この世界にドラクエはない   作:トッシー

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不本意ながら異世界招待です。


Level:3

「な、なんなのよこれはーーーっ!!?」

 

だから異世界だって。

世界樹の下で遠坂が絶叫する。

衛宮なんかはポカンとして開いた口が塞がらない様子だし…。

しかしこういった反応が見られるなら、ただ連れてくるだけなら有りかもしれん。

 

 

この世界にドラクエはない

 

 

青い男との戦いの後、

 

俺達は互いの情報を交換する為、その話し合いの場として衛宮家に訪れた。

そこで遠坂から語られる話の内容は驚愕すべきものだった。

神秘とその力を担う魔術師の実在。

そして今この冬木市で行われている魔術師たちの大儀式『聖杯戦争』。

令呪と呼ばれるマスターの証に選ばれた七人の魔術師と英霊たちの殺し合い。

最終的に残った一組にあらゆる願いが叶う願望機『聖杯』が与えられるのだという。

 

遠坂と行動を共にしている赤い男も召喚された英霊だとか。

以後、遠坂に習って俺もアーチャーと呼ぶことにする。

 

そして遠坂が話した次は当然オレの番である。

遠坂曰く、オレの存在は有り得ないのだとか。

 

「はて、オレ何かしたっけ?」

「アンタ自分が何したのか理解しているの?魔術師でも有り得ないのに英霊を退けるなんて人間業じゃないわよっ!!」

 

成る程、それで先程からアーチャー氏は霊体化とやらもせずに警戒しているのか。

先程から殺気まで飛ばして牽制しておるし…。

しかし人間レベルをカンストさせると英霊も圧倒できるのか…。

絶対に有り得ないことだけど、衛宮と遠坂もレベリングすれば英霊に勝てるようになるのか?

 

閑話休題、

 

オレは遠坂達に自分の身に起きたことを掻い摘んで説明する。

勿論だが赤の他人に全てを語る気は毛頭ない。

ゲームにおいて道具袋の役割を果たす冒険者なら誰もが持つアイテムボックスを見せたり、呪文を使ってみせたりとしていく内に、またまた遠坂の表情が般若の如く…。

当然だがアイテムボックスの中身は薬草や聖水くらいしか見せていないが…。

 

「……ア、アンタ…、本当に何なの」

 

遠坂曰く、オレの呪文はやっぱり在り得ないらしい…。

何でもこの世界の魔術師はこの世界に固定された魔術基板に魔術師が命令を送ることで、予め設定された機能が発現するのだ。

魔力は命令を送るための電気信号の様な役割を果たす為のもので、そもそも魔力とは人体には害らしく基本的に魔術回路を持つ魔術師にしか扱えないのだとか。

何でも生命力を魔力に変換しているのだという。

成る程、そんな面倒くさい設定があるのか。

 

「じゃあオレの呪文は魔術とは無関係だな。全部自前だし、わざわざ生命力を魔力に変換なんて真似もしないし出来ないし」

 

「だから聞いてるのよ。アンタはナニって?」

 

まるで人外を見るような眼でじっと此方を見つめてくる遠坂。

そう、英霊と人間との間には絶対的な差が有るのだ。

並の英霊でさえ、相手にするということは生身で最新鋭の戦闘機に挑むようなものである。

そりゃ対抗どころか圧倒し撃退すれば警戒通り越してビビリもするか…。

ドラクエ世界にはレベルという概念があるが説明する気はない。

冒険者と呼ばれる存在は倒した魔物の魂を浄化し取り込む機能があり、それが俗に経験値として蓄積され霊格という名のレベルが上がるのだ。

十もレベルが上がると、もう超人と言っても良いだろう。

 

 

しかしオレの攻撃が効かなかったのも納得だ。

遠坂の話しによれば英霊という存在は基本的に霊体、魔力供給によって実体化しているとはいえ、基本的に神秘の篭っていない通常の攻撃は効かないのだとか。

という事はだ、

奴らに対向するには魔力が宿った特殊な武器か魔法剣や呪文じゃないと駄目ってことになる。

しかし遠坂、やっぱり美少女だなぁ…。

 

「…ポ///」

「巫山戯ないで!」

 

美少女に見つめられるとつい…。

おっぱい小さいけど…。

 

「…こほん…、だからさっきも言っただろ?異世界帰還者だって…、はっきり言っとくけど、これ以上は本当に言い様がないからな」

 

