勇者転生!~魔王が出たら本気出す~   作:さわZ

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ユーサ LV1.アバカム!HENTAIの扉は開かれた!

 日本からジャングルのある国に向かう飛行機が墜落。

 したにも関わらず乗務員。乗客全員無事という奇跡に喜ぶのも、つかの間、見知らぬジャングルに落ちた旅客機周辺で連絡が取れない中、先程の墜落時よりも悲壮感はないが、ジャンボジェット機に搭載された非常食も三日分もあるか無いか。

 電波は届かない。食料はない。虫がいて不快。というか、猛獣に襲われでもしたらひとたまりもない。というか、墜落時に重傷者はいないが軽傷者もいる。

 それでも絶望しないのは前世が勇者だったユーサのおかげである。

 いや、正確にはユーサが踊っている愉快な踊りで張りつめた緊張をほぐしているからだ。

 

 「はーい、それでは皆さんご一緒にぃ、ハッスルッ、ハッスルゥッ♪」

 

 「「「ハッスル♪ハッスル♪」」」

 

 前世で魔王を倒した後、旅に出た勇者は各地を回りながら修得した特技の一つ『ハッスルダンス』。

 このダンスを踊るとチーム全体の体力が回復するという祈祷にも似た行為。

 全盛期だった頃に比べ、効果はかなり落ちているので体力の回復はしなくても鎮静効果と気分の高揚の効果がみられるユーサの踊りに一緒に乗っていた子ども達と一部の大人達はしばらく踊って場を和ませていた。

 一時は食料の独り占めを考えていた輩も出そうだったが、『ハッスルダンス』で気も和らぎ事なきを得て、遭難して二日後。野生動物に襲われることなく、救助された。

 ユーサは最悪の場合瞬間移動魔法『ルーラ』を使うべきか悩んでいた。

 後、一日遅ければ使っていたかもしれないなと、思いながらも救助隊に引き連れられて日本に帰ることが出来た。

 その途中。

 ユーサがスクルトを使う場面を見た少女。『木各(きかく)燈火(とうか)』ことトーカはユーサにべったりとくっつくように飛行機の中で何やっていたの?あの不思議な踊りはどこで覚えたの?好きな食べ物は何?と、クリクリした黒い瞳と腰まで伸ばした艶やかな黒髪を揺らしながら質問攻めしていた。

 神様にお祈りをしていたとか、いろんなお祭りのテレビで覚えたとか、好きな食べ物は魚の味噌焼きとか話していた。

 さすがに前世勇者だった時に覚えたなんて言えないし・・・。

 

 初めての海外旅行が飛行機墜落というショッキングな事に出くわしたがようやく帰ってくると、我が家がとり潰しを喰らっていた。

 

 いやいや、どういう事だってばよ?!

 

 聞けば、父上殿のギャンブルの質にとられたそうだ。

 つまり、あの海外旅行は夜逃げだったのか!

 ちなみに父はギャンブラー。母は検察官。正反対な両親だが、父は毎度のことながら荒稼ぎをしてくる。だから、このように家がとり潰されることはないはずなのだが・・・?

 

 「・・・あ、質に入れて買い戻すのを忘れていた」

 

 「おとんんんんんんんっ?!」

 

 自分の父親の危機管理能力を疑うユーサ。というか、すでに駄目だと判明しているので疑うも何もないのだが。

 

 「・・・仕方ないわね。今日のところは貴方は野宿。ユーサはちーちゃんの所。私はホテルに泊まるから」

 

 「ちょっと待って。ユーサはともかく、俺もホテルでいいだろう」

 

 「おいこら、父」

 

 こうなった責任は父にあるんだから当然として、俺の幼馴染のちーちゃんこと剣山寺(けんざんじ)千景(ちかげ)の家にいきなり泊めてと言っても相手方を困らせるだけだろう。

 ちーちゃんに関してはまたの機会に語る事にする。

 そんな時だった。

 

 「やっほー、ゆーちゃん♪」

 

 「・・・トーカちゃん?って、長っ?!なにこの車なっが!」

 

 黒い髪とクリクリっとした瞳を持った少女。トーカがいわゆる高級車に乗って現れた。

 なんで彼女が自分達の家(跡地)に来たのかを尋ねてみると、ここを買い取ったのが木各グループで、トーカちゃんはそこのお嬢様。

 経営者である彼女の父がここら一体の住宅街を買い取ってデパートを建てるらしい。

 つまり、彼女のご両親がここら一体を買収。ひいては俺達から家を奪ったのだ。

 

