東方 崩廻録 (完結)   作:ちゃるもん

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怒り

「ふぁ~……暇い」

 

ここ一ヶ月近く茨木の修行に付き合ってるのだが、俺は唯見ているだけ。

今日の晩飯どうしようかなぁ~

なんて考えながらぼーっとしていると、茨木が修行を終えたのかコッチに歩いてきた。

茨木の身体は火照っており汗が流れ色っぽい。

 

「?どうかしたのですか?」

「相変わらず暇いだけだから気にするな。で、次は何をするんだ?」

「貴方がぼーっとしている間に一通り終らせましたので取り敢えずは休憩ですね」

 

そこまでぼーっとしてたのか……晩飯のことだけでここまで考えていられるなら暇じゃないんじゃね?

 

「……えっと、手合わせでもします?」

「まじで!?良いの!?」

「えっと……はい。良いですよ。でも休憩くらいはさせて下さい」

 

よっしゃ!これで退屈せずに済む!ずっと晩飯について考えなくて済む!!

それに、茨木の実力を見れるしな。妖力の多さもさながら、質もよく使い方も上手いと来たもんだ。別に戦闘狂てわけじゃないけど、あの退屈な時間が無くなるだけでありがたい。

「それじゃあ、お願いいたします」

「お願いします」

 

お辞儀をし、茨木は構えるのに対し、俺は両手を力なく垂らしている。両者の間は大体十メートルほど差がある。

 

「フッ!!」

 

茨木は踏み出し一気に間合いを詰め、俺の胸に掌底を繰り出す。それを右の腕で払い、左の裏拳で側頭部を狙うも、茨木はバックステップで俺との距離を開ける。

 

「本当に人間なのですか、貴方は。普通反応できませんよ?」

「人間なら嬉しいんだけど……ね!」

 

茨木が開けた距離を詰め、勢いを殺さず回し蹴りを放つ。茨木は一瞬だけ右腕に妖力を込めて右腕で受け止める。

バガァァン!!

地面にクレーターが出来上がる。後で元に戻さないとな。

 

「素手で受け止められるか……強すぎじゃね?いままで一人にしか止められた事ないんだぞ?しかも片手で」

「いやいや、むしろ妖力で筋肉を強化しても勢いを殺しきれないってどう言う事ですか!」

 

よく見ると右腕からは少量だが出血している。

その間にも茨木は俺に攻撃させまいと猛攻を繰り出している。攻撃は最大の防御とは良く言ったものだ。

その攻撃にカウンターを仕掛けようとしたら避けられてしまう。うーんジリ貧だな。

正直まともにやって勝てる気がしない。かといって能力を使うのもなぁ。

攻撃は最大の防御って言うけど、その逆はどうなんだ?

俺は体に霊力を巡らせ肉体を硬く、硬く強化する。

茨木は妖力を纏わせた右の拳で俺に攻撃する。

 

「クッ!!」

 

殴った茨木から苦渋の声が聞こえる。

その拳からは血が流れていた。

 

「さあ、我慢比べと行こうぜ」

 

攻撃が最大の防御なら、防御は最大の攻撃だ。偏見だけどな。

 

「なるほど、そう来ましたか。良いでしょうその我慢比べ乗ってあげます。ふぅ……はぁぁああああッ!!!」

 

これでもかと言うくらいに無差別に右左の拳、蹴りを放ってくるが、血が流れ痛々しい状態となっている。

俺も同様に、体のそこらじゅうから血が流れ、とても直視できたものではない。

 

「ハァ…ハァ…んッ。そろそろ……諦めたらどうだ?もう、限界だろう?」

「あなた…こそ…諦めたら、どうですか?」

「じゃあ、これで最後にするか……」

「そうですね」

 

俺は両の腕をクロスさせそこに霊力を纏わせる。

茨木は右の拳に妖力を纏わせる。

これで俺が倒れれば茨木の勝ち。倒れなければ俺の勝ち。

 

「「勝つのは……」」

 

「「『俺だ』『私です』!!」」

 

茨木が右腕を引きながら走る。俺は右足を前に出し脚と腕に力をかける。

 

「はあぁぁああ!!」

「う、おらぁああ!!」

 

茨木の腕が俺の俺の腕を捕らえる。その腕を両腕を開くことで上へとはじき返す。俺達を中心に地面にひび割れたが気にしない。

 