「平塚はさ、その異世界であんなに強い力を身につけたんだろ?異世界に実際に行ければ遠坂も平塚の話を信じざるをえないんじゃないか?」

 

ここで衛宮が初めて口を開く。

その眼は何かを期待する様な、何かに憧れる様な、そんな眼だった。

しかしオレは異世界の存在を教えても、他人を連れて行くのは嫌なのだ。

 

「遠坂が言ってただろ?魔術師の基本は10日交換だって」

「いやなんかニュアンスが違うぞ?等価交換だろ?」

「オレは遠坂から貰った情報と異世界招待旅行が等価だとは思えない」

「無視か、それに旅行って」

 

「何ですって」

 

遠坂が立ち上がってオレを見下ろす。

ニーソックス美脚が眩しいぜ。

そんな心境を隠しつつオレは冒険者としての表情で立ち上がり、遠坂を睨み返した。

アーチャーも警戒するように戦闘態勢に入る。

 

互いに睨み合うこと数秒、拉致があかないのでオレが折れることにした。

まぁ直ぐに帰ってもらえば問題なかろう…。

そんな訳で異世界の存在を証明するために外に移動、瞬間移動呪文(ルーラ )によって異世界に連れて行くことになったのだ。

本当に、いや本当に不本意だったが…。

 

 

 

そして冒頭に戻る。

 

遠坂は常に優雅たれの家訓も忘れて頭を抱えて絶叫する。

衛宮の中の理想のマドンナ像がガラガラと音を立てて崩れていく。

 

「取り敢えず落ち着いたら?」

 

「……ンンッ、そうね…見苦しいところを見せたわ…アーチャー、アンタはどう思う?」

 

返事がない。遠坂は会話できる仲間を連れていない。

 

「は?アーチャー?……そんな、アーチャーがいない……平塚君!?」

 

確かにアーチャーの姿が無い。気配も感じられない。

ルーラで一緒に来たはずなんだけど、もしかして途中で落ちたかな?

遠坂が食って掛かってくるが、

 

「オレにも何が何だか…って、今はそれどころじゃないぞ」

「…え?」

「な、何だっ!?ば、化物…っ!?」

 

街でもない人間の生活圏外で長居しすぎたか…。

オレの視線の先を二人が追い、驚愕の声を上げる。

ドラクエの世界ではお馴染みの魔物が其処にいた。

レッサーデーモンが七匹、デススパークが5匹、群れで登場だ。

勿論ゲームのように画面いっぱいで限界、これ以上増えないことは無い。

時間を掛けると続々と魔物が集まってくるだろう。

最近は赤色と青色ばかり見ている気がする。

 

「これ、ヤバくないか…」

「何よ、この幻想種の数は…どう分類すれば…」

 

「取り敢えず、お前ら下がってろ。手早く片すから」

「私も戦うわよ。手は多いほうがいいでしょ」

 

遠坂が前に出ながら自信満々に言った。

自信があるのなら任せてもいいか?

 

「じゃあ青いの任せる」

 

まぁ魔術が使えなくても攻撃手段が有るのだろう…。

オレは頷くとレッサーデーモンの群れに身体を回転させつつ飛び込んだ。

強い遠心力から繰り出される圧倒的な運動エネルギーは闘気を纏い回転する。

 

-ムーンサルト-

 

そのパワーはすれ違ったレッサーデーモンの四肢を容易に引き裂いてく。

 

ギャアアアアアッ!!!!?

 

七匹のレッサーデーモンは断末魔を上げて八つ裂きにされた。

 

「さてと、遠坂の方は」

「キャアアアアアッ!!?」「と、遠坂!!?」

「って駄目じゃん」

 

遠坂は衛宮に庇われながらデススパークの放ったベギラマに襲われていた。

 

「何やってんだよ」

「魔術が…、魔術が使えないのよ!!?じゃあ此処は本当に…?」

 

まだ信じてなかったのか…。

おれは内心呆れながらデススパークと遠坂達の間に割って入ると、

 

爆裂呪文( イオラ)!!