 「で、何しにここに?」

 

 「家を失ったゆーちゃんがどんな顔をしているか見に来た♪」

 

 「ぶっとばすぞ!?」

 

 「きゃー♪」

 

 楽しそうな声を出しながら車の奥へと逃げたトーカを追う為に車のドア部分に手をかけようとした瞬間に無数の黒い影がトーカとは入れ替わるように車のドアから飛び出してきた。

 前世の記憶から、この手の罠には痛い目にあってきているのですぐにその場を離れる。

 車から飛び出してきたのはガードマンの皆さんで、飛び出してきたのは五人。

 飛び出すと同時にこちらに向かって手を伸ばすガードマンから逃げる為に左側にサイドステップをして躱す。

 次に最初に躱したガードマンを踏み台にするように飛び出した女性ガードマンの手を逃れるために体を丸めるようにして躱す。

 だが、三人目のガードマンにとうとう捕まってしまった。

 一瞬、雷撃魔法のデインを唱えようかとしたが向こう側に敵意は無いらしい。

 捕まりはしたもののこちらが痛くならないように絶妙な力加減で拘束にかかっている。

 

 「うわー、ユーちゃん凄いね。うちのガードマンさんの攻撃を二回も避けたよ」

 

 「…トーカちゃん。これはどういうつもりかな?」

 

 「だからゆーちゃんの『家が無くなってこれからどうしよう。こうなったら空き巣についでにそこで寝泊まりしてやるぜ』っていう顔を見に」

 

 「してねえよっ?!そんな考え、してねえよ?!」

 

 ちなみに彼女が言うゆーちゃんは俺の事です。

 最初は名前に君付けで呼ぼうとしたらしいが『ユーサ』が『ゆーしゃ』になってしまう彼女の拙い言葉遣いでゆーちゃんと呼ばれることに。

 というか、そんなひどい事をしているように見えるのか俺って?

 そして、そんなことを噛むことなく言い切るトーカちゃん。もしかして、無事家に帰ることが出来たからはっちゃけてる?

 

 「なんてね。本当はお父さんがあんな絶望的な場面で愉快な踊りを見せてくれた男の興味があるんだって。だから私の家にご招待しにきたの」

 

 にぱーっ、と笑うトーカちゃん。

 しかし、この数分の間で彼女の性格がつかめてきた。 

 これ以上付き合うとロクな目に会わない気がする。

 

 「男に興味を持たれてもな・・・」

 

 「『どんな尻の穴をしているか是非見てみたい』だって」

 

 「いかねえよ?!絶対に行かねえよ?!」

 

 予感がした瞬間にこれだよっ。

 どうして男に尻の穴を見せに行かないといけないんだ!

 そう憤るユーサを見て、女性ガードマンがトーカの耳元で「違いますでしょ、お嬢様」と、耳打ちする。

 どうやら、彼女の父親は尻の穴を見たいわけではないらしい。よかった、よかっ・・・。

 

 「『どんな神経と精神をしているか隅から隅まで研究したい』ですよ」

 

 「あ~、そうだったっけ?」

 

 「モルモット扱いじゃねえか?!断固拒否する!」

 

 まさか生理的に嫌なのが二段階で襲ってくるとは思わなかった!

 そんな門燈を繰り広げている間、女性ガードマンはユーサの事を内心不気味がっていた。

 

 (・・・お嬢様と同じぐらいの少年にしては精神が発達しすぎている。まるで中に男子中学生が入っているようだ)

 

 微妙な下ネタからブラックジョークに関して間で適切なツッコミを入れてくる少年ユーサに警戒を高めるガードマン。

 だが、彼女の疑問はすぐに氷解する。

 

 「旦那と息子はどうなっても構わない!だから私を助けてください!」

 

 「妻と息子はどうなっても構わない!だから俺を助けてくれ!」

 

 「ねえっ?!俺達本当に親子?!」

 

 飛び出したガードマンに身柄を拘束された天空一家のやりとり。

 それは彼女が務めている木各一家がやりとりしている風景に酷似していた。

 変な親がいる場合、少年はツッコミ役にまわざるを得なかったんだろう。

 しかし天空一家はまともなほうだ。

 なにせツッコミ役のユーサがいるのに対してこれから彼等を拉致。もとい招待するのは変態。じゃなくて、HENTAIの巣窟。木各グループの屋敷だ。

 ツッコミ役がそこにはいない。ユーサの負担は倍になる事だろう。

 女性ガードマンは未だに変な言い争いをしている天空一家に再度、招待を進めるのであった。

 

