【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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やってみたいと前から思っていました

それではどうぞ


第24話「誕生日パーティー」

1944年8月19日17:00

 

厨房ではリーネ、ペリーヌ、エイラがせっせと調理をしていた。今夜は芳佳とサーニャの一日遅れの誕生日パーティーをやる。その準備をしていた。大体の料理は作り終わり、今メインのケーキを作っているところだ。だがここで少し問題が起きている。

 

「……なかなか固まりませんわ」

 

ペリーヌが担当していたポイップクリームができないのだ。ちゃんと冷やしながらかき混ぜてるがまだ七分立てにもなっていない。

 

「代わろうか?」

「いえ、この私がきっちり果たして見せますわ!」

 

エイラの助けを拒み、ペリーヌは泡立て器をかき回し続けた。

 

 

 

 

 

格納庫

 

「これでどうだい?」

 

「ふむ。これなら楽に装着できる。手間をかけてしまった。感謝してもしきれない」

 

「いやいやこっちは現場の要望に応えるだけさ。それに、これを造れるのはこのなかで私だけだからな」

 

格納庫の一角。そこではホーマーと金髪の女性が話している。女性の方は若干青いどこかの軍服を着ている。

 

「たしか、旧式のランドセル型だったか?」

 

「ええそうですよ。あのころは発動機を背中に背負って飛んでましたからね。宮藤理論が採用されてから見なくなったんですが」

 

ホーマーは言葉を切り、目の前にあるランドセル型ストライカーに似たものを見つめる。それは今主流になっている宮藤理論とは違う形をしている。背中に飛ぶための翼、主翼が取り付けられ、さらにその場所にエンジンがある。現在主翼はエンジンの外側が折れている。さながら折り畳み式になっている状態だ。また、背中部分には60cmくらいの円盤が取り付けられている。

 

「いや~、未来の機体にまた採用されていると思うと、思うことがありましてな」

 

「我々の世界の国であるノースポイントに『古きを温め新しきを知る』という諺があります。昔の事柄の研究を通して、新しい意味や価値を再発見する。例え廃れたとしても、そこから新しいなにかを見出すことが出来ることもある」

 

「なるほど。意味深な言葉ですな。いい話聞きましたよ、スカイアイさん」

 

「こちらこそE-767の置き場所を造ってもらい感謝する」

 

金髪ショートボブの髪型をした女性、スカイアイは整備班長のホーマーとの会話を終わらし同じ格納庫内の人だかりができている場所に向かった。

 

 

 

 

 

同型のF-22Aストライカーの前にバルクホルン、ハルトマン、美緒、ルッキーニ。そしてメビウス1と襟首を捕まえられて取り押さえられているシャーリーがいた。

 

「いいかシャーリー。いくら1機増えたとはいえこれはISAFのものだ。こっちも火の車だからむやみに乗って壊されるわけにはいかないんだよ。わ・か・っ・た・な?」

 

「わ……分かった…………もう乗らないから、いいからどいてくれ! 痛い痛い!!」

 

「懲りないやつだな」

 

一機増えたラプターに乗ろうとしていたシャーリーを捕まえて軽く説教をしていた。増えたほうの機体はメビウス1が使うものと変わらない。ただ機体に増層がついていることだけが違いだった。

 

「増層タイプか。これで航続距離が延びるのか?」

 

「ああ。そのかわり、ステルス性は低下するがな。戦闘になったら切り離せば済む話だ」

 

「ねえー。もう1人の紹介はしないの? スカイアイはしたのにさ」

 

「すまないな。明日まで待ってくれ。こっちにも事情がある」

 

「少佐が言うならしかないさ」

 

皆ちりぢりに去っていくのを見送りながら、メビウス1は美緒に小さい声でひっそりと伝える。

 

(恩に着る)

 

(ああ。あの顔をだといろいろ面倒だからな)

 

(繰り返すようで悪いが、そんなにそっくりなのか?)

