【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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新年あけましておめでとうございます。

紅白聞きながら書いていたらできちゃいました

今年もよろしくお願いします

それではどうぞ


第30話「死の足音」

 基地の廊下。そこはいつも以上に慌ただしかった。

 

「緊急手術の準備。包帯と輸血パックあるだけ持ってきなさい!」

 

「メビウスさん! 私の声が聞こえますか!?」

 

「――………死ぬな…………生きろ……………しぬな…………」

 

「メビウス! 聞こえるなら返事をしろ!」

 

 タンカに乗せられ運ばれるメビウス1。運ばれる間、ずっと彼女は「死ぬな。生きろ」それだけを繰り返し呟いていた。基地に降り立った後、彼女の血でぬれた服を脱がせ応急処置をしながら運んでいた。そしてそれを追うように宮藤たちがついてきている。そして手術室の前に辿り着き、医師が皆の前で言った。

 

「我々も全力でやります。が、正直手遅れと思われます。ですが」

 

 医師は宮藤のほうを見た。

 

「宮藤さんの固有魔法を使えば望みはあるかもしれません。できますか?」

 

 その問いに宮藤は強く頷く。

 

「分かりました。では入ってください」

 

 宮藤は手術室の中に入り白衣に着替える。手袋をし、消毒をし、メビウスが横たわる手術台の前に立った。そして、説明が入る。

 

「他の者が刺さる鉄を抜きますので、宮藤さんは胸の傷を固有魔法で治してください。私たちは他の傷をやります。それともう一つ」

 

医師は宮藤の肩を抱き、真剣に言った。

 

「麻酔は胸に打つだけで全部使ってしまいます。ですから他の傷は麻酔なしでやります。それで患者が暴れるかもしれません。落ち着いて自分のやるべきことをやってください」

 

「は、はい」

 

「では、始めます」

 

 長い手術が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手術室の前。そこではペリーヌと美緒、シャーリー、ルッキーニの4人が座っていた。

 

「――――――ッ!!!」

 

手術室から抑えたような叫び声が聞こえてくる。それが聞こえるたびメビウスの傷の深さを思い知らされた。

 

「大丈夫でしょうか。もし死んでしまったら……」

 

「大丈夫だ。宮藤もいるんだ。今は祈るしかない」

 

「坂本少佐……」

 

美緒がペリーヌの頭をやさしく撫でた。そういえばさ、とコーラ瓶を開けて飲んでいたシャーリーが思い出したように言った。

 

「コックリさんのとき、『Yellow13』て言葉が出てきただろ?」

 

「そういえば、そうだね」

 

 シャーリーに指摘に横にいたルッキーニが同意したように言った。ペリーヌも思い出した。確かに、メビウスさんが唯一認める相手の名前という質問に出てきた言葉だった。

 

「あのネウロイ。メビウスのやつ『13』って呼んでた」

 

「まさか、メビウスさんがいた世界でマルセイユさんと同じ姿をしている人が『Yellow13』と呼ばれてる人………?」

 

「そういえば、こんなこと聞いたことあるよ~?」

 

ルッキーニが軍に入る前にある老人から聞いた言葉だそうだ。

 

なんでもこの世界と似てるようでほんの少しだけ違う世界が幾重にも存在する。ある世界では商人の男性が違う世界だと奴隷、貴族、もしかしたら王様と違う人生を送っていることがあるIFの世界が存在するという考え方。

 

「そしたら似てたのも説明が付きますわ」

 

「だけどなぁ」

 

 シャーリーが両手を組み言う。

 

「奴さんはそれを真似したネウロイだ。それはいいとしてあのメビウスが出したあの殺気はどう説明着くんだ?」

 

「それは、知り合いの真似事をネウロイがしたから」

 

「私からすれば、あれは異常すぎると思うね。現にスカイアイとオメガの2人はずっとあのままじゃないか」

 

 メビウスが基地に帰還しても、スカイアイは上空に留まり、メビウス8は滑走路脇でストライカーを履いたまま戦闘待機状態をといていない。今回の人型ネウロイの特徴を聞いてから臨戦態勢のままだ。

 

「“ただ”の知り合いにあそこまで意識を変えるか?」

 

「どういう意味ですの」

 

「本当は分かってんじゃないのか? なあ。どうなんだ少佐?」

 

 あえてこの場で言わなかったのはシャーリーの配慮だ。メビウスの自己紹介のとき言ってた。『俺たちの世界にネウロイは存在しない』その世界の軍人が戦う相手は? そんなの深く考えなくても分かり切っていたことだ。それを誰も聞かなかったのはそこまで頭が回らなかったか、その事実を聞くのが怖かったからかもしれない。故に回りくどく、メビウスのことを少しは知るだろう美緒に聞く。

