Fate/Zero【人間賛歌の魔王】 作:Red_stone
戦闘が続いている。
「ぐぐぐ……」
けれど、どうしようもない。そんな最悪の状況にセイバーは追いやられていた。まもなく大海魔はライダーの固有結界より放り出される。
それをどうにかしようにも……バーサーカーに自分とランサーが足止めされている。これでは──大海魔が人々を襲うのを指をくわえて見ていることしかできないと臍を噛む。
「──セイバー。諦めるな……! 我々が諦めて、誰が人々を守るというのだ。なあ、セイバーよ」
ランサーはもがいていた。あと2、3秒もすれば立ち上がれるようになるだろうが酷いダメージを負っている。
わずかに回復したところで、一瞬の油断が死を招くバーサーカー戦では役に立たない。
「■■■■■■────」
バーサーカーが吠える。まるで、勝利を確信したかのように。いや、実際にそうなのだろう。彼は策をもって二騎を下したのだ。
そう、全ては戦略であり、セイバーは見事に引っかかってしまったというわけだ。即席の連携など、逆に地獄への入り口でしかないとでもいいたげに。
悪意、不信、負の感情を知り尽くしているとしか思えない手腕でもって二人の騎士を悪辣に嵌めた。
ランサーの槍がセイバーを捉えたのはわざとである。正しくはバーサーカーがランサーの攻撃がセイバーへ向かうように誘導した。
結果、セイバーは不信を募らせて剣を鈍らせ、隙を晒した。もっとも、そのつけを払ったのはランサーだが。
この攻防は疑いようもなくバーサーカーの戦略が勝利した。だが、これはバトルロワイヤルだ。一つの勝利を得たところで、最終的な勝利者にならなければ意味がない。
この時も同じ。まだ決着ではない。
「──破!」
だから、この時も甘粕による不意打ちをあっさりと喰らって5mほど飛ばされた。
「ッキャスター? なぜ、あなたがここに──」
よもや、第二の敵が。などという状況で敵が敵を殴り飛ばした。意味が分からない。
「セイバーよ、久しいな。なに、マスターからの命令でね。ここは俺に任せておけ。それと──」
混乱するセイバーをよそに凶悪な笑みを浮かべている。いや、あれは親愛の表情でも浮かべているつもりなのだろう。そして、セイバーに向かって手を振ると。
「──な? 回復、した……だと」
完全回復とまではいかないが、かなり楽になった。治癒魔術……それもかなり高位であることは間違いない。
ランサーを見ると立ち上がっているほどだ。彼も回復を受けたのだ。
「何をした? キャスター」
釈然としない。だが、返せるものではないしこの状況ではありがたい。不気味ではあるが。
「なに、すこしばかり手伝いをと思ってな。邪魔だったかな? 長かった今宵の劇も、幕を閉じるときが来たということだ。派手にやってくれ、素晴らしき英雄たちよ」
いつもの笑みを浮かべた。
「ち」
信用できない、とセイバーの顔に書いてある。
が──他に選択肢はない。甘粕に背中を預けないと、まもなく出現する大海魔が虐殺を開始する。
「ランサー。もう時間がない。キャスターのことはバーサーカーに任せよう」
「……了解した」
こちらも不承不承であるが、それしかないことはわかっている。
「しかし──だいぶ時間を消耗した」
「おい、そろそろ限界だ! 場所を指定してくれ」
ウェイバーが怒鳴った。遠くに離れていて、怒鳴らないと意思疎通ができない。
「水内際だ! そこに大海魔を落とせ!」
目印がないし、ランサーは水の上を歩けない。他に選択肢などない。一瞬で接近し宝具を叩き込むと、セイバーは覚悟を決める。
「了解だ、ライダーにそう伝えてくれ」
「了解しました」
いつの間にかウェイバーの隣にいたサーヴァントが消えた。
「……行くか、セイバー」
「ああ、任せてほしい」
「応。お前とともに戦うことができてよかった」
「──そうか。すまなかったな」
「何がだ?」
「お前のことを信じ切れなかった」
「言っただろう? 信頼は行動で勝ち取ると。見事にそれを果たすことができたのなら、それよりうれしいことはない。なあ、騎士王よ」
「ありがとう。私はあなたとの共闘を永遠の誇りとともに心に刻もう。アルトリア・ペンドラゴンが真名において認める。あなたこそ、誇り高き騎士だ」
「──光栄だ」
「私とあなたなら、できないことなどない。今は、そう信じられる」
すう、とセイバーが見えない剣を掲げる。風が渦巻く、その聖剣が姿を現す。
輝ける、かの剣こそが過去、現在、未来を通じ戦場に散っていく全ての者たちが今際の際に抱く悲しくも貴き夢。その意志を誇りと掲げ、その真実を貫けと糺し、今──常勝の王は高らかに手に取る奇跡の身命を唄う。
「
黄金の光が全てを貫いた。
「お……おお──間違いない。この光は──この光こそはジャンヌとともに祝福を得た輝き……おお──ジャンヌよ。私は──」
盲目の彼は光を見る。大海魔に覆われ、光を失った彼は聖剣より放たれた黄金を目にした。
その光は遥か昔、色あせるほどの過去で……それでもなお忘れるはずのない輝ける思い出。己が信じる聖処女と駆け抜けた過去を思い出し──
「ああ──」
人々を守った栄光の騎士は互いに握手を交わす。
「ランサー。あなたは素晴らしき騎士だった。ゆえに──」
「私から言わせてほしい。フィオナ騎士団筆頭騎士ディルムッド・オディナがアルトリア・ペンドラゴンに決闘を挑む、……受けていただけるだろうか」
「その決闘、受けよう」
「だが、今は──」
「ああ、バーサーカーはキャスターとともに姿を消している。だが、このコンディションでは互いに万全な決闘など望むべくもない」
セイバーは今や丸裸だ。全裸という意味ではなく、鎧を失っている。鎧を編む魔力ですら欠乏している。
サーヴァントにとってそれは致命的だ。
「またの機会を待とう」
そして、ランサーのダメージはある程度回復している。
それは甘粕の横やりによるものだった。どうして、こんな有様で決闘など望めようか。
「また、次の機会に」
「ああ、また会おう」
互いにうなづいて。
「「その時こそは──最高の決闘を」」
二騎のサーヴァントは再開と決闘を誓い、別かれる。