 

呪文の発動と同時に大気が揺れて爆発が巻き起こる。

オレは中級爆裂呪文によってデススパークの群れを吹き飛ばした。

 

「大丈夫か……っとっ?」

 

いきなり胸ぐらを掴まれる。

 

「ねぇ、平塚君」

「何かな遠坂さん」

 

遠坂は深呼吸する。息がめっちゃ掛かってヤバイんですが…。

衛宮も羨ましそうに見ないの。

そして一泊おくと口を開いた。

 

「ここは私達のいた世界じゃ……、地球じゃないのね?」

「だから異世界だって」

 

「……今度こそ分かったわ…、納得したわけじゃないけど、魔術が使えないこともアーチャーが存在できないことも、どうにか理解した…」

 

この世界には遠坂の言う魔術基板が存在しないのだろう。

だからいくら魔力によって信号を送っても魔術基板は働かない。

魔術も発動しない。

 

そもそもこの世界の呪文は自前の魔法力によって魂に刻まれた呪文の情報が開放され発動するのだ。

前提条件から違う。

 

「嗚呼、此処は間違いなく異世界だ…痛っ、この痛みは夢じゃない」

 

「ごめんね、衛宮君…庇ってもらって…」

「気にするなよ遠坂、怪我なら遠坂もしてる…ひどい火傷だ」

「互いにね」

 

いちゃつく二人がなんかムカつく。

しかしさすがに怪我したまま放置は出来ないので、

 

治癒呪文( ベホマラー)

 

オレの掌から優しく白い光が風の様に流れ二人の傷を癒していく。

 

「凄い…、こんな魔術まで…」

「魔術じゃなくて呪文な」

「もう認めるしか無いわね」

 

オレは傷が癒えて立ち上がった二人に向かって言った。

 

「納得した所で、そろそろ帰らないか?ぶっちゃけ異世界を証明した以上、ここに留まる理由もないだろう?」

 

「え?もう帰るのか?」

 

衛宮は名残惜しそうに肩をすくめる。

 

「当然だろ?え?衛宮は残るのか?ここに一人で?死ぬぞ?……ってお前もか遠坂」

 

遠坂までもう帰るの?みたいな表情してるし…。

あんな目にあったというのに、懲りない二人。

 

「たしかに危険だけど、魔術師としてこの世界には純粋に興味が有るわ」

「だったら聖杯戦争とやらが終わってからでもいいだろ」

 

本音はこれ以上こいつらをこの世界にいてほしくないだけだが…。

 

「じゃあせめて人の住む街だけでも見せてよ。どうせ呪文でパッと移動できるんでしょう」

 

遠坂、笑顔だが眼だけが笑ってない。

一瞬、力尽くで強引にルーラで帰ろうかと考えて、その考えを放棄する。

ここで険悪になれば帰った後の関係も面倒くさい。

英霊という存在は戦えないわけではないが、アーチャーの実力も未だ未知数だ。

仕方がない。余計なことしないように見張っておくか…。

 

「分かったよ。でもこの世界ではオレの指示に従ってもらう。それが条件だが」

「勿論、右も左も分からない世界で勝手な行動を取る気はないわ」

「ああ、オレも指示に従うよ」

 

「分かった。じゃあ異世界旅行ツアーに不本意だが招待だ」

 

オレが手招きすると二人は軽い足取りで側までやってきた。

オレは一拍置いて呪文を唱える。

 

瞬間移動呪文( ルーラ)!!

 

瞬間、俺達は一筋の光と化して空へと舞い上がった。

凄まじい速さで離れていく地上を見ながらオレは決意した。

 

-こいつら二人は断じて冒険者にはしない-

 

 

 

 

 

 

そして異世界旅行ツアーは後半に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

おまけ

 

Fate風ステータス

 

 

マスター:-

 

真名:平塚剣

 

クラス:勇者

 

パラメーター

 

属性:混沌・善(むっつりすけべ)

 

筋力:A++

耐久:B

敏捷:A

魔力:B+

幸運:E-

宝具:E~A++

 

クラス別能力

 

呪文:E~A+

特技:E~A++

ためる:-

心眼(真):A

単独行動:EX

職業勇者:-

ダーマの悟り:-

 

宝具:???

 

 

ためる:どんどんテンションを溜めてスーパーハイテンションに!

 

職業勇者:徐々に傷が癒えていく(毎ターンHP回復。ベホイミ並)

 

ダーマの悟り:様々な職業に転職できる。

 

スーパーハイテンション:A++

 

この状態になると一定時間無敵となる。

闘気や魔法力を消費しなくなる。

全能力が飛躍的にアップする。

必殺技が使える。

 

 

 




今回は短めでスイマセン。

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