赤い三日月が描かれている。そして、もう1つの影は人型、ただしその足には何かが履かれている。

 

≪よし。このくらいでいいだろう。基地に帰るぞ≫

「メビウス1、了解」

 

大空を飛んでいたのは美緒とメビウス1の2人。今日は扶桑から持ってきた試作機:十七試艦上戦闘機のテスト飛行を行っていた。本来ならメビウスは関係ないのだが、成り行きというか、それに乗り込み戦闘に参加したので、メビウスからの評価を聞いてみたいと坂本から言われた。

 

基地に戻るなり美緒から聞かれる。

 

「それで、メビウスから見てどう思う?」

「そうだな」

 

戦闘機と戦闘脚の2つを乗り、現在の扶桑皇国の主力戦闘機&戦闘脚である零式のデータを見比べる。

 

「確かに旋回性能と火力に関しては十分だろうな。だが…」

「だが?」

「上昇力が全然だめだ。これ(データ)を見る限り零式は高度6000mまでに7分もかからないが、こいつは9分もかかっている。それに速度がたった50kmだけ増加だと前とあまり変わらない」

 

自身が動かした感想とデータを見比べて、メビウス1はバッサリと言う。かくいう美緒も頭を頷かせていた。俺と同じことを考えていたのだろうか。

 

「私も同じことを思ったが、そこまで辛口でいうとは思わなかったぞ」

「直せるものは直しておかないと、欠陥機出すわけにはいかないだろう。正直に言うと、俺からしてみればこれは零式の後継機になるにはもう少し努力だな。もし零式を継ぐ機体にしたいなら、最高速度は可能であれば時速650㎞、最低でも時速600㎞出すようにする。あと、上昇力を高度6000mに6分で辿り着くようにしないとな」

「なるほど、今度本国に帰ったときそう伝えよう。開発チームの落ち込む顔が目に浮かぶが」

「まあ、それに関しては頑張ってくれとしか言えないがな。じゃあ、俺はこれで」

「ああ、すまないな。つきあってくれて」

「いいさ。これくらいしか俺にはできないから」

 

一通り言い終えたメビウス1は別のハンガーへと足を向ける。そこにはかつて共に空を飛んだ機体が鎮座していた。

 

そこにはすでに先客の人が1人。

 

「遅いぞメビウス、早くしようぜ」

「そう急かすな」

 

呟きながら、メビウス1はシャーリーのところに近寄った。彼女の瞳はメビウス1が見た中で一番輝いて見える。それもそのはず、今日は彼女にとって待ちに待った、メビウス1にとってはとうとう来てしまった、F-4Eの試運転の日だった。この日のためにシャーリーはフライトマュアルを読みあさり、メビウス1から直々に後部座席の簡単な操作を教わった。そのときに「私が操縦したい!」と言ってきたがメビウスに「そんな危ないことできるか」と一蹴された。

 

「さて、これに乗り込む前に…こいつを着てもらう」

 

メビウス1はその手に持っていたものをシャーリーに渡した。

 

「なんだこれ」

「耐Gスーツだ。それを着ないと乗れないからな」

 

対Gスーツ。ジェット式の戦闘機に乗るに欠かせない物だ。操縦にあたり急激な重力が発生し、それに対処するために開発された。これを着ないと意識を保つこともできない。それを着替える。

 

「よし、いくぞ…どうした?」

「いや、なんか体が圧迫される感じが…それにこの格好は」

 

見ると彼女の顔は若干赤い。それもそのはずだろう。耐Gスーツは操縦者の体に合うようにできている。普通の服とは大きく違う代物だ。そのせいでそれを着たシャーリーは体の輪郭がくっきりと分かってしまっていた。

 

「メビウスは恥ずかしくないのかよ」

「(恥ずかしいというか、俺はもともと男なんだがな)もう慣れてる」

 

会話を短く済まして、シャーリーを後部座席に乗せた。取りあえずというか、念のためにフライトマニュアルを渡しておく。彼女にベルトをつけてヘルメットとマスクも装着し、自分も乗り込む。

 

「今日の飛行は北海と呼ばれる海域の大陸側を高度100m以下で飛行する」

「100m以下? なんでそんな低空を」

「えー…とな、このまえ俺と宮藤が憑りつかれたときに来たネウロイは高度100m付近の低空にいたからレーダーにひっかからなかっただろ。こいつだとすぐにレーダーにかかるからいろいろ面倒なことになるんだ」

 

もし味方のレーダーに映るとネウロイと勘違いされる可能性がある。さらにこっちのほうが重要になるのだが極力人目につくのを避けたい。ヨーロッパ大陸はネウロイに支配されているため人はいない。もしネウロイに襲われたとしても、相手がジェット型ネウロイでないかぎり逃げ切ることができる。

