【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐ 作:skyfish
書いているときの曲
ロンドン防衛戦 エスコン6より Invasion of Gracemeria
ポーツマス防衛線 エスコン5より Naval Blockade
ドーバー海峡 エスコン04より Farbanti
※Pixivにも投稿してますがそこでアンケートを行っています。ここだと違反になるので
内容は
次々回で「リボン付きVS黄色の13」を書く予定ですが、そのとき流すBGMはどちらで聞きながら読みたいですか?
・エスコン04より Farbanti
・エスコンZeroより Zero
暇がありましたらぜひともお願いします。
赤城を狙い躱されたビームは基地の横を通り抜け大爆発と振動を起こした。
「うわわ! 何だ攻撃か!?」
突然のことに驚きしりもちをつくホーマー。周りにいるマロニー取り巻きの研究者や兵士も何が起きたのか分かっていない。メビウスの横で小銃を向けていた副官もハシゴから落ちないようにしがみつくのが精一杯の状態だった。今しかない、とメビウス1は判断する。
「はああっ!」
「ぐばぁっ!?」
小銃を向けていない無防備なその顔面に渾身の一撃を殴り込んだ。バランスを崩した副官は梯子から転げ落ちる。
「ホーマー今だ!」
「はいよ。お前たち出番だ!」
「「「「「「「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaa!!!」」」」」」」」」」
身を隠せるところ至る所から体の一部に赤い何かを身に着けた501部隊のストライカー整備員たちが現れ、マロニー一派の者達を取り押さえる。
「ここは俺たちに任せて。あんたは行ってくれ!」
「すまない!」
ヘルメットをかぶり風防を閉じる。機体の感度は良好。問題があるとすれば医師から忠告された俺の体か。
(正直どこまで持つか分からないが……俺が出るしかない)
いつもと違うストライカー専用の滑走路に機体を動かす。やはり長さが足りない。強引にスピードを出すしかない。風防を開け大声で伝える。
「30秒だけ待つ。全員死にたくなかったら建物の中に隠れろ!」
それだけ言い放ち風防を閉じた。機体をもともとストライカーが置いてあった格納庫の前に移動させる。そこは今巨大鉄柱に塞がれている。これなら多少無理してもいいかもしれない。
誰もいないことを確認してエンジン出力を上げる。
「メビウス1出撃する!」
少し前に進んだところで強引にアフターバーナーを点火した。急激に速度を上げるF-2A。その高温の排熱はF-2Aが滑走路から離れるまで通った場所が焼けただれ表面が剥がれ落ちる。それでも飛ぶことが出来た。黒煙を上げる赤城へと機首を向ける。その上空にはさらに攻撃を仕掛けようとするウォーロックが見える。
「こっちを向け。FOX3!」
F-2AからAAM-4(99式空対空誘導弾)が一発発射される。それを確認したのかウォーロックはこちらに振り向きレーザーでミサイルを撃ち落とした。こちらに注意を引くようにウォーロックと赤城の間を通り抜ける。後ろを確認すると飛行形態に変形したウォーロックが追ってくるのが見えた。
「お前の相手はこっちだ! ごほっ」
ウォーロックの性能がどれほどの物か分からないがやってやる。
「メビウス1。
ロンドンに2カ月ぶりに響き渡る空襲警報。次々と滑走路から飛び上がる戦闘機と魔女たち。
「司令部! どっちの方角から来る!?」
通信機に怒鳴りつける短髪茶髪の女性。彼女の名はドロレス・バーダー。またの名を『不屈のエース』『足無しバーダー』。ブリタニア空軍タングミーア航空団司令であり、第11統合戦闘飛行隊「HMW(
≪首都ロンドンを基点に方位130 501部隊の基地がある方角から接近する機影多数。大型32機 中型51機 小型108機侵攻中≫
「あなた誰? 一体どこから」
≪君の頭上高度12000mからブリタニア全域を監視している≫
まさかと思い上を見る。目を凝らすと確かに人らしき影が見えた。それよりもだ。
「あなたは……」
