【完】ACE COMBAT SW ‐The locus of Ribbon ‐   作:skyfish

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第6.5話「早朝の一コマ」

1944年5月22日 05:00

 

夜は終わりを迎え東の空に明るみが広がっている。まだ顔を出していないが1時間もすれば太陽がその姿を現すだろう。

 

「・・・しまった。寝ちまったか」

 

相棒の整備途中で寝てしまったとメビウス1はあくびをしながら思った。

 

「ミサイルの補充をしないと・・・はっくし!」

 

くしゃみをするメビウス1。体も少し震えている。

 

「・・・寒い」

 

メビウス1は1人呟く。5月に入り暖かくなったとはいえやはり朝は冷え込む。上はジャケットを着ているからいいが下はズボン・・・いやパンツ?が1枚だけだ。この世界の女性の服装だとしても馴染めるわけがない。それにまだ眠気が残っている。

 

「コーヒーでも飲むか」

 

そう思い立ち上がろうとすると、プロペラの音に気が付いた。どうやらサーニャが夜間哨戒を終えて帰ってきたようだ。サーニャが格納庫に入ってくる。

 

「お疲れさ・・・ま?」

 

ストライカーから降りたサーニャに挨拶しようとしたが目の前まで近づいたら、サーニャの姿勢が崩れて倒れそうになった。

 

「ちょ!」

 

慌ててサーニャの体を受け止めるメビウス1。見たところケガは見られなかったが何かあったのか!?と思い彼女の顔を見る。それを見て自分の勘違いだと理解した。

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

サーニャはどこかの物語に出てくる眠り姫のようにぐっすりと眠っていた。はぁ、といらぬ心配をしたなとメビウス1はため息交じりに思った。とりあえずこのままでは風邪をひいてしまうためジャケットを彼女に着せて両手で抱えた後、彼女の部屋に連れて行こうと女子寮へと向かった。

 

そこで少し問題が発生した。

 

「・・・そういえば部屋どこだ」

 

女子寮に着いたはいいが彼女の部屋を知らなかった。この時間は誰も起きていないのだろう、鳥のさえずりしか聞こえない。適当にあたって間違えたらまずい。

 

「しかたないか」

 

このままここにいても埒が明かないので自分の部屋に行くことにした。部屋に入り彼女をベッドに寝かせる。かさばるだろうからジャケットを取ろうとする。そのとき、ジャケットから何かが2枚落ちた。それを拾い見たメビウス1は固まってしまう。

 

「何でここにあるんだ・・・」

 

拾ったものを見ながら呟き、すぐにジャケットの内ポケットにしまった。メビウス1としてはこれを他の者に見られなくなかった。いや、絶対に見せたくない。気持ちを切り替えて厨房にいきコーヒーを淹れようと歩いて行った。

 

厨房でコーヒー豆を見つけだすのに時間がかかった。それだけで30分もかかってしまった。ドアを静かに開けて中に入る。サーニャはベッドの中でまだぐっすりと眠っている。ベッドのそばにホットミルクを置いた。彼女のために用意したが意味がなかったかもしれない。

 

メビウス1はテーブルにある椅子に座りコーヒーを飲んだ。

 

「むぅ、やっぱりコーヒーはあいつ(メビウス3)が淹れたものがいいな」

 

ふとここにいない同僚のことを思い出す。メビウス3は隊の中で一番のコーヒー愛好家だ。メビウス1もコーヒーを親しむが彼以上に淹れたうまいコーヒーに未だ出会っていない。

 

ちなみに隊で2番目にコーヒーを飲むメビウス8のコーヒーを自分とメビウス2、3、4で飲む機会があったのだが

 

(r゚∀゚)r (メビウス2)「おがああああぁぁぁぁ!?苦い!」

( ゜v゜) (メビウス3)「・・・(ズズッ)」

(´0w0)  (メビウス8)「おいおい。そんな悶絶するほどでもないだろう」

(´・h・`) (メビウス4)「いや、これはさすがにちょっと」

 