 

「それじゃあ、行くか」

「オーッ!」

「……そんな冒険に行くんじゃないんだから」

 

ゆっくりと機体を動かし、滑走路に移動する。

 

≪メビウス、離陸を許可します≫

「了解。メビウス1、離陸する」

≪シャーリーいってらっしゃーい!≫

「ああ、ルッキーニもあとで乗ろうな!」

(………なんで遊園地のアトラクションみたいな感じになってんだ)

 

決して楽しむ乗り物じゃないのに。そう思いながら速度を上げて操縦桿をゆっくりと引く。目の前の計器に出される高度を確認する。もしここでレーダーにかかるとウィッチーズ基地からネウロイらしきものがいきなり現れたと騒動になる。高度100mより上にいかないようにしながら離陸した。

 

「シャーリー、聞こえるか」

「なんだ?」

「今日の飛行は基地から東に30km離れたところで北東に向き、100㎞ほど飛行して終了だ。その間はお前がこの機体の目だ。レーダーに注意してくれ」

「わかった」

 

シャーリーの返事を聞き、まずは東に機首を向けた。F-4Eは前席が操縦担当、後席がレーダー・航法担当になる。シャーリーには主にレーダーを見て周辺の状況を知らせるようにした。そうしている間にもう基地から30km離れる。

 

「よし、じゃあ速度のテストをするぞ」

「了解」

 

北東の方角に機体を向けてスロットルをあげる。エンジンの音と振動が直接自分に伝わってくる。全身がシートに押し付けられ、シャーリーは体がおいてかれるような錯覚を感じる。

 

そして、速度を上げていく途中で爆発音に似た音が伝わった。

 

「? メビウス、もしかして故障か?」

「ん? ああ、違う違う。今のはソニックブームっていってだな…」

 

メビウスは先ほどの現象について説明しだした。

 

ソニックブーム

 

それは機体が音速、時速1225㎞を突破するときに発生する現象である。またこのときに衝撃波が発生し、地表にそれが伝わるとガラスが割れるなどの被害が発生する。高高度を飛んでいても影響があるので、戦闘以外ではあまり音速を超えない速度で航行している。

 

「これが音の世界…!」

「正確には音速よりも300㎞速いスピードだ。どうだ? 音速の世界は」

 

メビウス1はシャーリーに感想を聞くが当の本人は何も聞いていなかった。

 

(これが…これが私が目指すスピード…!)

 

誰よりも速く飛ぶことを夢見ていたシャーリー。自分が挑戦する速さを彼女は全身で感じていた。彼女はもう自分の世界に入り、メビウスの問いかけなどしばらく耳に入ってこなかった。

 

 

 

 

「どうだった。音速を超えた時は」

「なんていうかな…正直に言うと、最初、私は死んだと思ったんだ」

「…へー、あの名言を聞くことになるとはな」

 

帰りの飛行でメビウス1は素直に驚いた。何故なら、シャーリーの言った言葉とメビウス1がいた世界の“初めて音速を超えた男”の台詞が似通っていたからだ。

 

「あの名言ってなんだ?」

「いや、俺の世界で“初めて音速を超えた男”の二つ名を得た人物が音速を超えた時に言った言葉が『その瞬間、静寂に包まれた。私は自分が死んだのだと思った』と言ったのに似てたからさ」

 

おかしな偶然があったものだなとメビウス1は思った。

 

「そうなんだ。で、その男の名前ってなんていうんだ?」

「えーっと、たしか……」

 

随分前に見た資料に書いてあった人物の名前を思い出そうとする。

 

(えーと…ち、ち………だめだ思い出せない。それじゃあ下の名前はたしか…イェーg)

「あれ? メビウス、レーダーに何か映ってるぞ」

「なに?」

 

考え事を中断し、シャーリーに状況を説明してもらう。どうやら基地から何か……おそらくウィッチだろう、が飛び立っているのだ。今日は訓練の話は聞いていない。ということはスクランブル?

