【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐ 作:skyfish
今回でバルクホルン回に突入です。
楽しんでもらえたら幸いです
1944年7月1日
「だめだ。それには賛同できない」
ブリタニア空軍省の建物内、薄暗いどこかの部屋。そこでブリタニア空軍大将トレヴァー・マロニーと彼の配下の者たちが集まっていた。
「ですが閣下。あれを利用すれば我々の軍事力は飛躍的に上がります」
「そうすればネウロイどもを殲滅、その後のヨーロッパのイニシアチブは我々が握れます」
「確かにあれの技術は今の私たちにとって喉から手が出るものだろう。だが、あれが必ずしも我々が求めるものなのか分からなければ意味がない。ましてや、調査のためにそれを起動させるなど暴走したらどうするつもりだ」
「ですが…」
マロニーの言葉に言い返せない者たち。マロニーの言っていることが分からない彼らではない。しかし、ウィッチに頼らない戦力を求める彼らにとって、偶然発見したある廃墟の技術力を手に入れたい。目的は同じだが彼らの上に立つマロニー1人だけ消極的だった。
「我々が作り上げたものならまだいい。だが、正体不明のものに頼ることはできない」
「しかしこのまま何もしないのもどうかと思いますが」
マロニーと部下たちはともに一歩も譲らない。しばしの沈黙が続いた後、マロニーは小さく溜息をついた。
「分かった。許可しよう」
「あ、ありがとうございます! それではさっそく「ただし!」!?」
配下の者の言葉を遮りマロニーは言った。
「前から我々が進めている計画で安全性が保障されてからだ。これだけは譲れん」
「……了解しました。ですが、準備だけは進めておきますので」
それだけを言い残し、部下たちは会議室から去って行った。マロニーは一人になってもその表情は固いまま資料に張ってある写真をじっと見つめていた。
真っ暗な闇の中に俺は一人立っていた。周りを見ても何も見えない。だけどなにも怖いとは感じなかった。なにげに上を見上げる。そこには満天の星空。技術が進み空気が汚れてしまった俺たちの世界では特別な場所に行かなければ見ることができないほどきれいな星々が輝いていた。誰が見ても息をのむ光景。だが、その中で一番輝いていた星がバラバラに砕け、堕ち――――
「うあああああああ!!!」
悲鳴のような声をあげてメビウス1は目を覚ました。体中が汗でぐっしょりとしている。
「はー………はー…………」
飛び起きてからメビウス1は動かなかった。いや。正確に言えば動けなかった。メビウス自身この体になり、異世界にとんでしまっても“あの日”が近づくと見てしまう。あの光景を。ユージアを恐怖に陥れたあの流れ星を。メビウス1の大切なものを奪ったあの光を。
「墓参り……行けないな…」
目覚めてからなんとか絞り出した言葉だった。
今日の訓練風景を眺める。空にはカールスラントが誇るトップエース、ハルトマンとバルクホルンが飛んでいる。それを横目で見ながらメビウス1はある特訓をしていた。
「ほあああぁぁぁぁあぁぁぁああぁ!!!」
両手を前にかざし魔力を放っていた。いまやっているのはシールドを張る練習。エイラたちから教わっていたのだが、全くと言っていいほど形にならない。魔力は出るが魔法陣が形にならずどれも歪んでいる。因みに今は扶桑式の魔法陣の練習をしているが、ナスのような形になっている。
「これもだめだナ」
「メビウスって、シールドへただね」
「これでリベリオン、ブリタニア、ガリア、ロマーニャ、オラーシャ、スオムス、扶桑すべてのシールドをやったけど…メビウスって才能があるんかないのか…」
「うるせー」
エイラ、ルッキーニ、シャーリーにダメだしされる。
「そもそもこっちにはシールドって概念がないんだ。それにどっかのエースが言ってたぞ『当たらなければどうということはない』と」
「いやそんなこと言われても」
「そっちの常識なんか知らないし」
そうだよなぁ。と思いながらメビウス1はばたりと地面に座り込んだ。彼女たちにはいっていないがメビウスの世界にウィッチはいない。それに魔法なんてものも存在しない。その世界の人間が魔力を扱えるからといってすぐに理解・活用できるわけがない。そんな非科学めいたことはさっぱりだ。
「ひとつ聞くが、お前らはどうやってストライカーを動かしているんだ?」
「どうって、普通に魔力を送るだけだけど」
「そうか」
何気ない会話をしながらメビウス1はあることを思っていた。
(なんだかみんなが言っている操縦と少し違うな)
小さな疑問をメビウス1は抱いていた。彼女たちはストライカーを動かすときはただ魔力を送るだけと言っている。
だが、メビウス1はF-22Aストライカーを動かすとき頭の中で操縦桿を握っているイメージをしている。飛んでいるときは頭の中で実際にコックピットに乗っているイメージをしながらでだ。別に苦ではないのだが、それなら実物の戦闘機に乗ったほうが自分としてはそれがいい。こんなメンドクサイことを彼女たちは毎日しているのかと思ったがどうやら少しばかり違いがあるようだ。
(これがあの時動かせなかった理由か?)
