東方 崩廻録 (完結)   作:ちゃるもん

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ほんっとに申し訳ありませんでした!!

別の小説を間違えて編集途中で投稿してしまい、焦って崩廻録の方を削除してしまいました!
読者の皆様本当に、本当に申し訳ありませんでした!!
今後、このようなことが無いように気を付けます!!


嫌われ者

姫様が都を去ってすでに一ヶ月の月日が流れた。だが、俺はまだ決められずにいることがある。妹紅のことだ。

今日妹紅が来る。それまでに決めなければならない。

 

あの後、妹紅から蓬莱の薬について聞かれた。なんと答えるべきか悩んだのだが、正直に答えることにした。蓬莱の薬が不老不死になれる薬としった妹紅は土下座までして俺に蓬莱の薬を譲って欲しいと言ってきた。

もちろん、なんで蓬莱の薬が欲しいのかを聞いた。最初は父親を生き返らせたかったのかと思ったが違うらしい。そもそも生き返らせることが不可能なのだが。

では、なぜ?妹紅の口から出た言葉は妹紅自身を動かす動機としては十分なのだろう。ただ、他者を、俺を動かすには不十分で、同時に不老不死になる意味が分かっていなく、覚悟も足りていない言葉だった。

 

『父様の分まで世界を見たい』

 

確かに、父親を亡くし、俺自身もそんなことを言ったが不老不死になると言うなら話は別だ。

不老不死になると言う事は、人間を止め化け物として生きていくということ。

それは、人間として産んでくれた両親を裏切る行為でもあると、俺は思う。多分妹紅の母親や親しかった友人達にも妹紅から離れていくだろう。

大切な人が離れていく。何度も何度も……

俺も出来るだけ一緒にいようとは思うがずっと一緒にいられるとは限らない。その時妹紅が壊れてしまわないかが不安なのだ。

 

 

今まで考えた結果、俺は妹紅の言うとおりにしようと思う。

彼女が決めた道だ。なら、俺は妹紅の選んだ道を尊重しようと思う。そして、妹紅が不老不死として生きていくことを選んだ時は……

 

 

殺す覚悟も……しておかないとな……

 

 

不意に扉をドンドンと叩く音が聞こえた。妹紅が来たのだろう。

重い腰を上げ扉を開ける。

 

「いらっしゃい妹紅。まって……どうした!?」

 

扉を開けた先には想像通り妹紅の姿があった。服は破け血が滲み出している。顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになており、絶望に染まっている。

 

「母様……が!母様が!」

「お母さんがどうかしたのか?」

「母様が……私を……ッ!!」

 

俺は泣きじゃくる妹紅を抱きしめた。さっきの言葉で大体は察する事が出来た。

妹紅の母親は夫が死んだことにより壊れたのだろ。

『俺のように』

妹紅を抱き上げ家の中へ入れ、何事だと見ていた華扇とぬえに布団を用意しとくように伝えた。

 

もう一度妹紅の背中を見る。血は流れてはいるものの幸い、傷跡が残るほど深く入っているものはなかった。

 

「妹紅、大丈夫か?」

 

顔を埋めたままコクンと頷いてくれた。

 

「話せるか?」

 

妹紅は一度ビクッとなった。

これは、厳しいかな。無理しなくていいからなと言おうとしたしたとき、妹紅の口が開き小さな声で

 

「だいじょうぶ……です」

「……分かった。無理はするなよ」

 

 

妹紅の話した内容は想像通りのないようだった。

夫が死んだことを知りかぐや姫を殺すと言い始めた母親を止めようとしたら、貴女が居なければと責任転嫁された。そして、母親は隠し持っていた短刀で妹紅を切り掛かって来た。妹紅が必死に抵抗したところ母親の手から短刀がすり抜け、ちょうどそのタイミングで妹紅が母親を押し倒してしまいそのまま短刀の上に……。結果、母親は死んでしまった。

妹紅もパニック状態になっていた為、妹紅が悪いとは言えないがそれでも妹紅は自分を責めてしまうだろう。

 

「……今日はもう休め」

 

こんな時気の効いた慰めの一つもかけられない自分が憎い。

妹紅を隣の部屋へと移し、布団に寝かせる。

 

「あの……お願いが……」

「なんだ?」

「その……手を……」

「握って欲しいのか?」

「……だめ、でしょうか?」

 

俺は妹紅の手を取り答える。

 