 

「通信つながるか?」

「ちょっと待ってくれ。今つなげるから…え~っと、回線の開き方は…」

 

シャーリーはフライトマニュアルの本をめくり、通信の仕方が書いてある部分を見つけ出す。彼女の目の前にある多くの機器から必要な部分を操作して、基地との回線を開いた。

 

「こちらイェーガー機、管制塔聞こえるか」

「こちらメビウス1、なにかあったか?」

≪ミーナよ。ついさっき大型1機と小型ネウロイ数機を探知したの。それにその方角にはアフリカ行のブリタニアの輸送船がいるのよ≫

「なんだって!」

 

聞こえてきた内容に驚くシャーリー。必ずしも敵は首都ばかり狙ってくるわけではないのか。

 

「場所は?」

≪基地から西南西、方位100距離200㎞先にその輸送船が…どうするつもり≫

 

輸送船の位置を聞かれて答えるミーナだが、メビウス1の考えていることに気づき質問してくる。

 

「シャーリーはどうする?」

「そんなの言わなくても分かるだろう」

「決まりだ、な。こちらメビウス1、先行して輸送船が逃げる時間を稼ぐ」

≪許可できない…と言っても無駄でしょうね。いいわ、輸送船の救援に向かってください。それとワイト島分遣隊も急行しているので彼女たちの援護を≫

「メビウス1、了解」

「シャーリー、了解!」

 

ミーナからの許可をもらい、輸送船がいる方角に機首を向けた。しばらく高度100m以下で飛行していたが、基地から50kmほど離れたところで上昇した。

 

「シャーリー、アフターバーナーを使う。頭をシートにつけろ」

「アフターバーナー?」

「急加速、マッハ2以上のスピードだ」

 

マッハ2と告げるとシャーリーは「本当か!?」と歓喜の笑みを浮かべていた。何せ今日で音速を超えるだけではなく、その2倍の時速2510㎞で飛行するのだから。高度12000mで機体を安定させる。

 

「レーダーに何か映ったら言ってくれ。…準備はいいか?」

「ああ! どっからでもかかってこい!」

「舌噛むなよ。いくぞ、アフターバーナー点火!」

 

F-4Eのエンジンから炎が伸びる。急激な加速に体がシートに打ち付けられる。速度はマッハ2を超えた。

 

「………ッ!!」(これが音速の2倍!)

 

声に出さなくとも彼女、シャーリーはそのスピードに驚き、瞬きすらしていなかった。外の風景がどんどん変わっていく。今まで経験したことないスピードを出す機体に自分は乗ってるんだ! シャーリーはそれを理解する。マスクで見えない彼女の口は誰が見ても分かるような大きな笑みを浮かべていた。

 

 

 

宮藤、坂本、ペリーヌ、バルクホルン、エーリカ、エイラの6人は高度5000mを全速力で向かっていた。しかし、距離があるため到着するのに20分はかかってしまう。そんな中通信が入ってきた。

 

≪美緒、聞こえる?≫

「どうしたミーナ」

≪メビウスとシャーリーが“例の機体”で先行します≫

「分かった――」

 

美緒が言い終わる前に轟音が鳴り響く。全員が耳を押さえながら上空を見るとメビウスとシャーリーが乗るF-4Eが猛スピードで彼女たちを追い越していた。

 

「うわ~、速いね」

「ぼーっとしていられるか。私たちも行くぞ」

 

ハルトマンの呑気な言葉をバルクホルンは少し叱る。

少しでも早く追いつこうと再び前進を開始した。

 

 

 

ワイト島から50km離れた海上では、5人のウィッチが数機の小型ネウロイと戦闘をしていた。

 

「アメリー、目の前の敵ばかりに気を取られないで!」

「は、はい!」

「もう! 鬱陶しいわね。さっさと墜ちなさい!」

 

小回りで動くネウロイを相手にしながら彼女たちは闘っていた。ただ動きがいいため残り7機に減らした今でも手こずっている。

 

「全員、急いで撃破して輸送船の救援に向かうわよ!」

「でも隊長さん。こいつらしつこいし時間かかるぞ」

「あと4機…」

 

最初、小型10機と大型1機を見つけたが敵は分散して、小型が私たちの足止めを仕掛けてきた。これ以上時間をかけると輸送船が大型ネウロイの射程距離に入ってしまう。

 

「急がないと…!」

 

隊長の角丸美佐の顔に焦りが見え始める。しかし、そんな彼女たちに通信が入ってきた。

 

≪輸送船に向かったネウロイは俺たちに任せろ≫

「え?」

「誰?」

 

いきなり入ってきた通信にほんの少しだけ動きが止まる。だが、残りの小型ネウロイ2機は彼女たちに目もくれず東の方角、輸送船とは反対方向に反転する。だが、小型ネウロイの間を蒼いなにかが高速で通り過ぎた。敵はそれに反応しきれず、何かが通ったときに発生した風圧と衝撃波を受けて回転する。蒼いなにかは小型を無視し、轟音を唸らせながら、彼女たちの上空をあっという間に輸送船方角へと飛んで行った。

 

「なによあれ…いくらなんでも速すぎじゃない…」

「味方でしょうか…?」

 