 「ユーサ様お諦め下さい」

 

 「諦めろと言われても・・・」

 

 女性ガードマンはユーサと自分の状況が似ていることに同情しながらも言い聞かせるように優しく語りかけた

 

 「お金で出来ない事って無いんですよ?」

 

 「怖いよっ!」

 

 ユーサの警戒心が更に上がった。

 

 

 

 

 

 女性ガードマンの必死の説得により木各邸へとおよばれされることになった天空一家。

 そんな彼等がリムジンに乗る際目隠しされそうになった時、一悶着あったのは思い出すだけでも疲れる。

 まあ、元から誘拐や拉致をしようと思えばできたと考えれば下手な抵抗は無駄だと感じ取ったのか天空夫妻はまだ暴れている息子をほっといてアイマスクをつけて寝ている。繊細な神経をしているのはユーサだけらしい。

 

 「・・・ゆーちゃん」

 

 「なんだよ?」

 

 「そんなに興奮すると禿るよ?」

 

 「その原因は確実にお前等だよっ!」

 

 すごくのんきな両親と唯我独尊な少女の奇行に疲れ切ったのかぶっきらぼうに答えるユーサ。

 疲れ切ったところに更にツッコミさせるという鬼畜な所業をさせる木各トーカ。

 そんな彼女が日本有数のお嬢様だと誰が思うだろうか。

 無視すればいいのに丁寧に返すからお嬢様は調子に乗る。

 元天空家跡地を後にして一時間程時間が経過すると豪勢な住宅街を突き抜ける事更に三十分。

 木各邸という一際巨大な敷地を囲う塀に沿いに進んでいくと、正面玄関近くで軽やかな音楽と共に新体操張りに素早い動きをしながら邸宅の奥から人間が高速で接近してくる。

 派手な格好をしたピエロが豪邸の門の前で二回転半宙返りを何度もしながら出迎えてくれた。

 

 パンパカパーン♪

 

 ユーサ達の二歩手前で華麗にポーズを決めるとかぶっていたかつらからクラッカーが成り、ハトが飛び出した。そして、ピエロの人はもの凄い笑顔で天空家を出迎えてくれた。

 

 「また会ったな愉快少年!」

 

 「あんた程愉快じゃねえよっ?!」

 

 普通、玄関で出迎えているのは執事やメイドじゃないかと思うだろうがここでは殆ど庶民の常識は通用しない。かといって、貴族やお金持ちの常識が通用するとも思わないが・・・。

 

 「申し訳ございませんユーサ様。そちらのお方が木各グループ総帥の王都(おうと)様です」

 

 「・・・マジですか?」

 

 「マジです。残念ですが・・・」

 

 女性ガードマンさんの言葉にユーサは信じられないという表情を見せた。

 

 「こら、ダメでしょ侍従Eさん!残念じゃないでしょっ」

 

 「お前も待て」

 

 トーカのあんまり言い方にユーサのツッコミが出る。

 出尽くしたと思っていたツッコミ根性を刺激する木各親子とその侍従。

 

 「そうだぞっ!侍従E君っ、『残念』じゃなくて『非常に残念』だ!」

 

 「駄目なのはそっちか?!」

 

 「俺の事はゲロリンって呼んでいいぞ!」

 

 「本当にそのニックネームでいいの?!」

 

 ・・・知ってるか、まだ邸宅に入っていないんだぜ。

 

 すぐにでも瞬間移動魔法のルーラを唱えたい。

 まあ、行先は御近所の神社にいるちーちゃんの家くらいしかない。

 もちろん唱えられないけど・・・。

 

 「いやいや、初見通り愉快な少年だな」(じゅるり)

 

 どうして今、舌なめずりした?!

 

 「さあ、ツいてくるといい」

 

 どうしてお尻を振りながら言うんだ?!

 

 「ちなみに穴に大きいと書いてツいてくるでも・・・」

 

 「つかねえよ!絶対についていかねえよ!」

 

 回復魔法のホイミを使いたい。

 この非常に疲れ切った精神を癒すには足りないかもしれない。べホイミ。いやベホマくらいじゃないと間に合わないかも・・・。

 

 「「「いらっしゃいませ、天空様」」」

 

 黒い衣装で出迎えて来てくれた侍従A~Rの皆さん。

 メイドや執事と思っただろ?