 

(似すぎだ。中身は違うかもしれんが外見で違いを探すのに苦労するくらいだ)

 

昨日現れた2人は当初メビウス1の判断で皆に合わせずミーナと美緒だけに合わせた。スカイアイの方はすんなり通ったのだが、メビウス8のとき彼女たちの表情が一変したのだ。その理由が

 

(カールスラントの対地エースに似てるねぇ。対地ってあたりになんか気になる)

 

メビウス1が対空エースならメビウス8は対地エースだ。実際あの戦争の時のメビウス8の地上目標撃破数はメビウス1より上だ。(それでも十分エースとして祭り上げられるのだが、そうなっていないのは言わずもがな)

 

「メビウス1。ちょっといいか? 私たちが来たことのごたごたであまり話してないだろ」

 

「そういえばそうだったなぁ。しかし、スカイアイも災難だな。そんな恰好になって」

 

「お互い様だろう。それに8のやつも」

 

「あいつは楽しむだろこんな状況でも」

 

「違いない」

 

ははは、と2人は笑う。昨日スカイアイとメビウス8がこの世界に来た。それでまたあの女神の仕業かと思い問い詰めたが違うらしい。

 

『極まれに、私たちが知らないところで世界の壁を越えてしまう現象があるのです。空間に切れ目が出来たり、ゲートが開いたりと分かりやすいものから気が付いたら変わっていたという突発的なものまで』

 

とこんなことを言っていた。結論から言うには別世界に行く手段としては

 

① その世界の神様の力が必要

② 死後に転生すること。但し、前世の記憶は消去される

③ 突発的な現象に巻き込まれること

 

らしい。スカイアイとメビウス8から聞いた話によると急に目の前が真っ白になったらしい。そして、視界が回復すると自分たちがこの姿になっていたことに驚いたようだ。因みにいうと、2人はメビウス1ほど困惑してはいなかった。もちろんそれなりにしていたが、なったのが自分だけじゃないとわかったから少しだけ安心できたからだとか

 

「確認するが、スカイアイがここに来る直前は俺が消えた日の翌日なんだよな?」

 

「ああ。お前の捜索をしている最中だった」

 

「俺がこっちに来てから3カ月たつのに、こっちとそっちじゃ時間の流れが違うのか」

 

「かもしれないな」

 

話しながら歩く。目指すはメビウス8を軟禁している俺の部屋だ。部屋の入口は基地の衛兵に任せてある。中から開けてくれと頼まれても絶対に開けないようにきつく言っている。

 

部屋について中に入る。

 

「おーい。8、元気か………あ?」

 

中に入るが誰もいなかった。窓が開いている。

 

「おいおいおいおい。まさか」

 

イヤ~な予感がする。この部屋は5階に位置している。しかもロープも何も降ろしてないから飛び降りたら死ぬぞ。

 

「メビウス1。確か、ウィッチは身体強化が自然と付加されるのだったな?」

 

「ああそうだが………まさかそれで着地したってのか? あ、いや、有りえそうだから笑えない……」

 

メビウス8の恐ろしい技はどんな攻撃を受けても必ず機体から脱出できる被害になるよう操作することだ。一体どうやっているのか分からないが、あいつの生存率は目を見張るものがある。

 

「じゃあ私はあれをやりにいく」

 

「ああ、例のあれな。それまで探してみるよ」

 

メビウス1とスカイアイは二手に別れた。メビウス1は8を探しに、スカイアイは基地の放送が使える管制室に

 

 

 

 

 

 

17:30 厨房

 

「ああもう! ぜんぜん固まりませんわ!」

 

あれからかき混ぜて30分。なんとかスポンジケーキの表面を塗る七分立ちになったが、デコレーションができるくらいの固さにならない。氷をなんども変えて冷やしているが、暑いせいかすぐに溶けてしまう。

 

「新しい氷持ってきたゾ」

「急いで作らないと……」

 

パーティー開始まであと30分を切った。それまでにクリームを固めないといけない。

 

冷水のなかに氷を入れ、クリームが入ってあるボウルをつけようとしたとき

 

「氷水に塩を入れたほうがいいぞ」

 