「な!?」

 

茨木は驚いた顔をが、騙まし討ちだって立派な戦術の一つだ。茨木は崩された体勢を戻そうとするがもう遅い。

ここで、ちょっと昔話をしよう。

俺の師匠は焔だが、焔はもちろん俺も武術に対しては詳しくない。知識は持っているがいざやるとなかなかに難しい。

そこで俺達が考えたのが『一撃必殺』ただでさえ力が強い焔はすぐに体の運び方を開発していた。俺はその運び方を真似し、それを速さ重視のものとした。それでも焔のタフさには届かなかったが。

 

脚に力を入れ、右の拳に霊力を溜める。腕を引き、そのまま脚に力を入れ、霊力を纏わせ、肘からジェットエンジンのように噴射させる。

右の拳が茨木の腹を捉え、そのまま殴り飛ばす。

 

「お、らあぁぁあぁッ!!!」

 

ドガガガガッ!!バガァァンッ!!

 

木を薙ぎ払いながら茨木は吹き飛んでいき、最後は滝の側の崖に激突した。

さすがにやり過ぎた。

俺は茨木に急いで駆け寄り、息を確認する。能力の範囲からギリギリだったので少し心配だったがどうやら無事のようだ。にしてもやり過ぎた……取り合えず壊した場所は直さないと。

 

壊した場所から戻ってくるとすでに茨木は目を覚ましていた。鬼っては皆此処まで強いものなのだろうか?

とにかく謝らないと。

 

「すまん。やり過ぎた」

「謝る必要なんてありませんよ……イツッ!」

「大丈夫か!?いま直すからちょっと待ってろ」

「ありがとうございす」

 

俺は茨木の怪我を生活する上で問題ない程度に治す。

 

「全部は治さないのですか?」

「能力に頼ってばかりじゃ身体に良くないからな。仙人を目指すならなおさらだ。怪我をさせた張本人が言う台詞じゃないけど」

「意外と考えているんですね」

「どういう意味だコラ。不老不死だからそう言うのには敏感なんだよ。長年のクセみたいなもんだ、頼りきってるトコもあるけどな。ほら帰るぞ。騒ぎにな……てるだろうなぁ、きっと」

 

俺達は逃げ出すようにその場を離れた。

「貴方達は馬鹿ですか!?直したとはいえ森の一部を破壊するなんて!」

 

家に帰ってきたのはいいが、射命丸に正座をさせられていた。まあ怒られるよね。それと包丁を下ろしてください。どこから出したんですかその包丁。

茨木は正座して真面目に聞いている。さすが真面目ちゃんだ。

 

「被害が出なかったから良かったものの、もし死者が出ていたらどうするつもりだったんですか!」

「あーまあ一応対策はしてたけど出てたらどうしようもないな。次からはもう少しきよつけるようにしよう」

「私の立場てきにも、なにより私の胃のためにも今後絶対。ぜったいに!!しないで下さいね!?」

「それは約束でき(ヒュン……ガスッ)」

「チッ……」

 

この天狗もの凄い怖いよ。言い終わる前にニコニコしながら包丁を躊躇いもなく投げやがったぞ。しかも、外れて舌打ちしてますよこの娘。

 

「OK分かった。自分からは仕掛けない。ただ、俺は馬鹿にされて黙って置けるほど大人じゃないのも覚えておいてくれよ」

「……まあいいでしょう。ただし!次こんなことがあったら問答無用で追い出しますからね!分かりましたか!華扇さん!彰人さん!」

「分かった」

「分かりました。肝に銘じておきます」

「わかればよろしい」

 

説教は三十分ほど続いていたため今は大体五時ごろ。

 

「これからどうするよ。飯を作るには早すぎるし」

「私は鶴来さんの昔の話を聞いてみたいです。どうしたらそんなに強くなれるのですか」

「あー、あんまり昔の事は聞いていませんでしたね。私も気になります」

 

あんまり面白い話でもないと思うが。

 

「そこは頑張って下さいとしか」

「それじゃあ出来るだけ面白く話せるように頑張ってみますか」

 

今から大体二十七億年前に俺は洞窟の中で目覚めたんだ。

 

「いや、その時点で色々おかしくないですか?」

 

そういわれても……目覚めちゃったんだし……しょうがなくね?