 

「今ここで、私に彼らのことを言う資格はない。それはメビウスたちが決めることだ」

 

「はいよ。そんじゃ、命令通りその時を待ちますか」

 

 シャーリーは新しいコーラ瓶のふたを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室でミーナは連絡を受けていた。

 

「はい。……………はい。わかりました。それでは」

 

「それで、ガランド少将からどんな連絡だミーナ?」

 

 受話器を置いたミーナはどうしたものか、と頭を痛めていた。

 

「今日のマルセイユ中尉の訪問は中止。なんでもここに向かう途中パパラッチに追われたらしくて。そこからロンドン市民に広まって街はパニック状態になったみたい」

 

「うわー。それは災難だね」

 

 有名人になるとマスコミが敵になる。ブリタニアのそれのしつこさは各国の追随を許さないほどだ。

 

「今もまだ追われているみたい。でも、かえって良かったかもしれないわね」

 

 ミーナの言葉にその場にいたバルクホルンとハルトマンは頷いた。今のメビウスの状態はとても面会できるものではない。

 

「それよりも、今はあのマルセイユ似のネウロイのことだ。オメガとスカイアイの2人、あれから全く口をききやしない」

 

 あれからずっと誰と話さず、ずっと臨戦態勢のままだ。メビウスのことを我々に任せたままである。

 

「それほど警戒しないといけない相手ってことでしょ。その……『黄色の13』だっけ?」

 

「偶然にもマルセイユの仇名に酷似した名前……そしてそのマルセイユがこのブリタニアにいる。一体なにがどうなっているんだ?!」

 

 どんっ! とバルクホルンは机を叩いた。それを見てミーナは溜め息をつく。

 

「彼らにも事情があるの。メビウスさんが目覚めたら、たぶん私たちにも教えてくれるはず――」

 

 ミーナの声を遮るかのように、電話が鳴った。

 

「はい。こちら501」

 

≪ベルツだ。いまよろしいかね≫

 

「大佐。一体なんでしょう?」

 

≪マルセイユ君のことは耳に入っていると思う。彼女だが今私のところに匿っているところだ。ほとぼりが冷めるまでしばらくここにいてもらうことにする≫

 

「ええ? いいのですか?」

 

≪構わない。幸い、ここに置いてある酒を満喫してくれている≫

 

 酒、という言葉を聞いてミーナは溜め息をついた。そういえば彼女は無類の酒好きだったのを思い出した。電話の会話の途切れ途切れに≪おお!? これ結構有名なスコッチじゃん!≫とか聞こえてくる。そう思っているとミーナはあることを思いついた。ベルツ大佐はメビウスたちと同じ軍隊に所属していた。ということは『黄色の13』についても何か知っているかも知れない。メビウスたちには申し訳ないが、彼からなにか情報が得られると思い聞いてみることにした。

 

「レオナード大佐。『黄色の13』という言葉に聞き覚えはありますか?」

 

「む? 『黄色の13』だと……?」

 

 ベルツが『黄色の13』の言葉を口にしたとき、ガシャン、とグラスを落とした音が聞こえてくる。すると誰かが受話器を奪い取る音が聞こえた。

 

≪もしもし。今『黄色の13』て言ったよな? 誰から聞いたんだ!?≫

 

「マルセイユさん。いきなり何を」 

 

≪いいから答えてくれ!≫ 

 

「メビウスさんです。でも今彼女は………」

 

 どう言えばいいのか分からず黙ってしまう。しかし、向こうはそれを聞かないで受話器を放り投げた。

 

≪あ! 待ちなさい今外に出るのはいかん。誰か彼女を止めろ命令だ――!≫

 

 向こうのドタバタした状況が受話器から聞こえてくる。どうやら彼女は受話器を放り投げて部屋から出て行ったようだ。それを止めるようベルツ大佐の大声が聞こえてくる。これ以上繋げているのも意味ないと判断しミーナは通信を切った。

 

「レオナード大佐から連絡。今マルセイユさんを匿っているそうよ。それと1つ分かったことがあるわ」

 

「なんだ?」

 

「レオナード大佐、それにマルセイユさんの2人は『黄色の13』について何か知っている」

 

「なんだと。マルセイユのやつが何故それを知っているんだ」

 

「分からないわ。それは、彼女から聞いてみるしかないわね」

 

 もしかしたら、それの関係でメビウスさんに用があるのかもしれない。そうミーナは確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空中に制止した状態のまま、目の前に投影された画面を操作する。現在501基地上空10000m 彼―――いや、彼女のもつストライカーは普通とは違う造りになっている。

 