≪手短に言おう。私はISAF空軍第118戦術航空隊メビウス中隊担当管制官、スカイアイ。君たちはロンドンの防空部隊で間違いないね? 早急に部隊を分けてほしい。方位180距離150㎞に小型の大部隊が北西方向に向け進行している≫
「南の150㎞から北西方向にあるのは……ポーツマス軍港!」
ブリタニア軍の要所の一つであるポーツマス軍港にはブリタニア海軍の軍艦だけでなく先月到着した空母加賀を中心とした扶桑機動部隊が入港したばかりだ。ガリヤ上陸作戦に必要な戦力を失うわけにはいかない。しかし、私たちの本文はロンドン防衛だ。ここを離れるわけにはいかない。
「なら、南の敵は私に任せてくれないか? 私に部隊を少し分けてくれ」
「ガランド中将。そうですね。お願いします。南の敵は小型中心ですから……」
バーダーは思考を巡らせどの部隊が適任か決める。
「第302戦闘機中隊、第303混成航空中隊。ガランド中将と共にポーツマス軍港防衛に向かってください」
≪我々だけでいいのかね?≫
「あなた方なら安心できます。バトル・オブ・ブリテン(1940年7~10月)で一番の戦果を挙げたあなた方なら」
≪了解した。302、303。ポーツマス防衛に向かうぞ≫
≪了解隊長!≫
ガランドと第302戦闘機中隊、303混成航空中隊は南の方角へと進路を取りポーツマスへと向かった。
≪こちらスカイアイ。急ぎメビウス8の救援に入ってくれ。あいつでもあの数では無力だ≫
今度は一体誰の事だろうと思うとこちらに向かってくるネウロイの一角が消滅した。それだけでは終わらない次々と消滅していくが消えるのは小型中型のみ。大型はその再生力で全く効いていない。
「分かったわ。ウィッチは大型中型の相手をして、小型は戦闘機部隊に専念。ロンドンを守りきるわよ!」
≪了解しました!≫
≪いいかお前ら! ブリタニアを守るのは魔女だけじゃないってことをネウロイ共に思い知らせてやれ!≫
≪オオーーッ!!≫
ロンドンの防衛に携わる魔女・戦闘機部隊がネウロイ郡との戦闘に突入する。
ドーバー海峡 ロンドン ポーツマス軍港。
この三つの場所で同日に行われたこの戦闘は後に『第2次バトル・オブ・ブリテン』と命名され、今大戦の大空戦の一つとして軍事史に刻まれることとなる。
【ロンドン防衛戦】
「くそ! さすがにこの数では……」
メビウス8は右手に受け取った機銃を持ち、左手にはハルバードを持ち戦っていた。増層が取り付いた状態のF-22Aストライカーを履いているがこの敵相手ならそんなに悪くない。しかし、やはり多勢に無勢。小型ならともかく中型以上になると簡単には倒せない。大型に至っては全くと言っていいほどだ。こっちとしてはすぐにでもメビウス1の救援に向かいたいのにここを無視するわけにはいかない。それにあいつのことだ。自分よりも市民の安全を優先させてくれと言うだろう。なら、私はその信頼に応えるまでだ。と思っているとレーダーに大部隊が映される。ロンドンの防空部隊がやっと来たのだ。
「首都防衛なだけに結構な数だな」
その塊が二つに分かれる。1つは航空機サイズの一団。もう一つはさらに小さい反応。魔女と戦闘機に別れたか。
≪あなたがメビウス8―――ハンナ・ルーデルさん!? どうしてここに!≫
「うん? あー、一応言っておくが私はルーデルって人じゃない。まったくの別人だ。ISAF空軍第118戦術航空隊メビウス中隊所属コールサイン“メビウス8”。オメガと呼んでくれ。あんたの名は?」
≪ブリタニア空軍タングミーア航空団司令、第11統合戦闘飛行隊「HMW」隊長ドロレス・バーダーです≫
「じゃあバーダー隊長。私がネウロイたちを掻き回して混乱させる。あんたたちはその隙をついて各個撃破してくれ」
≪やはりそれは噂に聞いたジェットストライカー≫
「そんなところだ。後方は任せたぞ」
メビウス8はネウロイ郡のど真ん中へと突入する。
「さあ。一足早すぎの航空ショー始まりだ!」
機銃を背中に回し両手でハルバードを持つ。機体を加速させる。時速1000㎞。レシプロでは出せない高速でメビウス8はネウロイの大群の中を縦横無尽に駆け抜ける。小型を両断し、中型に致命傷に近い傷を負わせ、大型にはそれなりの損傷を与える。その繰り返し。一般的に自分が相手より100~200㎞速いと相手が止まって見える。そして今のメビウス8にはネウロイ達の動きが完全に止まって見えた。もちろんネウロイの反撃はあるが、同士討ちを避けるためそんなに多くない。その間を抜けて攻撃を繰り返す。
