ん……あ、れ?なん、でいし、き、が、あるん、だ?とりあえ、ずおち、つ、こう……
少し何も考えずに大人しくしていれば、すぐに意識ははっきりとしてきた。
………うっし。だいぶん落ち着いたな。
とりあえず今置かれている状況を確認するためゆっくりと重い瞼を開く。
まず、目にはいって来たのは眩しい光だった。光にはすぐに慣れその光の発生源が蛍光灯だとわかる。
ゆっくりと身体を起こし周りを見渡す。そこにあるのは……
缶ビール
ワインボトル
日本酒の瓶(全て中身は空)
脱ぎ散らかされた衣服
女性ものの下着類
ノートパソコンにゲーム類
その他タンスや本棚冷蔵庫等々……
「OLの部屋かよ!」
しまった!あんな不思議体験からいきなり日常感溢れる所に居るからつい声に出てしまった。
でも、どこか分からないが生きている。つまりあれは夢だったわけだ。
「いや~夢でよかったよかった。にしてもココは何処だ?」
アパートやマンション一室のような場所。そもそも何でこんなところにいるんだ?
確かに俺もアパートに一人暮らしをしているが酒なんて飲まないし、ここまで部屋を散らかしてもいない。
そもそも住人はどこにいる?もし俺が誘拐されたとしても犯人がいないのはおかしくないか?
何にしても動かないといけない。もしも本当に誘拐だったとしたら逃げ道を確認して、出来れば武器になるものが欲しいところだ。
まずここ、今いるところは寝室だろう。ベットもあるからまず間違えない。
そして扉は一つ。警戒しながら扉に手をかける、扉には鍵は掛かってはいなく キィ と小さな音を立てながら開いた。
扉の先はリビングになっておりそこにも酒や洗濯物が放置されている。そして扉は三つ。
一つは先程で出てきた寝室
一つは襖
一つはガラスの付いた扉だ。
ガラス付きの扉はうっすらと透けているため廊下に繋がっていることがわかる。
問題は襖だ。このまま一気に脱出してもよいのだがその途中で犯人が帰ってきたら即アウトだろう。
だが、襖の先で昼寝でもしていたらと考えるとどちらに行けばよいのかが分からなくなってくる。
だが、このままじっとしていても同じことだ。
一応台所を見てみたが包丁はおろか食器の数も少なくプラスチック、そのまま電子レンジにに入れれるタイプの素材で出来ていた。どれだけ料理をしないのだろうか、少し気になる。
包丁が無いとすれば、武器になりそうなものと言えばワインのボトルや酒の瓶位だ。
もしも犯人が居たときようにワインボトルを持っていこう。過剰防衛で捕まりたくはないので悪まで最終手段としてだが。
そして俺は襖に指を掛けゆっくりと襖を開いた。
襖を開いたその先は想像通り和室で、寝室やリビングとは違い綺麗に片付いている。
「ココは綺麗に片付けられてるな」
部屋に入り、机の上に資料があるのを見つけた。
その資料を手に取ると ハラリ と何かが資料から落ちた。落ちたものを手に取り確認する。それは写真でそこに写っていたものは……
「これは……俺?でもどうして?」
学校の制服に身を包む自分の姿がそこには写っていた。
今の今まで何で誘拐なんてされたのだろう?どうせ適当に誰かを捕まえて身代金なんかを貰う魂胆つもりなのだろう。とか思っていた。
でもここまでする必要はあるのか?何時ごろに家を出て学校に着き、学校を出る時間の平均時間は……詳しすぎる情報。むしろこれは殺す……殺す?
いやいや、待って欲しい。俺は誰かに恨まれる用なことはしていないはずだ!!
それに俺を殺してなんになる?ただ殺したい?否だ。そんなイカれているう奴だったらとっくに殺されているはずだ。
じっとりと背中を汗が流れる。
……逃げないと……
そう考え部屋を出ようとした矢先
ガチャ
『ただいま~』
住人、犯人が帰ってきた!隠れられる場所は!どこかに隠れられる場所は!!
辺りを見回す、隠れられる場所は押し入れ位しかなく、諦めてそこに身を隠す。
頼むから来ないでくれ……!
ガチャ
『あれ?いない?鍵は開けてたけどそこまで長くいなかったわけでもないし·……他の部屋かな?』
声は小さいが何とか聴こえる。今は寝室にいるのだろう。
スゥー
襖を開ける音がした。
ばくばくばくばくと心臓の音がドンドン速くなっていく。
『あれ?資料がない……』
ドクン!そういえば!咄嗟だったからつい持ってきてしまっていた!
どうする!!どうする?!今ここで出て殴るか?!どうすればいい?!
『うーん……他の所も見てくるかな』
スゥー パタン
行ったか?
入って来るときは閉めた音はしていないし足音も遠くへと行ったようだし大丈夫だろう。
念のため警戒しながら押し入れから出る。
誰も……いないな。
体にドッと疲れが押し寄せて来る。が、今はそれよりも此処から逃げなければならない。
玄関を開けた音が聴こえたからそこまで遠くないはず。
襖を少しだけ開けリビングの様子を伺う。人影は……ない。
良し。別の部屋を見ているのかリビングにはいない。その間にリビングにあるソファーの後ろに隠れる。
廊下に繋がっているだろうガラス付きの扉には人影は写ってはいない。
声は女性の物だった走れば俺の方が速いはず……此処は押しとおる!
ガラス付きの扉を開き廊下をドタドタと音をたてながら全力疾走し玄関の扉に手をかける。
鍵は掛かっておらず扉はすんなりと開いた。
俺は死にたくない一心で焦っていた。おかしい所なんて沢山合ったじゃないか。
何で唯一の隠れられる場所である押し入れを確認しなかった?
走った時の音に何で反応しない?
何で玄関の鍵が掛かっていない?
『いらっしゃい』
玄関を開けた先には一人の女が黒い笑みを浮かべながら立っていた。
俺は反射的に手に持っていたワインボトルで殴ろうとしたが、このまま殴ってもいいのか?と思ったのもつかの間女は俺の降り下ろしている腕の手首を掴む。
その手の力は女とは思えないほど強く振りほどくことができない事に加え、手首のツボを押しているのだろうか、今まで感じたことのない痛みが襲ってくる。
「―――?!!!?!!?!」
痛みのせいで声が出せず意識はむしろハッキリしてその痛みから逃れることが出来ない。
そんなことはどうでもいいかの様に女は話始める。
『お話も有るから中に入ってくれると嬉しいんだけどなー、約束してくれるんなら離しても良いんだけど?』
この痛みから解放されたい、けど、死にたくはない。二つの思いがせめぎ会う。
正直この女には敵わないから一時の休息を、いや、もしかしたらこのままの状態でいれば誰かが見つけてくれるかもしれない、けど、けど、けど……
葛藤の末俺が出した答えは……
コクッ 首を縦に振った
目の前に転がっている一時の安らぎを求め手を伸ばすことだった。
『いい子ね♪』
女は手首から手を離し俺の両手を後ろで掴んでいる。勿論痛みはない。ただ、それももうすぐ終わることだろう。二つの意味で。
夢から覚めても結局の所俺の人生は死ぬ運命に会ったんだ。そう自分に言い聞かせ、受け入れることしか俺には出来なかった。