 

「……腑に落ちませんが、まあ良しとしましょう」

 

(本当は転生してきたんだけどね)

で、その洞窟には湖に天井には穴が空いてて月の光が差し込み、沢山の植物には果実をいっぱい実らせ住む分には全然問題ない場所だったんだ。

俺は寝床を探すためにその洞窟の探索を始めた。

探索の途中に大きな洞穴を見つけて、この奥にはなにがあるのかなーっとその洞穴に入っていった。

そこの天井にも穴が空いていて月の光が差し込んでて、その光の先には1匹のドラゴンがいたんだ。それもとてつもなく大きい。

これはマズイと思ってゆっくり戻ろうとしたときに小さなくぼみに躓いて声を出してしまったんだ。幸いなことにドラゴンは起きていなかった。

俺はその場所から離れるために足を踏み出したんだ。でも、足を踏み出した瞬間頭の中に声が響いてきたんだ。

まあ、想像通りそのドラゴンが話しかけてきてたんだ。まあそこからはとくに何事もなく話が出来たよ。その洞窟で生活をする許可ももらえたし。

そこから二十六億年ぐらいずっと修行の日々だったな。

 

「はい。今日はここまで。次回は……気が向いたらな」

「ええー!どうしてですか!」

「なんとなく?」

 

さすがに永琳達のことを話すわけにも行かないからな。

まあ、話すつもりがまったくないって言ったら嘘になるけど。

 

「そうだな。俺との勝負に勝てたらいいぞ。勝負内容は俺の修行内容にするか」

「鶴来さんの修行内容?どんなのですか?」

「修行内容は色々有るんだが教えるのは一つだけな」

「えー彰人さんのけちー」

「うるせえ射命丸。でだ、俺の修行は基本的に水を使うものが多くてな。その一つに滝を使う修行があってだな」

「滝行のことですか?」

「いや、違う。まあ、水飛沫があればどこでも出来るんだけど。水飛沫を足場にしてひたすら跳ぶんだ」

「……相当難しくないですか?それ」

 

射命丸は首を傾げているが茨木はこの修行の難しさを知っているようだ。

確かに難しい。水を踏んで壊れる前に水に力を流して水の強度を上げなければならない。

水に掛ける力が大きすぎれば水が崩れて、逆に水に掛ける力が弱かったら水に跳ぶために力を掛けたら崩れ去る。

意外と難しいのだ。だが、これが出来るようになれば力を制御するのは相当上達する。それに、力が少なくても簡単(難易度は激ムズ)に出来る修行である。焔の奴は結局出来なくて涙目になってたな。

焔のもつ力は霊力と妖力なのだがいかんせん量が少なすぎるのだ。ただそれを補って余りある身体能力の持ち主なのだが。

 

「まあ、明日にでもしてみるか?聞くよりも実際にやってみた方がわかりやすいだろ」

「ちょっとやってみたいですね。確か明日は用事もないのでやって見ても良いですね」

「私もお願いして良いですか?」

「おう!まかしとけ!」

 

射命丸はどうか知らんが茨木がどれだけできるか興味が有るな。

楽しみにしておこう。

「よし、やってみるか」

「はい」

「私は少し精神統一をしてきますね」

 

行ってらっしゃい、と手を振り茨木を見送る。

さて、射命丸はもうスタンばってるな。

 

「取り合えず俺が一回手本見せるから」

「分かりました」

 

俺は滝に近づき滝の真ん中辺りまで跳び

 

「……っ!」

 

久しぶりだからもの凄く、やり辛いッ!

 

ピチャ

 

力を込めすぎたか水が弾けた。

マジか!?その下にあった水飛沫を足場になんとか体勢を立て直す。

久しぶりだなこの緊張感。一人で勝手に盛り上がってるだけなんだけど。

自然と笑みがこぼれる。

 

それから大体十五分程度で集中力が切れ水の中にボチャンと落ちてしまった。

 

「ぷはぁ」

 

川から這い上がる。

 

「まあ大体こんな感じだな」

「わっかりました!!」

「俺はちょっとアッチに行ってるからそれまで練習して……って聞いてないな」

 

俺がまだ喋ってるんだが。まあいいか。

俺は川から離れて森の中に入ってく。

 

最初は服が乾くまでブラブラするつもりだったのだが。どうやらそうも行かないらしい。

原因は男と女の天狗の会話だった

 

