【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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目標の5000文字より1500も少ないですがなんとか書けました。

ミーナ回を3話に分けて投稿します(予定)

今回メビウス1は出てきません。

主役はオメガ11ことメビウス8さん

彼(彼女)は”不死身のベイルアウタ―””陸軍一個師団に相当する男”とか名誉で不名誉な二つ名が多く、公式のおかげで多くの動画でネタキャラ扱いされていますが、こんな一面もあるんじゃないかなと思いこれを投稿します。

完全にキャラ違ってみえますが、お許しください。


第25話「苦悶」

ミーナは自室の窓辺に佇んでいた。いつもは聖母のような笑みを湛えているその顔が、今は悲しみに満ちている。その先にあるのは海、いや、その向こうのガリアの地だ。

 

「聞いたぞ」

 

「……美緒」

 

いつの間にか時間が経ち、夜になっていた。部屋に坂本が入ってくる気配にも気が付かなかった。

 

「手紙を突き返したそうだな?」

 

扉に寄りかかって立つ坂本は尋ねる。

 

「そういう決まりだもの」

 

再び窓の外を見ながらミーナは言う。

 

「……まだ、忘れられないのか?」

 

坂本の問いにミーナは沈黙で答える。

 

坂本には分かっていた。ミーナが隊規を振りかざすのは、若い芳佳たちを傷つけまいという思いのためであることを。かつて自分が味わった悲痛と同じ思いをさせたくないという思いのためであることを。

 

(私には到底分からないか……祖国も愛する人も失ったことがないからな)

 

ミーナは坂本を残しどこかへと言ってしまった。1人残った坂本は虚空に向かって呟く。

 

「こんなとき、お前たちならなんて語りかけるんだろうな。 ????、????」

 

ここにいない、かつて共に空を駆け抜けた友人に問いかけるように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そうね。ここで過去を清算するのが、私の―――」

 

1人歩くミーナは、決意した目で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 8月26日 

 

 

ミーナはひとつの段ボールを持ち歩いていた。だが歩きに落ち着きがない.

 

(なんで今ごろになって……もう決意したことなのに)

 

自分が何をしようとしているのか十分理解している。だから前を見るために、後ろを振り返らない.自分でけじめをつけようとこうして誰にも(特に美緒)見つからないよう移動していた。あと少し。あと少しなのに一歩を踏み出す足が重く感じる。

 

なぜこんなにも胸が締め付けられる思いなのか。ミーナは認めたくなかった。一度分かってしまえばずっとこんな思いを抱いてしまう。

 

「どうした。 顔色が悪いぞ?」

 

声をかけられる。そこにいたのはオメガさんだった。

 

「辛そうだな。私が持とうか?」

 

オメガ11はミーナが持つ段ボールを指差す。ミーナはビクッと体が震えた。しばらく黙ってた後ミーナはいつもの顔をしながら言った。

 

「オメガさん。私少し気分が良くないから変わりにこれをお願いできるかしら」

「これをどうすればいいんだ?」

「この通路を真っ直ぐ進むと基地の焼却所があります。そこに捨ててきてくださる」

 

 

彼女は、卑怯な手を使った。

 

 

「分かった。これを捨ててくればいいんだな?」

「ええ。お願い」

 

オメガ11は段ボールを受け取る。遠ざかる彼女を見送りミーナは執務室へと戻る。

 

 

 

「ごめんなさい――――ごめんなさいクルト。さようなら」

 

 

 

大粒の涙を流しながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

焼却炉に到着したオメガ11は投入口の扉を開ける。中は前のゴミが燃え残り燻っていた。段ボールを開けて要らなくなった書類を数枚掴み軽くクシャクシャに丸め、トングでまだ燻っている場所に押し付けた。すぐに炎があがる。

そこに書類を数枚づつ掴んでは燃やした。段ボールを丸ごと入れると燃え残りが出てくる。ちゃんと燃やすには面倒だがこうするほうが良い。それに軍事関連の書類だ。相手はネウロイという黒い敵だが不明な点が多く残る存在だ。人間の言葉を理解しているとは思えないが、念には念を入れてこちらの情報が漏れないようにする必要がある。

 

(正体不明の敵か…………これ以上に恐ろしい敵はいない)

 

 聞いた話だとネウロイの存在は古くから存在している。そしてどの時代も人類の敵として歴史に刻まれていた。生物のようで生物ではない。個別で動いている者もいれば集団で連携を取るのもいる。さらにメビウス1からエルジアエースを真似る存在もいると聞いた。なぜこの世界で俺たちの世界に関係することが出ているのか。なぜ真似をするのか謎のままだ。もしかしたら

 

「奴らが出てくるかもしれない、か」

 

炎を見ながらオメガ11は呟く。メビウス隊にとって永遠のライバルであるあの部隊が現れる可能性。メビウス1もそれを察しているはずだ。その時は、今までで一番過酷な戦闘になることは必至。戦争終結後知ったことだが、ファーバンティの決戦では黄色中隊は部隊の弱体化と質の悪い燃料で人材、機体共に練度が落ちていたらしい。だがそんな状態でも彼らは私たちと死闘を繰り広げた。

 