メビウス8のおかげでネウロイたちの進撃は止まった。ネウロイは完全に高速で飛び回るメビウス8に気を取られている。この絶好のチャンスを逃す手はない。
「全員! さっき言った通りに動いて!」
≪了解!≫
第11統合戦闘飛行隊のウィッチが攻撃を仕掛ける。それに気が付いた小型が前に出てくるが上空からの集中攻撃を受け蜂の巣にされる。
≪お前らの相手はこっちだ。ちっこいの!≫
ウルトラマリン スピットファイアMkV ロンドン防衛部隊は何も魔女だけではない。戦闘機部隊のパイロットはほとんどが男性だ。そして彼らにも意地がある。
急降下による一撃離脱攻撃でウィッチたちに迫りくる小型ネウロイを一掃する。
≪バーダー大佐たちは行ってくれ。ここは我々が引き受ける!≫
「ありがとう! みんな。かかりなさい! この空を守り抜くのよ!」
≪
≪
ロンドン南東50km上空にて ロンドン防衛部隊全戦力とネウロイの空中戦が始まった。
【ポーツマス軍港】
「すでに始まっていたか!」
ポーツマスまで30km地点でガランドはスコープを覗いてポーツマス軍港の空を見る。すでに30機程度が軍港内に侵入し戦闘が始まっていた。軍港内の艦船はほとんどが浮き放題状態である。今の時代の艦船は全速を出すまで半日かかってしまう。動けない軍艦などただの的だ。しかし、大部隊と聞いたにしては数が少ない。
≪ポーツマス沖合20㎞上空にてどこかの部隊が交戦に入っている。そちらから確認できるか?≫
スカイアイからの報告を受けその方角に目を向ける。濃い緑色の戦闘機。
「あれは扶桑の戦闘機……ゼロ戦か」
零式艦上戦闘機。通称『零戦』扶桑が開発した現在の主力艦上戦闘機。レーザーを使うネウロイ相手に防御は不要と判断した開発者が、機体の骨組みからナットに至るまで神経を尖らせた軽量化。小型ネウロイに有効な20mm機銃を初めて搭載した艦上戦闘機。その攻撃力と軽量化による驚異的な機動性・格闘能力はトップクラスである。さらに増層無しで2000㎞も飛べる驚異的な航続能力を備えた機体だ。反面その軽量化により機体耐久力が脆弱。急降下である速度以上になると空中分解するほどだ。扱いやすい機体だが一つ間違えると危険な機体でもある。
飛んでいるのは零式艦上戦闘機五二型。宮藤や坂本が乗る二一型の改良版だ。
その機体が小型ネウロイおよそ200機近い大部隊を相手に半数の100機が必死の戦闘をしていた。その離れた場所に彼らの空母が待機している。
航空母艦“天城”“加賀”。赤城と共に扶桑海軍の第一航空戦隊を担う扶桑の主力機動部隊。その練度は世界一といっても過言ではないほどの実力だ。その彼らが倍近くの敵を相手に何とか持ちこたえている。
「私は湾内の敵を片づける。君たちは扶桑部隊の援護に向かってくれ!」
≪了解した≫
ガランドは1人ポーツマス上空のネウロイ30機の相手をする。普通なら劣性であるが、彼女の前では有象無象に過ぎない。
「さて、かかってこい。雑魚共」
一方。ポーツマス軍港沖合では天城と加賀の航空戦隊がなんとか死守していた。しかし数の差で押されている。彼らが何故戦っているのか。ちょうどこの時間に機動部隊の訓練を行うために軍港から出ていたのだ。訓練を始めようとしたとき敵襲の連絡が入り、全機迎撃に向かわせた。
『各隊 状況 ヲ 知ラセ』
各隊の分隊長のみに搭載されているモールスを使い、乱戦の中連絡を取り合う。戦闘の僅かな変化を見逃さないようにと加賀の飛行隊長の命令で付けている。本来なら他国の戦闘機の様に無線機を使って口で連絡したいが、その分重量が上がり機動性に支障をきたしかねない。軽いもので連絡が取れるものがモールスのみだった。
『サラニ 6機 落トサレタ』
『コレ以上 減ルノハ 危険 援軍ハ』
『森田飛行隊長 ハ 無事行ッタカ!?』
『アノ人ナラ 心配ナイ』
いくら戦闘機でも倒せる小型でもこのままではこちらは全滅してしまう。そう思っていたとき。別の連絡が入った。
『北カラ 援軍』
