東方 崩廻録 (完結)   作:ちゃるもん

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都編
万屋って生活費稼げるのかなぁ?


妖怪の山を出て数十年が立った。今では都という大きな都市もできているらしい。

 

「都……行ってみるか」

「はい?あの彰人さん、私妖怪ですよ?仙人でもありますが」

「式って言い切ればいけるんじゃね?」

 

華扇はため息を吐くと

 

「どうなても知りませんからね」

「よしゃ!さすが華扇ちゃんだ!」

「だれが華扇ちゃんですか!待ちなさい!」

 

そんなこんなで俺達は元気です。ヤベ追いつかれる。一日説教は嫌だから全力で逃げるぜ!!

話をしてから大体一ヶ月ちょいで都へとついた。飛んで行けば一日も掛からないのだが華扇が「今までも歩いて旅をしたのですから今回も歩きましょう」と言ったのでいままでと変わりなく歩いて都を目指した。割と近くに都はあり、旅中も特に何事もなく着くことが出来た。

さっそく都に入る。通りは人々の声で活気付いている。

 

「すごい数ですね……」

 

華扇は人間の多さに驚いているが、夜が来る前に住める場所を探さなければならない。

お金も持ってないし、人柄の良さそうな門番さんにどこか住める場所がないか聞いてみる。

 

『それでしたら、ここを真っ直ぐ行って左に曲がった先の突き当たりに誰も住んでいない空家がありますよ。そこでしたら管理している者もおりませんので家賃なども取られる心配もないはずです』

 

と、とても良い情報が貰えた。早速行って見る事にしよう。

おまけで貰ったと言う魚を頬張っている華扇を引きづりながら、言われた場所を目指して歩いていく。

真っ直ぐ行って、左に曲がった所の突き当たり。お、ここか。にしても……本当に酷いな、これは……

天井と壁には穴が空いており、家全体を苔やツタが蔓延っている。まあ、このくらいならどうとでも出来るのだが。

床に手を付き、家の内側だけを新しい状態へと変化させる。後は外から見える穴を木材で補強すれば、外から見たらオンボロの家の完成だ。

 

「ここが新しい家ですか。射命丸さんの家が懐かしいですね」

「そうだな」

 

射命丸との思い出をタンスの中から引き出しながらこれからの事を考える。

 

「まずは、職を探さないとな。その日で給料も貰えんだろうから……自分で何か始めないといけないのか」

 

こういう時の転生者達は万屋や陰陽師を始めるんだっけか?

だが、それで生活が安定するとは到底思えんしな……復職として広めていくか。

食料は華扇に魚でも捕ってきて貰えばいいし、少しの間なら風呂も洗濯もしなくてもいい。住居は手に入れたから、やっぱり職だけだな。取り合えず華扇に食料の調達をお願いしよう。

 

「なあ、華扇」

「はい?」

「明日から俺働ける場所探すからさ、その間食料を調達しといてくれないか?魚とか、山菜とか」

「分かりました。どうせ、修行をしに離れるのでそのついでにでも採ってきますよ」

 

華扇は快く引き受けてくれた。

 

「今日はもうする事もないし、散歩でもする?」

「いいですね。まだ日が暮れるには早い時間帯ですから色々見て回りましょう」

「じゃあ早速行こうか」

 

俺達は家を出て大通りへと出る。

取り合えず適当に見て回る。華扇は団子屋の店主から貰った団子をもきゅもきゅしている。可愛い。

もちろん万屋を始めたのを宣伝する事も忘れない。店主さんからは『困ったときに頼らせてもらうよ』と言ってもらえた。

そんなこんなで日が暮れるまでいろんな出店をはしごしながら宣伝をしていった。華扇は何かしら食べ物を貰ってもきゅもきゅしていた。可愛い。

明日は就職先を見つけなければならない。

 

「ただいまー」

「ただいま」

 

まだ、何もない家へと帰ってくる。

 