「ダメなわけないだろ」

「ありがとうございます」

 

妹紅は目からポロポロと涙を流しながら答えた。

 

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 

妹紅はすぐに眠ってしまった。あれだけの事があったのだから当然か。

 

「華扇、ぬえ」

「なんでしょうか」

「なに?」

「妹紅を家族に迎え入れたいと思うんだが、良いか?」

 

さっきの話を聞く限り、妹紅の家はトップが二人とも居なくなった状態。妹紅が当主として頑張ったとしても長くは持つとは思えない。物語の主人公なら自分の事だろうが相手の事だろうが、やってみなければ分からないと言うのだろう。だが、そんな主人公に俺はこう言ってやりたい。

 

それが自分自身だけに迷惑が掛かるならいくらでも足掻けばいい。

だが、それが他の人たちにも迷惑が掛かるなら考えを改めろ。事が大きければなお更だ。

 

妹紅が自分の家を継ぐといっても俺は賛成しないだろう。なぜなら、妹紅だけに迷惑が掛かるわけじゃない。そこで働いている人たちの給料を払いきれず、生活に困るものが何人も出てくるだろう。残っていてくれるのは馬鹿か他に働き口を見つけられない人ぐらいだろう。

 

「そうですね。このまま放っておくわけにも行きませんし……私は良いと思いますよ?」

「華扇……もう少し言い方を考えようね?私も良いよ。放っておけないしね」

「二人とも……!ありがとう。俺の我ままに付き合ってくれて」

 

俺は二人に頭を下げた。

 

「えっと、どういたしまして。で、いいのでしょうか?」

「良いんじゃない?どういたしまして」

 

頭を上げる。

 

「二人はもう寝てていいぞ。俺がここに居るから」

「なにを言ってるのですか貴方は」

「へ?なにか間違ったことを言ったか?」

「言いました。家族なんだから、一緒に居たいものでしょ?私達も心配なんですよ。妹紅の事が」

 

ぬえもうんうんっと頷いている。

そんな事言われたら……断れないじゃないか。

 

「じゃあ、お願いしようかな」

「まかしといて」

「当然です」

 

そう言ってぬえは布団に潜り込み、華扇は左の手を握り、俺は右手を握った。

その時、妹紅が笑った気がした。

 

妹紅に俺たちと一緒に住まないかと提案したところ、二つ返事でOKが貰えた。

 

 

そして、妹紅が家族になって一年が過ぎた。それまではうやむやにして誤魔化してきたが、どうやらこれまでらしい。

 

「ふっふっふ……もう逃がしませんよ。彰人!!」

 

妹紅が両手を広げて俺の前に立ちふさがる。

 

「彰人は、下手な演技で逃げてばっかりで……今日こそ話しを聞いてもらいますからね!!」

「な……なにを?」

「蓬莱の薬。一年半うやむやになってましたもんね。そろそろ私の話を聞いてくれても罰は当たらないのでは?」

 

真っ直ぐに俺を見つめる、力強い妹紅の目を前に諦めることにした。

 

「……はぁ……分かった。もう止めないから好きにしろ。ただ、絶対に後悔することを覚悟しとけよ」

「はい」

 

俺は棚の中から小さな壷を取り出した。

 

「それが、蓬莱の薬?」

「ああ。最後の質問だ……本当に良いんだな?」

 

「はい」

 

「人間をやめることになる。両親の思いを無碍にする行為だ。覚悟は出来てるな」

 

そう言うと妹紅の目は力強さを無くした。が、すぐに力強さを取り戻し

 

「出来て……ますッ!!」

「……じゃあ、もう俺は止めんよ」

 

そう言って妹紅に壷を渡す。

妹紅は壷を受け取り蓋を開ける。中には、親指サイズの丸薬が入っている。蓬莱の薬だ。

 

「……(ゴクッ)」

 

妹紅の唾を飲む音が聞こえる。

 

「ふぅー……よし!」

 

妹紅は一気に蓬莱の薬を口に入れ、

ゴクンッ

飲み込んだ。

 

飲み込み10秒ほど経った頃、妹紅の体に変化が起き始めた。

体をどす黒い炎で覆われ妹紅の絶叫が響き渡る。

 

「あぁぁあぁあぁぁ!!熱いあついアツイぃぃ!!」

「おい!大丈夫か妹紅!?妹紅!?」

 

何度も呼び掛けるが反応はない。どころか妹紅の絶叫すら聞こえなくっていた。

妹紅が炎に包まれどのくらいの時間が過ぎたのだろうか?