その方角を見ると戦闘機とウィッチの混成部隊らしき編隊が近づいてくる。戦闘機もストライカーもブリタニア軍主力の1つ ハリケーンMkⅡ。
≪全機。ロッテを組んで各個撃破しろ≫
≪了解しました!≫
戦闘機1機とウィッチ1人が二機編隊を組んで戦闘を開始する。戦闘機は主に攻撃中心、ペアのウィッチは戦闘機の死角から迫る敵を担当する。その姿は背中合わせに戦うようにも見える。
ブリタニア空軍ロンドン防衛部隊所属 第303混成航空中隊。
またの名を「OFT」(オストマルク航空中隊)。ブリタニアに逃げ延びたオストマルク人のパイロットとウィッチで構成された航空中隊。バトル・オブ・ブリテンで最も多くのネウロイを落とした飛行中隊だ。
その部隊で指揮を務めるのはヴィトルト・ウルバノヴィチ中尉。男性でありながらその実力は高くバトル・オブ・ブリテンで小型ネウロイを15機撃墜させたエースパイロットだ。
そしてその彼の背中を守るウィッチも同じエース。
シルヴィア・スカルスキ少尉
実を言うと撃墜数は隊長のヴィトルト・ウルバノヴィチよりも多い22機を出している。彼女は降りかかる火の粉を払うよう近づくネウロイを撃墜する。
その彼らの横に一機の零戦が平行に並ぶ。空母天城の飛行隊長だ。無線がモールスなため通信はできない。よって敬礼で答えた。
援護 感謝する
それに対しヴィトルトとシルヴィアも敬礼で答える。ウィッチも加わった今ようやく戦力は互角になった。
≪巻き返すぞ!≫
『全機 粉骨砕身 ノ 心 デ カカレ!』
ポーツマス防空戦の反撃が始まった。
少し離れたワイト島。そこではワイト島分遣隊のウィッチも迎撃に出ていた。大陸から次々と飛んでくるネウロイを掃討していると超高速型のネウロイ一機が基地へと向かっていた。基地には魔法力を失いシールドを張れなくなったリネット・ビショップの姉、ウィルマ・ビショップがいる。迫りくるネウロイに彼女は自前の対物ライフルを出し狙撃を試みた。
「とっておきだよ」
ライフルに一発の銃弾を装填する。それは日々少なくなる魔法力を毎日少しずつ蓄えた銃弾だった。それを20発用意してある。
「北東の風……風速2メートル……敵の位置誤差修正……」
一度だけでいい。もう一度私に力を貸して―――!
「行けぇ!」
引き金を引き、銃弾が発射された。それを回避しようとネウロイは横に動く。
だが―――
ウィルマの放った銃弾はその内臓する魔力量によってか。翼が生え、まるで誘導弾のように動きネウロイへと吸い込まれていった。
「やった!」
その一部始終を見ていたフラン。しかし、貫かれたネウロイに変化が現れる。
「え!?」
ネウロイの胴体にあるとがった部分がすべて切り離される。このネウロイの招待は超高速型の母艦だったのだ。離された数は4つ。そのすべてがウィルマへと襲い掛かる。
「ウィルマ!」
叫び声をあげる。ウィルマもここまでかと覚悟を決めた表情をする。
その接近するネウロイを横から銃撃する影。一瞬のうちに4機すべてを撃墜する。
「たった一回の攻撃で4機を!?」
「え? 誰……戦闘機?」
フランとウィルマは同時に声を出す。援軍に来てくれたのはなんと戦闘機一機だけだった。国籍マークは扶桑。濃い緑色の胴体に両翼を黒に染めた機体。そしてネウロイを
その機体を見た角丸美佐は驚きの声を上げる。
「あの零戦は空母加賀の飛行隊長 森田昌一大尉の戦闘機だわ!」
「森田昌一……もしかして『扶桑海の海鴉』か?」
「誰ですか?」
「知らないのか。森田昌一 扶桑海事変のエースパイロットだ」
知らないアメリーに対してラウラが説明する。
森田昌一大尉
航空母艦“加賀”の飛行隊長を務める。1937年の扶桑海事変で初陣を飾る。撃墜数は11機。あまり知られていないのは扶桑海事変の決戦時台風の影響で出撃できなかったからだ。決戦までの散発的な戦闘でスコアを稼いだ。後の映画『扶桑海の閃光』で出演を依頼されていたが彼は「あれは彼女たちの栄光です。僕はお門違いですよ」と断ったそうな。
そのときから機体に描いていた鴉のマークからつけられたあだ名が『扶桑海の海鴉』。最初はただの鴉のマークだったが、ネウロイを食い殺すという意味を込めて今のマークになった。