「明日は忙しくなるだろうから早く寝ようか」

「私は特になにもありませんがね」

「それじゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 

布団はないがなくても寝られるので問題が無い。

次の日の朝。

能力で出した水で顔を洗い家を出る。今の時刻は大体午前五時くらいだろうか。

いつもならもう一時間長く寝ているのだが、少ししておきたい事があったのだ。

近場の森に行って木のそこそこ太い枝を切り取る。それを乾燥させ、切り分け、組み立てて行く。

力や能力を使った事もあり三十分程度で完成した。

完成したのを家の前に設置していると華扇が起きてきた。

 

「おはようございます。それは……なんですか?」

 

俺の持っている物を指しながら聞いてくる。

 

「これ?これじゃポストって言うやつだ。俺か華扇が留守のときはこのポストの中に依頼内容を入れてもらうつもりだ」

「確かに都でしたら文字が書ける人間も多そうですね」

「だろ?」

 

俺はポストを地面に刺し張り紙をする。

『誰もいなかった場合はこの穴に依頼内容もしくはお名前と住所を書いた物を入れてください』

 

「これで完成だな」

「お疲れ様です」

 

華扇が笑顔で労ってくれる。もう少しすれば大通りも賑わってくるだろうからそれまでに朝食を終らせるとするか。

 

「じゃあ簡単に朝ごはんでも食べるか。さっき木の実と魚を捕ってきたからそれでいいだろ?」

「もちろんです」

 

家の裏で火を起こし魚を焼きさっくと食事を終らせる。

 

「んじゃ、行ってくるわ」

「いってらっしゃい」

 

華扇に見送られながら家をでる。

さて、まずは最初に行った団子屋の所にでも行ってみるか。

十五件。十五件回った。まさか全部断られるとは。まあ、昨日会ったばかりの奴に店を任せたくないってのは分かるからなんとも言えないのだが。

もう昼過ぎだから行ったら邪魔になるな。今日のところは帰るか。

家に着き以来きてるかなー程度でポストを見ると……何も入っていない。現実は非情である。

ため息を吐き家へと入る。

 

「ただいま~」

 

だれも居ないと分かっていてもつい言ってしまう。

どっこらしょ と座わったとこれで、ドンドン 『誰かいませんか?』

座ったばかりなのに誰か来たようだ。「はーい」と返事をしながら玄関へと向かう。玄関を開けるとそこには一人の女性が。

 

「はいはい、どちら様?」

「え、えっとここが最近出来た万屋で良いんでしょうか?」

「そうだけど……なにか御用ですか?」

「護衛の依頼を頼みたいのですが……」

「マジで?え?初日だよ?え、こっちとしては嬉しい限りだけどこんな信用できない新米に頼んでも良いのか?普通陰陽師の人に頼むものじゃないのか?」

「実は……」

 

ほむ、陰陽師に頼むには今までの売り上げでは足りないと……むしろ、一度頼むのに五回分以上の売り上げをほぼ全部注ぎ込まないと頼めないらしい。一度頼めば生活が出来なくなるな。

で、最近出来たウチが依頼両が安く済むと団子屋の店主に聞いてやって来たと。

 

「で、肝心の依頼両は?」

「えっと一両程度しか出せないのですが……」

「ふむ」

 

まだ、この時代のお金の単位は定まっていなく、計算すると多少の誤差が出てくるが大体十万円程度って所で考えとけばいいだろう。

 

「うーん。よしその依頼引き受けた」

「やっぱり……たった一両で死地に付いてこいなんて無理な話ですよね……で直してきます」

 

そう言って帰ろうとする。

 

「いやいやいやいや!話を聞きましょうな!引き受けたって言ってるだろ!」

 

女性の手を取り引き止め、無理やり家の中へと通す。

 

「で、詳しい依頼内容を教えてもらおうか?」

「えっと、本当に一両だけでよろしいのですか?」

「あんまりしつこいと依頼両増やすぞ?」

「すいません!有難うございます!」

「で、詳細は?」

 

