【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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大変を待たせしました。


第32話「宮藤脱走」

星が降った夜を 覚えている

 

隕石を撃ち砕くために 各国共同で大きい大砲が作られ

 

あの夜 隕石破壊に使用され その様子がLive中継された

 

それを見ていた皆が思った これで助かると 誰もが思っていた

 

俺もその一人だった 

 

爆音

 

乱れる映像 あまりの大音量にスピーカーがイカれた

 

撃ち漏らした隕石の一つが大砲の一つに直撃した

 

隕石が落ちたことで発生したシステムダウン 

 

事前に予測していたため復旧は1分で済んだ

 

1分間 死が大陸に降り注いだ

 

翌日のニュース 隕石の墜落地点の詳細な情報がニュースで流れた

 

 

 

 

我が家のあった場所

 

 

 

 

なつかしい家族は もはや記憶の中にしかいない

 

異世界に飛ばされた今もあの大穴を

 

俺はけっして忘れない

 

あそこは家族が眠る 巨大な墓標

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪夢にうなされた宮藤は目を覚ました。外は朝を迎えようとしている。部屋にある蛇口から水を飲んだ。

 

「今の………夢?」

 

 夢なら幾度となく見たことある。いつもの日常だったり、意味不明なものだったり様々だ。今の夢も意味不明なものに含まれるものだ。降り注ぐ星の雨。発射される大型ネウロイと同サイズの大砲。そして、巨大な大穴。しかし、何故か現実味を感じずにはいられなかった。

 

「それとあのネウロイ……」

 

昨日メビウスさんに襲い掛かった2人目のネウロイ。私に対して攻撃したときの顔が、どうしても私を殺す気ではないように見えたのだ。

 

「危険なのは分かってる………でも」

 

 ネウロイと分かり合えるかもしれない。争い事が嫌いな宮藤にとって、それはあまりにも愚かな考えだが、どうしても確かめずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 執務室のソファーにマルセイユは1人考え込んでいた。夜に聞かされた私にそっくりのネウロイ。そして、そいつが履くストライカーが彼の機体と同じだったこと。

 

「なんだ。朝まで飲んでいたのか……お前が酒を飲まないなんて珍しいな」

 

部屋に入ってきたバルクホルンがマルセイユの飲んでいたグラスを手に取る。そこに入っていたウイスキーは水とお酒が分離していた。それはオンザロックで飲んでいたウイスキーを飲まずそのまま放置していたことを意味していた。

 

「なあ。バルクホルン。何故あいつ(黄色の13)はお前たちを攻撃しなかったと思う?」

 

「なぜ? そんなのいつでもできるからだろう?」

 

「そこなんだよ」

 

 マルセイユはバルクホルンへと振り向く。その顔は寝ていないのに全く疲れていない。

 

「“黄色の13”を真似たただの(・・・)ネウロイなら躊躇なく攻撃してたはず。なのにメビウス1にだけ交戦し、戦闘に介入した宮藤芳佳には攻撃した………おかしいだろ? 明らかに相手を選んでいる節がある」

 

「ではなんだ。あれはメビウス1だけが目的だったと言うのか?」

 

「そうさ。宮藤芳佳に攻撃したのは決闘の邪魔をさせないための牽制と考えると納得できる」

 

 しかしそれは予測だ。100%そうである確信はない。だから、どうしても確かめたかった。

 

「今日ネウロイの巣に近づいてみようと思う」

 

「な!? 危険すぎる! 一体何を根拠に言ってるんだ!」

 

 マルセイユは水と分離したウイスキーを飲み干す。

 

「根拠なんてないけどさ。なんかあいつを似せてるんじゃなくて、あいつのような気がするんだ」

 

 そうは言っても必ず会えるわけじゃないし、なにより普通のネウロイのお出迎えを受けるだろう。どうしたものかな~と思っていると扉が開いた。

 

「大変です! 宮藤軍曹が脱走しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロンドンにいるベルツは自宅に帰らず部下から受け渡された資料を見ていた。7月に決定した501部隊の予算削減。確かにブリタニアの財政は火の車状態だがここ最近の空軍と海軍の金と資材の流れが怪しかった。私としては海軍の動きがとても怪しかった。陸軍だけでなく海軍にも顔が聞く私はそれなりに情報が回ってくる。しかし、海軍の資材の流れが異様に多くなっているのだ。なにか軍艦を造っているのかと思ったがかなり周到に隠されているのか実態が掴めていない。それに対して空軍、とくにマロニー大将でお金の流れが頻繁に多く、何かあると思い部下に調査を言い渡したのだ。

 

 海軍については何か扶桑陸軍の存在を確認しているがそれだけで情報は得られていない。一方でマロニー一派の動きは少しずつ掴めていた。それが手元にある絵。そこにはSF染みたロボットのようなものが飛んでいる姿が描かれている。写真では撮れないような今の時代に絵はときに重要な意味を持つ。どうやらジェット推進の機体であること、人が乗っていない無人機との情報だった。前者は分からなくもないが、後者が信じられなかった。何せ今の時代完全な自立兵器など作れるはずがない。確かにこの世界には私がいた世界と違い魔法という概念が存在する。それを頭に入れても無理だということは分かっていた。だとしたら、一体どんな技術を使っているのだろうか?

