この世界にドラクエはない   作:トッシー

6 / 9
バーサーカ戦、決着です。
原作からどんどん離れていっております。
もし原作沿いを期待される方には申し訳ないです。







※技の威力について結構なコメントが寄せたれたので、自分自身で読み返した結果、確かに…と思い始めて(・。・;
感想に左右されすぎるのもどうかと思いましたが、Level:5と6の描写と展開を少し修正させていただきました。


Level:6

最強の威力を持つ攻撃とは何であろうか?

 

プラスとマイナスの魔法力をスパークさせて放つ極大消滅呪文(メドローア ) か?

 

それとも最強を超えた究極の剣技、アルテマソードか?

 

いや、竜の騎士が全ての竜闘気を圧縮して放つ竜闘気砲呪文(ドルオーラ ) か…?

 

いずれにせよオレは、その何れかの内、アルテマソードしか習得できなかった。

そしてアルテマソードは強力だが、それでも最強の技と呼ぶには一歩足りなかったのだ。

補助呪文を用いた後、全闘気を爆発させたスーパーハイテンション状態でさえ、小さな山を吹き飛ばして更地に変える程度だった。

一応、凄まじい破壊力だとは思うのだが仲間はそれ以上のことをやってのける。

剣技にしろ、呪文にしろ、補助にしろ、その他の事に関しても…。

オレは、どの分野でも最強にも最高にもなれなかったのだ。

しかし、どれか一つでも良かった。

仲間達に胸を張れる誇りが一つ欲しかった。

だからこそ、あんな阿呆な事を…。

 

 

 

 

この世界にドラクエはない

 

 

 

 

-狂いなさい、バーサーカー…。

 

白い妖精の一言で狂戦士のプレッシャーが増す。

オレがイリヤスフィールに意識が向いている隙に斧剣を回収、既に攻撃の体勢に入っていた。

それからオレは防戦一方になった。

先の暗黒雷撃破( ジゴスパーク)によって高めた闘気を放出してしまい、一気に劣勢に回る。

補助呪文の効果は続いているのだが、状況が不味い事に変わりない。

バーサーカーの謎のパワーアップによって振り出しに戻ってしまった。

いや若干だが膂力においてはバーサーカーが優っていた。

思考が纏まらない。

確かにオレの一撃はバーサーカーの命を刈り取ったはずだ。

現にバーサーカーの上半身は心臓を含めて消滅していたのだ。

死んでないなど有り得ない。

オレの疑問にイリヤスフィールが楽しそうに答える。

 

「いいことを教えてあげる。バーサーカーの宝具はその肉体、嘗て乗り越えた試練と同じ数の命が与えられているの。しかも乗り越えた試練、一度受けた攻撃には耐性が出来て、同じ手段ではバーサーカーを殺すことは出来ないわ。バーサーカーの命は残り九、貴方は残りの手札で私のバーサーカーを殺しきれるかしら?」

 

バーサーカーの宝具の秘密、イリヤスフィールは有ろうことか自分から暴露したのだ。

九の命ということは許は十二の命を持っていた。

そして乗り越えた試練…。

 

「まさか、ヘラクレス……、なのか?」

 

オレの答えにイリヤスフィールは満足気に笑った。

 

「アハハ!正解!バーサーカーは最強の英霊なのよ!誰もバーサーカーに敵わない!」

 

このままでは不味い。

確かに手段を選ばなければ、十分に勝機はある。

英霊はマスターの魔力によって現界している。

マスターであるイリヤスフィールさえ殺せばバーサーカーは消える。

しかし、

 

(あんな小さな子を殺したくないな…出来ればだけど……それに)

 

出来ればあの巨人に勝利したい。

そんな欲も出てきてしまっていた。

この世界の人間なら知らない者の方が少ない程の知名度を誇る英雄ヘラクレス。

その伝説が目の前に居るのだ。

ならば、それを打倒してみたくなるのが未知に挑戦する冒険者の道。

 

それに手がない訳じゃない。

嘗て自分の無力に絶望し、血の滲むような修練とレベル上げの中で編み出した必殺技。

文字通りステータス覧には載っていないオリジナルの必殺技。

それを使う時がやってきたのだ。

ジゴスパークで三度、複数の命を削れたという事は、オーバーキルは有効ということになる。

この技を使うは神龍との戦い以来だ。

あの時は仲間のサポートもあってか、神龍に止めを刺すに至ったのだが、今回は自身の力だけでやらなければならない。

 

「けど、やるしかない」

 

バーサーカーの猛攻を凌ぎながらも時折、治癒呪文(ベホイム )で傷を癒やす。

呼吸を乱さないように、無駄な体力を消耗しないように最小限の動きでバーサーカーの攻撃を躱し捌く。

そして体内の闘気を高めてテンションを上げる。

チャンスは一度、そして補助呪文の効果が続いている今しかない。

仕損じれば命がない。

 

「アハハ!よく粘るわね!でもそろそろ現界が近いんじゃないかしら」

 

