【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐ 作:skyfish
7月6日
「メビウスさん。夕食の時間ですよ」
「ああ。今いく」
リーネに言われてメビウスはテーブルにあるものを片づけて部屋を出る。
「一体何をしているのですか? ドアにこんな張り紙をして」
リーネはドアに張り付けてある紙を指差して言う。そこにはこう書かれていた。
『現在作業中。用のある者はノックしてくれ。それ以外のものは立ち入り禁止』
3日からこのようなことになっているのだ。そのときにメビウスが1週間分の新聞紙を部屋に持ち込んでいるのを他の人が目撃している。
「とりあえず今は秘密だな。あまり追及しないでくれ」
「はあ、そうですか」
「それよりメシだメシ」
そう言いながら2人は食堂に歩いて行った。
「休暇?」
夕食後、ミーナに呼び出されたメビウス1は明日休んではどうかと言われた。なんでもこの頃の自分は疲れて見えるらしい。確かに最近いろんな奴から心配かけられているような気がする。
「ええ。少しはあなたも休みを取ったほうがいいと思ってね。それに最近ずっと部屋に籠っているけどなにをしているのかしら?」
「それについてはノーコメント。なに、大したことないものだよ」
「大したことない物なら教えてくれてもいいんじゃないかしら」
ミーナは笑顔で言っているのだが何故だろう…怖い。
「あー…ひとつ聞いていいか? バルクホルンのクリスって子なんだが」
「? なぜあなたがクリスのことを」
「先に謝っておくが実はな…」
メビウス1はこの前、ミーナとバルクホルンの話を聞いてしまったことを話した。
「そのクリスって子は入院中か」
「ええ。意識は回復してるけどまだ療養中よ。でもそれと何の関係が」
「ん? ああ、あまり言えないけど一言でいうならそのクリスちゃんに贈るものだよ。それにしても休暇か…すこし調達したいな。分かった。明日だけ休みをもらってもいいか?」
「そう。じゃあこれ」
そう言いながら彼女はメビウス1に封筒を手渡した。その中に入っていたのはブリタニアのお金だった。
「皆さんのと比べると少ないですが使ってください」
「いいのか? 俺は正規軍じゃないし居候の身だぞ?」
「いいのよ。これくらいしかお礼ができないから」
「そうか、ありがたくもらうとするよ」
もらった封筒をジャケットの内ポケットに入れながらメビウス1はミーナに敬礼した後部屋を後にした。
7月7日
基地に置いてあるトラックの荷台に乗り込む。運転はシャーリー。助手席がルッキーニ。荷台にはメビウス1とハルトマンが乗った。その荷台に置いてあるものが1つ。
「わざわざストライカーを持っていく必要ないんじゃないかな」
「念には念を入れてだ。俺がいない間に襲撃があったら事だろう」
そこにはスピットファイアMk.Ⅴが置いてあった。もしものためにすぐに基地に戻れるようにするためである。最初は十七試艦上戦闘脚を持って来ようとしたが、美緒に断られた。なんでもあれは扶桑の機密に関わるから基地の外には出さないでほしいと言われたのだ。しかたないので以前使ったストライカーを持っていくことにした。
「っと。これでよし」
シャーリーが荷台に乗っかったストライカーをロープで固定する。それを手伝っていたが何故か異様に使うロープが多すぎないだろうか?
「なあ。ここまで固定する必要あるのか?」
「ん? ああ、少し訳があってね。あとで分かるさ」
「?」
疑問に思いながらもメビウス1はそんなに深く追求しなかった。
「ぐー……すー……」
基地を出たトラックの荷台の中でメビウス1は横になり寝ていた。道があるとはいえコンクリートで整備されていないから所々段差がありその度に揺れるが戦闘状態のコックピットに比べれば揺り籠のようなものである。
「メビウス寝てる?」
「うん。寝てる」
「さ~て今日は記録更新なるか」
「メビウス驚かそうよ」
「ククク…どんな顔するか」
不敵な笑みを浮かべながらシャーリーは準備を進める。
「いくぞ!」
一気にアクセルを全開にした。
「ヒャッホーーーーーー!!!」
「あははははは! 速―い!!」
トラックを勝手に改造して普通じゃ出せないスピードを出した瞬間、スピードのことだけ考えメビウスのことを忘れる2人。急加速したトラックに慌てずハルトマンは縁にしがみついている。彼女もこのスピードを堪能しながらメビウスのほうを見る。しかし―――
「すー……ぐー……」
「………どれだけ肝が据わってんのさ」
バウンドし揺れる状態でも、メビウス1はほんの少し顔をしかめながら眠っていた。
そうこうしている間に到着した。基地から十数キロ離れた場所にある湾岸都市、フォークストン。ドーバー海峡に臨み、古くからヨーロッパ大陸との連絡港として重要な場所であり交易と漁業で栄えてきた。19世紀中期以降,海岸保養地としても有名となりホテルや娯楽施設が整備されたが、ネウロイとの戦いで最前線に最も近い町となり依然と比べると活気が落ちている。しかし、それでも人々は町を盛り上げようと活動していた。