 

「いやな予感がするな……」

 

 そう呟くとドアが叩かれた。中に入れさせる。

 

「監視の者から報告です。例の機体が501基地に向け飛び立ちました!」

 

「なに!? それは何時ごろだ」

 

「0800です」

 

 現在0815 そろそろ基地に着いてもいいころだ。だが一体何の目的で? と考えていると別の者が入ってくる。

 

「失礼します。マロニー空軍大将と部下の者が501基地に向け出発したと報告入りました!」

 

「視察の間違いじゃないのかね?」

 

「通常装備と重武装の兵士、研究者らしき人たち合計200人越え中隊規模の人数です。おかしいです」

 

 入ってきた情報を整理し考える。無人機を501に渡すとして研究者だけでなく兵隊まで送るか? まるで敵地にでもいくような感じだ。それに彼はウィッチ否定派だったはずだ。彼女たちと協力するなんてことはない。なら考えられるとすれば……基地の占拠?

 

 まさか。とベルツは思う。毛嫌いするといっても自分の、空軍の基地だ。銃は必要になるかもしれないが重装備するまで警戒する必要性が考えられない。だとするなら何か別の目的がある。それに研究者もいるとあるが、もし無人機にさらなる改良を施すとするなら喉から手がほしいのは―――彼の機体か。

 

「マロニー大将の動向を探れ。あと501基地を監視できる場所を速やかに確保しろ」

 

「了解しました」

 

「それと501に連絡をとってくれ。メアリーにも至急だ!」

 

「はっ!」

 

 最悪を想定する必要がある。もし仮に彼のストライカーが破壊された場合どうやって対処しろと言うのだろうか。無人機に自信があるのだろうが、あんなもの私たちの世界では敵にもならない。ましてや戦闘機相手なら尚更だ。とにかく急いだほうがいい。すぐさま行動に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮藤芳佳軍曹の脱走――

 

 その知らせを受けミーナはすぐに指示を出す。

 

「美緒とペリーヌ達は基地に残って!」

 

「……わかった!」

 

「さあ、出撃するわよ!」

 

「了解!」

 

ミーナは出撃するバルクホルン、エーリカ、マルセイユ、シャーリー、ルッキーニと共に、大空へと飛び立った。彼女たちが飛び立った後基地に連絡が入る。

 

「空軍大将殿がここに向かってる?」

 

「ああ。しかもかなりの人数だ。武装している兵士もいるらしい」

 

 ベルツ大佐の連絡内容はこうだ。ひとまずメビウス1を基地から逃し、しばしの間海兵隊のところで身を隠すということだった。もし捕まると機体が分解されかねない。そのとき襲撃を受けたら壊滅だ。

 

「だがメビウス1と機体はどうする? 自分の機体持っていくだけで手一杯だぞ」

 

「そこは俺たちが何とかする」

 

 名乗りを上げたのはホーマーだった。

 

「さすがにあのデカブツは隠せないが、ストライカー程度なら十分隠せる。とっておきの隠し場所がある」

 

「賭けるしかない。よろしくお願いする」

 

「おう。任せろ!」

 

 ホーマーが立ち去り再度話し合いが続く。

 

「機体はこれでいいとして、メビウス1はどうする?」

 

「……隠すのは無理だろう。それにおそらくメビウス1の顔は知られているはずだ。だがけが人だから強引にはできないはず」

 

そこもう祈るしかなかった。それにもう時間がない。

 

「すまない。メビウス1を頼む。行くぞメビウス8!」

 

「目が覚めたら伝えてくれ。必ず迎えに行くってよ!」

 

「分かった! それまで奴らに指一本も触れさせないぞ」

 

「メビウスさんのことはお任せください!」

 

 メビウス8とスカイアイは自分の機体を装着し、基地を飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前会った人型に出会い、導かれるようにネウロイの巣の中へと入った宮藤。その中心と思われる空間には私を導いたネウロイの他にもう一体いた。

 

「あの時の……!」

 

 メビウスさんと交戦したあの人型ネウロイ。だが戦う気がないのかこちらを見つめるだけで何もしてこない。

 

そしてネウロイは宮藤にある映像を見せる。

 

青い海と白い雲に覆われた天体――地球。

 

続いて空を飛ぶネウロイと、それを迎撃する戦闘機。

 

 シールドを張り、ネウロイに肉薄する一人のウィッチ――それは宮藤も知っている、坂本だった。

 

