あの日から俺の人生は狂ってしまった。 (完結) 作:ちゃるもん
バレンタインですね。
イベントには投稿しないとな。の精神のもと書き上げました。
お見苦しい点も御座いますでしょうが、読んでいただければ幸いです。
私は暗い部屋のなかに独り座っていた。
外になんて出たくない。もう、このまま誰にも会わず、独りで朽ち果てていけばいい。
そう、私は私を呪った。
だって、そうすれば……もう、誰も私を裏切らない。裏切れないから。
そうすれば、私は、もう、誰も傷つけなくてすむから……
もう……私は誰も傷つけたくないから……
「……ははっ」
渇いた声が部屋のなかに響く。
それでも、温もりを求めてしまおうとする自分がいるから。
結局、私はどうすれば良いのだろう。
結局、私はどうすれば良かったのだろう。
いまはただ、この無駄な命を憎むばかりだ……。
・
コンコンッ
控えめのノックの音。恐らく勇儀でも来たのだろう。
私は膝を抱えた。
勇儀は、数日に何度か私の家を訪れる。
彼女からすれば善意なのは分かるが、私からすれば悪意以上のなにものでもない。
まるで、耳元を飛び回る五月蝿い羽虫。
そういえば、一度だけ怒鳴ったこともあったけ。
「…………、以外と元気なんだな、私……」
私の心と体は、予想以上に私の願望を邪魔しているようだ。
本当に……いい加減にしてほしい。
膝にナニかがこぼれ落ちる。
「ッ!!」
それは、もう既に枯れ果てたものだったはずのもの。
私は、何も見ていない。
私は固く目を閉じた。
けれど、流れるそれは一向にやむ気配はなかった。
コンコンッ
私の心情とは裏腹に、しつこく飛び回る羽虫。
私はもう、誰とも会う権利なんてないんだから……。
「ッ!!」
言葉の裏にある、叶えられらない願い。
そんな自分にヘドが出る。
私はより一層目を固く閉じた。
しかし、その目は意図も容易く見開かれる。
何故か?
『パルスィさん?居るの?逃特軽だけど』
「ッ!!」
愛しいあの人が、もう、会わないと誓ったあの人が……。
ギリッ!!
二の腕を掴む腕に力を込める。
動くな。動いてくれるなッ!!私はもう、傷付けたくない!!だから、お願いだからッ!!
ギリギリッ!!
手の平にヌメッとした感触が伝わってくる。
そして、鼻をつくツンッとした血の臭いが脳を刺激する。
『パルスィさん?話したいことが有るんだけど……』
彼が帰る気配はない。
どうする!?どうすれば彼を傷つけないですむ!?
そうだ……。嫌われればいいんだ……。
「帰ってッ!!!!」
『パルスィさん……。お願いだから、俺の話を……』
「貴方みたいな覚悟も無いような奴とは顔も会わせたくないのよ!!分からないの!?早くどっか行って!!私を一人にして!!」
『ごめん……なさい。また、来ます』
「もう来ないで!!」
……………………………………。
ああ……、ああ……ごめんなさい。ごめんなさい……。
私に、こんな私に会いに来てくれたのに……。でも、それでいいの。時間があれば、貴方はまだ進み直せるから。道を正せるから……。
こんな、こんな……最低な存在の事なんか忘れて…………。
明るい未来を、歩いてくだ、さい……。
・
あれから、何度か彼は訪れた。その度私は追い返した。
無視を決め込み、怒鳴り散らした。
そして、その都度、既に乾ききったものが流れる。
そんな生活が続くこと早一年。
この一年、飲まず食わずの生活だったと言うのにこの体は朽ち果てない。
もう、動きたくすらない。早く死にたい。
そして、それから彼は家を訪れなかった。
・
全く同じ生活を続け……何れくらいが経っただろうか?
もう、時間の感覚さえ曖昧で、目もボヤけ、音も殆ど聞こえない。口はカラカラ、腕を上げるのも、足を動かすことすら出来ない。
ああ、ようやく……ようやく死ねるのか……。
私は、私自身の寿命がもう残り少ない事を悟った。
・
視界にはぼんやりと川が映っていた。
三途の川と言うやつだろうか。
いや、違う……。
此処は……、この場所は…………。
ああ、本当に私は執念深い女なんだな。と、改めて実感した。
そして、さっきまで動いたであろう足からふっと力が抜ける。
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめん……なさい…………
そして私は、迫り来る死へと身を委ねた。
・
目が覚める。 眩しい光が一気に飛び込んできて目を細めてしまう。
これが死後の世界なのだろうか?