(仮に出てきたとするなら相手は5機編隊。それに対しこっちは私入れて隊長の2機。どうなるか)

 

やられる気持ちなど無いが不安が残る。それでも、やらなくてはならないし、ここで死ぬわけにはいかないのだ。

 

「ん?」

 

 段ボールの中に書類に紛れて本のようなものが入れてあった。よく見ると何かのファイルのようにも見える。それを手に取り開いた。

 

「これは……」

 

そこには、ミーナ中佐と男性の2人が写っている写真が貼ってあった。それも一枚や二枚ではない。たくさんの写真が一枚一枚きれいに、丁寧に張られている。そこからかなり大切にしてきたことが分かった。どの写真も写っているのは2人だ。そして、その写真に写っている2人は幸せそうに笑っていた。それを見てオメガ11は先ほどと昨日のミーナ中佐の様子を思い出し、察した。

 

(なるほど。分からなくはない。が、無視などできない)

 

 オメガ11はアルバムを取りだし、残りの書類を焼却炉の中に放り込む。そして、それを持ちだした。向かうはミーナ中佐がいる執務室。

 

 

 

 

 

 

 

 

 執務室で仕事をしていたミーナは突然開かれた扉の音に驚く。入ってきたのはオメガさんだった。彼女の手には段ボールの奥に入れたあのアルバムがあった。それを私の前に置いた。

 

「なんのつもり」

「それはこっちの台詞だ。なぜこれを捨てようとした」

 

仏頂面でオメガさんは私を睨んでくる。私もそれに睨み返した。

 

「あなたには、関係のないことです」

「昨日の様子から見るに、自分と同じ苦しみを味あわせたくない。だから、扶桑の艦長の要望を突き返した。違うか?」

「…………………」

 

ミーナはなにも言い返さない。それはオメガ11が言っていることを肯定することに他ならない。

 

「お前は、忘れてしまっていいのか」

 

「なにを――」

 

「彼と過ごした時間のすべてを。本当の意味で、彼を永遠に死なせるつもりか?」

 

「!!」

 

オメガが言う意味をミーナは理解した。どこかの哲学者が言っていた。人の本当の死は、人に忘れられた時だ、という考え。例え肉体が無くなっても、その誰かを覚えている限り自身の中で生き続ける。

私がクルトのことを忘れると本当に彼を死なせてしまうことになる。オメガはこのことを言っているのだ。

 

 

でも―――

 

 

「あなたに、私の何が分かるっていうの!」

 

 

今まで溜めてきたものを吐きだした。涙を流しながら激昂する。

 

 

「私は! クルトの死を乗り越えて501の隊長になった。私と同じ人を出さないよう厳しい規律を作って、今までやってきた。でも……もう3年経つのに、今でも彼を思い出す。その度にこんな想いをする! こんな想いするくらいなら―――」

 

「君にとって彼は、そんなに軽い物だったのか?」

 

 

オメガの言葉にミーナはギッと睨み返す。そこに宿る答えは否。今でもクルトとの思い出は大切な、大切なものだとミーナは無意識に主張していた。オメガは続けて言う。

 

「君の言う通り、私はミーナ中佐の苦しみ全部は分からない。私の苦しみが中佐に分からないように」

 

オメガは目を閉じ、頬の傷跡に手を当てる。その傷跡に、一体どんな過去があったのか。

 

「これは返しておく。もう一度よく考え直せ」

 

 オメガは部屋を出て行った。ミーナは置かれたアルバムを抱きしめる。

 

「私は―――」

 

ミーナの呟きは誰にも届くことは無く、アルバムを抱きしめたまま静かに涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メビウス8は執務室を出て、扉を閉めた。と横から

 

「一体どういうつもりだ」

 

と口を出された。そちらを見ないで答える。

 

「スカイアイか」

 

 スカイアイは壁に寄りかかり手を組んでいた。表情はいつもと変わらない。だが、雰囲気はまったく違う。

 

「お前があそこまで気にかけるのは珍しいからな。思うところがあったのか」

 

「言う必要があるのか」

 

私の問いにスカイアイはいいやと答える。おそらくスカイアイは私がやった行動の意味を知っているのだろう。だけど、あえてそれを口にしないのは私のことを思ってのことだ。だが、スカイアイは大丈夫と答えたのに、自然と口が動く。

 

「そうだな。強いて言うなら、昔の私を見ているようでな。余計なお世話かもしれないが……放っておけなかった。それだけの話だ」

 

メビウス8はそう言い、スカイアイをおいて去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(傭兵上がりのお前にとって、あの戦争はずっと地獄だったのだろうな)

 

 心の中で呟き、スカイアイはメビウス8とは反対の方へと去って行った。

 




大陸戦争はエルジア、ISAFともに深い傷跡を残した。両陣営の軍人たち双方深い苦しみにあったと思います。

大陸戦争の英雄であり”リボン付きの死神”であるメビウス1やネタキャラ扱いになってるオメガ11もスカイアイも例外ではない。

そう解釈し、こうなりました。オメガ11の過去が語られるのは少し先になります。ミーナ回では出しませんので、お待ちください。

最後まで読んでいただきありがとうございます

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