 スカイアイ本人は知らないが、スカイアイの固有魔法は広域空間把握と広域探査の珍しい二重固有魔法の持ち主だ。しかし、これは今の時代では便利ではない。二つの能力を使用するとその分魔力を消費する。個人差はあるが、単純に同じガソリンで一つのエンジン搭載のものと二つのエンジン搭載のもので比較すればどちらが長く持つか簡単に予想がつく。

 

 これを解決するために、将来発案されたのが宮藤理論型とそれ以前のランドセル型のハイブリット方式。魔力以外に機械的な補助を付け加えることでギリギリ実用レベルに達し、さらに魔力増強装置も搭載したものが、今スカイアイが身に着けているストライカーユニットE-767早期警戒機なのだ。

 

 この世界の未来で誕生するストライカーだが、そんなことスカイアイは知るよしもない。真剣に投影されたレーダー画面を見る。今は何も異常はない。しかし、とうとう現れたとなれば警戒をといてはいけないと頭の中で警鐘を鳴らしていた。

 

「代わるぞ。少しは休め」

 

メビウス8がやってきた。どうやら交代に来たらしい。

 

「いや。私は大丈夫だ。私のことは気にせず「スカイアイ」?」

 

「心配してくれるのは助かる。だが自分自身のことも考えろ。あれから3時間ずっとだろ?飛行機の中にいるのと違うんだ。正直きついんだろ? 2時間が限界だが休んでこい」

 

 メビウス8の気遣いに正直感謝した。感覚が似ているとはいえ機内にいるとは大きく違うこのストライカーで、性能上可能とはいえ3時間も飛んでいるのは人間にはつらいことだ。

 

「分かった。そうしよう。それよりもこれを見てくれ」

 

 スカイアイはあるものを投影した。それは以前カレー上空で空戦したときの三次元空戦データの記録だった。そして隊長、メビウス1のそのときの機動が映される。それを見た時言葉が出なかった。

 

「おいおい………これ本当か?」

 

 メビウス8はただ信じられないと呟く。その機動は、明らかに人間には耐えられないGが発生する動きだったのだ。確かにメビウス1は隊の中でも激しい Gに耐えることができることを知っている。しかしこの機動はおかしすぎた。あの時の、戦争時のデータと比較してもこっちのほうが鋭い。しかし、これを繰り返したら機体も持たないのでは?

 

「だが、機体もメビウス1本人も目立ったものは見られなかった。それに聞いた話だが、ウィッチの能力は少なからず機体にも影響されるらしい」

 

 その話を組み合わせたうえで出た結論を言った。

 

「メビウス1の固有魔法は、非常に高い『身体強化』ではないだろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療室のランプが消えた。扉が開く。医師が出てくる。彼女の着る白衣は、返り血を浴びたように真っ赤に染まっていた。

 

「先生。メビウスさんは………」

 

「手術は成功しました」

 

手術室からメビウスさんが運び出される。しかし、死人の様に眠っていた。

 

「宮藤さんのおかげで傷ついた組織も治りました。私たちにできることはここまでです。あとは、メビウスさんの生命力に賭けるだけです」

 

「宮藤はどうした?」

 

 遅れて宮藤が運ばれてきた。疲れたように眠っている。

 

「手術が終了したと同時に倒れました。魔力を使いすぎたための疲労と思います」

 

「そうか。よかった……」

 

「坂本少佐。少しお話があります。ミーナ中佐にも伝える必要がありますのでよろしいですか?」

 

 

 

 

 そして、執務室にミーナ、坂本と担当した医師の3人が集まり、手術の報告をした。

 

「手術は成功―――しましたが、お伝えしなくてはいけないことがあります。メビウスさんがここに来たとき指の内出血のことを覚えていますか?」

 

 ミーナと美緒は思い出した。始めてメビウスに会ったときその報告を聞いていた。

 

「調べたのですが、あれは急激なGによってできた可能性が高いと思います」

 

「それとなにか関係が……?」

 

「メビウスさんの胸部に刺さった鉄屑。あれが肋骨の一本を破壊し、破片が散らばっていました。取り除きましたが、見えない破片がまだ多数肺に残っています」

 

「つまり……?」

 

 医師はしばし言うのを躊躇った後、非情な現実を告げた。

 

「もしまたあのストライカーに乗った場合、Gで残った破片が肺組織内で傷つけ内出血を起こし…………………死にます」

 




メビウス1の固有魔法「身体強化」

身体強化はウィッチが誰でも持っている一般的なものである。しかし、メビウス1の場合それの数倍の効果を発揮し、ラプターが生み出す高Gに耐えられる身体になる。



最後までよんでいただきありがとうございます
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