その機体の増層が切り離され、飛んでいる彼女たちに向かって落ちる。その増層が割れた。その中から扶桑のウィッチが使う九九式二号二型改13mm機関銃が出てくる。角丸、アメリー、フランが一丁ずつ。ラウラが二丁受け取る。弾が無くなってきた今貴重な補給だった。
コックピットの風防を開けた森田大尉は扶桑の手信号で角丸に伝える。
『空母 防衛 戻る 御武運を』
「ここは任せてください。ありがとう……!」
森田大尉の零戦が離れていく。その姿を見届ける余裕はない。
「いいみんな。ここを守りきるわよ!」
≪はい!≫
≪ああ≫
≪上等よ!≫
≪基地のほうに近づいたら任せて≫
ワイト島の攻防戦はまだ終わっていない。それでも彼女たちは戦う。自分にできることをするために。
「やっと半分かっ!」
ハリケーンを駆け、さらに軍港上空にいたガランドも加わり何とか最初の約200から半分まで減らすことができた。しかし、こちらの消耗も激しい。我が部隊はウィッチもいるからそうでもないが扶桑の部隊はさらに減った。このままでは……
ふと見ると普通の零戦とは違うペイントをした機体が戦線に加わるのが見えた。最初の攻撃で2機撃墜する。
「いい腕だな」
その機体の後ろから追跡するネウロイがいる。結構近い。このままではやらせると判断した。ヴィトルトは援護に向かおうと機体を動かそうとする。が、その零戦の次の動きに驚いた。零戦は急上昇をする。後ろのネウロイは同じく上昇して追跡しようとするまえに、機体を翻した零戦に撃ち落とされた。
「左捻り込み!」
左捻り込み。
レシプロ機ができる空戦機動だ。ループの頂点直前で失速横滑りして斜め旋回に移行し旋回半径を大幅に縮める機動である。しかしそれを実戦で出来るものは少ない。間違えると失速して墜落してしまう危険がある。それができるということはそうとうの実力の持ち主という事を示している。そして、その零戦に鴉のマークを確認して誰なのかすぐにわかった。
「全機良く聞け。『海鴉』が加わった。この戦いいけるぞ」
≪“海鴉”って、もしかして『扶桑海の海鴉』ですか!?≫
扶桑のエースパイロットが来た情報はすぐに全員に伝わる。これでやっと戦力が上回った。
「畳み掛けるぞ!」
≪ラジャー!≫
森田大尉が飛ぶすぐ横を1人のウィッチが飛んでいた。
「あれから随分と腕を上げましたね」
「いや、まだまだ未熟です」
森田とガランドは扶桑海事変のときに顔を合わせている。当時ガランドは観戦武官として扶桑を訪問していた。あの時森田大尉は才能はあったものの素人そのものだったからガランドには頭が上がらない。
「まあいいや。さあ、行くか」
「ああ。これが終わったらゆっくり話すか」
ポーツマスの戦闘は終幕へと向かっていた。
【ドーバー海峡】
501基地
ミーナたちが基地に着いた頃にはすでに基地の制圧が済ませてあった。基地を掌握していたマロニー一派の者達は捕縛されている。それは管制室も同様だった。ミーナたちが入るとマロニーのほかに杖を片手に佇む見知った隻腕の男性 レオナード大佐だった。そして基地を取り戻したのは彼の部下である海兵隊の部隊だ。
「事実を捻じ曲げた官邸への報告書、偽情報のマスコミへのリーク、501に支給されるはずだった物資と予算の目的外使用……この計画にいろいろとやってましたね。マロニー空軍大将」
「まさかあなたが来るとは思わなかったよ」
「きな臭かったのでね。調べさせてもらったよ。ただネウロイの技術を使っているのは予想外だった」
空軍大将と海兵隊大佐。階級の違いで本来このような会話はできない。だが、レオナード大佐は本来将軍になってもいい器だ。本人にその気はなくともそれだけの実力がある。
「ただ少し気になる点がある。何故今になって表に出たのだ? この資料を見るにまだこれは完成形ではないはずだ」
「……確かに。本来は5機のウォーロックを用意してから表に出る予定だった。この計画は私が始めたことだったから万全を期す予定だった」
「なにか問題があったのか?」
そこまで考えていながら何故このような行動に移ったのか。
「簡単な話だ。この計画を中止にするためだ」
「なに……?」
意外な言葉を口にしたマロニーにレオナードやミーナたちは驚きを隠せない。自分が始めた計画を自分で中止するためにやったことだと?