その町の中心広場にシャーリーは車を停止させる。
「おーい。着いたぞ」
起こされたメビウス1はあたりを見渡す。そこは住民の待ち合わせ場所としても役に立っているためかなりの人が集まっていた。
「じゃあ各自好きにしていいぞ。メビウスはどうする? 案内しようか」
「大丈夫だ。この程度なら迷子にはならない」
そして、皆がそれぞれ別々に別れた。シャーリーとルッキーニは一緒に行った。
「さて、どうしようかな~」
両手をポケットに入れたままメビウスは道に並んでいるお店を見ていく。正直言うと今の自分はほしい物なんてなかった。こんな体になってしまい、自分が女物の服を買うという想像を全力で否定した。しかし、せっかくもらったお金を使わないで置くのは勿体ない。どうしたものか…
「…ん?」
ふと横にある店から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「これとこれとこれに……あれもいいな」
そのお店は玩具やアンティークなどいろいろなものが並んでいた。雑貨店のようなものだろうか。そのお店に入るとそこにはハルトマンが両手いっぱいにいろんなものを抱えていた。
「なにしてんだおまえは」
「あれ、メビウス見て分からない。これ買うんだよ」
「これって…これ全部か?」
メビウス1は山になっているものを指差す。正確な数は分からないが30は超える量の商品が置かれていた。
「いくらなんでもこれは買いすぎじゃないか?」
「いいじゃんいいじゃん。全部私の部屋に置くんだからさ」
「まあ、別に俺は関係ないが……………ん?」
メビウス1はハルトマンが集めた山の中にあるものを見つけた。それを取り上げる。
「おいこれって」
「ああそれ? 実はそれ置いてあった場所に人だかりができていてさ。メビウスに聞こうと思っていたんだけど、これ、あれに似てるよね?」
「似てるも何も…」
メビウス1は言う言葉を迷う。手にした玩具。それはこの世界に絶対にあるはずがないものだった。
ハルトマンにそれが置いてあった場所を聞いて探すとすぐ見つかった。小さい男の子たちが集まっていたからだ。そこに近づき置いてあるものを見た途端盛大に溜め息をついた。
(……………………………なんで置いてあるし)
はあぁ、と大きくつく溜め息など気にせず子供たちは並んであるものを見ながらワイワイ騒いでいる。
「俺こいつ!」「あれがいいなぁ」「これ強そうじゃん!」「この小さいもいいな」
子供たちが指差す先に置いてあるもの。
それは約100分の一の大きさになったジェット戦闘機の模型たちだった。しかもちゃっかり塗装もされている。とりあえず店員に聞いてみた。
「あの商品ですか? 何故か分かりませんがうちの倉庫に置いてあったんですよ」
捨てる勿体なかったんでお店に並べたんです、と言っていた。値段はそれの価値が分からなかったのとそんなに量が無かったのでそんなに高くない価格にしたとか。いろいろ聞き終えた後、戻るとそのほとんどがすでに無くなっていた。まあ、確かに戦闘機の玩具は子供から見ればかっこいい対象だしな。しかし、そこに1人だけ男の子が残っていた。
「坊主、どうした?」
「え。お姉ちゃん。だれ?」
「おれ………あー…」
男の子の少しだけ怖がっているような顔を見て思った。もしかしてこの口調がいけなかっただろうか? …しかたないと思いながらなれない女口調をする。
「わ、私は、ただの通りすがりよ。それよりも、ここでなにをしてるのかな?」
「えっと…あれ買いたいけど、僕のお小遣いじゃ足りなくて…」
しょぼんとする子供の頭を撫でる。しゃがんでこの子の目線と同じ高さで言ってあげた。
「よし。じゃあお姉ちゃんが買ってあげる」
「いいの?」
「ええ。そのかわり約束して。壊れるまで大切に使うこと。いいわね?」
「うん! ありがとう!」
笑顔でいう男の子の頭を撫でながら自分も笑顔を返す。女の体になってしまった自分の顔はちゃんと笑顔を造れているのだろうかと内心思う。
「それで、どれがいいのかしら?」
「うーんとね。あの青いの!」
「あれね。分かったわ」
男の子が指差したものを手に取る。それはメビウス1が最もよく知る戦闘機のひとつだった。
(F-2Aバイパーゼロ…こんなかたちで会えるなんて)
F-2Aバイパーゼロ
F-16を基にノースポイントが開発した第4.5世代戦闘機。F-16よりも大型化した機体に最新の機材を投入、最大4発の空対艦ミサイルを搭載でき、対艦戦闘機のなかではトップの戦闘能力を持っている。
さりげなく玩具の裏側を見るとそこには『Made in China』と刻まれていた。