 でも、あれ、特殊なSMで使うラバーな服なんだぜ?

 

 「もうやだ帰るぅっ、もう帰るぅううう!」

 

 ユーサのHPは0に近い。

 いっそ0になれれば楽になれただろうユーサだが、前世勇者の所為で妙にしぶとかった。そして、魔王との戦いでもないのに逃げられないユーサだった。

 

 

 

 

 

 邸宅の中に引きずられていったユーサが邸宅内で見た物は普通のメイドと執事が出迎えるものだった。

 

 「ば、馬鹿な・・・」

 

 変態の巣窟だと思っていた木各邸の中にもまともな人がいたのかと衝撃を受けているユーサをしり目に天空夫妻は実に堂々としている。

 どこかのお城を思わせる大広間の向こう側から令嬢を思わせるほどの女性が下りてきた。

 

 「うちの旦那と娘がお騒がせてしまって・・・」

 

 「いや、もう、本当に・・・」

 

 「ごめんなさいね。私達似た者同士だからついついはしゃぎ過ぎちゃうの」

 

 「え?似た者?」

 

 「遭難中、旦那と娘を元気づけてくれたあなたにお礼をいおうと思ってね。聞けば、貴方達の家は無くなってしまったらしいからしばらくはうちで暮らさないかと思ってね」

 

 「暮らすって・・・」

 

 庶民な天空家が日本有数の豪邸に住まわせてくれるのか?

 

 「断る!」

 

 「じゃあなんで連れて来たよっ」

 

 ゲロリン。じゃなくて、王都が力強く否定する。

 いつの間にかピエロの姿からスーツ姿に変わっていた王都に突っ込みを入れるユーサに目の端をキラリと光ったのをユーサは見過ごしていた。

 

 「このままではうちのトーカとの好感度を上げまくって結婚した挙句、財産を喰い潰すに違いない!」

 

 「「ちっ」」

 

 ゲロリンと自分の両親は事前に打ち合わせでもしているのか流暢な仕草を見せる。

 

 「そこっ、舌打ちしない。余計な誤解が生まれる」

 

 「・・・」

 

 「そこも怯えたような目で見ない」

 

 さっきまで元気にニコニコと笑っていたトーカがまるでお化けを見たような表情でユーサを見ていた。

 

 「「「・・・」」」

 

 「メイドさんや執事さん達も武器を装備しない。って、どこから出した?!」

 

 メイスにハンマー。日本刀に両手剣。本当にどこから持ち出したんだか・・・。

 ここは木各の奥さんに止めてもらおうと視線だけ彼女の方に向けた。

 

 「…あふぅ」

 

 「何、興奮しているんですか?!」

 

 頬を染めて何故か悦に入っている奥さん。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気にしないで」

 

 「じゃあ、なんでそんなに溜めたよっ」

 

 「そんな事よりもナニよりも食事にしましょう」

 

 「何て?!」

 

 「何って、そりゃあ、ナニ・・・」

 

 「やっぱいい!」

 

 「本日のディナーは極太の竿で釣り上げた照り返す太刀魚といなり寿司の和食。白子の味噌汁よ」

 

 「・・・ナニ尽くしだとっ」

 

 それからディナーは滞ることなく進められた。それがどことなく怖かったユースだったが、ツッコミづかれたユースは食事の後に入った風呂に入った後、死んだように眠るので・・・

 

 「「今日も元気にハッスルハッスル♪」」

 

 「素直に寝かせておくれ!」

 

 睡眠魔法のラリホーを隣のベッドにいる両親にかけるのをギリギリ堪えたユーサだった。

 




 トーカLv.1 わたしのゆーしゃさま

 お父様の仕事についていくことで私が将来次ぐだろう木各グループと関係のある企業のパーティーに参加。大人になる前に慣らしておかなければならない。
 何故なら私は木各燈火なんだから・・・。
 お父様は普段の生活では発茶けているけど、仕事の事になれば別だ。
 厳しく、冷酷に、物事の判断を下し、不要なモノ。人材を切り捨て、他の企業から引き抜く。
 木各グループは巨大で、その傘下にいる人達。その家族がいる。
 彼等の為にも。そして、その将来の為にも私はいろいろな物事を学ばなければならない。

