【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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今回は小説の「親睦会」のお話を改変しております。

そしてついにあの人が――――!


本編どうぞ


第19話「顔を知らない旧友」

1944年7月9日

 

基地の滑走路でメビウス1はあるものを振っていた。

 

「249……250……251…」

 

あるもの、それは美緒から受け取った扶桑刀だ。先日メビウス1が幼いころに剣道をやったことがあると口にしたとき

 

『ほう。なら、手合わせしてもらえないか?』

 

それに興味を持った美緒がメビウスに試合をお願いしたのだ。結果は惨敗。メビウス1は一度も彼女から一本を取ることもできずに終わった。

 

メビウス1自身もかなりのブランクがあったから仕方ないと思ってもやはり負けっぱなしは自分の気が治まらない。一回だけでもいいから美緒に勝ちたいと思い予備の扶桑刀を借りて今こうして素振りをしていたのだった。

 

「いつまでそうしているつもりなの?」

「ハルトマンですか」

 

ハルトマンは手にタオルと水筒を持っていた。ありがとう、といいながらそれを受け取る。

 

「そんなに悔しかったの?」

「ええ。私の実力不足だけど一度でいいから勝ちたいし、それに負けず嫌いだし」

「へ~…ところでさ」

「なに?」

「なんで女口調にしているの? いつもは男みたいに言っているのに」

「え………………………はっ!!??」

 

思わずメビウス1は口に手を当てる。

 

(なんで私、じゃなくて! 俺は女口調になってるんですか?! それにどんなに頑張っても女口調になってしまう!)

「ずっと気になってたけどさ。朝からそうだったよ?」

「そんなぁぁぁーーーーー!」

 

メビウス1の絶叫が基地中に響き渡る。男なのに女の体にされていろいろあったのに口調まで女になっちゃうなんて。

 

「もう………どうにでもなれ」

「なにがさ?」

「いろいろ…夢なら覚めてほしい。本当に」

 

メビウス1は諦めることにした。いい意味で解釈するとこの状況を受け入れること、悪い意味では現実逃避すること。

 

「それよりもさ。以前からあった親睦会に参加しなくてよかったの?」

「このまえみたいなことがあったらまずいでしょう? これからは基地に残ることの」

「おとといあったばかりだし、無いと思うけどな~」

 

ハルトマンは私も行きたかったな~とひとり愚痴っていた。

 

今日は前々から予定されていた基地近辺にある村との親睦会が行われていた。

 

ミーナは歌

坂本は剣舞

宮藤とリーネはお国料理(この場合は扶桑料理かな)

ペリーヌは着ぐるみらしい

エイラは教えてくれなかった(不敵な笑みをしていたけど)

シャーリーはストライカーの説明

ルッキーニは分からないが楽しみにしてるようだった

 

皆それぞれでお披露目をやるようだ。

 

ハルトマンとバルクホルンは機体の整備、サーニャは夜に備えて就寝中のため今回は不参加となった。まあ基地に誰か残らなくてはいけないのでこれは仕方がない。

 

「なんだお前たちそこにいたのか」

 

2人の話にバルクホルンが入ってくる。

 

「そういえばメビウス。聞きたいことがあるのだが」

「なに?」

「この前言っていたエースのことだ」

「なになに? 気になる気になる」

 

エースという言葉にハルトマンが食いついてきた。

 

「お前が言っていたエースについて少し話してくれないか?」

「分かったけど。…直接話したわけじゃないからそんなに詳しくないけどそれでいい?」

「ああ。構わない」

「いいから話して」

「そのエースパイロットの名前は―――」

 

メビウス1はオーシアのテレビ局がドキュメンタリーとして流した番組の内容を思い出しながら話しはじめる。といっても彼女たちに人間同士の戦争のことは話せない。どうにか最後までそのことを言わずに済めばと思いながらメビウスは話を続けた。

 

 

 

 

同日 ブリタニア首都ロンドン グリニッジ・パーク

 

グリニッジ・パークはブリタニア連邦首都ロンドンの南東部グリニッジにある総面積74ヘクタールの広大な公園である。その場所は市民の憩いの場として使われているがその場所の半分は別の目的で使われている。それは

 

「全員200m匍匐前進始めー!!」

 

軍服姿の軍人がフル装備で匍匐前進を始める。その横では別のグループが上空10mくらいに浮かぶ小型バルーンにゴム玉を投げる。

 