血塗れのオレの姿をイリヤスフィールが嘲笑う。

しかし治癒呪文の効果と勇者の自己治癒力で無傷に近い。

血塗れの姿のお陰で欺く事が出来ているようだ。

そして時は来た。

 

閃熱呪文(ベギラマ )

 

まずオレはイリヤスフィールも巻き込むように攻撃呪文を放つ。

紅蓮の炎は波打つようにバーサーカーとイリヤスフィールへ向かう。

 

「…っ!?バーサーカー!!」

 

イリヤスフィールのような少女の体力なら間違いなく耐え切れない程の高熱の炎。

思った通りだった。バーサーカーはイリヤスフィールを庇う為にオレから距離を取り、自身の肉体を盾にイリヤスフィールを炎から庇った。

まるで仁王立ちの様に炎の全ての熱を引き受ける。

その隙を見逃す気はない。

 

「はああああああああっ!!!」

 

高めた闘気を開放しスーパーハイテンションになる。

疾風のバンダナが弾け、オレの髪が逆立つ。

紫電の闘気を纏ったオレはバーサーカーに向かって駆ける。

 

これから使う技は俺自身にも危険な技だ。

直ぐ側でサポートしてくれる仲間がいるなら兎も角、一人で戦う場合、下手をすれば一気にピンチに陥る自爆技になりかねない。しかしオレは確信している。

決まればオレの勝利だと。

 

「はあああああっ!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」

 

オレの闘気に呼応するようにバーサーカーが咆えて再び地を蹴る。

凄まじい連撃を繰り出してくるが、今のオレは超ハイテンション。

降りしきる小雨を傘で防ぐようにバーサーカーの猛攻を弾き返しながら反撃する。

魔法剣の連続攻撃。

炎の斬撃が、冷気の斬撃が、風の斬撃が、雷の斬撃が次々と繰り出されバーサーカーを後退させていく。

 

「何をしてるの!?バーサーカー!!」

 

バーサーカーの劣勢にイリヤスフィールは焦ったように声を上げる。

 

目の前の狂戦士(ヘラクレス )は確かに強い。

今まで戦った敵の中でも上位に位置するだろう。

しかし最強の敵ではなかった。

間違いなく神龍の方が強かった。

何せ一対多数、仲間と力を合わせて戦っていた時よりも脅威を感じない。

オレの一撃にバーサーカーは体制を崩し蹈鞴を踏む。

 

これで終わりだ!

 

魔法剣メガンテ…、

 

暴走し膨れ上がった生命エネルギーを更に制御することで肉体の爆発を抑える。

その膨大なエネルギーを刀身へと込める。

周囲への影響をなるべく避けるために跳躍する。

そして放たれる必殺技、

 

光闘気の十字剣( グランドクルス)ッ!!!!!

 

一欠片の体力を残したオレは、剣に込められた力を一気に放出した。

斬撃という形で指向性を持った超エネルギーは十字の光線となってバーサーカーを飲み込んだ。

そして、

 

ギィンッ!!!

 

なんと雷鳴の剣が砕け散った!

魔法剣メガンテと光闘気の十字剣( グランドクルス)の威力に耐えられなかったのだろう。

 

「バーサーカーッ!!!」

 

イリヤスフィールの悲鳴と同時にオレは膝を付いた。

直ぐに治癒呪文を唱える。

しかし、

 

「やっぱり直ぐに効果は出ないか…」

 

実際にオレは傷を負ったわけではない。

生命エネルギーである闘気を限界近くまで放出し、体力が無くなった状態だ。

治癒呪文は傷を癒しても体力までは回復しないらしい…。

HPは間違いなく一桁だな…。

オレはメタな事を考えている自分に苦笑し、バーサーカーの方に集中する。

そこには空気の中に溶けゆく様に消える英雄の姿がった。

狂戦士、そのクラスからは想像できない理性の光を瞳に宿して…。

ヘラクレスが静かな声で語りかける。

 

-我が生命の全てをたったの一撃で奪い去るとは、見事という他に言葉がない…

 

皆が認める大英雄ヘラクレスからの賞賛の言葉。

オレは体力を振り絞って立ち上がる。

最後は勝利者として立っていなければと、そう思ったのだ。

バーサーカーは賞賛するが、オレの技は間違いなく自爆技、出来れば使いたくないのが本音。

 

魔法剣メガンテからの光闘気の十字剣( グランドクルス)

これが俺の切り札であり、オリジナルの必殺技。

ルイーダの酒場で登録されているオレのステータス覧にも載っていない、いや載らない圏外の技術。

他に良い名前が思いつかなかった為、技の名前はパクりましたが…。

 

 

 

「うそ……、バーサーカー…死んじゃったの?」

 

現実を認められないのか、イリヤスフィールが茫然自失としている。

イリヤスフィールの敗因は多くある。

その迂闊さのお陰で勝利できた。

もしヘラクレスが他のクラス、剣士もしくは弓兵で召喚されていれば更に苦戦していただろう。

ペラペラとバーサーカーの秘密を暴露し、戦場に姿を出した迂闊なマスター。

戦闘能力が低いのにもかかわらず戦場に出てきて足手まといとなる。

恐らく何が起きても大丈夫だとバーサーカーの能力を信頼しての事なのだろうが…。

実戦では何が起こるか分からない。

それを理解していなかったこの娘は戦下手だったのだ。

オレは決着を着けるためにイリヤスフィールの前へ移動する。

勿論、最後まで油断する気はない。

 