フランシー・ジェラードとアメリー・プランシャールはつい先ほど通り過ぎた何かを見て言った。少なくともネウロイではなかったが、味方とも断言できなかった。それにあまりにも速すぎて蒼いなにかとしか分からなかった。

 

「…飛行機」

「え?」

 

隣にいたラウラ・トートが小さく呟いた。

 

「速かったけど…飛行機の形をしていた」

「ラウラもそう見えたの? やっぱり私の見間違いじゃなかったのね」

 

高速型のネウロイを今まで見てきたがそれ以上のスピードで飛ぶ謎の飛行機をラウラと美佐は初めて目の当たりにした。もしあれが敵だと戦うのは困難だ。

 

「なあ、隊長さん私の見間違いかもしれないけどさ」

「何かしら、ウィルマさん」

 

つい最近ワイト島分遣隊に配属になったウィルマ・ビショップが自信なさげに言った。

 

「あの飛行機みたいなやつにさ、リボンのマークがあったんだ」

 

 

 

 

 

 

「艦長! あと1分でネウロイの射程内に入ります!」

「くそ、とにかく機関全速で離脱しろ!」

 

ポーツマス港から出港したアフリカ部隊への補給物資を詰め込んだ輸送船は大型ネウロイの攻撃にさらされていた。ネウロイの出現周期からこの日を選んだが、出港初日に気まぐれで動いていたネウロイに見つかってしまった。

 

「救援要請は!」

「現在、ワイト島分遣隊が別のネウロイの足止めをくらっていて、501部隊も向かっているそうですが…」

 

副長の言葉に艦橋が絶望の空気に包まれる。今回は護衛艦も何もないため成す術がない。もはやこれまでかと心の中で思った瞬間、いきなり爆発音が聞こえた。

 

「なんだ! 被弾したのか!?」

「か、艦長! ネウロイが!」

 

外を見ていた乗組員の声を聞き、全員が窓に集まる。見ると大型ネウロイの体の一部が大きく抉れていた。

 

「一体何が…」

 

それを言い終えずに轟音が聞こえてくる。

 

「うるさ!」

「なんだあれは!?」

「ウィッチ…じゃない?!」

 

自分たちの頭の上、大空を得体のしれない蒼いなにかが飛んでいるのを乗組員が目にする。

 

「すごい! 何だか知らないけど撮らないと!」

 

その中で写真が大好きな乗員がこの不思議な出来事を写真に撮ろうと自分のカメラを取りに走り出てしまった。

 

「あ! ばか! 勝手に持ち場を離れるな!」

「ほっとけ、それよりも今のうちに離脱するぞ!」

 

艦長の声に皆我に返り、自分の持ち場に着こうと走る。

 

(何者か知らないが…感謝する)

 

艦長はかぶる帽子を正しながら、心の中で今も未知の何かに対し礼を言った。

 

 

 

 

 

そのころ、F-4Eは大型ネウロイの取りつきながら、輸送船が逃げる時間を稼いでいた。

 

「クソ、貴重なスパローを2発使っても落せないのはつらいな。なんとかコアを見つけないと!」

 

今のところ、残弾は機銃があと400発、赤外線誘導ミサイル4発、セミアクティブ空対空ミサイルが2発。敵の気をそらすために遠距離からスパローを二発撃ち命中したが敵の再生能力でほとんどがもう治ってしまっている。

 

「なあ、コアってどこにある法則とかないのか」

「そんなのないなぁ。探すとしても坂本少佐の魔眼じゃないと見つけられないし」

「じゃあどうすれば…」

 

そのときメビウス1はあることを思い出した。

 

(そういえば、スカイアイはどうしてコアの場所が分かったんだ?)

 

この世界に来る前に遭遇したやつのコアを直接見たのはメビウス1だけだ。スカイアイは直接見ていない。なのにたしかあの時敵の弱点らしき部分を見つけたと言っていた気がする。あのときスカイアイが言っていた言葉は――

 

 

―――不明機の中心部に高熱源反応を感知した―――

 

 

「…そうか、その手があったか!」

「なんだメビウス、なにか思いついたのか?」

「ああ、もしかしたらうまくいくかもしれない。それと言い忘れたけど、吐くなよ?」

「誰が吐くか!」

 

シャーリーの返事を聞きながらメビウス1は機体をネウロイから遠ざけた。そして、反転し、敵ネウロイの背後に着く。距離はサイドワインダーのギリギリ射程外。

 

「メビウス1、FOX2、FOX2!」

 

メビウス1は2発の赤外線誘導ミサイルをノー・ロックでネウロイに放った。そして、そのミサイルはネウロイに吸い込まれるように進み―――右側の部分に誘導されるように命中した。