今日来た依頼内容は山菜の収穫の護衛。妖怪の山程ではないにしろ、目的地の山には妖怪が多数出現しておりこの女性の家族も襲われたらしい。

夫が自分を庇って怪我を負ってしまったが命かながら逃げ切れたようだが、裕福ではないため陰陽師に頼むことも出来ず山の麓でしか山菜が取れない状態になっているらしい。

でも、俺が戦えるかも分からんのによく頼む気になれたよな。ありがたいけどさ。

依頼主の女性が申し訳なさそうに聞いてくる。

 

「大変失礼でなのですが……戦えますよ……ね?」

「今聞くのか……安心してください。貴女には指一本たりとも触れさせませんよ」

 

女性は「有難うございます。明日はよろしくお願いします」と言って家から去って行った。

明日は午前五時には来るって言ってたからな、華扇も来るか聞いてみるか。

現在の時刻午前四時頃。今は体を動かしている。自分と同じぐらいの身長を持つ相手をイメージしながら拳で軽く殴り、全体重を乗せた回し蹴りで首を蹴る。

華扇は付いて来てくれる事になった。今は目を瞑り舞を踊るかのように攻撃を繰り出している。

一気にしゃがみ足を回し蹴りで払い、地面に拳を叩きつけ、踵落としで追撃を仕掛ける。

三十分程度イメージトレーニングをした後、身だしなみを整え依頼人がいつ来ても良いようにしておく。

 

「華扇。お前もそろそろ準備しとけよ」

 

最後に一歩踏み込んで目を開け此方を見る。

 

「ふぅ……分かりました。準備してきますね」

 

さて、後は依頼人を待つだけだな。

 

それからさらに三十分ぐらいして依頼人の女性が背中に大きな籠を背負い現れた。

 

「お早いんですね。今日はよろしくお願いします」

「お願いします。こっちが俺の式の」

「茨木華扇です。今日はよろしくお願いしますね」

 

挨拶もすませ、目的地となる山へと向かう。

 

徒歩二十分位のところにその山は在るのだが……うようよいるな。一つ一つの力は弱いな。下級妖怪ばっかだな。山頂に大妖怪の気配がするな。

 

「下級しかいないから余裕だな。念のためこれ持ってってね」

 

依頼主にお守りを渡す。このお守りは持ち主を守る結界を張ってくれる物だ。万が一はぐれてしまった時の保険だ(中妖怪ぐらいでは傷一つ付けれないだろう)。

 

「それじゃあ、入っていきますか」

 

山の山頂を目指し登っていく。

麓のほうは撮り尽くされており、山の真ん中辺りも陰陽師を雇った奴らが撮り尽くしている。全く無いという訳ではないのだが、これ以上取ると山の環境に影響が出るため取れない。後は人の手が届いていない山頂の方でしか採ることができない。

中級妖怪が居る事も、もちろん教えたのだが、それでも行かなければ路頭に迷ってしまうと言われてしまった。

この家族が路頭に迷わないためにも頑張りますかね。

 

山頂へと着いた。山頂にいたのは一匹の狐。尻尾が八本生えているから九尾と関係が有るのだろう。ただ、なんとなく分かるのは相手に敵意がないということ。

俺は妖怪狐に近づいてみる。妖怪狐は此方を一瞥し近づいてくる。スンスンとにおいを嗅いだ後、俺が何もしないからか妖怪狐は顔を摺り寄せてくる。

声が伝わるか分からないが取り合えず聞いてみることにする。

 

「この辺りの山菜を貰って行っても良いか?」

 

言葉が伝わったのか、了承するかのように頷いた。

にしてもこの妖怪狐は退治される危険が有るのに都の近くを根城にしてるんだ?まあ考えても意味ないか。

関係ないがもの凄い手触りが良い。サラサラもふもふ ふぁ~(歓喜)

 

「あのぅ……大丈夫なんですか?なんか普通に近づいていってますが」

「あー、まあ大丈夫なんでしょう。私も手伝いますので一杯取りましょう!」

「あ!置いてくなよ!俺も付いて行くって!またな妖怪狐!」

 

妖怪狐に別れを告げ二人のあとを追う。

 