『さっさと出て行ってくれないかな~。マジで気持ち悪いんだけど』

『人間と一緒に住んでて挙句あの変態仙人もどきの鬼までいるんだろ。本当に勘弁して欲しいわ。気持ちわる過ぎるわ』

『河童と天魔様も潮時かな』

『だろうな。あんな変態たちとつるんでるんだからな』

『殺ちゃう?反対派も半分近くいるんだし』

 

その言葉をを聞いたとき プチッ 俺の中で何かが千切れた。たった数日されど数日。あいつは、あいつ等は俺に良くしてくれた。

俺は笑顔で天狗に近づく。

 

「はろはろーこんにちはテングサンがた」

『あ?ああお前かなんか用か?』

「まあ、用って程でもないんだけどな」

『ならさっさとしてくれない?コッチも暇じゃないんだけど』

 

ああそうだろうな、ならさっさと済ましてやるよ。

俺は男天狗に近づき

 

「死ねよ」

 

顔面を殴り地面に叩きつけ、追い討ちで顔に踵落としをお見舞いする。

ドガアァァァンッ!!!

 

『き……さま!』

 

女天狗が抗議の声をあげる。扇を振るいカマイタチを起こす。

 

「うるせえ」

 

カマイタチを腕で払い、女天狗の髪を掴み顔に膝蹴りを食らわる。

 

『グウッ……!!』

 

髪を掴んだまま地面に下ろす。

 

「さて、寝るなんてまねすんなよ?」

 

そう言って女天狗の右足をまるで虫を殺すかのように踏み潰す。グチャ! と音を立て右足が潰れ血が流れ出す。

 

『ぎゃぁああ!!』

「おいおい、女があげるような声じゃねぞ?おれが止めてやるよ」

 

女天狗の口を固定し指を喉に突っ込み、炎の塊を流し込む。

 

『ヒュウゥゥゥー!!カヒューカヒュゥー』

 

喉が爛れ声をあげることが出来ない。痛みを我慢できなくなっているのか目が虚ろになっている。

 

「だから寝んなよって言ったじゃん。なに寝ようとしてんの?」

 

女天狗に水をかける。意識がっ戻ったのかこの場所から逃げようとするも右足が潰れており地面を這いずっている。

 

「おーおーまるで芋虫みたいだな。よし、手伝ってやるよ」

 

女天狗の髪を掴み仰向けにし上半身を起こし、自分の左足が見えやすいようにする。俺は左足の上に右足を持っていく。

女天狗は何がしたいのか分かったのか涙を流しながらフルフルと首を横に振る。

俺は女天狗に笑顔を向け少しづつ右足を下ろしていく。

ぐちゅ 足先の指がつぶれる グキッ、ブチャ 指の骨が折れ飛び出す グチャ! 一気に踏み潰す。足がつぶれ、血が噴出す。

 

「だから寝んなって」

 

もう一度水をぶっ掛ける。

 

「お前もそろそろ起きようか」

 

男天狗を浮かせて目の前に持ってくる。

腕をのツボを押す。アイに始めてあったときにされたやつだ。

徐々に力を加えていく。

 

『い……てぇ!!』

 

ありゃ振りほどかれえちゃった。

男天狗は瞬時に状況を理解したのか逃げ出した。仲間を呼びに言ったのだろうか。まあ、そんなのは関係ないんだが。

すでに上空にいた男天狗にアイアンクローを決めながら地面に降り立つ。

羽邪魔だな……捥ぐか。男天狗の翼を掴む。

 

『え!?ちょ、ちょっと待ってくれ!頼むそれだけは止めてくれ!だいたい俺達がなにをしたって言うんだ!』

「『人間と一緒に住んでて挙句あの変態仙人もどきの鬼までいるんだろ。本当に勘弁して欲しいわ。気持ちわる過ぎるわ』」

『ッ!それだけのために俺達を殺すってのか!?確かに言ったが手は出してないだろ!!』

「そうだね。それにお前ら殺そうと思ったんだろ?俺の家族をよ!それだけで俺の中では十分な理由になってんだよ!報復されても文句は言えないよなぁ?じゃあ、そろそろイコッか」

『イカレテやがる。ヒッ!ま、まって!まってく――』

 

ズチュリ!