そして、遂に妹紅を覆っていた炎がはれた。

そこに居たのは、いつも通りの妹紅の姿が。ただ、あの綺麗だった黒色の髪は跡形もなく今は白髪となっている。

妹紅は自分がどうなっているのかを確認しているのか、自分の体をぺたぺたと触っている。

顔を触っている時に気づいたのか、自分の髪に触れ確認した。その顔は驚愕に満ち、次の瞬間には諦めたように溜息を付いた。

 

「はぁ……この髪じゃ安易に外にでられませんね」

 

その言葉に反応したのは途中からいた華扇だった。

 

「え?髪が白くなっただけではないですか」

「……そういえば、桃色でしたね。桃色に比べたら目立ちにくいのでしょうから大丈夫ですね!」

 

なんか、納得したようだ。

ただ、それよりも気になることが……

 

「妹紅の霊力がさっきとは比べ物にならないほど増えてるな。これも蓬莱の薬の効果か?」

「そう……なのですか?」

「たしかに、きちんと扱えるようになれば大妖怪ほどじゃないですけど中級妖怪ぐらいでしたら簡単に潰せそうですね」

「すこし勝負でもしてみる?妹紅ちゃん」

「えっと……遠慮させて頂きますね」

「それは残念」

「ぬえ、当然の反応だと思うぞ」

 

ぬえはでも、と続けた。

 

「でも、霊力の使い方は知っておいた方が良いんじゃないの?いざって時に使えなかったら意味ないし」

「確かにそうだな。ぬえ、華扇頼めるか」

「え?あ、はい。分かりました」

「はーい」

「じゃあ妹紅、華扇とぬえが霊力の扱い方を教えてくれるから物にして来い。頑張れよ」

 

そう言って妹紅の頭を撫でる。妹紅は目を細め気持ち良さそうにしている。子猫だな。

 

「あと、さすがにその体のままじゃあ背が低すぎて不便だろうから五年の間は成長するようにしとくか。明日までには作っとくからな。ちょっと出かけてくる」

 

そう言って外にでる。

俺の心の中では本当にこれで良かったのか?という思いが渦巻いていた。

さて、服屋にでも行くとするかね。

ひそひそと声が聞こえるが気にしないでおこう。

服屋に行って赤と白の布地を買ってきた。店主は渋い顔をしていたが二年以上持ったんだ、上出来だろう。

その後は、何軒か知り合いの家に顔を出しに行った。

 

「ただいまー」

「おかえりなさい」

「おかえりー」

「おかえ……り、なさいッ!!」

「妹紅。無理すんな」

 

帰ってくると、まだ霊力の制御の練習をしている。その額には汗が滴っている。

その姿をぬえと華扇はじっと見ている。

 

それから、十分程が経ち華扇から「止めッ!!」と終わりの合図が掛かった。

妹紅を包むようにあった霊力が霧散し、今度は妹紅から溢れるように霊力が漏れ出していく。だが、先程に比べたら大分抑えれているようだ。

 

「あの少ない時間内で良くここまで出来たな」

「妹紅は飲み込みが早いですからね」

「ぬえはどうだった?」

「私いる?って思うぐらい暇だった」

「あー分かる分かる。なんかどうでもいい事をずっと考えちまうんだよな」

 

そう言いながら妹紅へと近づき水を渡す。

 

「お疲れ。ほれ」

「ありがとう……ございます」

 

今、気が付いたが妹紅の手はガクガクと震えている。上げているつもりなのだろうがそれに反して腕は全然上がるそぶりを見せない。

 

「華扇。何時間やったの?」

「ざっと……八時間ですかね」

「少しは妹紅の体力のことも考えてやってくれ。手がやばいことになってんぞ」

 

そう言うと、華扇は妹紅の手を見て顔を青くした。

 

「す、すいません!!大丈夫ですか!?」

 

妹紅は「大丈夫です」と答えるも、その手は震えており、心なしか顔色も悪い。

 

「とりあえず、今日はもう休め。霊力ってのは生命エネルギーの一種だ。詳しい話は明日するけど慣れないうちは無理はするなよ。ぬえ布団敷いてくれ。華扇はお粥作っといて」

「了解~」

「分かりました!腕によりを掛けて美味しいお粥を作りますからね!!期待していて下さい!!」

 

