慎二くん転生する   作:茶ゴス

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愚者と王

 一人がけのソファーに、それはいた。

 改めて対峙してわかる存在感。溢れ出すカリスマ性はとんでもなく、思わず跪いてしまいそうな錯覚になる。それを振り払い、眼前の存在へと目を向ける。

 

 かつては逆立てていた金髪をおろし、あの金色の鎧ではなく洋服に身を包んだそれはわずかに顔を伏せ、何かを考えているかのような素振りをみせている。それに酷く緊張する。相手は刹那で僕をなぶり殺すことの出来る存在だ。もし失敗すれば殺されるのは明白……本当にやってらんない。

 

 

「……」

 

 

 沈黙が部屋を支配する。テレビはついているが、その音がさらに僕の緊張を強くする。部屋を包む空気に耐え切れず、飾られた様々な車やバイクの模型に目をやり、少し緊張を和らげ、再度相手を見る。

 相も変わらずに顔は伏せたままだが、そこから何も読み取れる事が出来ないというのは些か悔しいね。でもいつまでもこんな状態ではいけない。何よりも僕が緊張で押しつぶされそうだから。

 

 覚悟を決めて僕は口を開く。まずどうすべきだ?挨拶をする?名前を名乗る?

 

 ダメだ、考えてた言葉すら頭から消え失せてしまっている。どうにも上手い言葉がみつからない。

 

 

「……貴様は我が誰なのかを理解して目を向けているのか?」

 

 

 僕が頭のなかで葛藤していると、向こうが口を開いてきた。

 今にも殺されそうな圧力を感じる。だけど、ここで押されてはいけない。少しだけだけどアイツから聞いた。この王の前では自分を殺してはいけないと。

 

 

「知ってるよ、英雄王ギルガメッシュ」

 

「童子の癖に中々に聡明のようだが……理解して尚我の眼前に佇むのは愚かなる行いだぞ?」

 

 

 目を細めて此方を値踏みするように見てくる。

 思わず後退ってしまいそうになる足を指で抓る。喉がカラカラに乾く。手汗は酷く、震えている。

 

 

「して、貴様は何を持って我の前にいる?」

 

「力を貸してほしい」

 

「……ほう?」

 

 

 少し口角が上がった気がする。掴みは失敗ではないだろう。英雄王はアイツ曰く純粋に頼られると文句を言いながら手助けをしてくれたりするらしい。

 震える声を飲み込んで続ける。

 

 

「僕の爺である間桐臓硯から妹を助けてほしい」

 

「………」

 

「あの化け物は僕にどうする事も出来ない。魔術回路も存在しない僕には万に一つも勝てない」

 

「………」

 

「だから、「喋るな」」

 

 

 声を遮られた。一瞬心臓が止まってしまうかのような殺気を英雄王が出した。

 震える手が更に震える。英雄王の方へ視線を向けると、英雄王は大きく息を吐いて顔を伏せた後、睨みつけるように僕の顔を見た

 

 

「貴様はそのような詰まらぬ事を宣うために王に謁見したと申すのか?」

 

「………」

 

「成は子供といえ、随分と淀んでおるわ。臣下にしてくれと言うのならまだしも、我に手を貸せだと?そのような戯言、次宣えばその首跳ね飛ばすぞ」

 

「………」

 

「何処で知ったのかは知らぬが、大方貴様の背後にいる者からの入れ知恵だろうな」

 

 

 明らかな怒気を含んだ口調で僕へと口撃する英雄王に今生きてるのが不思議なほどのプレッシャーを感じる。

 失敗だった。アイツが英雄王に気に入られようとも僕が気に入られるわけではない。あの英雄王に手を借りること自体が間違いだったのだ……

 いや、でもこのままでは引き下がれない。

 

 

「狙いは我が宝物か」

 

「違う」

 

「………誰の許しを得て口答えしている?」

 

「……それでも違う。英雄王の宝具は確かに至上の物だ。だけど、そんな物よりも一回の英雄王の手助けの方が価値がある」

 

「……ほう?」

 

「僕に出来る事ならなんでもする。だから、あいつが生きた証を救う手を貸してくれ」

 

「………覚悟はできていると言うのだな?」

 

「もちろんだ」

 

「どれ位の物か申してみよ」

 

 

 ………全く考えてなかった。

 いや、思いだせ、確かアイツが言っていただろう。あの英雄王でも素直に賛辞した事が……あいつ自身首を傾げていたけど……そうだ、あれだ。僕の目の前でもあれだけの事をやってのけたあいつだけど、あの時のよりは絶対にマシだ。

 

 

「——————」

 

「……正気か?」

 

 

 正直自分でもどうかとは思う。だけど、これがこの英雄王には一番効果的だと思う。この世界の僕の記憶から見ても英雄王はこのことだけは何故かその眼を曇らせていたのだから。

 

 

「ああ」

 

「……口ではいくらでも言えるわ。貴様がそれ程の覚悟を持っているとは思えぬ」

 

「………」

 

「失せろ、次その口を開けば塵も残さず消し去ってくれよう」

 

「………」

 

 

 やっぱりダメだったか。

 いや、まだ手がないわけではないだろう。何か、他にある筈だ。

 

 部屋を出てゆっくりと教会から出た僕は、今度は衛宮家へと向かった。確か、まだ衛宮士郎の育ての親が生きている筈。衛宮士郎はそいつから魔術を教わったのは知っている。ならそいつに助力を得ればなんとかなるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「何を思案顔をしているのだ?」

 

「……よもや貴様の劇物(麻婆豆腐)を食すと宣うとはな…」

 

「ほう?それは一体何処の誰なのだ?」

 

「知らぬ。だが、もしそれだけの覚悟を本気で持っているのならば……」

 

「単に辛いモノが好きなのではないのか?」

 

「いや、あの童子は劇物(麻婆豆腐)の正体を知って尚言っていた」

 

「………」

 

「……これは良い道化を見つけることが出来たのやも知れぬ」

 

「その水晶は?」

 

「遠見の水晶玉だ。これは良い見世物を見つけたものだ」

 

「……つまらない結果に終われば?」

 

「無論、相応の責を持って消し去ってくれよう」

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