「どういうことだ! 中止にするなら貴様の命令1つで済む話だろう!?」
聞いていたバルクホルンが叫ぶ。
「それが出来ないからこうしたのだよ」
「何……?」
ミーナたちは呆け、気が付く。目の前にいるマロニーは、部隊の解散を宣言した時の彼と、雰囲気が全然違うことに。
「当初はこのウォーロック計画を主眼に置いていた。だが半年前。ある施設廃墟が発見された。それは完全に破壊されていたが明らかに今の時代の物とは違うことがはっきりとわかるほど、ウォーロックが霞んで見えるほどに。それにウォーロックに使うはずだったコアを使い詳しく調べようと考える者達が多数を占めたのだ」
「それを止めるために行動に移したと?」
「それもある。これは制御できるかどうかが問題だった。もしその施設にコアを使い暴走したら取り返しがつかなくなる。そう危惧した私はウォーロックが成功することを条件に彼らを抑えた」
マロニーは続ける。
「そして、ウォーロックが暴走した際、確実に落とすことが出来る要素が必要だった。ネウロイのコアを使用したビーム兵器を搭載した無人機だ。ウィッチが対抗できるかどうか分からない。そんなときロンドン空襲で飛んでいる彼女を見た」
「それが、メビウスさんだったわけですね」
ミーナの指摘にマロニーは静かに頷いた。
「部下たちはウォーロックの更なる改造に使うつもりだったらしいが、私は確実な抑止力として彼女が必要だったのだ」
淡々と語られるマロニーの考え。
「まさかコア・コントロールシステムが干渉されるのは想定外だった……そんな言い訳を言っても意味ないがね」
「覚悟の上だったわけですか」
「ああ。もとよりそのつもりだよ。レオナード大佐」
マロニーはゆっくりと椅子に座った。逃げも隠れもしないという意思表示に他ならなかった。
「マロニー空軍大将。あなたを拘束します」
マロニーは何も答えず、静かに頷いた。
「本部に連絡だ。研究所に軍隊を派遣させてくれ。研究に関するものを押収するのだ――」
「待てぇ! ふざけるな!!」
レオナードの声を遮るように大声で言い放つ男が海兵に拘束された状態で連れてこられる。あの副官の男だった。その顔は殴られたような痣が残っている。
「あれがなんだかアンタは分かってんのか。ウォーロックさえあればこの戦争のあとの世界の主導権を握れる! 忌々しい魔女など必要ない。ウォーロックこそがブリタニアの未来に必要な―――」
「黙れぇッ!!!」
副官の言にレオナードが憤怒する。その場にいたものは皆面喰っていた。何故なら彼が怒る姿を見るのは初めてだったから。
「確かにウォーロックの技術は高い。味方に損害を与えず、敵を蹂躙する……戦争後の戦略兵器としてこれほど素晴らしいものはない」
「だったら―――」
「だが、そこに人の意志はあるのか?」
ウォーロックが実用化された時代の戦争。それが実現された場合の戦争の姿で彼自身が一番危険視することを説明する。
「戦場の空気に接することなく、遠い後方から遠隔操作する無人兵器。それが戦場を折檻したとき、戦争はただのゲームと同じ感覚になる。そんなふざけたことがあってたまるかッ! 無人機が有望なのは理解している………戦場は地獄だ。誰も彼も関係なしに死んでいく。襲い掛かる絶望。知っている人が死んでしまった悲しみ。そして、今度は自分が死ぬかもしれない恐怖。人間同士の戦争で人を殺してしまった罪悪感……あれを味わいたい奴などいない。だが、それを知っているからこそ平和とは何なのかを知ることが出来るのだ。それを破壊するあれを許すわけにはいかんっ!」
内に溜まったものを吐き捨てる様にレオナードは言った。その言葉を向けられていた副官は彼の気迫に完全に固まっている。ミーナはレオナードの右手が震えているのを見て理解した。彼は恐怖しているのだ。ネウロイの戦争が終わった後起こるであろう人間同士の戦争。それに投入されるウォーロック。戦場の地獄を体験しないせいで遊びと同じ感覚でやってしまう危機感。それが実現する世界の実態に。
「戦争を遊び感覚でやるなど狂気の沙汰だ……私はそれが一番恐ろしい」
最後は搾り取るように彼は言った。副官の男が連れて行かれる。マロニーが言う。
「君たちのストライカーは既に滑走路に出してある。私が言う資格はないが、言わせてくれ―――ブリタニアを救ってくれ」