「……私を、殺すの?」

 

感情の篭もらない目でイリヤスフィールがオレを見上げる。

 

「いやちょっと相談があって…」

「何よ」

 

オレは周囲を見渡して溜息を付いた。

 

「これ、どうしよ」

 

なるべく被害を抑える為に気を使ったが無理でした。

オレとバーサーカーの放った数々の絶技の傷跡。

地面が抉り取られるように破壊され、草木は燃え広がり、極めつけは…。

 

「やり過ぎた…」

 

最後にはなった光闘気の十字剣( グランドクルス)の傷跡だ。

言葉にするなら底の見えない巨大な十字の穴。

小石を落としてみる。

オレの耳でも石が地面に落ちた音が聞こえない。

地球の裏側まで届いてないよな?

オレは冷や汗を感じながら助けを求めるようにイリヤスフィールを見下ろすのだった。

 

「知らないわよそんな事」

 

敵であり、ヘラクレスの敵であったオレへの態度はやっぱり冷たかった。

何でもオレのイリヤに対する評価は口に出ていたらしい。

戦下手だの足手まといだのと、どうやらオレは思った事を口に出してしまうらしい。

この癖、治らないかしら…。

取り敢えず、教会に向かった衛宮達に合流したほうが良いかもしれない。

確か、敗退したマスターは教会が保護してくれると遠坂が言っていたし…。

オレはすっと、イリヤスフィールの腕をとった。

当然イリヤスフィールは抵抗の意思を示すが、

 

「ちょ、ちょっと!?」「ラリホーマ」

 

というわけでオレはイリヤスフィールを優しく寝かしつけるとお姫様抱っこ。

どう見ても幼女を誘拐しようとする犯罪者の図です。

罪状は未成年者略取ですね。情状酌量の余地なしですな。

そしてこの惨状から目を背けて、

 

「ご、ごめんなさーい」

 

オレは某魔法少女を習ってこの惨状から現実逃避するのだった。

 

 

目指すは教会、いや実は教会までの道を知らないから却下。

当然だが自宅には連れて行けん。

家族を巻き込みたくないし、絶対に妙な誤解を受ける。

衛宮は今は家に居ないだろうし、遠坂の家も分からない。

それ以前に敵のマスターが英霊も失った状態で連れて行けば碌な事にならないだろう。

 

「仕方がない」

 

本当は嫌だし出来ればこの場に放置したいが、他のマスターの手にイリヤスフィールが落ちればオレの情報が知られる危険もある。

 

「……向こうの牢獄にでも入れとくかな?」

 

アバカムの呪文か専用の鍵もしくは最後の鍵がないと絶対に出入り出来無い場所に閉じ込めておけば安全だ。一瞬本気でそう考えてしまう。

しかし、

 

「ううん……、バーサーカー…」

 

イリヤスフィールがオレの腕の中で涙を流した。

どうやらこの娘にとってヘラクレスは唯の使い魔では無かったようだ。

そこには確かに信頼と絆が結ばれていたようだ。

この娘は足手まといではなく、オレが知らない異なる形でヘラクレスを支えていたのかもしれない。

腹は決まった。

 

 

 

 

瞬間移動呪文(ルーラ )

 

 

 

オレは異世界にイリヤスフィールを連れて行く決意をした。

体力もヤバイし、この世界に留まるよりは遥かに安全だ。

そして久しぶりに竜の騎士(ディース )にも会いたいし。怖いけど…。

オレは途中通り過ぎて行く次元の狭間の中でイリヤスフィールの涙を指で拭ってやるのだった。

 

 

「オレはロリコンじゃないです……って誰に言ってんだろオレ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

オリジナル技

 

 

 

魔法剣メガンテ

 

最強の攻撃力に至れないケンが努力と試行錯誤の末に編み出した技其の一。

マダンテとメガンテをヒントにしており、魔力ではなく生命力を暴走させるメガンテを応用した魔法剣。

暴走した生命力を爆発させずに制御して剣に纏う事で命を落とさずに済む。

HPが高いほど威力が増す最終幻想の究極剣もどき。

 

 

 

光闘気の十字剣( グランドクルス)

 

魔剣戦士の必殺技をヒントに編み出した技。

暴走した光の闘気に斬撃という形で指向性を持たせて無駄なく威力を伝える必殺剣。

魔法剣メガンテと併用することによって一人では使えない自爆技になってしまう。

 

 

 

 

二つの技を併用すると並みの剣は耐えられずに砕け散ってしまいます。

 

 

 

 

続く?

 




という訳でバーサーカー敗退です。
最強なのに真っ先に敗退させました。
バーサーカーとイリヤのコンビが好きな方には申し訳ないです。

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