「え?」「はい?」「んー?」

 

後ろを振り向くと、そこにはメビウスと同じ服装をし、グレー色の髪を後ろで結った女性が立っていた。顔の左頬に大きな切り傷がある。見た目から私たちより年上だと分かる。誰? とペリーヌとリーネが頭を傾げるがエイラだけが反応した。

 

「なあ! なんであんたがここにいるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

「うーんどこいったんだ?」

 

思いつく限りの場所を隈なく探したが、一向に見つからない。そういえばあいつのスニーニング能力高いんだよなぁ。と思いながら歩くと基地内に設置されたスピーカーから音声が聞こえてきた。

 

≪あー、あーー。私は一昨日この基地に来たスカイアイだ。これから言う事はミーナ中佐の許可を得ているので無視してもらっても構わない。それと、今から大声を出すので耳を塞いでくれ≫

 

 

すうぅぅーーーーっと空気を吸い込む音が聞こえてくる。メビウス1は慣れているため放送後に聞こえてくるであろうあいつの声を聞き洩らさないよう聞き耳を立てる。そして―――

 

≪オメガ11! インカミン、ミッソー!! ミッソー!!!≫

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            「ディスイズオメガ11アイムインジェクティング!ヒャッホオオオーーー!!!」

 

「厨房か。しかし、相変わらずだなあいつ」

 

似たような通信があるとあいつは必ず反応する。そんなことは絶対にやらないのだが、居場所を見つけるときは使える。厨房に行くとメビウス1が思っていたとは違う光景が広がっていた。

 

「すごいです! あんなに早く混ぜていたのにクリームの滑らかさがちゃんとある!」

 

「すごいですわ……今度教えてもらおうかしら」

 

「それとさっきなに叫んでたんダ? 耳塞いで聞こえなかったけど」

 

「条件反射みたいなものだ。気にするな。ほら、できたぞ」

 

「あ。ありがとうございます」

 

 

 

え、なにこれ? すごい溶け込んでる。ミーナから『余計な混乱がでるから今日は面会謝絶。パーティーもあるわけですから』と言われていたが、いろいろごたごたが起きていると思っていたがそうでもなかったようだ。

 

それと、今まで見たことなかったからだからと思うが、俺よりも料理できてる。なるほどこれが嫉妬って奴かはははははははは…………負けられないな、隊長として。

 

ケーキも完成するのと同時に他の皆が入ってきた。よくよく考えたらもうそんな時間だった。

 

「なっ!?」

「え、なんで?」

 

入ってきたカールスラントWエースの2人の様子がおかしい。8を見て驚いている。

 

 

 

「何故貴様がここにいるんだ!? ハンナ・ルーデル!!」

 

 

 

訂正。やっぱりミーナたちの予想通りいらぬ混乱が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

18:00 食堂

 

「「「「「サーニャに芳佳! お誕生日おめでとう!!」」」」」

 

「ありがとうー」

 

「ありがとう。みんな」

 

「さあ! 盛り上がって行こうぜー!」

 

「お前が仕切るな。リベリアン」

 

あはははは、と笑い声があがる。一日遅れてのサーニャと芳佳の誕生日パーティーが始まった。みんながやがやとパーティーを楽しんでいる。

 

それをメビウス1とスカイアイは少し離れたところで見ていた。

 

「あなたたちは混ざらないの?」

 

「見ているだけで十分だよ」

 

「こんな姿とはいえ、事情が事情だからな。軍人と言っても皆20になってない女の子だ。そこに部外者が入るわけにもいかんだろう」

 

グラスに注がれたシャンパンを飲みながらミーナに答える。

 

「そういえば、オメガの奴はどうしたんだ?」

 

美緒が見当たらないオメガ11のことを聞きに来る。パーティーが始まる前にメビウス8を皆に紹介したが、俺と同じく本名を名乗ることはできない(もちろんスカイアイも)

しかし、メビウス8だとどうしてもメビウス1と被るからどうにかしてくれないか? と言われ前に使っていたコールサイン“オメガ11”で皆から呼ばれるようにした。スカイアイだけメビウス8と呼ぶのは変わらない。