「馬鹿者! 必ず当てろ! それではこちらの位置がばれて死ぬぞ!」

「はっ、はい!」

 

浮かぶ風船を小型ネウロイに見立てて、それを手榴弾で破壊する訓練をしている。だが、さすがに本物の手榴弾を使うのは危険なので同じ大きさの手榴弾型ゴム玉で練習していた。

 

その横では高射砲が並びそれを担当する者たちがいる。

 

彼らの部隊名はロイヤルマーリン(イギリス海兵隊)。

1664年10月28日に設置されたデューク・オブ・ヨーク・アンド・アルバニー海上歩兵連隊(Duke of York and Albany's Maritime Regiment of Foot)が大元の、世界でも有数の歴史ある海兵隊である。

 

現在はコマンド部隊としてあらゆる戦況に対応できるよう訓練を続けている。

 

その離れた場所に一台の車が止まり1人の老人が出てきた。その老人は歳のせいか顔にはしわが目立ち、頭髪も白髪が多くもとは金髪であったのだろうがその名残は消えかけている。外見から50は過ぎているように見えるが背筋は真っ直ぐで、なにより彼のオーラが違った。その目は輝いており力が宿っている。さながら歴戦の戦士を思わせる貫録を放っていた。その彼の左腕はない。

 

「ニック大尉。随分とせいがでてるね」

「た、大佐! お久しぶりです! 総員、敬礼!!」

 

大佐と呼ばれる老人を見るや否やそこで訓練していたもの全員が動きを止めて彼に敬礼する。彼らに対し大佐も笑顔で敬礼し彼らに答えた。

 

「私のことはいいから続けなさい」

「は! 全員訓練再開!」

 

ニック大尉の言葉でまた訓練が再開される。匍匐前進していた部隊は重武装した状態で敷地内を歩かせ、手榴弾を扱っていた部隊はスクワットを行なう。

 

大佐は高射砲が置いてある場所に移動し椅子に座った。

 

「やれやれ。彼らに加わりたいがこの体ではな。やはり歳は取りたくないものだ」

「失礼しますが大佐。どうしてここに?」

「書類仕事は飽きてな。早めに済ませて新しい仕事が来る前に抜けてきた」

「よろしかったので?」

「なに、別にいいだろう。午後から陸軍学校で講義だからな」

 

この大佐と呼ばれる男。実はもとは陸軍の者だった。第一次ネウロイ大戦のおりに数々の功績を重ねたが左腕を無くしそのまま前線から退いた。その後当時の海兵隊の臨時講師として派遣されその能力を発揮し彼らの実力を上げていった。当時は片腕の状態でも誰一人として彼に敵う者がいなかったそうだ。彼から学んだ者も多く陸軍と海兵隊ともに多くが彼を慕っている。

 

ポケットから葉巻を取り出して一服を始める。

 

「ありゃ? タバコは前にやめろって言われてませんでしたっけ?」

「今やめても何も変わりはせんよ」

「奥さんに怒られますよ」

「ばれなければOKだ」

 

ハッハッと短く笑いながら紫煙の味を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

「―――私が知っているのはこれくらいよ」

 

メビウス1はそのエースについて知っている限りのことを言い終えた。メビウスがしゃべっている間バルクホルンとハルトマンの2人は黙って私が言う内容を聞いていた。

 

「主翼を片方無くした状態で帰還するとは」

「なんか信じられないね」

「信じるも信じないも勝手だけどちゃんと証拠があるけどね。まあ、この世界じゃ証明できないけど」

 

F-15Cイーグルの性能と形状から生まれた偶然とそれを成しえたパイロットの技術がそのような奇跡を起こした。

 

とその時

 

「!」

「え、嘘!?」

「この前来たばかりなのに!」

 

基地のサイレンが鳴り響いた。一昨日襲撃があったばかりなのにいくらなんでも速すぎる。だが今は戦争中だ。そんな予想通りに事が運ぶわけじゃない。いそいで格納庫に入る。 バルクホルンは壁にかけてある受話器をとり指令所に連絡を取る。

 

「おい! どういうことだ! 一昨日にあったばかりだろう!?」

≪そんなこと私も分かりません! ですが監視所から大型ネウロイ4機と小型ネウロイを含む編隊が高度14000で接近中………いや、ちょっと待ってください≫

 