「まったく、置いて行こうとするなんて酷いやつだ」

「貴方が寄り道しているからでしょうが」

「山菜採っていいか聞いてただけだ」

「そうでしたか。お疲れ様です。で?どうでしたか?」

「なんかムカつくな……良いってよ。ところでさ……」

 

さっきからずっと気になっていた事を聞いてみる。

 

「依頼主、ドコ?」

「へ?」

 

華扇は周りを確認するもそこには誰も居ない。

 

「あれ?あれれ?…………はぐれちゃいました……」

「おおーい!?なにやっちゃてんの!?ああもう!ささっと探すぞ!!」

 

お守りを渡しといて本当に良かった……

そこから華扇と二手に分かれて依頼主を探すことにした。そこまで離れていなかったようですぐに見つけることが出来た。

出来たのだが、低級妖怪が……十五か、さすがにまずいな。しかも後ろは崖で逃げ場がない。

 

 

「いい加減にしろや雑魚風情がよ」

「ギャ!?」

 

たかっている妖怪の中で一番大きい奴の頭を掴み、

 

「黙れよ」

 

グシャ!

握りつぶす。血が弾け飛び、脳がベチョっと地面に落ちる。低級妖怪でも脳みそ有るんだな。

 

「お前もこうなりたくなかったらさっさとどっか行け。見逃してやるから」

 

そう言うと低級妖怪達は逃げていった。

頭を抱え蹲っている依頼主に声を掛ける。

 

「おい、大丈夫か?」

 

依頼主はおそるおそる顔を上げ、きょろきょろと周りを確認する。

俺の足元を見て固まってんな。妖怪とはいえ死体があるんだからしょうがないか。

 

「あ、有難うございました」

「悪かったな。はぐれちまって」

「いえ、私が勝手に動いたのが原因ですから、顔を上げてください」

「そう言ってくれると助かります」

 

おいコラ華扇いつの間に着てやがった。

まあ、 無事だったから良いけど……

その後は俺と華扇も山菜を採取して戻ることにした。

「この度はありがとうございました。こっちが依頼両です」

 

依頼主が持っているの袋を受け取り中を確認する。

袋の中には銀50匁が入っていた。

 

「この銀50匁はどうしたんだ?」

「いざという時に溜めていたものです」

「それにこれだけあれば一時の間は生活できるんじゃないのか?」

「それは……昨日話しましたよね。夫が怪我を負ってしまったのを。実はその妖怪の爪には毒があったようで、本当はその毒を直すための薬草を取りに行くのが目的だったのです。しかもその薬草は妖怪の住処の近くにあって……」

「新しくやって来た地理にも詳しくない俺たちに白羽の矢が立ったわけか」

「騙すような事になってしまって申し訳ありません!」

 

依頼主は地面に足をつき土下座をした。

 

「その薬草は手に入ったのか」

「あなた方のおかげで沢山手に入りました。本当にありがとうございます……!」

 

頭を地面にこすり付けながらお礼を言う。

俺は袋の中から銀十匁ほど取り出す。

 

「ほら、顔上げろ」

 

依頼主はその言葉で顔を上げる。顔は涙でグチャグチャになっている。

 

「おいおい涙はまだ早いだろ?」

 

依頼両の入った袋を渡す。

 

「あの、これは?」

「なにって、お釣り?依頼両は貰ったからさ」

 

そう言って持っているお金をジャラジャラと鳴らす。

 

「いえ、でも」

「良いから良いから。それで美味しいもんでも食べてきな」

 

依頼主はまた泣き出し「有難うございます有難うございます」と言い帰って言った。

 

「良かったのですか?」

「良いんだよ。これだけあれば布団も買えるし、贅沢しなければそれなりに生きていけるから」

 

今の時刻は十五時頃。

 

「布団でも買いに行きますか」

「あと、大き目の桶ですね」

「着替えも必要だな」

 

こうやって考えてみると色々必要だな……足りるかな。

 

「後悔してますか?」

「まあ、してないって言うと嘘にはなるな。ただ、家族は失ったときに初めてその重さが、大切さが分かるものなんだ。それが理不尽なもので失ったら特にわかる。感情が壊れるほどに、な。だから助けたいって思った。だから俺は俺の家族を傷つける奴は許さない」