いや……違う……。
だんだんと目が光に慣れ、視界には木張りの天井の姿。
私はどうやら布団に寝かされていたようだ。
助けられた……。
私は死に損ねた……のか……。
「あ、パルスィさん。目が覚めたんだね。良かった」
声が出なかった。
なんて出来すぎた話かと。
なんて世界は残酷なんだと。
なんて、私は軽薄なのかと。
あれだけの事をして、私は何故喜んでしまうのかと。
「橋のしたで倒れてたんだよ?それもかなり危ない状態で」
それもそうだ。私は死にたかったのだから。
「取り敢えずお水。俺の事が嫌いなのは知ってるけど。今だけは安静にして、体力回復に努めてね」
「ぁ……ちが……」
咄嗟に否定しようとした。しかし、何が違うのか。事実以外の何物でもないではないか。
私は彼を突き放した。何度も、何度も手を伸ばしてくれたのに、私は怖いからと突き放した。
私には、彼に助けてもらう権利なんて有る筈もないのに。
私は起きた。既に限界が近かった体に鞭を打ち起き上がった。
私は此処にいるべきではない。
彼を押し退け、部屋から出る。
「あ、まだ動いたらダメだって!!」
しかし、彼は私の腕を掴んで引き止めた。
私は言った。お願いだから離して。私はもう生きていたくないの。
と。しかし、彼は離さない。そして、私は彼の放った言葉に動けなくなる。
「だったら、俺も一緒に死ぬ。迷惑かもしれないけど、今のパルスィさんを一人になんて出来ない。ごめんな?今まで一人にしちゃってて」
「…………なんで……」
私は、それ以上何も言えなかった。
彼は頬を赤く染め、頭を掻きながら言葉を紡ぐ。
「命の恩人だから。とかも関係あるけど。ただ、好きな相手が辛そうにしてるなら、せめてその重荷を少しでも背負えたらなって」
「あの日さ、覚悟もないような奴って言われて、自分なりに考えたんだ。俺はパルスィさんたちと比べたら寿命も短し、身体能力も劣る。本当に安直な考えなんだけど、俺は寿命を伸ばすことにした。人の道から外れる事で。一時の間、パルスィさんの家に行けなかったのはそれが原因だ。それに、俺は此方のお金なんて持ってない。パルスィさんを養えるだけのお金も今稼いでいる。って、言ってもこの腕だからあんまり働けるところも無いんだけどね」
そう言って、彼はヒラヒラと漂う裾を見せた。
「片腕が無くて、覚悟もない奴が一緒に死ぬなんて、本当に迷惑かもしれないけどさ。最期くらい、お供させてくれないかな?」
私には答えられなかった。
腕が無いことも驚いた。
覚悟を決め、妖怪になる決心をしてくれた。
こんな私と一緒に死んでくれる。
こんな私を好きでいてくれる。
こんな私を嫌わないでくれている。
何も答えられない。ただ、私はそのボヤけた視界のなかで彼を見詰めることしか出来ない。
どうして、そんなにも私を揺さぶらせるの?
こんなんじゃ、死ぬなんて出来ないじゃない……!!
伝えなきゃ……。何かは、分からないけど、兎に角、伝えなきゃ……!!
「せき……せきに、ん……とって…………もらうんだから……!!大好きッ!!」
彼の唇に私の唇を押し当てる。
彼は狼狽えていたけれど、私を受け入れ、抱き締めてくれた。
私は初めて、愛と言うものを実感した。
地底の都入り口。
そこには一本の橋が架かっている。
そして、その橋の上には三人で橋を守る、仲睦まじい家族の姿を見ることが出来るだろう。
貴方も、一度行ってみてはどうかな?
HAPPY END
共に……
END
お読みいただき有難うございます。
今回はパルスィの番外編でした。
いかかでしたでしょうか?パルスィENDは絶対ハッピーエンドで終わらせるつもりでいましたので、ヤンデレやバッドエンド等を期待していた方にはごめんなさい。
でも、書き直すつもりはありませんのであしからず。
誤字脱字、感想があれば、よろしくお願いします。
一応次に考えているのは妖夢のその後or妖夢エンドor幽々子エンドのどれかです。
では、また次回。