バルクホルンとエーリカ、マルセイユは滑走路に向けて走り始め、ミーナもそれに続こうとして――はたと立ち止まり、彼に向かって敬礼をすると、バルクホルン達の後を追った。管制室にはマロニーとレオナード、その部下たちだけが残る。
「1つ聞くが、先の言葉は体験したことかね?」
「さあ。夢か現実だったのか。私にはもうわかりません」
マロニーの質問にレオナードは寂しく返答した。
空母赤城。その上空では二つの戦闘が繰り広げられている。1つはメビウス1が乗るF-2Aとウォーロックの戦い。もう一つは赤城だけでなくブリタニアに向かおうとするネウロイを抑えているのがあの人型ネウロイだった。ジェットストライカーを駆け、右手に銃を持つ。GSh-30-1機関砲。スホーイ系列の戦闘機に搭載されている機銃だ。それを一発撃つ。ネウロイのコアの場所が分かるのか一機に対したった2発だけ撃つ。その威力は凄まじく、大型をいとも簡単に消滅させた。
「坂本少佐! 艦尾に回ってくれ。そこにカタパルトがある!」
「了解した。ありがとう艦長!」
艦尾に移動するとその端っこにカタパルトが用意されていた。
「呉式2号5型と違うな。見たことない型だ」
「四式1号10型改です。リベリオンと同じ油圧式が本国で完成したのを渡されたんです」
そうか。と言いながら坂本はストライカーを履きカタパルトの上に立つ。ストライカーがカタパルトに接続される。
「発進!」
バシュッ! と音を立てながら坂本美緒が飛び立つ。続いてペリーヌ、宮藤の順に射出される。
「いいか。まずは赤城の危険を無くすのが最優先だ。それが済次第私とペリーヌはブリタニア防衛。宮藤はメビウスのところに行け!」
「え! 私がですか? でも」
「この中で長く戦えるのは宮藤だけだ。あの戦闘にどう介入するかちゃんと見極めろ。いいな!」
「はい!」
「散開しろ」
「「了解!」」
一方マルセイユ似の人型ネウロイは第二次ブリタニア攻撃のネウロイ郡と戦っていた。主に大型を中心に右手の銃を撃ちこむ。1発目で装甲を剥がし、続く2発目でコアを撃ちぬく。それをひたすら、一度もミスなしでこなしていた。しかし、それも長くは続かない。最後の大型ネウロイを破壊したときちょうど弾切れになった。荷物はいらないとGSh-30-1機関砲を投げ捨てる。その無防備になったところをネウロイ達は襲い掛かる。が横から割り込むように誰かが入ってきた。
「黄色の13! 助けに来たぞ」
やってきたのはマルセイユだった。ミーナたちも別の場所でネウロイと戦っている。マルセイユは持っている銃であっという間に5機撃墜する。
「アフリカに比べたらこれくらい―――」
言いかけたとき人型ネウロイがマルセイユの後ろへとすぐさま移動した。どこから取り出したのか両手に真っ赤なサーベルを持ちマルセイユに襲い掛かろうとしていたネウロイを切り払った。
2人は背中を合わせる。すでに2人の周りを数十機のネウロイが取り囲んでいた。
「あ。そうだ。ちょっとこっち振り向いてくれないか?」
何だと思い人型ネウロイはマルセイユのほうへと振り向く。頬を叩かれた。
「!?」
「この馬鹿野郎。約束守らなかったうえに私に迷惑ばかりかけやがって。あ~……すっきりした」
叩けたことに満足したのか笑顔になる。やられたほうは少し不満げな顔をしていた。
「このピンチを抜けるか。後ろは任せたぞ黄色の13」
同時に2人は動き出す。マルセイユは後ろから「お前もな」と聞こえたような気がした。
少し離れたところで宮藤、坂本、ペリーヌの3人を除く501の隊員たちがネウロイたちと戦っていた。
シャーリーとルッキーニが組んで2人の魔法を繰り合わせ、高速弾丸としてネウロイの塊に突っ込み一掃する。バルクホルンとハルトマンは十字砲火で殲滅し、エイラの予知能力を使いリーネとサーニャが迎撃する。
コンビネーションをうまく使い食い止めているがやはり大元を倒さないといけない。
「やはりウォーロックを倒す以外に道はない。だけどあのスピードでは」
メビウスさんが乗るF-2Aとウォーロックの動きはもはやレシプロで着いていけるようなものではない。シャーリーのように音速に近いスピードを出せるなら行けるかもしれないが、そしたらあの時みたいにストライカーが空中分解する危険性がある。とロンドンにいるスカイアイさんから通信が入る。