俺は妹紅を背負いぬえが敷いた布団の上に寝かせる。

少し話しておきたいことがあったんだけどな。

桶に水を張り、一部を氷に変化させ水を冷やす。桶の中に布を入れ、冷やし妹紅の首の下に置いた。

霊力などの力を慣れないまま使いすぎたり、無理に制御しようとすると熱に似た症状が出る。身を持って体験済みだ。たとえ制御できたとしても症状が出る場合もある。こちらも身を持って経験済みだ。

その時、華扇がお粥を持って来た。

 

「出来ました。起きれますか?」

「は……い」

 

妹紅は起き上がろうとするが、うまく起き上がる事が出来ないようだ。

背中を支える。

 

「ほら」

「妹紅。あーん」

「あーん」

 

妹紅は華扇の手からお粥を食べる。

妹紅はゆっくりながらもお粥を完食した。

 

「食べ終わったな。後は寝てれば明日には熱も引くだろうから……って、もう寝てるな」

「……Zzz」

「お休み。華扇、ぬえ。話がある」

 

隣の部屋へ移動する。

 

「話とは?」

「おなかすいた」

「もう少し待ってくれな。で、本題なんだが、そろそろ限界みたいだな」

 

華扇はもちろんのこと、ぬえも察してくれたのか真面目な表情となった。

 

「ただ、どちらかと言うと俺が原因なんだが。やっぱ出る杭は打たれるわ。気持ち悪がられている。もちろん、違う人も居るんだけどな」

「むしろ二年間ももったんですね」

「私に、人間なのに人間じゃない仙人に、極め付けには鬼、仙人?だしね。こっちがいくら上手く隠してたって陰陽師とかには分かるしね。しょうがないよ」

「そう言ってくれると助かるな。でだ、次どこ行くよ?」

「妖怪の山でいいんじゃないの?」

「それでもいいんだが、ただなぁ……」

「どうしたのですか?」

「華扇覚えてないのか?下手したら俺たちまだ指名手配されたままだぞ?安全性を考えるんなら……諏訪ちゃんの所なんだけど。大人数で住まわしてくれって言うのもな」

「少しの間なら大丈夫なんじゃない?」

「そうだな。明日明後日には聞いてくるから妹紅への説明頼んだ。特に持って行く物もないだろ」

「分かりました。妹紅には私から話しておきます」

「頼んだ」

 

これで妹紅については多少の覚悟が出来るだろう。後はその時にまでに覚悟が出来ていればいいだけど。

まあ、そんな事態が起きないのが一番なんだが。根回しはしたし少しの間は大丈夫と思うけど。

明日の朝に諏訪ちゃんのところに行くか。

 

 

次の日、朝一で諏訪ちゃんの所へと行き、少しの間住まわせてくれないか五人いるんだけど。と聞いたところ。『全然問題ないよ~むしろ大歓迎!! 二重の意味でね……(ボソッ)』と快く了解してくれた。

 

諏訪ちゃんに了解も取ったので家に帰る。

 

そこには、武装した兵士達と陰陽師たちが家を取り囲んでいた。

 

「クソッ!裏目に出たか!!」

 

速度を上げ一気に家まで行く。

 

ズドォォォン!!

 

ギロっと兵士を睨む。どうやらまだ来たばかりなのか華扇達の姿は見られない。

 

『ヒイッ!!』

『怯むな!此方には人質がいる!』

『そうだ!こっちには人質……が、あ?』

 

一番前にいた兵士の上半身と下半身が分断された。俺がカマイタチで切ったからだ。兵士からは血が噴水のように噴出し、臓物までもが真っ二つなっていた。

 

べちょり

 

肉がつぶれるような音と共に兵士の下半身が血に倒れた。上半身は何が起こったのかわかっていないようで次の瞬間……

 

『俺の……俺の、から、だ?』

 

そう言って絶命した。

 

『『ば、化け物だぁぁ!!』』

『大丈夫だ!おい、貴様!この三人がどうなってもいいのか?』

 

そう、陰陽師の男が言うと華扇とぬえと妹紅が拘束され連れてこられた。三人から力は感じられない。封印されたのだろう。

 

「「「彰人(さん)!」」」

『この三人の安全を望むのならば大人しく拘束され……』

「人質が……なんだって?」

 