 

一度失ったからこそ分かる。……もう吹っ切れたと思ってたんだけどな……。

 

「すまんな変な話して。そろそろ行くか」

 

俺たちは無事に布団二セットと桶を買って帰ってきた。

明日も依頼が来てくれればいいんだけど。

次の日

就職先は見つからなかったものの、依頼が一件。依頼主は魚屋の奥さんからのようだ。

なんでも、ここ最近夜になると妖怪が出るらしい。けが人は出ていないが誰一人としてその妖怪の姿を見ていないらしい。気味が悪いから正体を暴いて欲しいとの事。

報酬は五両。こんな大金どうやって集めたのだろうか?

夜か……そういえば夜は出かけたことないな。

兎に角その正体不明の妖怪の情報を集めないとな。

 

大通りで道行く人や屋台のおっちゃんに聞いてみた結果……

 

・姿は犬だったり、大きな猫、顔がない人間と統一性が存在しない。

・足は遅く走れば逃げられる。

・曰く、陰陽師が手も足も出ないとか。

あと、直接関係はないが、あの大金は都の人々が少しづつ出し合った結果らしい。

 

そのぐらいしか得られるものはなかった。

 

「ふーむ……実際に見に行くしかないかな?これは。今日辺りにでも行ってみるか」

 

それまで暇だしうろうろしてるかな。

 

うろうろしていたら妖怪の話の他に美しい女性の噂がちらほらと聞こえた。そのうち行ってみるか。

そして夜。

辺りは人っ子一人おらず静寂と化していた。

大通りを進み、裏道へと入っていく。

……へんな気配が漂っているな……気をつけとかないと。

それから、歩いて五分くらい経った頃黒いもやもやが目の前に現れた。

どうするか考えていると黒いもやもやが晴れそこに居たのは……

 

「父……さん?」

 

いや、幻覚か。あの父さんは死んでいるんだから。

今更会えたとしても俺には声を掛ける権利なんてないんだから……だから……

 

「早く俺の目の前から消えてくれ。じゃないと……殺しちまいそうだ……」

 

強く握り締めた手からは血がポタポタと滴り落ち抑えてはいるものの魔力が漏れ出している。

それに慌てたのか父さんの形をしているナニカは『キャ!』と可愛らしい声をあげながら姿を現した。

そこに居たのは黒髪のショートボブ、瞳は深い紅色をしており今にも引き込まれそうだ。服はこの時代に似つかわしくない黒のワンピースに胸元に大きな赤いリボン、更にはニーソックスに赤い靴。だがそのどれよりも目を引くのが背中に三本ずつ生えた赤と青の翼っぽいもの。

 

「脅かせたな。少し待ってくれ」

 

息を吐き心を落ち着かせる。これ以上壊れたら戻れるか分からないから、と自分に言い聞かせ心を落ち着かせる。

あの日の光景を、目の前に広がる炎を、体中に降り注いだ赤い液体とその臭いを。

そして、小さな手に広がる肉の感触を……その全てを無理やり押し込める(おちつかせる)

 

「………ふう。すまん、待たせたな。俺は鶴来彰人だ。万屋をやってる。君は?」

「…………」

 

女の子は沈黙を保っている。

退治するのではないかと疑っているんだろう。名前が分かれば対策もされるしな。

それに、出会い頭に殺すと言われ、今もおびただしい量の汗を流している奴を警戒するなと言うほうが無理な話だ。

 

「安心しろ。と言って信じてもらえるとは思えないが。君を退治するつもりもない。それに俺も人間じゃないからな」

「……本当?」

 

俺は少しだけ妖力を出す。

どうやら信じてもらえたらしく安堵の表情を浮かべる。

 

「私は『封獣(ほうじゅう) ぬえ』だよ。嫌われ者どうし仲良くしようね」

 

封獣が見せた笑顔はどことなく悲しそうで、同時に嬉しそうな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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