バルクホルンに話していた指令所の者は突然入ってきた通信を取る。

 

≪ロンドン第1防空ラインの部隊から連絡? はいこちら501………………はあ!? それは本当か!?≫

「どうした? なにがあった!」

≪し、失礼します。すでに小型ネウロイ2機が内陸に先行しているようです!≫

「なんだと!?」

 

バルクホルンの怒号が格納庫内に響く。事態は一刻を争っていた。

 

「監視所のやつらは何をしてたんだ!」

「それが、現在もその2機だけレーダーに映っていないようです。地上軍が目視で発見しました!」

「レーダーに映らないだと?」

 

バルクホルンの言葉、レーダーという言葉を聞いて片手に13mm銃を持ちながら近寄る。

 

「バルクホルンちょっといいですか?」

「あ、ああ」

 

受話器を受け取ったメビウス1は指令所の者にあることを確認する。

 

「1つ聞くけど、その先行しているネウロイの形状って分かる?」

≪それならすでに来ています。おおよそですが大きさは20mくらい。形状は矢じり型だそうです。速度は時速700㎞は超えるかと≫

「分かった。ありがとう」

 

指令所に礼を言いメビウス1は受話器を戻した。

 

「私が先行している敵を叩くからバルクホルンとハルトマンは遅れてくるやつを頼む」

「了解した!」

「OK!」

 

メビウス1は相棒に乗りながら先行している敵のことを考察する。

 

(大きさ20m、矢じり型で速度700㎞、それにステルス……あの機体か?)

 

ひとつ思い当たる飛行機を思い出しながら準備を終えた。今回は時間がないので13mm銃のみで出撃する。

 

「メビウス1、出ます」

「メビウス、出撃を許可する。ロンドンを守ってくれ!」

「了解! メビウス1離陸します」

 

基地を出て上空10000mに到着する。

 

「基地司令所、こちらメビウス。ロンドンはどっちの方角ですか?」

≪基地から北西の方角だ。頼んだぞ!≫

 

方角を聞くないなやメビウス1は北西の方角に向けてスピードを上げる。だが音速は超えない。もし地上上空をマッハのスピードで通るとその衝撃波でガラスが割れるなどの被害が出る。

 

(間に合ってよ!)

 

音速ギリギリ手前の遷音速で首都ロンドンを目指した。

 

 

 

 

 

突然の空襲警報でロンドンは混乱に包まれていた。

 

「市民の避難を優先させろ!」

「第40コマンドー部隊は市民を誘導するんだ。急げ!」

 

グリニッジ・パークで訓練していたロイヤルマーリン部隊は訓練を中止し市民を避難させるため動いていた。砲兵部隊は高射砲に砲弾を詰め込む。

 

「敵は何機だい?」

「は! どうやら2機こちらに向かっているようです!」

「まずいな。今日はチャーチル首相がシティ地区の視察に出てるのだ。あの人のことだ、市民の避難が終わるまで動かないだろう。私たちが時間を稼がなくてはな」

 

大佐は右手に持つ杖を置き双眼鏡を受け取る。南東の方角、その空に黒い点が生まれては消えを繰り返している。味方高射砲部隊の砲撃だ。その中をものともせず黒い点が2つ近づいている。それを確認した大佐は目を見開いた。

 

「………驚いた。まさかあれをこの世界で見るとは」

「大佐? 一体何が見えたのですか」

「いやすまない独り言だ。敵は2機! 真っ直ぐこちらに来るぞ。速いぞ、よーく狙え!」

「了解!」

 

高射砲部隊の皆はそれぞれの持ち場に着く。

 

「当てなくてもいい。ネウロイを怒らせてこちらに引き寄せるんだ」

「第一射! 撃てーーーー!!」

 

10機配備されているQF 3.7インチ高射砲が一斉に火を噴く。ネウロイ襲来の知らせを受けていた彼らは場所が大陸の奥地ということもありいち早く対応できていた。続いて第2射、第3射と砲弾が撃たれる。それらの1発が編隊を組んでいたネウロイの近くで爆発し態勢が崩れる。すぐに元に戻るも2機は緩やかに進路を変更する。

 

「よーしよし、こっちに気付いたか」

 

双眼鏡を手に敵を見ていた大佐は呟く。その間にも隣にいる兵士たちは高射砲の砲弾を放っていた。だがネウロイはそれを軽々とかわし接近する。

 