模擬戦前にスピットファイアMk.Ⅴが動かせなかったことを思い出しながらメビウス1は仰向けになり空を見上げる。そこには二つの飛行機雲が新しいループを描いていた。
その日の夜。バルクホルンは自室から出て窓から夜空を眺めていた。眠ることができず気晴らしに歩いていたのだ。ふと今朝見た夢を思い出す。
焼け野原になった故郷を、守れなかったカールスラントを、クリスを守れなかった、あの夢を。
「くそ、こんなところでうだうだしているわけにはいかない」
今こんな悪夢に苛まれている暇は私にはない。祖国を取り戻すまで、クリスの仇を取り戻すまで私は闘うんだ。それだけが私の戦う理由だ。そのためなら例えこの身がどうなろうと―――
「どうしたの? こんな夜遅くに」
「ミーナか」
「妹さんのことでも考えてたの?」
「!!」
一瞬で見抜かれてしまった。やはり彼女には敵わない。
「…あれはあなただけのせいじゃないわ」
「いや、もっと早くネウロイに攻撃を仕掛けることができていたら、クリスまで巻き込むことはなかった」
ミーナがフォローしてくれようとするが、そんなことは関係ない。
「敵の侵攻を遅らせて、街の人が避難する時間は作ったわ」
「国を守れなかったのは事実だ!」
そうだ、私は守れなかった。クリスを、自分の国を。
「それは私たちも同じだわ」
「…すまない」
そうだった。国を守れなかったのはミーナやハルトマンも同じだった。それに気づかない私はどうしようもない。
「そうだ! 休暇もたまってるし、しばらく休みをとったらどうかしら?お見舞いにも行ってないでしょ?」
ミーナが勧めてくれるが、ネウロイを倒すまで休んでなどいられない。
「その必要はない。私の命はウィッチーズに捧げた。クリスの知っている姉は、あの日死んだ。次の作戦も必ず出してくれ」
そう言って私はミーナを残して部屋を出た。去り際にミーナが何か言っていたが、よく聞こえなかった
「………なるほどね」
ミーナとバルクホルンが話していた部屋から少し離れた場所。そこに隠れるようにメビウス1がいた。メビウス本人も夜眠れず、なんの目的もなく歩いていたが偶然ミーナたちの話し声が聞こえてきた。盗み聞きは趣味ではないが、話している内容を聞いていくうちに真剣になってしまった。
(私の命はウィッチーズに捧げた…か。お見舞いと言ってたからクリスって子は入院中か?)
バルクホルンが言っていた言葉を心の中で繰り返す。その後、二人に気付かれないようにその場を後にした。
次の日の練習風景。いま空ではメビウスとシャーリーとルッキーニが飛んでいる。今回、メビウスが敵役となり、シャーリーたちがメビウスを仕留めるという方式を行っていた。2人の攻撃を十七試艦上戦闘脚を履いたメビウスは躱し続ける。
≪動きが単調すぎる! 得意な技でやるのはいいが同じことを繰り返さず、もっとランダムに動け、相手に動きを悟られるな!≫
シャーリーとルッキーニは得意の一撃離脱戦法で戦っていた。一撃離脱戦法はその名前の通り高速で相手に近づき相手と交差する瞬間攻撃、離脱する戦法だ。単純ではあるが相手との接触時間が短いため被弾の危険が少ない。生存率が高く、ヨーロッパ出身のウィッチがよく使う。さらにシャーリーの高速魔法とルッキーニの攻撃系の魔法によりこの戦法の相性が抜群だ。この連携攻撃で多くのネウロイを撃墜している。だが、この通りメビウス1にダメだしされていた。決して彼女たちの腕が悪いわけではない。
≪シールド無しでここまでやるとはな。ルッキーニ、もう一度仕掛けるぞ≫
≪OK! シャーリー≫
それを地上から美緒とミーナが見ていたが2人の顔は芳しくなかった。
「美緒、彼…じゃなかった彼女を見てどう思う?」
「そうだな強いて言うなら…」
いつもの覇気がない。美緒はそう言った。
「やっぱりそう思うかしら」
「ああ。まだメビウスに会って2カ月くらいだが最近あいつの調子がおかしく見えるんだ」
「目元にうっすらと隈が出来てたわね」
「ただの寝不足だといいんだが…バルクホルンに続いてメビウスもこうだとな」
「2人がこんな調子じゃあね。なにも起こらなければいいのだけど」
「そうだな」
美緒とミーナが話している間にも空には新たな3つの飛行機雲が互いに絡み合いあいながら渦状の形を作っていた。
たぶん次くらいでバルクホルン回終わるかもしれません
最後まで読んでいただきありがとうございます。