 

「あいつなら今厨房にいるぞ」

 

「待っていれば分かる」

 

しばらくするとメビウス8がトレーに飲み物を乗せて出てきた。

 

「メビウス1。しばらくぶりの味を楽しめ。それとスカイアイの分」

 

「そんなに俺は飢えてねえ。だけどありがたくもらうよ」

 

「この道でやっていけると思うのだがな」

 

「はっはっは。私から飛ぶことを取り上げたらなにも残らないぞ」

 

((どうだかなぁ…))

 

メビウス8はミーナたちにも飲み物を勧めた。それを受け取り一口飲む。

 

「これは……カクテルかしら?」

 

「おいしいな。この味はブルーベリーか」

 

メビウス8が作っていたもの。それはカクテルだった。冷蔵庫にあったブルーベリーとイチゴを潰し、砂糖を少々加え、そこにウォッカ40mlと牛乳を混ぜてたカクテルだ。口当たりがよくブルーべリーとイチゴの風味がよく出ている。

 

「カクテル上手なのは知ってるが、必ず牛乳入れるよな」

 

「私が大好きだからな」

 

「あ、おいしそう。飲ませて」

 

「お酒だから君にはまだ速い。もう少し年取ってからだ」

 

ジュースだと勘違いしたルッキーニに言う8。今のあいつはワイシャツを着ているからどこかのバーテンダーみたいに見えた。

 

「お~い。写真撮るぞ集まれ~」

 

「いくぞ隊長! 私たちも加わるんだ!」

 

「いだだだだだ! なぜ耳を引っ張る!?」

 

「そうでもしなけでば来ないだろう?」

 

 

 

 

 

後日撮られた写真が芳佳の父親、宮藤一郎博士の墓前に添えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1944年8月20日11:00 トブルクから南約500㎞付近

 

大陸の内地という地理的条件と気候条件が重なり、この場所一帯は年中乾燥している。オアシスが無ければ植物が育たない過酷な環境。北アフリカと南アフリカを分断するサハラ砂漠が広がっている。

 

その、人を寄せ付けない場所に2人の人影が見える。「アフリカの星」ハンナ・ユスティーナ・マルセイユと彼女の隊長、加東圭子だ。2人は5mくらいの、巨大な鉄の板の前にいた。それはどうやら飛行機の垂直尾翼だ。機体からもぎ取られたのか本体は周りには見当たらない。しかしその表面は風化により少しづつ剥がれ落ち、今は辛うじて模様が分かるくらいだ。

圭子が腕時計の時間を確認する。

 

「時間よ。急がないと船が出ちゃうわ」

「――分かった。上で待っていてくれ。すぐに行く」

 

圭子は自身のストライカー三式戦闘脚I型甲を履き、飛び立つ。しばらくして、マルセイユは立ち上がり圭子と同じ三式戦闘脚I型甲を履き起動させた。

 

何故彼女のストライカーであるメッサーシャルフ Bf109G-2/tropではないのか? それは航続距離の問題だ。彼女の機体では帰りにトブルクまで着くことが出来ない。だから、航続距離の長い扶桑のストライカーを借りてここまで来た。

 

飛ぶのに十分な強さになったエンジンを確認した後マルセイユは後ろへ振り向いた。

 

「行ってくる」

 

マルセイユは正面を向きなおり飛び立った。風が生まれ、砂塵が舞い上がる。さながら黄色い風が掛けぬけたように見えた。

 

去ってゆく2人。残されたのは機体の一部だった鉄塊のみ。

 

 

 

よく見るとその表面の片方はナイフで切り込まれており楯の形をしていた。その中に鳥のようなものが描かれており、後ろに5つの横線が刻まれている。おそらく消えないように線だけでも残そうとやったのだろう。

 

 

 

その、マークのようなものの下に、カールスラント語で文字が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

『アフリカの空を取り戻した英雄  

 

ゲルベドライツェーン(黄色の13)

 

  ここに眠る』

 


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