【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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長かった…! ほんっとうにながかったっ!!

やっとこさ書けた27話。物語的にはミーナ回の中だけど今回完全にメビウス回です。

これ書いている途中で出てきたエスコン04の疑問部分? を解消してみました?


2か月ぶりすぎて文章が落ちていますが、許してくれ。マジで

追記
どうしよかと悩みましたが、メビウス1の名前を公開しました。正直避けたかったのですが

気に入らなかったらすいません


第27話「慟哭」

2004年7月26日

 

「そんな。教官も行かれるのですか」

 

「ああ。リグリー空軍基地の防衛に着くことになった」

 

 緊張を崩さない顔で俺たちの教官は言った。彼は今パイロットスーツへと着替えている。

 

「知っていると思うがリグリーがエルジアの手に墜ちれば航空機がわんさかやってくる。それこそ1年前のサンサルバシオンの空襲が私たちの国で起こっちまう。それだけは阻止せにゃならん」

 

 教官は自身の機体F-2Aに乗り込んだ。

 

「気にすんな。お前たちが出張らんようにする」

 

「気を付けてください」「御武運を」

 

教官は何も答えず親指を立てて俺たちに答えた。

 

≪メビウス隊。離陸するぞ≫

 

機体が滑走路を滑り浮き上がる。それを見ながら俺たちは手を振った。割り当てられた部屋―――といっても俺たち4人で使う相部屋に入る。そこから会話などない。皆が皆何を話したらいいか分からないのだ。

 

「……戦火がここまで来ると思うか?」

 

 誰かがそんなことを言い声がしたほうを見る。

 

「なんだよジュン。お前教官たちが負けると思ってるのか」

 

「そう言ってるんじゃないよ。ただ戦略的なことを言ってるだけさ」

 

ジュンの発言にハヤトは少し怒った顔で言う。

 

「もし……リグリー基地が堕ちるとISAF本部が置いてるセントアークは放棄せざる負えなくなる。そうなると残るは俺たちの国だけだ。そうなるとここは最前線基地になる」

 

「俺たちが出るかもしれないってことか」

 

俺の指摘にジュンは頷いた。確かにその読みは間違いないだろう。今や残されたISAF陣営は本部が置いてある港湾都市セントアーク。大陸の東南に位置するコモナ諸島、フォートグレイス諸島、ロッキー諸島。そして東側に位置する島国ノースポイントのみ。この中でセントアークの次に狙われるのはノースポイントだ。残る陣営で軍隊を持つのはノースポイントのみ。ここさえ落せばISAFの敗北は確実である。ゆえに大陸に一番近いこのアランフォート基地が最前線と最終防衛ラインの両方を担う可能性が出てくるのだ。

 

「その時は俺たちが飛ぶだけだ。そうだろう」

 

「そうだな」「ああ」

 

「頼りにしてるぜ? 相棒」

 

 俺の前に座っている男、ケンが拳を突き出してくる。それに自分も拳を造り叩いた。

 

「こっちの台詞だ。バカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004年9月10日

 

その日。基地にいる者全員慌ただしく動いていた。今ここで動いていない人は誰一人としていない。

 

 

3日前。8月28日 リグリー基地が敵の手に墜ちた。それによりISAF本部はノースポイントへの撤退を決定した。

 

そして、俺たちはこの撤退作戦の防衛任務にあたることになる。俺たちにとって初陣になる。

 

「カザ」

 

「やっと来たか。急げ」

 

「わーってるよっと」

 

慌ててパイロットスーツを着たせいで少しだらしない状態のケンに俺はヘルメットを投げた。それを片手で掴み取る。

 

「他の奴が言ってるのを偶然耳にしたんだけどよ。リグリーを襲った敵の中にあの黄色中隊がいたらしい」

 

 動かしていた手が止まった。

 

「奴らが教官たちをやったのか……?」

 