 

「そこか! シャーリー、一撃離脱で片づけるぞ!」

「了解!」

 

アフターバーナーを使用せず、機体を増速させる。急接近するファントムを近づけさせまいとネウロイは反撃を始める。前方からは銃弾の雨ならぬレーザーの雨。だが

 

「こいつを舐めるなよ…!」

 

旧式でも乗り手によって化けるF-4Eを最大限に活かし接近をやめない。十分な距離にまで近づき

 

「インガンレンジ、ファイア!」

 

20㎜弾をありったけ撃ち込んだ。ミサイルが当たった部分を舐める様に蜂の巣にする。

 

そして、一瞬赤く光ると白い破片となり崩れ始めた。

 

「ターゲット撃破。レーダーの反応は?」

「なにも映ってないぞ。どうやら分遣隊のほうも終わったようだ。少佐たちが合流している」

「そうか…輸送船のほうにあいさつしに行くぞ」

「いいのか? これ見られたらまずいんだろ?」

「もう見られてるからな。それに被害にあってないか確認する必要がある」

 

そういってメビウス1は機体を輸送船のほうに向け飛行した。

 

 

 

「艦長。大型ネウロイの沈黙を確認しました」

「そうか。あれがやってくれたんだな」

 

報告を聞いた艦長はふう、と安堵の息を漏らした。その間に新たな情報が入ってくる。

 

「か、艦長! あれが接近してきます!」

「なに?」

 

まさかこちらを襲うつもりかと思ったがそうではないと分かった。それはネウロイではなく、けれど我々が知る飛行機の形をしていない。先ほどよりもゆっくりと、だがプロペラの機体より速く、大きく旋回している。まるで我々を見守っているかのように。

 

「? 艦長、通信が聞こえました」

「なに?」

「なんとだね?」

 

もしかして、あの飛行機からか?

 

「それなんですが…『We wish you a happy voyage(よい航海を)』…です」

 

その内容を聞き顔を見合わせる副長と艦長。あの未知の飛行機は我々に航海の無事を通信越しで祈ってくれたのだ。そう思うと自然と顔が緩んできた。艦長は艦内放送装置に向かい言った。

 

「船内で手の空いている物は甲板に行き、上空を飛んでいる命の恩人に敬礼しなさい」

 

 

 

 

輸送船の周囲を回るように旋回しながらメビウス1とシャーリーは船の被害を確認していた。だが、見たところなにもないようだ。

 

「どうやら大丈夫なようだな。帰るぞ」

「そうだな。…お? メビウス、見てみろよ」

「うん?」

 

シャーリーに言われて輸送船を見る。船の甲板には乗員が集まり、半分の人はこちらに敬礼し、もう半分は手を振っていた。それに応える様にメビウス1は機体をロールさせた。

 

「うわ! や、やるならやるって言ってくれよ」

「ああすまんすまん。じゃあもう帰ろう」

「そうだな」

 

機体を上昇させて加速し、輸送船と別れた。基地に帰ったときに聞いたがワイト島分遣隊の人たちには美緒が直接話して口外させないよう約束してくれたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

後日、ヒスパニア沖を航行しているあの輸送船の船内

 

乗員A「あの飛行機なんだったんだろうな」

乗員B「さあな。お前は見たのか?」

乗員C「うう、見たかったけど無理だったんだよね…」

乗員D「じゃあこれやる?」

乗員C「ん? て、これは!? いつのまに撮ったんだ?!」

乗員D「ふっふっふ。お前たちが手を振っているときに連写しまくったのさ。ほとんどぼやけていたけど、これだけは良かったんだ」

乗員A「俺にもくれないか。記念にとっておきたい」

乗員D「いいぞ~。ただし、帰ったらなにかおごれよ」

乗員A「おお!」

 

彼がうまく撮れたという写真にはその中心に小さいながらも知る人にははっきりわかるほど、きれいにF-4EファントムⅡが映っていた。

 

 

 

 

 

 

この写真が後に、ある有名人がブリタニアに来るきっかけになるのは、まだ誰も知らない

 

 

 

 

 

 




今回書いている途中(9割完成)でニコニコ動画の「ストパン初心者御用達動画」でストパン世界観を学んでいた時にワイト島分遣隊とその場所を見て、思わず

「ぶっ! この場所なんか!?(今回の戦闘空域に近い! この人たちも出さないとおかしいぞ!?)」

ということで急遽ワイト島分遣隊の皆様を出すことになりました。

いやー、ウィキを読んで本(中古)を買って、資料をあさりました。はい。

これでよかったのかな? この人たちのセリフとか?

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