「ちょっと貸してみなさい」

「はっ!」

 

照準器を担当していた兵士と変わり大佐はそこから敵を睨み付ける。

 

「どんな相手でも攻撃する瞬間に隙が生まれる。それは人間もネウロイも同じこと…」

 

1人呟きながら敵の一機に合わせる。照準器と自分の目で交互に確認して修正する。

 

「右へ5度、砲を3度上げろ! もう少し引き付けて…」

 

絶好のタイミングを逃すまいと集中する。そして敵の底面部分が開き何かが投下される。

 

「今だ!」

「発射ーーー!!!」

 

一斉に放たれる砲弾。それを敵は回避するがうち一機が直撃し爆発した。だが、切り離された何かが2つこちらに落ちてくる。

 

「全員伏せろ!」

 

老人とは思えないほど大きい声で大佐は叫ぶ。それに反応し体をうつ伏せになる。大佐は迫りくる何かをじっと見つめていた。

 

しかし

 

「なに!? うお!!!」

 

落ちてくる物のそばを何かが通過した。そして大爆発が起こる。その爆風を受けながら大佐は先ほど通り過ぎたものを見ていた。

 

「大佐御無事で!?」

「ああ、あのウィッチに助けられたよ」

「ウィッチ? どこに」

「ほれ。あそこだよ」

 

大佐が指差す方向。そこにはあのネウロイと同じスピード、いやそれ以上の速さで動いている何かを指差す。それはときどきキラリと何かを輝かせている。あれは剣だろうか?

 

「誰ですかあれは? 私はストライカーについて少しばかり知っていますが、いくらなんでも速すぎます」

「確かにあれは普通のではないだろう。だが信用できる」

「その根拠は…?」

 

そう断言する大佐の言葉が理解できず質問する。

 

「いやなに、私の古い友人だよ。もっとも、顔は知らないがね」

 

大佐は笑顔で言いながら新しい葉巻を取り出して火をつけた。

 

 

 

 

 

 

もう一機のネウロイ――F-117Aの形をしたネウロイを追いながらメビウス1は手にした扶桑刀を見ていた。

 

「すごい。ペイブウェイを2つ斬ったのに曲がるどころか刃こぼれ1つしていない」

 

メビウス1は持ってきてしまった扶桑刀で落下中の精密誘導爆弾ペイブウェイを両断したのだ。その切れ味に思わず言葉を失う。

 

「と、それよりも」

 

目の前の敵に集中しようと頭を切り替え扶桑刀を鞘に収める。

 

F-117

オーシアが開発した世界初のステルス攻撃機。その隠密性は高いがその特殊な形状のため機動性は低い。だからメビウス1が操るF-22Aには敵わない。のだが今彼女がいるのはロンドン上空だ。撃墜できたとしても市街地に落とすわけにはいかない。

 

「だったら」

 

メビウス1は銃を構えて引き金を引いた。狙った場所はエアインテーク部分。その2ヶ所を破壊し機動性を無くす。このままでは失速して墜落するだろう。速度を失いかけたF-117の主翼の片方を掴む。

 

「墜ちるのいいけど、墜ちるなら…」

 

強く掴んだ状態のままエンジンを吹かしネウロイの墜落進路を強引に変更させる。その場所は

 

「あの河に墜ちろ!」

 

目標はテムズ川。メビウス1はかなり強引に回転をかける。強烈なGが発生するがそれに耐えながらメビウスはブーメランの要領でF-117をテムズ川に放り投げた。

 

水しぶきを上げて川に突っ込むF-117。完全に沈みきってから数秒後爆音とともに水柱があがった。

 

「こちらメビウス1。先行していたネウロイのうち一機は川に墜落。もう一機は高射砲でやられた。なかなかやるじゃない」

≪分かったわ。こっちはロンドンの手前30㎞で後続のネウロイと交戦中≫

「了解。そっちに向かう」

 

メビウス1は次の戦場に向けロンドンを離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方

「明日の予定だがすべてキャンセルしてくれ。501基地に行く」

「え、何故ですか?」

「お礼を言いに行かなくてはいけないからな。(それにあのウィッチのことを確かめなくてはな)」

「分かりました」

「すまないね」

 

 




大佐………いったい何者なんだ



最後まで読んでいただきありがとうございます

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