 あの時基地を飛び立った教官と先輩のF-2Aの4機編隊が脳裏をよぎる。彼らはノースポイントでもトップの実力をもつ部隊だった。俺たちが知る中で他の部隊との模擬戦で負けたことは一度もない。だけど敗れたのだ。噂のエースパイロット部隊に。

 

「な~に暗い顔してんだ。これから出るんだ。気持ちを切り替えろ」

 

「あ、ああ。分かってるさ。それより連絡取ったのか?」

 

「ついさっきな。それと姉さんから伝言。“死なないで”とさ」

 

「――――そうか」

 

「…………いい加減顔見せに行けよ」

 

「いいんだよこれで」

 

「(……………馬鹿野郎が)」

 

「? 何か言ったか?」

 

「いや。さあ行くぞ」

 

 ケンは俺の方を軽く叩く。俺たちは自分の機体F-2Aに乗り込み出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪こちらは空中管制官“スカイアイ”だ。君たちはこちらの管制下に入った。よろしくお願いする。ソラ・カザマ中尉。先方から今のメビウス隊の中で実力があると聞いている。君が編隊の指揮を取れ。君のコールサインはメビウス1だ≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地内の一角。俺は自分がかぶっていたヘルメットを地面に叩きつけた。

 

「畜生っ!!!」

 

 叩きつけたヘルメットが転がる。それをびしょ濡れの状態のケンが拾った。

 

「カザ。落ち着け。お前のせいじゃない」

 

「これが落ち着いていられるか! ジュンとハヤトがやられたんだぞ」

 

 荒れる俺を落ち着かせようとする。がとても落ち着ける気分ではなかった。

 

 

 

 

 結果だけ言えば、作戦は成功した。撤退する部隊の8割を追撃するエルジア軍から守り通すことが出来た。

 だが、航空部隊は甚大な被害を受けた。開始早々敵は電子戦機を投入。通信手段を奪われた俺たちにエルジアの戦闘機Su-27は容赦なく襲ってきた。後ろを取られた俺とケンは昔読んだ本に乗っていた戦闘機動を行い強引にオーバーシュートさせた。突然目標が消えたことに気付いていない敵にミサイルを発射。相手を撃墜させた。だけどその間に2人が別のスホーイに落とされていた。

 

 

 

「整備班が言ってた。お前のF-2はムリだ。とても直せる状態じゃない」

 

 あの時の戦闘。後ろを取られた相手をオーバーシュートさせるためランディングギアを下した。急激な空気抵抗が発生したおかげで成功した。だけど、そのせいでランディングギアがイカレた。俺の機体は着陸して滑走路を滑っているとき左後輪のギアが根元から折れた。そのままバランスを崩した機体は滑走路を逸れて機体が地面に埋め込む形で止まった。機体が爆発しなかったのは奇跡だった。

 ケンの機体は被弾により油圧系統が損傷。着陸が難しいため機体は海に放棄させベイルアウトした。

 

「ほかに機体は?」

 

「言わなくても分かるだろ? 表は傷だらけの機体だらけさ。正直よくあんな体制で1年持てたと思うくらいだ」

 

 ケンの言う通りだ。俺はアレンフォート基地に集まったISAF軍の航空機を見る。エルジアと対抗するために結成された軍事同盟だったが急だったため使用する機体は各所属する国の機体だった。同じ軍隊でも別の機種で今まで戦ってきた。統一されてなかったため整備と補給等の必要なものがバラバラだった。

 

 なんとかここまで辿り着いたが肝心の機体が修理もできない状態になった。それに対してエルジアは多数の機体を持ちながらエンジンなどは統一しているため効率がいい。

 

今ここにはパイロットはいても肝心の機体が圧倒的に揃っていなかった。まさに張り子の基地である。

 

 

 

「聞いた話じゃF-2の製造再開を決定したらしいが、間に合うのか?」

 

「分からない。そこはもう上に任せるしか………」

 

「次は絶対に勝つぞケン。あいつらのためにも」

 

「ああ。俺たちの帰る家を守るために」

 

