プロローグ 崩壊
俺はゆっくりと着実に変わって行くこの世界が好きだ。
友人は多くもないし、両親は五歳の頃に事故で他界。
でも、少ない友人は俺のことをいつも笑わせてくれる。
俺を引き取ってくれた叔父と叔母は俺を大切に育ててくれた。一人暮らしをすると言った時には泣きながら見送られた。
クラスメイトとはあまり話さないものの、クラスの雰囲気が良く楽しかった。
俺は運が良かった。だがそれも此処までだ。
「なんだよ………何なんだよ………コレ」
それは唐突だった。
急にグラウンドが黒くなり崩れていく。それはゆっくりと規模を大きくしている。
まだ間に合う!そう思いクラスメイト達に逃げるように促す。が、それは俺により強い衝撃を与えた。
「オイ!早く逃げるぞ!」
何故なら
「は?いきなり何いってんだ?珍しく話し掛けて来たと思ったら……大体お前は……」
ぶつぶつと文句を言っているクラスメイト、それを見て笑う者や、雑談をしている者。
まるで窓の外の現象に気付いていないかのように、否、本当に気付いていないのだろう。
そこに有ったのはいつもと同じ『日常』だから。
「クソッが!!」
俺はクラスメイトを押し退け教室から逃げ出した。街の至るところに黒い闇が現れていた。
だが、誰一人として悲鳴を上げるものはおらず、逃げ出すものもいない。
それどころか隣に居るのは下半身だけなのに話しかけ会話が成立していたり、黒い闇の中に自ら走り込んでいる者もいるしまつだ。
だがそれは、彼らにとって日常の風景でしかないのだ。
崩壊しているのが分からないのだから。
ふと足に地面を踏み締める感覚が無くなった。
「え?」
新しく出来た黒い闇に足を踏み入れてしまったのだ。
咄嗟に手を先程まで走っていた場所に伸ばし掴まるが、その足場までも崩れてしまった。
「わあああああぁぁぁ!!」
あぁこのまま訳もわからず死ぬのか俺。
『お前ひとりでなにしてんの?楽しいかそれ?』
これが走馬灯か……あの時は校庭の端で空を見てたんだっけ。それから他の奴等も集まってきて皆で鬼ごっこしたなー。あの時は結局最後まで捕まらなかったなー。懐かしいあいつら元気かな?
『いってらしゃい。寂しくなったら何時でも連絡しておいで』
『何時でも帰っておいで、待ってるからの。いってらしゃい』
あんまり泣くなよじいちゃんばあちゃん。別にずっと会えなくなる訳じゃないんだから。でも、最後にばあちゃんの作る肉じゃが……食べたかったな。
その後も、こんなこともあったなあんなこともあったなと頭に浮かんでは消えていく。そして、そのまま闇に呑み込まれた。