(China …どこの国よ。っと、ここまで女口調する必要ないな)
そう心の中で思いながらメビウス1は男の子と手を繋いで店員がいるほうへ歩いて行った。
「ありがとー!!」
満面の笑顔で走っていく男の子を見送る。その子に手を振りながら、世界が違っても子供のうれしがる顔は変わらないんだな、と心の中で思う。
と。その子が道を曲がって見えなくなったところで遠くから何かがこちらに近づいてくるのが見えた。
猛スピードで、土煙を上げながら。
「「メービーウースーーうっ!!」」
「………少し落ち着け。それと周りの迷惑になるなお前ら」
片手で顔を覆いながらメビウス1は溜め息をつく。やってきたのはシャーリーとルッキーニだった。
「基地にあるあれと同じ玩具があるって聞いたんだけど!」
「どこにある!? ねぇ! どこにあるの!」
2人の勢いに少しばかり押されながらあのお店を指差す。
「あそこか! いっくぞ~!」
「あ! 待ってよシャーリー!」
バタバタと騒がしくお店の中に入っていく2人を見送りメビウス1はトラックが置いてある場所に歩いて行った。
トラックが置いてある広場に着くとそこはメビウス1にとってなんとも奇妙な光景が広がっていた。
「いっけ~!」「ぶ~んぶ~ん」「ダダダダダダダダ!」
あのお店にいた子供たちが手にした戦闘機で空戦ごっこをやっていた。しかし、レシプロ機の模型から第5世代までの戦闘機が入り乱れて空を飛んでいるように見える様はなんともシュールだった。
「おかえり~」
「ああ。しかし、おもしろい光景だな」
メビウス1は子供たちの遊びを眺める。
「ねえねえ。聞くけどこれはなんて名前なの?」
「ああ。この戦闘機はタイフーンだ」
タイフーン
1980年代後半にベルカ公国、サピン王国、ファト連邦の三国が共同開発した戦闘機だ。デルタ翼とコクピット前方にカナード翼を備え、カナードデルタと呼ばれる形式の機体構成をもつマルチロール機である。機動性が非常に高いがその分癖が強い機体だ。
「世代でいうなら4.5世代型だ」
「4.5? それって4と5の中間の能力を持ってる戦闘機ってこと?」
「ああ。機体に若干のステルス能力があることg―――」
その時。町中にサイレンが鳴り響いた。音が聞こえるとメビウスはすぐにトラックの荷台に置いてあるものに被さる布を取る。スピットファイアMk.Ⅴが姿を現す。
「先に基地に戻るからハルトマンはシャーリーたちを拾ってくれ!」
「分かった!」
すぐさまストライカーを履きエンジンを回転させる。幸い広場につながる道は真っ直ぐなので飛び立つには問題ない。そう問題ないのだが…
「わー。ストライカーだー!」
「すっげー! 本物だ本物!」
「お姉ちゃんウィッチだったんだ!」
そこで遊んでいた子供たちがストライカーを見つけるなりトラックに集まってきた。
「ちょっと!そこどいて! あ~も~!!! ハルトマンお願い!」
子供とはある意味すごい生き物なのかもしれない。興味や好機なものを見つけた子供は例えどんな状況でもお構いなしでそれを優先するからだ。このままでは埒が明かないのでハルトマンに助けを呼んだ。
「はいは~い。さあ、危ないからこっちにいこうねー」
ハルトマンが子供たちを誘導する。それでも行こうとしない子供を周りの大人たちが抱きかかえて防空壕へ連れて行く。ようやく人だかりも無くなってきた。これなら飛ぶのに支障はない。
「よし。メビウス1、離陸す「お姉ちゃん!」!?」
飛ぼうとしたとき呼び止められ立ち止まる。声のほうを見るとそこにはあの男の子が。
「がんばってね!」
「ほら行くわよ!」
大人に抱きかかえられながら左手でF-2の模型を離さないように持ち、右手でこちらに敬礼している。
その子に微笑みながら敬礼を返す。そして、前に向きなおり自分の心に喝を入れ気持ちを切り替えた。
「メビウス1。離陸する!」
だれもいなくなった街道を砂埃を上げながら飛翔する。メビウス1は基地がある方角に機体が出せる全速力で飛んで行った。
この小説を機にエースコンバット04をやり始めたとコメントがあり、とてもうれしい限りです。
こんな作品でもエースが増えるんだなぁと思いました。
本当にエースの皆さんありがとうございます
いまさらですが、
メビウス1プロフィール(TS状態)
身長 166cm
年齢 18歳(ストパン世界)
28歳(エスコン世界)
通称 リボン付きの死神
ユージアの猛禽
原隊 ISAF空軍第118戦術航空隊メビウス
階級 中尉(2004年)
少佐(2007年)
使い魔 ハヤブサ
固有魔法 不明
使用機材 F-22A戦闘脚
十七試艦上戦闘脚及び同戦闘機
F-4E艦上戦闘機
???
使用武器 九九式二号二型改13mm機関銃
改良型M61機関銃
扶桑刀(後に使用する)
備考
髪の毛の色は黒。髪の毛の長さは肩にとどき少し長め。
胸はエイラより小さいらしい
目の色は青。