俺たちは自分に言い聞かせるように誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月19日13:30  イズモ型二番艦『ヒヨウ』艦内ミーティング室

 

「早速だが出撃任務だ。先ほど早期警戒レーダーが敵の工作員に破壊され、爆撃機数機が領空に侵入した。敵は30分後にアレンフォート飛行場上空を通過、それを爆撃したのちノースポイントへ向かうつもりらしい。我が軍の防空火力は脆弱で、総司令部は張り子の基地も同然だ。

 作戦は島の山脈を陰にしながら迂回して飛行しろ。そうすれば敵爆撃機の背後を取れるはずだ。ニューフィールド島を通過する前にすべての爆撃機を撃墜し、爆撃機の侵入を絶対に阻止せよ。諸君らはノースポイント防衛線の先陣だ。ISAFの延命に全力を尽くしてくれ」

 

 作戦内容を伝えられた俺たちは急いで艦内格納庫へと走った。自分の機体に乗り込み準備を始める。乗り込んだ機体。それは退役まじかのノースポイント空軍の前主力戦闘機F-4Eだ。

 

 なぜこれなのか? それはノースポイントで唯一数が揃っている機体だったからだ。そして作戦の上で艦載機として使えることに目がつけられた。

 

敵はノースポイントへ攻撃するにはどうしてもニューフィールド島のアレンフォート基地を叩く必要がある。通常はそこに戦力を集中させて防衛線を張るだろう。しかし向こうもそれ相応の大部隊で来る可能性がある。それではこちらに勝ち目はない。

 

そこでISAF司令部は1つの賭けに出た。それはアレンフォート基地を囮として利用すること。航空戦力の大部分を本島に撤退させたと見せかけ油断を誘い出撃した敵部隊を後方から奇襲をかけて殲滅する。という作戦だった。それには空母と艦載機が必要だった。

 

戦争の経過を見て最悪の事態を想定したノースポイント政府は急遽完成まじかだったイズモ型DDH二番艦『ヒヨウ』三番艦『ジュンヨウ』を軽空母に改造した。そしてノースポイント各基地に眠りに着こうとしていた老兵F-4Eを呼び起こし1日ですべての整備点検を終了させた。

 

 

 前席に俺。後席にケンを乗せ機体を動かす。エレベータが動きだし飛行甲板に出た。自然と周りを見る。左洋上には自分がのる艦の同型艦『ジュンヨウ』からF-4Eが離陸したところだった。

 

 機体がカタパルトに接続される。最終チェックに入った。

 

「機体正常。システム、オールグリーン」

「レーダーシステムも異常なし。いつでもOK!」

 

≪メビウス1。発艦を許可します≫

 

「了解。いくぞ相棒!」「ああ! レーダーは任せろ」

 

「「メビウス1。テイクオフ!」」

 

 

 

 

 

そして俺たちは再び空へと飛び立った。

 

その後、侵入してきた爆撃機を全て撃墜。ほんの少しづつだが俺たちは勝利を重ねてきた。

 

いつしか自信がついていた。

 

お前となら絶対に大丈夫だと

 

お前と一緒ならこの戦争に勝てると

 

そう心の中で、俺たちは思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつらに、出会うまでは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかりしろ隊長!」

 

「!」

 

 頬を叩かれる痛みで我に返る。目の前にメビウス8がすごい剣幕で俺を見つめていた。俺の方を掴み言う。

 

「どんなに辛くてもお前がやるんだ………彼らを楽にさせてやれ」

 

 分かっているのだろう。あのF-2Aの動きが誰なのか察したのだろう。それを自分でやらず俺に任せたのは、彼女なりの配慮だ。

 

 そうだ。あれは俺自身がやらなくちゃいけないんだ。例え、かつての隊の仲間と同じ飛び方だとしても。

 

 あいつの、親友と同じように飛んでいたとしても――

 

 

 

「――――嗚呼。すまないメビウス8」

 

 左手で顔を隠す。それは気持ちを落ち着かせるためか。それとも隊長として見せてはいけないものを隠すためか

 