俺の隣には拘束されていた三人の姿が。

 

「妹紅怖かったですね。もう大丈夫ですから私達と一緒に中に入っていましょう?」

「彰人、一人で大丈夫?」

「おれが屑に負けるとでも?」

「そうだね。私も妹紅の側に居るからね」

 

華扇達が家の中に入ったのを確認し、変化で壊れないようにし、音や振動も伝わらないようにし、

俺は屑どもに向き直った。

 

『貴様!一体なにをした!』

「テメェらこそ、誰を敵に回したか分かってんだろうなぁ?」

 

つま先を地面にコツンとぶつける。

すると、地面が割れ、盛り上がり、形を変えて上半身だけの巨人となった。

その巨人を十体召喚する。巨人は電気を纏っている。

 

兵士達は巨人を見て慌てふためいている。

 

『おい!何だあれ!見たことないぞ!!』

『俺に聞くなよ!!』

 

だが、それと対極的に陰陽師達は冷静に状況を判断し対応していた。

 

『あの巨人は下半身がない!距離を取って攻撃すれば安全なはずだ!!全員遠距離から攻撃するんだ!!』

 

事実、その対応は間違ってはいなかった。

兵士達は距離を取り、弓兵と陰陽師の攻撃が俺と巨人を襲う。

 

『やったか!?』

『いくら強かろうとあれだけの攻撃を食らったんだ。生きているわけ――』

 

次の瞬間、

 

ズギャァァン!!

 

雷の光線が五本。兵士達を死へと誘った。

煙が晴れた後には、手を前にやって向けている巨人と、それを守るかのようにしている巨人の姿があった。守っている巨人の腕には数本の矢が刺さってはいるものの致命傷にはなっていない。

 

そして、煙が晴れる前に鳥の式を召喚しまわりを確認した。住人は避難しているのか見当たらない。

 

もう一度コツンと地面につま先をたたきつけた。

兵士たちの地面が口のように開き飲み込んだ。中からは兵士達の悲痛な叫びと、ゴリッゴリッ、ニチャニチャと噛み砕くような音と、血肉を噛む音が聞こえる。

その様子を見て兵士達はおろか、陰陽師までも逃げ出した。

 

『『『うわぁぁぁ!!』』』

「逃がすと思ってんの、カ?」

 

巨人を新たに召喚し逃げ道を無くす。数人逃してしまったが、今後の事を考え放置する。

その中のリーダ格の陰陽師だけを連れてくる。

 

『わ、私に何をする気だ!!』

 

陰陽師は強がっているものの、顔は真っ青で血の気はない。

俺は陰陽師の髪を掴み持ち上げる。

 

「ああなりたくなかったら大人しく質問に答えろ。そうしたら勘弁してやる」

 

そう言って見せた先にあったのは、口の中に放り込まれていく陰陽師と兵士達。巨大な口の端から血が垂れ、恐怖を駆り立てる。

巨人は体の一部分をずつを叩き潰し、その無表情な顔は心なしか楽しんでいるように見える。

そして、雷を打ち出していた巨人は敵を捕まえ電気を流し兵を嬲り殺している。

 

それを見たリーダ格の陰陽師はカタカタと震えている。

 

「さあ、質問だ。誰に指図された」

『こ、ここ答えたら本当に見逃してくれるのかかか?』

「ああ。お前だけは勘弁してやる」

『重隅と言う陰陽師だ!!あんたもしっているだろう!?あいつだ!』

「そうか。理由は知っているか?」

『気に入らないと言っていた。もう私の知っていることはない!!見逃してくれ』

「ああ。そうだな。勘弁してやる」

 

 

「お前だけは、楽に死なせてやろう」

 

 

「へっ?」

 

次の瞬間。俺の腕がソイツの心臓を抉り抜いた。ソイツの体から力が抜けもたれかかってくる。

腕を抜き能力を発動する。重力を変化で操り死体を跡形もなく消失させ、血を洗い消す。

術を解き後始末は終了した。

 

後始末も終わり俺は歩を進めた。

 

 

それから一ヶ月の間は『ある屋敷で人一人残さず虐殺された』と言う話題で持ち切りとなった。

そして、何とか逃げることが出来た兵士から話を聞き、真実を知る者たちの間では『あの仙人(じゃせん)の話題を出してはならない』と言う暗黙の了解が出来た。

 

 

 

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