 パーティーでテーブルマナーを間違えた。
 その罰が当たったのだろう。
 私達の乗っていた飛行機は墜落した。
 墜落していく飛行機の中で私は自分の失敗を誰に請う訳でもなく心の中で謝り続けた。
 そんな時だった。
 私同様に何やら同じ口調で何か言っている男の子を見つけた。
 いわゆる庶民顔。
 洗練された御曹司。令嬢。そんなのとは無縁そうな男の子の体が桜色に光っていた。
 いや、違う。
 男の子だけじゃなく飛行機の中にいる人たち全員に桜色の光が出ていた。



 墜落してからの遭難。
 あちこち痛いところがあるけど、全員無事という奇跡。だけど、その奇跡に喜ぶのもつかの間。
 私達の持つ情報機器は壊れて連絡が取れない。
 こんな時、代々積み上げてきた財力・権威は意味をなさない。
 ジャングルの中でどれだけ生きていられるか不安や恐怖に包まれていた。
 お父様も私を元気づける為に私に大丈夫だよと声をかけるが元気が出ない。
 周りの人達も似たような状況で誰もが暗い顔になりかけた時だった。

 「ハッスルッ、ハッスル~♪」

 最初は誰もがポカンとしていた。
 一連の行動を繰り返しながら笑顔で踊るその男の子は墜落していく中で目があった子だった。

 「は~い、皆さん。ハッスルッ、ハッスル~♪」

 それを見ていたらあちこちにあった体の痛みが取れていく気がした。
 それだけじゃない。男の子が踊れば踊る程、私を含めて笑顔になっていく。
 男の子が踊る不思議な踊りを見ている全員がまるで活力が湧いて来たかのように笑顔になっていった。
 それから二日後私達は救出された。
 私は男の子の事が気になって何度も話しかけた。そのたんびに元気が出た。
 そんな時、男の子が地面に勢いよく転ぶことがあった。
 あんな転び方をしたら私だったら泣いてしまう。
 現に男の子は涙目になっていた。だけど、涙目ながらにも無理矢理笑おうとしている笑顔に胸が熱くなった。
 もっと、この子の傍にいたいと、お父様やお母様以外にそうなる事はなかった。

 救出された直後にその事をお母様に言ったら、お母様はあらあらと嬉しそうに私の頭を撫でた。

 「最近の子どもは早熟ね~」

 「そーじゅく?」

 「トーカちゃんもそれに目覚めたようね~。お母さん、嬉しいわ~」

 目覚めったって何に目覚めたんだろう?

 「トーカちゃん。お胸が熱くなったのはどんな時?」

 「熱くなったのは・・・。ゆーちゃん。じゃなかったゆーしゃ。ううん、ゆーさ様が笑った時」

 人の名前を言う時は様付けしないといけないといけないんだった。

 「いーのよ。ゆーちゃんで。調べた所、その男の子は何処の財界にも属していない。一般市民ね。それにゆーちゃんのほうが言いやすいでしょ。それで、どんな時だった」

 「う、うん。あのね。・・・ゆーちゃんが泣きそうだったけど無理に笑った時」

 「うんうん。それはね。トーカちゃん。その気持ちはねいわゆる」

 「いわゆる?」













 「SとMってやつよ」

 もし、ユーサがその場に居たら「またんかぁああいっ!」と、ツッコミを入れていただろう。

 「えすとえむ?」

 「トーカちゃんはお父さん似で、その子は私に似ているのね」

 「私とゆーちゃんがお父様とお母様に似ているの?」

 「そうよ~。きっと、男の子もそう思っているはずよ。だからトーカちゃんは家の中ではしゃぐみたいにゆーちゃんに接しなさい。きっと喜ぶから」

 その時、部屋の隅で控えていた女性メイド兼ボディーガードの侍従Eは何を言っているんだこの親子は。と、呆れていた。
 そして、内心、まだ見ない彼女の言う『ゆーしゃ様』がこの一家の目に留まらないようにとどこかの神に祈った。

 だが、その祈りとは真逆な性能を見せつける『ゆーしゃ様』。
 ボディーガードの攻撃を二回躱すだけならまだしも、はっちゃけるトーカに王都の悪ふざけにことごとくツッコミを入れるユーサは木各一家に気にいられることになるのであった。
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