「手を出さないでくれ」

 

 彼女はいつもの顔に戻る。敵を刈り取る死神の顔に。

 

1機のF-2Aとヘッドオンになる。同時に火を噴くM61機関砲。被弾したのはF-2Aだった。すれ違う1人と一機。ボロボロのF-2にメビウス1は左手で静かに敬礼した。

 

 1機。1機と墜としていく度に敬礼する。M61の弾が無くなり、肩に下げていた13mm機関銃を取り出す。やがて、それも使えなくなった。敵はあと一機残っている。

 

「――――――」

 

 メビウス1は何もしゃべらない。最後に残った武器である扶桑刀を抜く。

 

最後のF-2Aが近づいてくる。それは敵を殺さんがために向かうのか、それともようやく見つけた僚機の隣に並ぶためなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その近づいたF-2Aのコックピット部分に、扶桑刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽が西に傾き空を赤く染める

 

耳を澄ますと歌声が聴こえてくる。彼女たちの隊長であるミーナ中佐が歌っているのだ。

 

 

 

聞くものすべての心を癒す歌。だが、基地の一角だけその歌は届かない。部屋の前にスカイアイは座っていた。そこにウィスキーとギターを持ってきたメビウス8がやってくる。

 

「どうだ?」

 

「いや、何も変わらない」

 

「………そうか」

 

 メビウス8も座り込む。2人はメビウス1の部屋の前にいる。そこで誰も入らないよう見張っているのだ

 

 

「―――――――――!!!」

 

 

 部屋からなにかが聞こえてくる。

 

 聞かなくても分かる。

 

 隊長が、声にならない叫びをあげているのだ。本当は大声を上げてはずなのに皆に心配をかけまいと静かな慟哭を繰り返す。

 

 メビウス8はポケットからあるものを取りだしスカイアイに渡す。それはハーモニカ

 

「できるだろ」

 

「ギターのほうがいいが、偶にはいいか」

 

 メビウス8がギター、スカイアイがハーモニカを構える。演奏する曲はどこか哀愁を漂わせる。しかし、なぜか一日の終わりに聞きたくなる魅力を持つ曲だった。

 

 

 

それは静かにメビウス1のことを案じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 1944年9月1日 ブリタニア 港湾都市ポーツマス

 

 

 

「んん~~~ん!! 久しぶりの陸だあ。思ったよりかかるもんだな」

 

 

 

鷲が舞い降りた。約束を果たすために




書いてて出てきた疑問点

Q1.最初の爆撃機迎撃ミッションでアレンフォート基地の防衛なのにムービーが空母からの発艦なのか?
A1.戦争の戦況悪化&ユージア大陸上陸のための機動部隊移動の船の必要性が出たため完成まじかだったイズモ型ヘリ護衛艦の二番艦三番艦を急遽空母に改造した。その他理由は本文参照

Q2.エルジアとの戦争勃発後ISAFが結成したので何も統一性がない状態だった可能性が高い。なのに最初のミッションで乗っている機体が全員F-4Eに統一されていたのか?
A2.退役扱いになっていたF-4Eはもともと艦載機だった&ノースポイントも他国からの要請で部隊を派遣したためその分のF-2が無くなった。どうにかしようと探していた時F-4Eを思い出し、これも急遽戦場に呼びもどした。おじいちゃんお疲れ様です。

Q3.あと少しで勝てたのにどうしてあんな編成でエルジアは出撃したのか?
A3.作戦です。しかも無人偵察機もあえて無視させて基地に満足な機体がないことを敵に伝えさせ油断させるという念の入れよう。

Q4.なんで2番艦と3番艦の名前が「ヒヨウ」「ジュンヨウ」なの?
A4.艦これの影響です。さすがにネームシップのイズモ型一番艦の名前は「イズモ」です。誰か彼女たちからメビウス1が発艦するイラストください。




最後まで読んでいただきありがとうございます。




次回「邂逅」

それは 運命ではなく 宿命

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