 場面は変わり、地面に落ちたコアを囲む白い服を着た集団。

 

 そしてどこかの工場らしき場所で、暗闇に光る人型の機械――

 

「ねえ、これはいったい何なの? どうしてこの映像を私に見せるの?」

 

宮藤は隣にいる人型に話しかける。が、返事はない。人型は何かを察知したのかと思うと、姿を消した。

 

どうしても理由を聞きたいが本人がいないため聞けない。宮藤は近くにいたもう1人のネウロイにも聞きたいことがあるため問い詰めた。

 

「ねえ。どうしてメビウスさんを狙うの? あなたはあの人の一体なんなの?」

 

問い詰める宮藤にネウロイはゆっくりと両手をかざし、先ほどのネウロイと同じように映像を見せる。

 

「なに………これ……あの、夢?」

 

見せられる映像

 

先ほどの地球とは大陸が違う、もう一つの地球。その一つの大陸が拡大される

 

夜空に降り注ぐ星の雨。吹き飛ぶどこかの都市。迎撃する巨大大砲

 

撃ち落とされる戦闘機。爆破される戦車

 

一瞬にして爆散する航空機郡

 

どこかの小さな島の上空に所狭しと飛ぶ戦闘機たち

 

例の大砲上空で繰り広げられる音速を超える戦闘機同士の戦い

 

町の灯がともった夜

 

そして―――真っ赤な夕日を背に二機の戦闘機が死闘を繰り広げている映像

 

一機は目の前のネウロイが履くストライカーと同型の戦闘機

 

相手をする機体は、私が良く知る機体とエンブレム―――メビウスさんだ。

 

「これは……どういうこと……?」

 

宮藤は、ネウロイから見せられた映像に困惑した。今の映像に出てきた戦闘。その全てにネウロイは出ていない。つまり、あれに乗っていたのは人間。そして、同じ人間同士の戦いなのだと。

 

「あなたは、あなたはメビウスさんの何なのですか?」

 

宮藤はネウロイに話しかける。が、何も答えない。すると突然ネウロイは宮藤を抱き動き出す。先ほどまでいた場所にビームが通り抜けた。

 

「きゃあああ………!!」

 

衝撃で宮藤は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーナ達は突然現れた人型に驚きながらも、すぐに戦闘態勢を整え、散開する。しかし、人型はそれに反応せず、ただじっとブリタニア本土を見続ける。

 

「いったいなにが……」

 

 ミーナが呟いた時だった。

 

 突然現れた銀色の飛行体。それは猛スピードで人型に近づくと、機首についていた機関砲を撃った。

 

 機関砲弾を回避した人型は、両手を変形させ、飛行体目掛けてビームを放つ。だが飛行体はそれを軽々躱すと、人型に変形する。

 

「なんだあれ!?」

 

驚く中、その機体は両手を胸の前で合わせると、ネウロイと同じ赤いビームを放つ。人型はそれを避けるがビームはネウロイの巣を貫いた。

 

「何て威力だ!」

 

 再度ビームを放とうとエネルギーを溜める機体。だが、突如その機体が爆風に巻き込まれた。ネウロイのミサイルが命中したのだ。両腕部分に損傷を受けた謎の飛行体は何処かへと去っていった。

 

「何だったんだあれ?」

 

「そんなこと考えている暇ないわよ」

 

 茫然とそれが消えて行った方向を見続けるシャーリーにミーナが言う。彼女たちの前にはもう一体のネウロイ……マルセイユ似の人型ネウロイが気絶した宮藤を抱えていた。皆に緊張が走る。明らかに人質を取られている状態だ。だが、マルセイユだけは違った。

 

「私に任せてくれ」

 

「待って。マルセイユ大尉!」

 

 ミーナが止めるのを無視し、マルセイユは自分と同じ姿の、黄色の13のストライカーを履く人型ネウロイに近づく。持っているMG34を背中に回し戦意がないことを見せる。ネウロイの目の前まで近づいた。ネウロイはゆっくりとマルセイユに宮藤を渡す。宮藤を渡したネウロイは立ち去ろうとし

 

「待て! お前なのか黄色の13!」

 

マルセイユの呼びかけに立ち止まる。顔を向けない人型ネウロイとその背中を見つめるマルセイユ。彼女は振り向かせようと近づこうとし、頭を撫でられた。

 

 驚くマルセイユ。しかし、恐怖は無かった。何故なら彼女の頭を撫でる人型ネウロイの顔がとても穏やかだったから。人型ネウロイが口を動かすが声はない。口の動きだけで分かった。

 

 

 

 

 

や く そ く ま も れ な く て す ま な か っ た 

 

 

 

 

 

「―――やっぱりお前は」

 

 マルセイユの言葉を待たず、人型ネウロイは巣へ戻って行った。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

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