普通のブラック缶コーヒーよりものすごく苦かったのである。それを飲んだ俺は軽くむせていた。

 

( ゜v゜) 「メビウス8、ちょっと袋を見せてくれ」

(´0w0)/ 「いいぞ。ほれ」

 

それを受け取ったメビウス3は袋を見るなりやっぱりと呟いた。

 

(´・h・`) 「3、何か分かったのか?」

 

メビウス4の質問にコーヒーを知り尽くしているメビウス3が答えた。

 

( ゜v゜) 「こいつはオーシアのオーレッドにあるあまり知られていないコーヒー店のブレンドでな。通常の倍以上の時間をかけて焙煎するから苦みが強い。一部の愛好家で人気があるやつだ」

 

メビウス3の説明を黙って聞く3人。

 

(r゚∀゚)r 「なんだってこんな苦いもの飲んでんだよ」

(´0w0) 「いいじゃないか。このコクと苦みが気にいってるんだ」

 

自分のコーヒーを飲みながら答えるメビウス8。

 

ヽ(0w0)ノ 「まったく。この程度で根を上げていたらイジェクトに耐えられないぞ」

 

メビウス8の独り言に俺を除く全員が

 

(r゚∀゚)r( ゜v゜) (´・h・`) 「「「なんでイジェクト前提の話になってんだよ!!!」」」

 

と盛大につっこみを入れていた。

 

 

「あいつらどうしてるかな」

 

元の世界の仲間たちを思い出すメビウス1。今頃自分はMIA(戦闘中行方不明≒戦死)扱

いされているだろう。いろいろ考えていると目の前が霞んできた。

 

(まずい。また眠気が)

 

メビウス1は眠気を吹き飛ばそうと残りのコーヒーを飲みほしたが効果がなく二度寝する

羽目になった。

 

「・・・ぁれ?私」

 

基地に帰りいつの間にか眠っていた私はベッドで横になっていた。体を起こし周りを見渡

す。起きたばかりなのかまだ視界がぼやけているが、少しずつ見えてきた。必要最低限な

ものしか揃っていない。あまり使われていない部屋ようにみられる。

 

するとベッドのそばにマグカップが置いてあることに気が付いた。それを手に取り中身を

確認すると温かそうなホットミルクが注いであった。それを一口飲んでみる。

 

「・・・温かい」

 

時間がたったせいかちょうど良い温度になっていた。誰がこんなことをしたのだろうと思

ったがすぐにその人物を見つけた。

 

「ぐー・・・すー・・・」

 

メビウスさんだった。おそらくここはこの人の部屋だろう。テーブルの上に突っ伏してマ

グカップ片手に寝ていた。それにこの香りはコーヒーだろうか?おそらく眠気覚ましに飲

んでいたのかもしれない。

 

「ふふっ」

 

メビウスさんの顔を見て思わず微笑んでしまった。疲れたような顔をしているが気持ちよ

さそうに眠っている。

 

不思議な人、とサーニャはメビウス1のことをそう思っていた。見た目はミーナ中佐や坂

本少佐に変わらない女性の姿をしているのに口調や仕草はまるで男性そのもの。さらに男

の人が好むコーヒーを飲むから本当に男に見えてしまう。

 

「ありがとうごさいます」

 

届かないであろうお礼の言葉をメビウス1に送り再びベッドに横になった。そのまま眠り

につく。その顔はほんの少しだけ笑っているように見えた。

 

 

 

ちなみに朝食に2人が顔を出すまでの間

 

「サーニャどこいったンダ。ユニットは置いてあったシ・・・サーーニャーー!!」

 

エイラが基地中を走り回っていたとか。

 




サーニャの朝の話はずいぶん前に考えていたのですがコーヒーの件は書いている途中で思いつきました。気にってもらえたかはわかりませんがw

模擬戦の話を入れるつもりだったのですがこれだけで区切ったほうがいいと判断しました。

ほとんど勢いで書いた奴ですけど

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