≪こちらスカイアイ。ロンドンとポーツマス軍港に攻め込んでいたネウロイがあらかた片付いた。現在残存の掃討を行っている。メビウス8をそちらに向かわせた≫
「分かりました。聞こえるメビウスさん。今こちらにオメガさんが向かっているわ。それまで持ちこたえて」
≪了解。もうミサイルがない。それまで―――ブッ、ゲホッ、ゲホッゴホ。ガア!?≫
「!? メビウスさん!」
突然咳き込むメビウス1。通信に口から何か液体が吐き出される音も聞こえてくる。間違いない、血だ。最悪の事態が起こってしまった。動きが鈍くなるF-2A。その一瞬を見逃さず、後ろから追ってくるウォーロックは新たに搭載されたM61機銃を連射し、エンジン部分と右翼に被弾した。被弾箇所から火の手が上がる。
「メビウスさん!!」
ウォーロックの攻撃は止まらない。撃ちながらどんどん近づく。
≪人間なめんなぁああああ!!!!!≫
通信から聞こえてくるメビウスの雄叫びを全員が聞いていた。メビウス1はF-2Aのタイヤを下し空気抵抗を増大。強引にオーバーシュートさせようとする。機体の少しずつ動かしウォーロックの進路上に移動させる。機体が接触する瞬間脱出した。
ウォーロックがF-2Aに衝突し爆発に巻き込まれる。
≪メビウスさん!≫
パラシュートで落下するメビウス1を宮藤は受け止める。そこに爆煙から出てきた機銃を損傷したウォーロックがレーザーの砲口を向けてきた。すぐにシールドを張る宮藤。だがウォーロックのすぐ目の前にもう一つの影が割り込んできた。宮藤が最初に会ったあの人型ネウロイだ。ネウロイとウォーロックは互いに攻撃せず、お互いのコアを出し相対している。一体何をしているのかと思っていると基地から通信が入った。
≪ミーナ中佐! ウォーロックの稼働率が急激に上昇している! そこにいるのは危険です退避してください!≫
「!! 全員ウォーロックから急いで離れ―――」
ミーナが命令を出すより速く。ウォーロックと人型ネウロイは真っ白な光に包まれた。
「うわああ!」
「なんだ! 何が起こっている!?」
余りに眩し過ぎて、皆咄嗟に目を覆ったがメビウスだけが見えていた。一瞬だけ抱き合っているようにも見えた。
「……………」
光が収まった後、そこには誰一人の姿もなかった。すると、周りにいたネウロイが次々に自壊していき、周囲に白い破片が空中を舞う。まさかと思い彼女たちはガリアの方を見る。彼女達の視線の先には、ガリア上空を覆っていたはずの黒い雲が次第に引いていく光景があった。
「ガリアが……解放された……?」
自身の悲願が達成された光景を見てまるで夢でも見ているかのようにペリーヌは言う。自分の頬を抓って夢ではないことを確認した。
「いよっしゃー! 勝ったー!」
「やった、やったぞ!」
思い思いに喜びを爆発させる隊員達。だが……
≪いや……まだだ≫
通信から聞こえてくるメビウス1の声に皆が無事だったのかと驚きながら彼女がみる方向に顔を向ける。彼女たちより上空。彼女たちの同じようにじっとガリアを見つめる黒い影。もう一体の人型ネウロイ。
≪聞こえるか……Yellow13≫
かすれかすれの声に反応したのかメビウス1に顔を向けるネウロイ。
≪準備ができ次第……俺を空に上がる。ゴホゴホッ!≫
咳き込み呼吸を整える。そして言った。
≪決着をつけよう≫
ヴィトルト・ウルバノヴィチ
元ネタの人とと同じ名前。
ポーランド人のエースパイロット。バトル・オブ・ブリテンで一番の戦果を挙げた『第303戦闘機中隊』の中隊長を務めた。イギリス軍にとどまらずアメリカや中国に行ったりなどしていた。
”日本軍と実際に戦った唯一のポーランド人”であり6機の鍾馗と戦い2機撃墜している。
シルヴィア・スカルスキ
元ネタ:スタニスワフ・スカルスキ
ポーランド人のエースパイロット。第二次世界大戦中ポーランド人の中で一番の戦果を残した。『第303戦闘機中隊』に所属し、のちに彼がリーダーを務めるポーランド精鋭チーム(PFT)を創設。この部隊は『スカルスキのサーカス』と呼ばれた。
森田昌一
元ネタ:エスコン0より PJ
名前:な か の ひ と を変えただけ