 

一気に翼を引き抜く。

 

『ぎゃああぁぁぁ!!』

「もう一本も行ってみよー」

 

もう一本は一気に抜かず、時には掻き混ぜるように時には押し込んだりしながらゆっくりと引き抜いていく。

 

『ひぐぅ!あがあぁぁ!も、もうゆるし、ぎゃああ!!』

「誰が許すかっての」

 

引き抜いた翼を男天狗は涙を流しながらすがるようにじっと見ている。

 

「欲しい?安心しろよまた会えるから」

 

俺は男天狗にそう言って天狗の翼を『喰った』。

ボリボリと骨を噛み砕き、羽と一緒に飲み込む。

唇に付いた血をペロリと舐め取る。

 

「さてと」

 

男天狗に手を向ける。すると天狗の体を炎が端から塵と貸していく。

俺は男天狗に向けていた手を手刀の形にして男天狗の胸に突き立て、心臓を引きずり出す。

ズチュル ブチッ 繋がっている血管が切れる。

そして……

 

「いただきまーす」

 

大きく口を開け齧り付く。口の中に血と鉄の味が行き渡り鼻を生臭さが突き抜けていく。

 

「マズッ」

 

そう言いながらも食べ続けていく。食べ終わる頃には男天狗の姿は既になくなっておりそこには塵だけがサラサラと舞っていた。

あとは女天狗だけだが……正直お腹いっぱいだ。燃やすか

女天狗に近づく。どうやら既に息絶えていたようだ。

 

「それじゃあバイバイ」

 

女天狗の体を炎が包み込む。塵になったのを確認しその場を元に戻す。

そろそろ戻らないとな。

 

『………』

 

射命丸の元に戻ると射命丸からしつこく何をしていたのか問われた。

さすがに話すわけにも行かないのでウロウロしていたら迷ったと言う事にしておいた。

茨木は、一度は戻ってきてはいたのだが俺を探しに行くために行ったきり戻ってきていないらしい。見られては……ないよな……注意力が散漫していたから分からん。

 

「戻りました」

「お、お帰りなさい。どうやら入れ違いになってしまったようですね」

「……そうみたいだな」

 

茨木が笑顔で戻ってきた。

 

「どうだった?」

「!いつも通りですね」

「そうか」

「もう、日も落ちますし帰りましょうか」

「ああ」

「そうですね」

 

見てたのか……嫌われただろうな。だあークソッ!

茨木が近づいてきて小さく

 

『お話があります。夜に』

 

と言った。

夜になり射命丸はすでに寝ている。

俺と茨木は家を出て滝まで来ていた。

 

「見てたん……だよな」

「これからどうするのですか?」

「もうこの場所にはいれないから、適当にブラブラと旅でもするかね。…………気持ち悪かったろ?」

「なんでですか?」

 

なんでって……天狗を食ったんだぞ。

 

「それを言ったら妖怪だって人間を食べますから。もちろん私も食べたことがありますよ。あまり好きにはなれませんでしたが」

 

た、確かに……

 

「旅に出るんですよね。私も付いていってもいいですか?」

「待て。話が唐突すぎやしないか?それにどうして付いてくる必要がある」

「私だって狙われている身ですよ?一時の間はここを離れないといけませんからね」

 

結構最初のほうから見てたんだな茨木さんや。

 

「頼めるか?」

「はい。よろしくお願いしますね『彰人』さん」

「!……ああ、よろしくな『華扇』早めに行きたいんだが……どうする?」

「私は今からでもいいですよ」

「ならそうするか。ちょっと待ってくれな。うし!行け!」

 

俺は木の葉を二枚拾い、鴉の姿に変え飛ばす。すこし頭痛がするがこの位なら大丈夫だったか。

 

「今のは?」

「射命丸に別れの言葉と、村長のやつに事情と反対派とやらの情報をな。すこし裏技を使わせてもらった。じゃあそろそろ行こうか」

「そうですね」

 

俺達は妖怪の山を抜け宛てもなく歩くのだった―――

彼らが去った妖怪の山では半分近くの天狗が打ち首の刑にされた。元々責務を真っ当していなかったのか特に支障はなかった。

そして、天狗社会の上下関係がハッキリした日でもあった。

 

射命丸は文屋となった。最初の頃こそ魂が抜けていたが今ではとても元気に働いている。なんでも

『私の瓦版が有名になればどこかで聞きつけてくるかもしれませんからね』

とのこと。

今日も射命丸文は元気に瓦版を配るのだった。いつかまた会えると日がくると信じて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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